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人物名

人物名土肥二三 
人物名読みどひじさん 
場所越後新潟  京都  京都東山黒谷 
生年 
没年 

本文

二三は俗称土肥孫兵衛といふ。茶人花押藪に土岐といへるは誤也。 牧野侯に仕へ、禄二百石を食む。一子を失ひて、忽隠心を生じ、つかへを辞して頭おろしける時、とく聞つけて、文おこせたる人々あり。其かへりごとを、人におほせて書するに、今までの名は似つかはしからず。法師の名は何とかととふに、いなまだ名はなし。二とも三ともかけかしといふに、やかて二三と書たれば、これよき名なりとて、それにしたるなり。後都の岡崎に住て、自在軒といふ。纔に膝を容る斗也。

火宅ともしらで火宅にふらめくは直に自在の鑵子也けり

是より軒の名によびける。茶は織田の風を学び、また香をこのむ。平家をかたりて琵琶はしかも上手なりしとぞ。常におどろく斗の美服を着たりしが、あるとき古ル下駄を縄につなぎてもたるを、いかにととへば、かりし人にかへすなりといひしこともあり。物ごとに心をとゞめず、往来する所さだめなし。ふところに金弐ひらをたくはへて、其包紙に、いづこにてもたふれなん所にて、体をかくし給はれ、是は其費に充るなりと書付しは、伯倫が鋤を荷はせたるよりもかやすきしわざなり。されどすくよかなる人にて、齢九十に近づきて、足駄はきて、黒谷の茶店へ物喰にゆくこと日に三たび、三十文銭一日を過すに足るといはれしとなん。始は火けし壷といふものに米をたくはへぬるよし。それも物うく成けんかし。杜鵑と銘ある琵琶一面、平家二巻を、三河の士山田氏にあたへて、今なほ其家に蔵せりとなん。

図版