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人物名

人物名岡野左内 
人物名読みおかのさない 
場所越後 
生年 
没年 

本文

岡野左内は上杉家の臣、陸奥にありて壱万石を領し、越後守といふ。その武功ども近世の軍記に見ゆる中にも、はからず仙台侯と一騎打チして、猩々皮の陣羽織に二所まで劔の跡つけしを、和睦の後、侯、誰ぞと尋て知給ひ、其勇を賞し、彼陣羽織を給りけるなどは、ことにいさましきものがたり也。此人、並びなき福者にてありし。或ル時、馬屋の中間に、黄金壱枚もちたるものあるを聞て呼出し、奇特なる旨褒美して、黄金十枚を与ふ。貧しくては武功も全クしがたきをおもふなるべし。凡ソいとまある時は金をあまた並べ、その上に臥スをたのしみとす。是をきく人は、武士の道に有べからぬふるまひ也といはぬはなかりしが、或ル時、此たのしみをなしゐたるに、我与の士口論を仕出したることをしらせければ、敷たる金はそのまゝにうち置、貞宗の太刀を帯び鹿毛なる馬に鞭うちて走り、一日ニ夜の間さまざまあつかひなだめて家に帰りしが、其間は金の事はおもひ出しもせぬけしきなりしを、つたへきく人はさらにおどろきたりとなん。又軍陣に臨んでは必能役者をまねきて乱舞をなさしむ。つねはかつて翫ばす。人その故をとへば、平日はたれたれも好む故にかれらいとまなし。軍陣のことあれば俄にあはたゞしくそのまうけするがために、かうやうのあそびをかへりみず。おのれは常に出陣の用意を備ればいとまあり。乱舞者もまたいとまあれば、これをさせて見ること也、といへり。すべて所行他の案外に出る人といふべし。

図版