[ 時代統合情報システム トップ ] [ データベース一覧 ]


[ 人名順 | 登場順 ]

人物名

人物名大橋東堤 
人物名読み 
場所 
生年 
没年 

追記
人物名永田観鵞 
人物名読みながたかんが 
場所京都  京都内野長徳院 
生年 
没年 
本文

東堤大橋氏、名富之、字子教、平安の人。性、和気慈順にして清操あり。真行草ともに能す。就テ中草書は一筆一行に写すること、張顛が風也といへり。門人にしめしていへらく、草書は其始メ古轍によるといへども、漸成熟に至れば、其神を融し筆を暢て至極に及び、天地自然に委ぬ。その自然をえんとおもはゞ先心を正しうすべし。心身明らかならずしては無我の意地に至ることあたはずといへり。当時書家七十有余の中、握冠たりと評せり。又韓使、焉斉も翁の書を見て韓山一片石と賛す。武南窓、其筆意を伝へて、これもまた酒落の一奇人なりしが、去ル年の夏帰泉せり。閑田子按、韓山寺碑は北魏人温子昇作之。庾信云。韓山一片石。唯可二共語一而己。其余驢鳴犬吠。此語をとりて評せしなるべし。 ○観鵞永田氏、名忠原、字ハ俊平、一号東皐、又黎祁道人といふは、豆腐を嗜むこと甚しければ也。黎祁は豆腐の異称なり。 又一奇僻は糠漬の菜俗に香物といふ。 を悪むこと蠱毒のごとし。吾儕、席を同じうする時もこれを喰ふことを憚る。其香を忌が故なり。或尊貴へ参りし時、御戯に試んとおぼして、此物を幾重もつゝみて御手づから下し賜せしを、とりもあへず、顔真青になり、おぼえずなげすてゝ走れり。其公もあまりにてよしなきことせしと悔させ給ひしと也。六如上人交りことに深ければ、十二韻の哭詩并引あり。其為人トを尽せれば左に掲ぐ。 君為リ人ト冲黙謙虚。口不言ハ財利。不臧否人物。有リ温厚長者之風。少クシテ善クシ書ヲ学ビ李北海ヲ。雲麾岳麓ノ二帖其最モ所ナリ注意スル。晩年名聞ユ于海内ニ。門人以千ヲ数ゾフ。平生自奉甚ダ倹ニシテ不貯ヘ長物ヲ。性嗜ミ豆腐ヲ葷血絶ツ口ニ。信ジテ観音菅神ヲ手ヅカラ写シテ金剛孝経ヲ。朝夕誦シテ以テ祭ル之ヲ。天稟虚弱ニシテ善ク病フ。寛政壬子秋。冒シ暑ヲ得テ疾ヲ遂ニ不起。卒ル日猶写シテ数字ヲ書シ辞世ノ詩ヲ。閣イテ筆ヲ而逝ス。末句ニ曰ク。孝経一巻在リ。受用伝フト児孫ニ。余締ムスブコト交ヲ三十年。終始如シ一ノ。余不能クセ書ヲ。毎ニ一詩成ル倩フテ君ヲ写ス之ヲ。他有レバ請フ者雖モ奴僕ト欣然トシテ書シテ与ヘ之ヲ略無シ沮色。以テ余ヲ視レバ之ヲ近世平安第一等ノ人物也。昔者王履吉。温醇恬曠与ト物無シ競フコト。人擬ス之ヲ黄叔度ニ。君其レ庶幾乎。惜夫年命不永カヲ。享年才カニ五十五歳。門人建ツ碑ヲ于墓側ニ。朝貴撰ミテ文ヲ勒ス之ヲ。二子忠誠相成。忠誠嗣ギテ業ヲ不ト墜サ家声ヲ云フ。 女嫁シ男婚シ累己ニ軽ク。惟将筆研ヲ慰平生ヲ。跳竜翔鳳宵間ノ気。片紙残縑海内ノ名。厨具ヘテ黎祁屏四簋。帖蔵シテ岳麓ヲ当連城ニ。写シテ経ヲ緬慕フ魯山ノ逸。絶チテ葷潜カニ比輞水ノ清。拙句輝光煩ハシ子ガ手ヲ。佳篇黥劓索余ガ正ヲ。巨卿不負カ東西ノ約。往年余在江戸時。君約東下相訪。至期果来。以余為居停。留萬一月余。 玄度長ク尋ク風月ノ盟。毎ニ恨ハ望ミテ秋ヲ蒲柳ノ脆キコトヲ。尤モ哀フ惜ミテ日ヲ崦嵫盈ルコト。天公憒憒終ニ難シ椅ルコト。神理緜緜誰カ可キ明ラム。郢堊輟斤ヲ歎ジ暮景ヲ。鄭蕉原シテ夢ヲ対ス孤檠ニ。好児頼ニ有リ藍氷ノ在ル。隆碣仍伝フ華哀ノ栄。耆旧凋喪空シク屈ス指ヲ。巳辰運会幾傷シム情ヲ。荘然タリ三十年来ノ事。攀ヂテ樹ヲ徘徊泣ク龍螢ニ。 (君、人トナリ沖黙謙虚、口財利ヲ言ハズ、人物ヲ臧否セズ、温厚長者ノ風有リ。少クシテ書ヲ善クシ、李北海ヲ学ビ、雲麾岳麓ノニ帖其最モ注意スル所ナリ。晩年名海内ニ聞ユ。門人千ヲ以テ数フ。平生自奉甚ダ倹ニシテ長物ヲ貯ヘズ。性豆腐ヲ嗜ミ、葷血ロニ絶ツ、観音菅神ヲ信ジテ手ヅカラ金剛孝経ヲ写シテ、朝夕誦シテ以テ之ヲ祭ル。天稟虚弱ニシテ善ク病ム。寛政壬子秋、暑ヲ冒シ疾ヲ得テ遂ニ起タズ。卒ル日猶数字ヲ写シテ辞世ノ詩ヲ書シ、筆ヲ閣イテ逝ス。末句ニ曰ク、孝経一巻在、受用児孫ニ伝フト。余交ヲ締ブコト三十年、終始一ノ如シ。余書ヲ能クセズ、一詩成ル毎二君ヲ倩フテ之ヲ写ス。他請フ者有レバ奴僕ト雖モ欣然トシテ書シテ之ヲ与へ略沮色無シ。余ヲ以う之ヲ視レバ近世平安第一等ノ人物也。昔、王履吉、温醇恬曠物ト競フコト無シ、人之ヲ黄叔度ニ擬ス、君其レ庶幾カランカ。惜カナ年命永カラズ、享年才カニ五十五歳。門人碑ヲ墓側ニ建ツ。朝貴文ヲ撰ミテ之ヲ勒ス。二子忠誠相成。忠誠業ヲ嗣ギテ家声ヲ墜サズト云フ。 女嫁シ男婚シ累己ニ軽ク、惟ダ筆研ヲ将ツテ平生ヲ慰ス。跳竜翔鳳宵間ノ気、片紙残縑海内ノ名。厨黎祁ヲ具ヘテ四簋ヲ屏ケ、帖岳麓ヲ蔵シテ連城ニ当ツ。経ヲ写シテ緬慕フ魯山ノ逸、葷ヲ絶チテ潜カニ比ス輞水ノ清。拙句輝光子ガ手ヲ煩ハシ、佳篇黥劓余ガ正ヲ索ム。巨卿負カズ東西ノ約、往年余江戸ニ在ル時、君東下相訪ント約ス。期ニ至リテ果シテ来タリ、余ヲ以テ居停トナシ、留寓一月余。 玄度長ク尋グ風月ノ盟。毎ニ恨ハ秋ニ望ミテ蒲柳ノ、脆キコトヲ、尤モ哀ム日ヲ惜ミテ崦嵫の盈ルコトヲ。天公憒憒終ニ椅ルコト難シ、神理緜緜誰カ明ラムベキ。郢堊斤ヲ輟メテ暮景ヲ歎ジ、鄭蕉夢ヲ原シテ孤檠二対ス。好児頼ニ監氷ノ在ル有り、隆碣仍伝フ華袞ノ栄。耆旧凋喪空シク指ヲ屈ス、巳辰運会幾ク情ヲ傷マシム。荘然タリ三十年来ノ事、樹ヲ攀ジテ徘徊壟塋ニ泣ク。)