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人物名

人物名大和伊麻子 
人物名読みやまといまこ 
場所大和葛下郡南今市 
生年 
没年 

本文

大和の国葛下郡竹内村に寡婦あり、伊麻といふ。年六十あまりてほ老たる父に仕へて孝篤し。寛文十一年辛亥六月、老父病甚して、日をへて飲食をおもはざれば、伊麻歎くこと頻なるに、十二日すこし病のひまある時にいふ、もし鱓魚あらば是を喰んと。されども是里山中にして、覓によしなければ、いかがすべきとまどへるに、夜いたう更過て、瓶の水に音あり。伊麻驚あやしみ起て見るに、好める所の鱓魚 瓶中にをどりければ、喜びとりて膳にとゝのへ進しに、是より父の病日々に快、常に復りし旨、芭蕉庵桃青、貞享五年四月に、大和路を行脚のついでに聞て、涙とゞめがたりしと、やがて京に来りて、書家雲竹に語る。雲竹もまた感ずるの余りに、みづから大和に往てその婦にまみえんとせるを、門人友竹為に代リてゆき、其姿を写し来れりと、即雲竹其画像の上に自筆にて記せり。同じ年八月既望とあり。芭蕉、雲竹ともに聞ゆる人にして、見聞のたしかなる証かくのごとし。さきに記せる日下の樵者と同日の談にして、王祥が氷の裏の鯉、孟宗が雪の中の笋を、たゞむかしの物がたりとのみ、なほざりに聞過す人をおどろかすに足ルもの歟。