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草根集_正徹


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作品集名草根集_正徹 
作品集名読みそうこんしゅう_しょうてつ 
作成年月日文明五年七月(※1459年)
場所 
備考但し、それ以前に正徹自身の手控をもとにして、正広が編纂し終えた集が流布していた。[内閣文庫本草根抄] 

草根集 春
草根集 夏
草根集 秋
草根集 冬
草根集 恋
草根集 雑

草根集 春

00001
未入力 正徹 (xxx)

冬に先あひやとりしてくる春の霞や年の中へたつらん

ふゆにまつ−あひやとりして−くるはるの−かすみやとしの−なかへたつらむ


00002
未入力 正徹 (xxx)

ささ浪や津による舟も大伴の三の春きてかすむ冬かな

ささなみや−つによるふねも−おほともの−みつのはるきて−かすむふゆかな


00003
未入力 正徹 (xxx)

冬に立つ春の子の日の松きるも千世の年木のためしにや摘む

ふゆにたつ−はるのねのひの−まつきるも−ちよのとしきの−ためしにやつむ


00004
未入力 正徹 (xxx)

かすめ空年立ちくれは年くるるいさよひの月や春の曙

かすめそら−としたちくれは−としくるる−いさよひのつきや−はるのあけほの


00005
未入力 正徹 (xxx)

月も日も半をめくる久堅の山のみなみに春や立つらむ

つきもひも−なかはをめくる−ひさかたの−やまのみなみに−はるやたつらむ


00006
未入力 正徹 (xxx)

年のをのなかき春日の初とやいつる光ものとけかるらむ

としのをの−なかきはるひの−はしめとや−いつるひかりも−のとけかるらむ


00007
未入力 正徹 (xxx)

雪のうちに出つる日影のさしなから今日を春とやのとけかるらし

ゆきのうちに−いつるひかけの−さしなから−けふをはるとや−のとけかるらし


00008
未入力 正徹 (xxx)

かきりなくむかふる年を送りても行末遠き春や立つらん

かきりなく−むかふるとしを−おくりても−ゆくすゑとほき−はるやたつらむ


00009
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高砂の梢の風に聞ゆらし春たつこゑの住よしの松

たかさこの−こすゑのかせに−きこゆらし−はるたつこゑの−すみよしのまつ


00010
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いつくをか又ふる郷となしはてて今日は都に春のきぬらん

いつくをか−またふるさとと−なしはてて−けふはみやこに−はるのきぬらむ


00011
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今朝みれは世は久堅もあらかねも春ををさむる四方の色かな

けさみれは−よはひさかたも−あらかねも−はるををさむる−よものいろかな


00012
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立ちかへる春の日吉の影たかき山はふしのね雪もけなくに

たちかへる−はるのひよしの−かけたかき−やまはふしのね−ゆきもけなくに


00013
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年こゆる空にかそへてしらすともかすむや春のたつ日なるらん

としこゆる−そらにかそへて−しらすとも−かすむやはるの−たつひなるらむ


00014
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若菜摘むけふを待ちてや荒玉の春さへ野へに立ちわたるらん

わかなつむ−けふをまちてや−あらたまの−はるさへのへに−たちわたるらむ


00015
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八幡山はるさへ三の衣手にうつる日影やかすみ初むらむ

やはたやま−はるさへみつの−ころもてに−うつるひかけや−かすみそむらむ


00016
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雪のうちに春たつことや久かたの神代ふりにし天のかく山

ゆきのうちに−はるたつことや−ひさかたの−かみよふりにし−あまのかくやま


00017
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はつ春の初市いそく民の袖今日や霞に立ちましるらん

はつはるの−はついちいそく−たみのそて−けふやかすみに−たちましるらむ


00018
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春きぬと豊芦原に立帰り年なみこゆる四方の海かな

はるきぬと−とよあしはらに−たちかへり−としなみこゆる−よものうみかな


00019
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今朝みれは雲そ色なる天の原雪け霞みて春や立つらん

けさみれは−くもそいろなる−あまのはら−ゆきけかすみて−はるやたつらむ


00020
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末とほき世にうちはへて立ちこむる露や春のすかたなるらん

すゑとほき−よにうちはへて−たちこむる−かすみやはるの−すかたなるらむ


00021
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空にしる春の霞のはた物をたつやをとめのあまの羽衣

そらにしる−はるのかすみの−はたものを−たつやをとめの−あまのはころも


00022
未入力 正徹 (xxx)

くりかへし限しられぬ年のをのなかきをけふの春日にそみる

くりかへし−かきりしられぬ−としのをの−なかきをけふの−はるひにそみる


00023
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万代をめくりくれとも老せぬや春をつれたるけふのわか年

よろつよを−めくりくれとも−おいせぬや−はるをつれたる−けふのわかとし


00024
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かすむなりけふもろこしに日本をふりさけみてや春をしるらん

かすむなり−けふもろこしに−ひのもとを−ふりさけみてや−はるをしるらむ


00025
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来る春は神代や契り天地の中の衣をたつ霞かな

くるはるは−かみよやちきり−あめつちの−なかのころもを−たつかすみかな


00026
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よもの海春や立つらし老のなみ心のとけき御代の年かな

よものうみ−はるやたつらし−おいのなみ−こころのとけき−みよのとしかな


00027
未入力 正徹 (xxx)

明けわたる神のいかきに年越えて大宮人や春をしるらん

あけわたる−かみのいかきに−としこえて−おほみやひとや−はるをしるらむ


00028
未入力 正徹 (xxx)

うちなひき年と春とのけふしはや友なひきたる御代そのとけき

うちなひき−としとはるとの−けふしはや−ともなひきたる−みよそのとけき


00029
未入力 正徹 (xxx)

嶺こゆる霞やひなの長路より春たちのほるしるしなるらん

みねこゆる−かすみやひなの−なかちより−はるたちのほる−しるしなるらむ


00030
未入力 正徹 (xxx)

明けわたるたかまか原そ霞みくるあまくたりてや春のたつらん

あけわたる−たかまかはらそ−かすみくる−あまくたりてや−はるのたつらむ


00031
未入力 正徹 (xxx)

おしなへて霞みにけりな海山もみなわか時と春やたつらん

おしなへて−かすみにけりな−うみやまも−みなわかときと−はるやたつらむ


00032
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跡たるる北国なれはおしなへて今日神風に春や立つらむ

あとたるる−きたくになれは−おしなへて−けふかみかせに−はるやたつらむ


00033
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今朝のまにあつき氷をみなとくや春たつ風もはけしかるらん

けさのまに−あつきこほりを−みなとくや−はるたつかせも−はけしかるらむ


00034
未入力 正徹 (xxx)

天の原明くる岩戸の関越えていまた旅なる春やきぬらん

あまのはら−あくるいはとの−せきこえて−いまたたひなる−はるやきぬらむ


00035
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春にたつ浪のかさしのわたつみも今朝は霞をかけやそふらん

はるにたつ−なみのかさしの−わたつみも−けさはかすみを−かけやそふらむ


00036
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大伴の三津の白波春や立つかすみをかけて遠き浜松

おほともの−みつのしらなみ−はるやたつ−かすみをかけて−とほきはままつ


00037
未入力 正徹 (xxx)

今朝霞み山もそこらのわたつ海に浪をはふかすたてる春かな

けさかすみ−やまもそこらの−わたつうみに−なみをはふかす−たてるはるかな


00038
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此地に神のきにける初とや立かへる年も天くたるらむ

このくにに−かみのきにける−はしめとや−たちかへるとしも−あまくたるらむ


00039
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朝かすみしき津の浪に立つ春を松は昨日の住よしの霜

あさかすみ−しきつのなみに−たつはるを−まつはきのふの−すみよしのしも


00040
未入力 正徹 (xxx)

つらなれる山の霞やくる年に春立ちならふさころもの袖

つらなれる−やまのかすみや−くるとしに−はるたちならふ−さころものそて


00041
未入力 正徹 (xxx)

松たかき雪のしらゆふかすむなり神の御山に春やたつらん

まつたかき−ゆきのしらゆふ−かすむなり−かみのみやまに−はるやたつらむ


00042
未入力 正徹 (xxx)

天地のひらけし花の都より春立初めていく世なるらん

あめつちの−ひらけしはなの−みやこより−はるたちそめて−いくよなるらむ


00043
未入力 正徹 (xxx)

む月てふ世は人ことに新しきけふの衣に春やたつらん

むつきてふ−よはひとことに−あたらしき−けふのころもに−はるやたつらむ


00044
未入力 正徹 (xxx)

霞とく都はたつみのとけきや此神風に春のたつらむ

かすみとく−みやこはたつみ−のとけきや−このかみかせに−はるのたつらむ


00045
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あらかねの土はしまらぬ青海の浪の色にや春の立ちけん

あらかねの−つちはしまらぬ−あをうみの−なみのいろにや−はるのたちけむ


00046
未入力 正徹 (xxx)

七十に四方の山風かすむなり老もろともに春やたつらむ

ななそちに−よものやまかせ−かすむなり−おいもろともに−はるやたつらむ


00047
未入力 正徹 (xxx)

やはらくる光のかけに春や立つちりもかすまぬ神の国かな

やはらくる−ひかりのかけに−はるやたつ−ちりもかすまぬ−かみのくにかな


00048
未入力 正徹 (xxx)

雲風を空になひけて四方に立つ春や世をしるあるしなるらん

くもかせを−そらになひけて−よもにたつ−はるやよをしる−あるしなるらむ


00049
未入力 正徹 (xxx)

天の戸を明くるはたてる春の色に霞出つるや羽衣のそて

あまのとを−あくるはたてる−はるのいろに−かすみいてつるや−はころものそて


00050
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年こえて十日あまりの二見かた春立つ浪の後そかすめる

としこえて−とをかあまりの−ふたみかた−はるたつなみの−のちそかすめる


00051
未入力 正徹 (xxx)

家家に入りくる春をまつらめや夜ふかき庭の朝清めして

いへいへに−いりくるはるを−まつらめや−よふかきにはの−あさきよめして


00052
未入力 正徹 (xxx)

春や先たかまか原の神代にも土はしまらぬ海に立つらん

はるやまつ−たかまかはらの−かみよにも−つちはしまらぬ−うみにたつらむ


00053
未入力 正徹 (xxx)

玉そよる浪に霞をしきたへの袖しのうらの春の初風

たまそよる−なみにかすみを−しきたへの−そてしのうらの−はるのはつかせ


00054
未入力 正徹 (xxx)

さほ姫の春をふくめるいきのをや年にうちはへ霞いつらん

さほひめの−はるをふくめる−いきのをや−としにうちはへ−かすみいつらむ


00055
未入力 正徹 (xxx)

百花も弥継に見ん今朝霞み年ひらけ行く色そこもれる

ももはなも−いやつきにみむ−けさかすみ−としひらけゆく−いろそこもれる


00056
未入力 正徹 (xxx)

水も木も春立つ庭の雪氷きくに浪なしみるに花あり

みつもきも−はるたつにはの−ゆきこほり−きくになみなし−みるにはなあり


00057
未入力 正徹 (xxx)

のとかなる日影も風も春立つといはぬにしるき世の気色かな

のとかなる−ひかけもかせも−はるたつと−いはぬにしるき−よのけしきかな


00058
未入力 正徹 (xxx)

氷よりうちいつる浪の初尾花春立つ今日のまのの秋かせ

こほりより−うちいつるなみの−はつをはな−はるたつけふの−まののあきかせ


00059
未入力 正徹 (xxx)

影とめしみたらし川のをみの袖ふる年つもる春や立つらん

かけとめし−みたらしかはの−をみのそて−ふるとしつもる−はるやたつらむ


00060
未入力 正徹 (xxx)

限なき神代のむかし天地のひらけ初めしそ春のはつはな

かきりなき−かみよのむかし−あめつちの−ひらけそめしそ−はるのはつはな


00061
未入力 正徹 (xxx)

さ夜ふかく嶺にあつまる雲わかれ星のかす消え明くる年かな

さよふかく−みねにあつまる−くもわかれ−ほしのかすきえ−あくるとしかな


00062
未入力 正徹 (xxx)

冬と春と今夜行合ふ衣衣の袖と見ゆるや霞みそむらん

ふゆとはると−こよひゆきあふ−きぬきぬの−そてとみゆるや−かすみそむらむ


00063
未入力 正徹 (xxx)

くる春の光か年もあけ星を鳥のこゑさへうたふとそ聞く

くるはるの−ひかりかとしも−あけほしを−とりのこゑさへ−うたふとそきく


00064
未入力 正徹 (xxx)

氷より春立ちわたる朝川のけふりや水のかすみなるらん

こほりより−はるたちわたる−あさかはの−けふりやみつの−かすみなるらむ


00065
未入力 正徹 (xxx)

うこきなき世世の山とし高ねより春立ちのほる朝日影かな

うこきなき−よよのやまとし−たかねより−はるたちのほる−あさひかけかな


00066
未入力 正徹 (xxx)

神代にや緑を空のはしめにて立ちくる春の色となりけん

かみよにや−みとりをそらの−はしめにて−たちくるはるの−いろとなりけむ


00067
未入力 正徹 (xxx)

名にたかき天のは衣冬さえてけふや春日の影にあふらん

なにたかき−あまのはころも−ふゆさえて−けふやはるひの−かけにあふらむ


00068
未入力 正徹 (xxx)

山のはの今朝は見えぬや春立つといふにもあまる霞なるらん

やまのはの−けさはみえぬや−はるたつと−いふにもあまる−かすみなるらむ


00069
未入力 正徹 (xxx)

あふきみん今朝や霞も諸共に春たちのほる久かたの山

あふきみむ−けさやかすみも−もろともに−はるたちのほる−ひさかたのやま


00070
未入力 正徹 (xxx)

くもりなき御代の鏡か山鳥の尾上かすまぬ今朝の朝日は

くもりなき−みよのかかみか−やまとりの−をのへかすまぬ−けさのあさひは


00071
未入力 正徹 (xxx)

海山もあれにし四方の冬の空風をさまりて春や立つらむ

うみやまも−あれにしよもの−ふゆのそら−かせをさまりて−はるやたつらむ


00072
未入力 正徹 (xxx)

御笠山春たつ色に出つる日の光もなひく峰の松かせ

みかさやま−はるたついろに−いてつるひの−ひかりもなひく−みねのまつかせ


00073
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おき出てて世のこゑ聞けはのとけきや風の心に春の立つらむ

おきいてて−よのこゑきけは−のとけきや−かせのこころに−はるのたつらむ


00074
未入力 正徹 (xxx)

をさまれる国つよろつの神風にけさうちなひき春はきにけり

をさまれる−くにつよろつの−かみかせに−けさうちなひき−はるはきにけり


00075
未入力 正徹 (xxx)

天の原春立つ雰の浪こえて風のかけたるしからみもなし

あまのはら−はるたつくもの−なみこえて−かせのかけたる−しからみもなし


00076
未入力 正徹 (xxx)

敷島の道もろ共に今朝や立つ六種も春も風をはしめに

しきしまの−みちもろともに−けさやたつ−むくさもはるも−かせをはしめに


00077
未入力 正徹 (xxx)

吹きかはり春たつ道の追風に旅なる冬や遠さかるらん

ふきかはり−はるたつみちの−おひかせに−たひなるふゆや−とほさかるらむ


00078
未入力 正徹 (xxx)

吹あれし風をさまりて立つ春の山も時しる朝かすみかな

ふきあれし−かせをさまりて−たつはるの−やまもときしる−あさかすみかな


00079
未入力 正徹 (xxx)

尋来てたれくみそめん山の井を霞のつつむ春のわか水

たつねきて−たれくみそめむ−やまのゐを−かすみのつつむ−はるのわかみつ


00080
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影きよき岩まの水のひも鏡とけても春にむかふけふかな

かけきよき−いはまのみつの−ひもかかみ−とけてもはるに−むかふけふかな


00081
未入力 正徹 (xxx)

川口をとちし氷も声立てて関もる浪に春やたつらん

かはくちを−とちしこほりも−こゑたてて−せきもるなみに−はるやたつらむ


00082
未入力 正徹 (xxx)

くる春にあふ坂なから白川の関の戸あくる山の雪かな

くるはるに−あふさかなから−しらかはの−せきのとあくる−やまのゆきかな


00083
未入力 正徹 (xxx)

今朝みれはたてつつけたる門なみに松原遠き都なりけり

けさみれは−たてつつけたる−かとなみに−まつはらとほき−みやこなりけり


00084
未入力 正徹 (xxx)

海士小舟初せ川浪うち出てて氷そうかふ春のこもり江

あまをふね−はつせかはなみ−うちいてて−こほりそうかふ−はるのこもりえ


00085
未入力 正徹 (xxx)

つもりこし雪のしら山うちかすみ冬のとまりに春はきにけり

つもりこし−ゆきのしらやま−うちかすみ−ふゆのとまりに−はるはきにけり


00086
未入力 正徹 (xxx)

くる春は冬のかへりし跡しめて世はわかやとと霞をそしく

くるはるは−ふゆのかへりし−あとしめて−よはわかやとと−かすみをそしく


00087
未入力 正徹 (xxx)

さくを待つ花の都にこし春は霞のうちやすみ家なるらん

さくをまつ−はなのみやこに−こしはるは−かすみのうちや−すみかなるらむ


00088
未入力 正徹 (xxx)

天の原あふけはたかく霞む日も光ある世の春の色かな

あまのはら−あふけはたかく−かすむひも−ひかりあるよの−はるのいろかな


00089
未入力 正徹 (xxx)

けふは又後の子日の野へことに松もかすみも引きかさぬらん

けふはまた−のちのねのひの−のへことに−まつもかすみも−ひきかさぬらむ


00090
未入力 正徹 (xxx)

古年の涙のつららとけしより袖行く水のたゆる日もなし

ふるとしの−なみたのつらら−とけしより−そてゆくみつの−たゆるひもなし


00091
未入力 正徹 (xxx)

神のます山の南の宮柱春たちめくりかすむ空かな

かみのます−やまのみなみの−みやはしら−はるたちめくり−かすむそらかな


00092
未入力 正徹 (xxx)

いもせ山春の霞の衣たに中にあらすは年もへたてし

いもせやま−はるのかすみの−ころもたに−なかにあらすは−としもへたてし


00093
未入力 正徹 (xxx)

曇りくる霞の下の雪こほりかたへ冬なる春の山川

くもりくる−かすみのしたの−ゆきこほり−かたへふゆなる−はるのやまかは


00094
未入力 正徹 (xxx)

雪のうちにたた年はかりくる春を待かね山はかすむともなし

ゆきのうちに−たたとしはかり−くるはるを−まちかねやまは−かすむともなし


00095
未入力 正徹 (xxx)

天つ空春の霞もこほれるや打出つる雲の浪たたぬまて

あまつそら−はるのかすみも−こほれるや−うちいつるくもの−なみたたぬまて


00096
未入力 正徹 (xxx)

ましはれる神や染めなす紅の塵にかすめる世は春にして

ましはれる−かみやそめなす−くれなゐの−ちりにかすめる−よははるにして


00097
未入力 正徹 (xxx)

晴れくもり春はくらせる日のうちにさえみのとけみ影かはるなり

はれくもり−はるはくらせる−ひのうちに−さえみのとけみ−かけかはるなり


00098
未入力 正徹 (xxx)

のとけしや霞の光さして行く山より山の春の初かせ

のとけしや−かすみのひかり−さしてゆく−やまよりやまの−はるのはつかせ


00099
未入力 正徹 (xxx)

いかにして七十あまり七種を身につむ年の春にあふらん

いかにして−ななそちあまり−ななくさを−みにつむとしの−はるにあふらむ


00100
未入力 正徹 (xxx)

よもの海に立つ月の名もむつましと君はしら浪こゆる年かな

よものうみに−たつつきのなも−むつましと−きみはしらなみ−こゆるとしかな


00101
未入力 正徹 (xxx)

比はまた春の日なからなかからて雪けにかすむ風そ寒けき

ころはまた−はるのひなから−なかからて−ゆきけにかすむ−かせそさむけき


00102
未入力 正徹 (xxx)

鳥のこゑ霞の色もいちしるし春となつけそ嶺の松風

とりのこゑ−かすみのいろも−いちしるし−はるとなつけそ−みねのまつかせ


00103
未入力 正徹 (xxx)

かつきえし山の嵐も又さえて霞も雪も春のむらたち

かつきえし−やまのあらしも−またさえて−かすみもゆきも−はるのむらたち


00104
未入力 正徹 (xxx)

嵐さえて雪はふれれと古年におもひくらへよ春はきにけり

あらしさえて−ゆきはふれれと−ふるとしに−おもひくらへよ−はるはきにけり


00105
未入力 正徹 (xxx)

春のきる衣をさむみ重ぬらん霞のひもをとくあらしかな

はるのきる−ころもをさむみ−かさぬらむ−かすみのひもを−とくあらしかな


00106
未入力 正徹 (xxx)

春のきるよもの霞のうす衣今朝より夏のおもかけそ立つ

はるのきる−よものかすみの−うすころも−けさよりなつの−おもかけそたつ


00107
未入力 正徹 (xxx)

九重や時にあへりと住む人の心の花も春や来ぬらむ

ここのへや−ときにあへりと−すむひとの−こころのはなも−はるやきぬらむ


00108
未入力 正徹 (xxx)

白川の関の秋霧吹きのほり宮こにかすむ春のはつかせ

しらかはの−せきのあききり−ふきのほり−みやこにかすむ−はるのはつかせ


00109
未入力 正徹 (xxx)

さきいつる心の花の宮こ鳥とりさたまらぬ春の初風

さきいつる−こころのはなの−みやことり−とりさたまらぬ−はるのはつかせ


00110
未入力 正徹 (xxx)

花やとき霞の衣梅かかに袖ふれそむる春は来にけり

はなやとき−かすみのころも−うめかかに−そてふれそむる−はるはきにけり


00111
未入力 正徹 (xxx)

去年の三月たな引きつれて帰りしや今年の春に霞みきぬらん

こそのやよひ−たなひきつれて−かへりしや−ことしのはるに−かすみきぬらむ


00112
未入力 正徹 (xxx)

朝あけの山のこなたに春のきてたてるすかたや霞なるらん

あさあけの−やまのこなたに−はるのきて−たてるすかたや−かすみなるらむ


00113
未入力 正徹 (xxx)

色かへぬ霞や天のかく山に去年ほしかけし衣なるらむ

いろかへぬ−かすみやあまの−かくやまに−こそほしかけし−ころもなるらむ


00114
未入力 正徹 (xxx)

春やきる織女もしらし朝明のうすき霞の天のはころも

はるやきる−おりめもしらし−あさあけの−うすきかすみの−あまのはころも


00115
未入力 正徹 (xxx)

はるのきるしのふにすれる袖もなし限しられす世はかすめとも

はるのきる−しのふにすれる−そてもなし−かきりしられす−よはかすめとも


00116
未入力 正徹 (xxx)

しからきや外山の正木くる春の霞と共に綱手引くなり

しからきや−とやまのまさき−くるはるの−かすみとともに−つなてひくなり


00117
未入力 正徹 (xxx)

踏みわけて春来にけりとたか里に太山の雪の春のむら消

ふみわけて−はるきにけりと−たかさとに−みやまのゆきの−はるのむらきえ


00118
未入力 正徹 (xxx)

あさ衣かたへ寒けき山風に雪も霞も春の村きえ

あさころも−かたへさむけき−やまかせに−ゆきもかすみも−はるのむらきえ


00119
未入力 正徹 (xxx)

霜にさへ緑さかふる松かえに春あらはるる雪の村きえ

しもにさへ−みとりさかふる−まつかえに−はるあらはるる−ゆきのむらきえ


00120
未入力 正徹 (xxx)

あら玉の春の光を降る雪に敷島山はかすむともなし

あらたまの−はるのひかりを−ふるゆきに−しきしまやまは−かすむともなし


00121
未入力 正徹 (xxx)

松風も春をよろこふしらへにて雪をめくらす雲の袖かな

まつかせも−はるをよろこふ−しらへにて−ゆきをめくらす−くものそてかな


00122
未入力 正徹 (xxx)

けさそとふ冬の高ねにつもりしはふりて友まつ若年の雪

けさそとふ−ふゆのたかねに−つもりしは−ふりてともまつ−わかとしのゆき


00123
未入力 正徹 (xxx)

冬の色の猶つれなきをもらさしと霞みこめたる山の白雪

ふゆのいろの−なほつれなきを−もらさしと−かすみこめたる−やまのしらゆき


00124
未入力 正徹 (xxx)

春のきるみのしろ衣広くたつかすみにたまる山の白雪

はるのきる−みのしろころも−ひろくたつ−かすみにたまる−やまのしらゆき


00125
未入力 正徹 (xxx)

かねてより豊の年ある雪氷くる春あつきめくみをそしる

かねてより−とよのとしある−ゆきこほり−くるはるあつき−めくみをそしる


00126
未入力 正徹 (xxx)

春日影水なき空のこほりをもとくや草木におつる朝露

はるひかけ−みつなきそらの−こほりをも−とくやくさきに−おつるあさつゆ


00127
未入力 正徹 (xxx)

谷ふかみ古巣を冬になしはてて春の日かけにいつる鴬

たにふかみ−ふるすをふゆに−なしはてて−はるのひかけに−いつるうくひす


00128
未入力 正徹 (xxx)

春きても太山の松の雪に鳴く鴬さそへ野への梅か枝

はるきても−みやまのまつの−ゆきになく−うくひすさそへ−のへのうめかえ


00129
未入力 正徹 (xxx)

おも影そけふもかはらぬ天の原ふりにし年の春やたつらん

おもかけそ−けふもかはらぬ−あまのはら−ふりにしとしの−はるやたつらむ


00130
未入力 正徹 (xxx)

久堅の天の岩戸をあけし世も出つる日影にしるき春かな

ひさかたの−あまのいはとを−あけしよも−いつるひかけに−しるきはるかな


00131
未入力 正徹 (xxx)

いつる日も光のとけき久かたの天の宮人春をしるらし

いつるひも−ひかりのとけき−ひさかたの−あまのみやひと−はるをしるらし


00132
未入力 正徹 (xxx)

山はまたかすまぬ宮も降りかねて嵐のまへにこほる雲かな

やまはまた−かすまぬみやも−ふりかねて−あらしのまへに−こほるくもかな


00133
未入力 正徹 (xxx)

おしなへてかすむや雪け大空をわたる春日の影の寒けさ

おしなへて−かすむやゆきけ−おほそらを−わたるはるひの−かけのさむけさ


00134
未入力 正徹 (xxx)

吹くままに年そ明行く久かたの天の岩戸の関の春かせ

ふくままに−としそあけゆく−ひさかたの−あまのいはとの−せきのはるかせ


00135
未入力 正徹 (xxx)

くみそめて末をそおもふあら玉の春をむかふる宿の若水

くみそめて−すゑをそおもふ−あらたまの−はるをむかふる−やとのわかみつ


00136
未入力 正徹 (xxx)

年毎にあらぬ姿そあはれてふ老の影見よ春の若水

としことに−あらぬすかたそ−あはれてふ−おいのかけみよ−はるのわかみつ


00137
未入力 正徹 (xxx)

紙屋川今朝うちとけて水そ行く氷や神の心なるらん

かみやかは−けさうちとけて−みつそゆく−こほりやかみの−こころなるらむ


00138
未入力 正徹 (xxx)

初せ川氷なかれて岩ほうつこゑさへ鐘にたくふ春かな

はつせかは−こほりなかれて−いはほうつ−こゑさへかねに−たくふはるかな


00139
未入力 正徹 (xxx)

うしと見し春もめわたる鳥辺山もえし煙や霞みきぬらん

うしとみし−はるもめわたる−とりへやま−もえしけふりや−かすみきぬらむ


00140
未入力 正徹 (xxx)

滝の上にいそく御舟の山かつらまほにかけてや春のきぬらん

たきのうへに−いそくみふねの−やまかつら−まほにかけてや−はるのきぬらむ


00141
未入力 正徹 (xxx)

都まて春や立つらむ朝目影かかれる西の山そかすまぬ

みやこまて−はるやたつらむ−あさひかけ−かかれるにしの−やまそかすまぬ


00142
未入力 正徹 (xxx)

霞立つ春さへいまた旅にして衣や寒きむこの山かせ

かすみたつ−はるさへいまた−たひにして−ころもやさむき−むこのやまかせ


00143
未入力 正徹 (xxx)

ことうらの海士やはしらん此花の匂ふ難波の春の初を

ことうらの−あまやはしらむ−このはなの−にほふなにはの−はるのはしめを


00144
未入力 正徹 (xxx)

時をうる空もひとつに春の色の青うなはらそいととかすめる

ときをうる−そらもひとつに−はるのいろの−あをうなはらそ−いととかすめる


00145
未入力 正徹 (xxx)

春のきる衣霞の下風に山もしのふのおくそみたるる

はるのきる−ころもかすみの−したかせに−やまもしのふの−おくそみたるる


00146
未入力 正徹 (xxx)

おしなへてかすめるよりも天の原すめるを春の色そのとけき

おしなへて−かすめるよりも−あまのはら−すめるをはるの−いろそのとけき


00147
未入力 正徹 (xxx)

玉津島や春たつはまの真砂山つきせす遠くかすむ浪かな

たまつしまや−はるたつはまの−まさこやま−つきせすとほく−かすむなみかな


00148
未入力 正徹 (xxx)

君かへん千世の年のをくりかへし又はしになる春はきにけり

きみかへむ−ちよのとしのを−くりかへし−またはしになる−はるはきにけり


00149
未入力 正徹 (xxx)

夜の程にかへりし冬の春ならは名をあらためて年やきぬらん

よのほとに−かへりしふゆの−はるならは−なをあらためて−としやきぬらむ


00150
未入力 正徹 (xxx)

住吉のはまの真砂をみかく日も光春なる玉津島山

すみよしの−はまのまさこを−みかくひも−ひかりはるなる−たまつしまやま


00151
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みとりそふ松も千世まて限なき霞そ春に色はちきれる

みとりそふ−まつもちよまて−かきりなき−かすみそはるに−いろはちきれる


00152
未入力 正徹 (xxx)

いはふなり老いてもさらに七十は逢ひかたき春にあへるけふとて

いはふなり−おいてもさらに−ななそちは−あひかたきはるに−あへるけふとて


00153
未入力 正徹 (xxx)

立初めし日かすのままにふる年のこゆれはやかて春そたけ行く

たちそめし−ひかすのままに−ふるとしの−こゆれはやかて−はるそたけゆく


00154
未入力 正徹 (xxx)

山の名の千年の坂をけふ越えて行すゑとほくかすむ春かな

やまのなの−ちとせのさかを−けふこえて−ゆくすゑとほく−かすむはるかな


00155
未入力 正徹 (xxx)

大ひえやむかしの杣木こゑかすみいまも高ねに春風そふく

おほひえや−むかしのそまき−こゑかすみ−いまもたかねに−はるかせそふく


00156
未入力 正徹 (xxx)

年こえてとへは五十日そ春としる待遠ならし初桜はな

としこえて−とへはいそかそ−はるとしる−まちとほならし−はつさくらはな


00157
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くる春をやかてしめちか原の草もゆるみとりそ松にまされる

くるはるを−やかてしめちか−はらのくさ−もゆるみとりそ−まつにまされる


00158
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冬の色を春の霞の衣たに中にあらすは猶や逢見ん

ふゆのいろを−はるのかすみの−ころもたに−なかにあらすは−なほやあひみむ


00159
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つつきつる子日若菜も時過きていとと春なる永き日くらし

つつきつる−ねのひわかなも−ときすきて−いととはるなる−なかきひくらし


00160
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塩かまの浦のひかたの朝曇けふりなからや霞みそむらむ

しほかまの−うらのひかたの−あさくもり−けふりなからや−かすみそむらむ


00161
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榊葉になひく霞のあをにきてかけて春しる天のかく山

さかきはに−なひくかすみの−あをにきて−かけてはるしる−あまのかくやま


00162
未入力 正徹 (xxx)

春の浪ちかのうらわや遠からん老のみるめは霞みそめつつ

はるのなみ−ちかのうらわや−とほからむ−おいのみるめは−かすみそめつつ


00163
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賀茂山や朽ちしいつきの宮柱たてるは春のかすみなりけり

かもやまや−くちしいつきの−みやはしら−たてるははるの−かすみなりけり


00164
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山川や春せく瀬瀬の氷よりうちいつる浪そ音にかへれる

やまかはや−はるせくせせの−こほりより−うちいつるなみそ−おとにかへれる


00165
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あさ氷岩にくたけて行くこゑやいすすふる世の春の川波

あさこほり−いはにくたけて−ゆくこゑや−いすすふるよの−はるのかはなみ


00166
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長閑なる若のうら人立ちつつけ霞も浪も春はしるなり

のとかなる−わかのうらひと−たちつつけ−かすみもなみも−はるはしるなり


00167
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うちきえしさゆる日おほき山風に霞きえては淡雪そふる

うちきえし−さゆるひおほき−やまかせに−かすみきえては−あはゆきそふる


00168
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あさ明の山のかひより一むらの霞や春に立ちならふらむ

あさあけの−やまのかひより−ひとむらの−かすみやはるに−たちならふらむ


00169
未入力 正徹 (xxx)

今年なほ御代のとかにともろ人の心のそろふ春やきぬらん

ことしなほ−みよのとかにと−もろひとの−こころのそろふ−はるやきぬらむ


00170
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山人のもとつ葉とりしゆつりはの三春かけてやかすみ初むらむ

やまひとの−もとつはとりし−ゆつりはの−みはるかけてや−かすみそむらむ


00171
未入力 正徹 (xxx)

日影さす霞の衣かく山の天きる雪もぬれてほすらし

ひかけさす−かすみのころも−かくやまの−あまきるゆきも−ぬれてほすらし


00172
未入力 正徹 (xxx)

あさなあさなかすむ入江の玉津島やかてや春の光そふらむ

あさなあさな−かすむいりえの−たまつしま−やかてやはるの−ひかりそふらむ


00173
未入力 正徹 (xxx)

霞たつ春の衣のしたかさねかさねて山はつもる雪かな

かすみたつ−はるのころもの−したかさね−かさねてやまは−つもるゆきかな


00174
未入力 正徹 (xxx)

浪の上松にもみゆる春の色の青きか原や霞みそむらん

なみのうへ−まつにもみゆる−はるのいろの−あをきかはらや−かすみそむらむ


00175
未入力 正徹 (xxx)

くる春は日数はかりをしるへにてかすみなれたる山の色かな

くるはるは−ひかすはかりを−しるへにて−かすみなれたる−やまのいろかな


00176
未入力 正徹 (xxx)

古き世の春にそ似たる朝ほらけいつれの年の霞なるらん

ふるきよの−はるにそにたる−あさほらけ−いつれのとしの−かすみなるらむ


00177
未入力 正徹 (xxx)

春日さす山は雪けのしつくよりたてる煙やかすみ初むらん

はるひさす−やまはゆきけの−しつくより−たてるけふりや−かすみそむらむ


00178
未入力 正徹 (xxx)

をとめ子かたえぬ霞の袖ふるや名におふ山の春のさ衣

をとめこか−たえぬかすみの−そてふるや−なにおふやまの−はるのさころも


00179
未入力 正徹 (xxx)

春のくる雲路さやかに明けてけり霞や天の岩戸なるらん

はるのくる−くもちさやかに−あけてけり−かすみやあまの−いはとなるらむ


00180
未入力 正徹 (xxx)

年もまた若のうら風吹きみかけ霞のおくの春のたま松

としもまた−わかのうらかせ−ふきみかけ−かすみのおくの−はるのたままつ


00181
未入力 正徹 (xxx)

明けそ行く山はかすみを立ちきても衣やうすき春の夜のしも

あけそゆく−やまはかすみを−たちきても−ころもやうすき−はるのよのしも


00182
未入力 正徹 (xxx)

春日さす天つ空より露そちる霞の袖も氷とくらし

はるひさす−あまつそらより−つゆそちる−かすみのそても−こほりとくらし


00183
未入力 正徹 (xxx)

深山よりたなひき出てて世にそみつ去年の霞や冬こもるらん

みやまより−たなひきいてて−よにそみつ−こそのかすみや−ふゆこもるらむ


00184
未入力 正徹 (xxx)

あら玉の春に霞も立ちそひて山路こゆるやくもりきぬらん

あらたまの−はるにかすみも−たちそひて−やまちこゆるや−くもりきぬらむ


00185
未入力 正徹 (xxx)

春のうらの霞の網の糸すちもほそきやいまたくもらさるらん

はるのうらの−かすみのあみの−いとすちも−ほそきやいまた−くもらさるらむ


00186
未入力 正徹 (xxx)

難波津もおなし霞に氷とく春のあさかの山の井の水

なにはつも−おなしかすみに−こほりとく−はるのあさかの−やまのゐのみつ


00187
未入力 正徹 (xxx)

雪きゆる南の山の松風やちかき軒はの霞とくらん

ゆききゆる−みなみのやまの−まつかせや−ちかきのきはの−かすみとくらむ


00188
未入力 正徹 (xxx)

嵐ふく霞のみをそさかのほるなかれそむらん花の日数に

あらしふく−かすみのみをそ−さかのはる−なかれそむらむ−はなのひかすに


00189
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真木の戸をあくる夜ことに古年の夢路へたててかすむ春かな

まきのとを−あくるよことに−ふるとしの−ゆめちへたてて−かすむはるかな


00190
未入力 正徹 (xxx)

泊瀬山霞をしのきくる春も岩ほの雪にあとやつくらん

はつせやま−かすみをしのき−くるはるも−いはほのゆきに−あとやつくらむ


00191
未入力 正徹 (xxx)

千世の春をやかて見するや軒近き松にたな引く霞なるらん

ちよのはるを−やかてみするや−のきちかき−まつにたなひく−かすみなるらむ


00192
未入力 正徹 (xxx)

山そ先みとりにかすむ有間すけなかしとまてはしらぬ春日に

やまそまつ−みとりにかすむ−ありますけ−なかしとまては−しらぬはるひに


00193
未入力 正徹 (xxx)

消えやらて去年の霞や立出つる見し色かへぬはつ春の山

きえやらて−こそのかすみや−たちいつる−みしいろかへぬ−はつはるのやま


00194
未入力 正徹 (xxx)

わたつうみのかさしの霞ちる玉も春立つ浪のあらき浜かせ

わたつうみの−かさしのかすみ−ちるたまも−はるたつなみの−あらきはまかせ


00195
未入力 正徹 (xxx)

四方にくる春の心の色こきやふかくかすめる所なるらん

よもにくる−はるのこころの−いろこきや−ふかくかすめる−ところなるらむ


00196
未入力 正徹 (xxx)

さほ姫のかすみのうちの海山や春のあやおる衣なるらん

さほひめの−かすみのうちの−うみやまや−はるのあやおる−ころもなるらむ


00197
未入力 正徹 (xxx)

霞しく日影を寒み棹姫の袖ももすそも雪にぬれつつ

かすみしく−ひかけをさむみ−さほひめの−そてももすそも−ゆきにぬれつつ


00198
未入力 正徹 (xxx)

敷島の道の春風霞みきてたかことのはも色そ添行く

しきしまの−みちのはるかせ−かすみきて−たかことのはも−いろそそひゆく


00199
未入力 正徹 (xxx)

山はみな春の霞に鳥のこゑ宮この花はむめかかそする

やまはみな−はるのかすみに−とりのこゑ−みやこのはなは−うめかかそする


00200
未入力 正徹 (xxx)

としきてもむ月の月の弓張にたつ春しるく川霞を

としきても−むつきのつきの−ゆみはりに−たつはるしるく−хххかすみを


00201
未入力 正徹 (xxx)

春のきる衣の色のあさ妻や浪におりはへ霞立つらむ

はるのきる−ころものいろの−あさつまや−なみにおりはへ−かすみたつらむ


00202
未入力 正徹 (xxx)

滝川の水の心もとけてけりこほるいもせの山の下ひも

たきかはの−みつのこころも−とけてけり−こほるいもせの−やまのしたひも


00203
未入力 正徹 (xxx)

年きても春をはらめるおもひかな氷のうちにこもるわか水

としきても−はるをはらめる−おもひかな−こほりのうちに−こもるわかみつ


00204
未入力 正徹 (xxx)

朝日さす嶺の雪消や山川のこほりの上の水の白浪

あさひさす−みねのゆきけや−やまかはの−こほりのうへの−みつのしらなみ


00205
未入力 正徹 (xxx)

高ねよりくもるを春の霞ともわかぬ光につもるしら雪

たかねより−くもるをはるの−かすみとも−わかぬひかりに−つもるしらゆき


00206
未入力 正徹 (xxx)

くる春の光そ見えぬ空もまた雪けにかすむ霞はかりは

くるはるの−ひかりそみえぬ−そらもまた−ゆきけにかすむ−かすみはかりは


00207
未入力 正徹 (xxx)

月と日とめくる所となり初めて空もいく世の春にあふらん

つきとひと−めくるところと−なりそめて−そらもいくよの−はるにあふらむ


00208
未入力 正徹 (xxx)

神代かもかすむもすめる天の原春の雪けの池そにこれる

かみよかも−かすむもすめる−あまのはら−はるのゆきけの−いけそにこれる


00209
未入力 正徹 (xxx)

春をしるこれそ一花久かたの天ひらけ行く夜はのしののめ

はるをしる−これそひとはな−ひさかたの−そらひらけゆく−よはのしののめ


00210
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曇なき鏡なりけり山鳥の尾上の松にかかるはる日は

くもりなき−かかみなりけり−やまとりの−をのへのまつに−かかるはるひは


00211
未入力 正徹 (xxx)

山のはの影を霞につつみても朝日うらこき春の衣手

やまのはの−かけをかすみに−つつみても−あさひうらこき−はるのころもて


00212
未入力 正徹 (xxx)

春のくる山のかひより吹く風にかすみなかれてこほる川浪

はるのくる−やまのかひより−ふくかせに−かすみなかれて−こほるかはなみ


00213
未入力 正徹 (xxx)

薄煙はるの霞をもよほして松をこめたる塩かまの浦

うすけふり−はるのかすみを−もよほして−まつをこめたる−しほかまのうら


00214
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くる春のたかねの松に明行くを千世の初と誰かみさらん

くるはるの−たかねのまつに−あけゆくを−ちよのはしめと−たれかみさらむ


00215
未入力 正徹 (xxx)

野も山も霞を春の古巣とや又鴬のこゑこもるらん

のもやまも−かすみをはるの−ふるすとや−またうくひすの−こゑこもるらむ


00216
未入力 正徹 (xxx)

世は春と霞も空に立つ鶴のは風のとかにわたる日の影

よははると−かすみもそらに−たつつるの−はかせのとかに−わたるひのかけ


00217
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水わかくなりぬる年に浪のしわのふるやにほのうら風もなし

みつわかく−なりぬるとしに−なみのしわ−のふるやにほの−うらかせもなし


00218
未入力 正徹 (xxx)

氷とく袖の春風やはらかにぬる夜はしるや貫川のなみ

こほりとく−そてのはるかせ−やはらかに−ぬるよはしるや−ぬきかはのなみ


00219
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夜や寒き春は雪まの松にきて風のやとりにこもる声かな

よやさむき−はるはゆきまの−まつにきて−かせのやとりに−こもるこゑかな


00220
未入力 正徹 (xxx)

吹く風は音にもききて猶そしるめにみぬ春は立つ名のみして

ふくかせは−おとにもききて−なほそしる−めにみぬはるは−たつなのみして


00221
未入力 正徹 (xxx)

東おり氷ときもてくる風や宮この川にあさわたるらん

あつまより−こほりときもて−くるかせや−みやこのかはに−あさわたるらむ


00222
未入力 正徹 (xxx)

さかふへき色こそ見ゆれもろ人のことのはことや春の若草

さかふへき−いろこそみゆれ−もろひとの−ことのはことや−はるのわかくさ


00223
未入力 正徹 (xxx)

誰もみな新桑ならぬまゆひらけくる年のをも手にはかからし

たれもみな−にひくはならぬ−まゆひらけ−くるとしのをも−てにはかからし


00224
未入力 正徹 (xxx)

此春はほしやをしやの人心うすく成りゆけ国そさかへん

このはるは−ほしやをしやの−ひとこころ−うすくなりゆけ−くにそさかへむ


00225
未入力 正徹 (xxx)

結ひこし契も久しよろつ度春をむかへん法のわか水

むすひこし−ちきりもひさし−よろつたひ−はるをむかへむ−のりのわかみつ


00226
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松か枝に弥年のはの数そへて千世にもあまる御代の春かな

まつかえに−いやとしのはの−かすそへて−ちよにもあまる−みよのはるかな


00227
未入力 正徹 (xxx)

春といへとことそともなき朝かな世にもつかへすよをも渡らす

はるといへと−ことそともなき−あしたかな−よにもつかへす−よをもわたらす


00228
未入力 正徹 (xxx)

風さゆる春の霞のたちとたに猶さためなきよもの浮雲

かせさゆる−はるのかすみの−たちとたに−なほさためなき−よものうきくも


00229
未入力 正徹 (xxx)

八十島や興つしほせの春霞立ちものこらぬ浪のうへかな

やそしまや−おきつしほせの−はるかすみ−たちものこらぬ−なみのうへかな


00230
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おき出てし夜ふかき鐘のかすみつつ声より色に明くる山かな

おきいてし−よふかきかねの−かすみつつ−こゑよりいろに−あくるやまかな


00231
未入力 正徹 (xxx)

かすむより緑をそへて敷島の大和にもあらぬから崎の松

かすむより−みとりをそへて−しきしまの−やまとにもあらぬ−からさきのまつ


00232
未入力 正徹 (xxx)

春寒み霞をかれるあま衣いかかしか津のうら風そふく

はるさむみ−かすみをかれる−あまころも−いかかしかつの−うらかせそふく


00233
未入力 正徹 (xxx)

すまのあまのうら風なからなれぬとや霞の衣まとほなるらん

すまのあまの−うらかせなから−なれぬとや−かすみのころも−まとほなるらむ


00234
未入力 正徹 (xxx)

明けわたる空もみとりの色こきや春のかすみのしるしなるらん

あけわたる−そらもみとりの−いろこきや−はるのかすみの−しるしなるらむ


00235
未入力 正徹 (xxx)

夜をこめてかすめる天のとのくもりやかてへたてす明くる春かな

よをこめて−かすめるそらの−とのくもり−やかてへたてす−あくるはるかな


00236
未入力 正徹 (xxx)

へたつとて春のかくるるかたもなしかすむそいととあらはなりける

へたつとて−はるのかくるる−かたもなし−かすむそいとと−あらはなりける


00237
未入力 正徹 (xxx)

石見かた明くれはこれそ筆の海する墨うすくかすむ浪かな

いはみかた−あくれはこれそ−ふてのうみ−するすみうすく−かすむなみかな


00238
未入力 正徹 (xxx)

都より先色みえて秋津すの海山とほくかすむ春かな

みやこより−まついろみえて−あきつすの−うみやまとほく−かすむはるかな


00239
未入力 正徹 (xxx)

松たてる嶺をほのかにのこしてそ空まて高き霞をもしる

まつたてる−みねをほのかに−のこしてそ−そらまてたかき−かすみをもしる


00240
未入力 正徹 (xxx)

みとりなる色をかさねて筑波根の陰よりしけく霞む春かな

みとりなる−いろをかさねて−つくはねの−かけよりしけく−かすむはるかな


00241
未入力 正徹 (xxx)

天の戸を出てし神代の常暗や春のかすみに晴れのこるらむ

あまのとを−いてしかみよの−とこやみや−はるのかすみに−はれのこるらむ


00242
未入力 正徹 (xxx)

さえわたる朝けの霞むら消えて雪まもよほす春の山風

さえわたる−あさけのかすみ−むらきえて−ゆきまもよほす−はるのやまかせ


00243
未入力 正徹 (xxx)

くる春の霞も山をかくせはや去年の雪まを又埋むらん

くるはるの−かすみもやまを−かくせはや−こそのゆきまを−またうつむらむ


00244
未入力 正徹 (xxx)

たえまなくたなひく春の霞かなひとつの袖や世におほふらん

たえまなく−たなひくはるの−かすみかな−ひとつのそてや−よにおほふらむ


00245
未入力 正徹 (xxx)

春をへてかすむ塩干の王津島松にいく世の年ひろふらん

はるをへて−かすむしほひの−たまつしま−まつにいくよの−としひろふらむ


00246
未入力 正徹 (xxx)

雲うつむ山の霞の下風に春日色こき野へのわか草

くもうつむ−やまのかすみの−したかせに−はるひいろこき−のへのわかくさ


00247
未入力 正徹 (xxx)

春日よき雲井のたつを芹川の霞にすれるかり衣かな

はるひよき−くもゐのたつを−せりかはの−かすみにすれる−かりころもかな


00248
未入力 正徹 (xxx)

山姫のときあらひ衣かけほすや日影にかすむ棹の川岸

やまひめの−ときあらひきぬ−かけほすや−ひかけにかすむ−さをのかはきし


00249
未入力 正徹 (xxx)

川上の霞のみをにまほかけてうかふ三室の山かつらせり

かはかみの−かすみのみをに−まほかけて−うかふみむろの−やまかつらせり


00250
未入力 正徹 (xxx)

浪に引くかすみの網のうら人のほすとしもなき春日をそみる

なみにひく−かすみのあみの−うらひとの−ほすとしもなき−はるひをそみる


00251
未入力 正徹 (xxx)

あさ霞しつはた山は花鳥の色に綾おる春のさころも

あさかすみ−しつはたやまは−はなとりの−いろにあやおる−はるのさころも


00252
未入力 正徹 (xxx)

鳥のこゑかすめる滝の音羽川おき出ててみれは山のはもなし

とりのこゑ−かすめるたきの−おとはかは−おきいててみれは−やまのはもなし


00253
未入力 正徹 (xxx)

雪きえし敏の衣ほしはてて春日とさらす天のかく山

ゆききえし−かすみのころも−ほしはてて−はるひとさらす−あまのかくやま


00254
未入力 正徹 (xxx)

世にまよふ春の霞やへたてある人の心となりはしめけん

よにまよふ−はるのかすみや−へたてある−ひとのこころと−なりはしめけむ


00255
未入力 正徹 (xxx)

世世を引くこれもきつなか野山にも春は霞の思ひはなれぬ

よよをひく−これもきつなか−のやまにも−はるはかすみの−おもひはなれぬ


00256
未入力 正徹 (xxx)

日もなかし道行人のこゑもせす霞にうとき遠近のさと

ひもなかし−みちゆくひとの−こゑもせす−かすみにうとき−をちこちのさと


00257
未入力 正徹 (xxx)

かすめともありとしられて高砂の尾上の松に春風そ吹く

かすめとも−ありとしられて−たかさこの−をのへのまつに−はるかせそふく


00258
未入力 正徹 (xxx)

棹姫のたつや霞の衣手に山下風吹きてさゆる春かな

さほひめの−たつやかすみの−ころもてに−やまおろしふきて−さゆるはるかな


00259
未入力 正徹 (xxx)

氷とく山下水にたつ煙のほるもかすむ朝日影かな

こほりとく−やましたみつに−たつけふり−のほるもかすむ−あさひかけかな


00260
未入力 正徹 (xxx)

天の戸を明かたかけて芦引の山よりたかくかすむ春かな

あまのとを−あけかたかけて−あしひきの−やまよりたかく−かすむはるかな


00261
未入力 正徹 (xxx)

世世をへし年のをしほの山かつらなかき日かけてかすむ春かな

よよをへし−としのをしほの−やまかつら−なかきひかけて−かすむはるかな


00262
未入力 正徹 (xxx)

よもに見し山遠さかり九重の都をひろく立つかすみかな

よもにみし−やまとほさかり−ここのへの−みやこをひろく−たつかすみかな


00263
未入力 正徹 (xxx)

名そのこる煙を山の霞とも誰みよしのの春の里人

なそのこる−けふりをやまの−かすみとも−たれみよしのの−はるのさとひと


00264
未入力 正徹 (xxx)

浜ゆふやうら浪たかく春かけて百重かすめるき路の遠山

はまゆふや−うらなみたかく−はるかけて−ももへかすめる−きちのとほやま


00265
未入力 正徹 (xxx)

春の色にいつる朝日のうす曇光そにほふ遠近の山

はるのいろに−いつるあさひの−うすくもり−ひかりそにほふ−をちこちのやま


00266
未入力 正徹 (xxx)

朝みとりかさす袖とも霞むかなこや春のきる衣笠の山

あさみとり−かさすそてとも−かすむかな−こやはるのきる−きぬかさのやま


00267
未入力 正徹 (xxx)

山姫の春の衣のあさつまをかさねて浪にたつ霞かな

やまひめの−はるのころもの−あさつまを−かさねてなみに−たつかすみかな


00268
未入力 正徹 (xxx)

なほさえて霞かさねぬ山風に衣やうすき春の杣人

なほさえて−かすみかさねぬ−やまかせに−ころもやうすき−はるのそまひと


00269
未入力 正徹 (xxx)

春きても都の山のかすむ日はまれのみ雪にさゆる空かな

はるきても−みやこのやまの−かすむひは−まれのみゆきに−さゆるそらかな


00270
未入力 正徹 (xxx)

いふき山もゆる煙に立ちなれてさしもかすまぬ春の色かな

いふきやま−もゆるけふりに−たちなれて−さしもかすまぬ−はるのいろかな


00271
未入力 正徹 (xxx)

朝ほらけしくや霞にのこるなり大和島ねの春のむら山

あさほらけ−しくやかすみに−のこるなり−やまとしまねの−はるのむらやま


00272
未入力 正徹 (xxx)

春や猶わしの高ねをしたひきて法の莚を霞敷くらん

はるやなほ−わしのたかねを−したひきて−のりのむしろを−かすみしくらむ


00273
未入力 正徹 (xxx)

かすむとも緑にや見ん山もまた塵なりし世の春の明ほの

かすむとも−みとりにやみむ−やまもまた−ちりなりしよの−はるのあけほの


00274
未入力 正徹 (xxx)

綱手縄ひけるやかすみまきもくのひ原の山の春の杣人

つなてなは−ひけるやかすみ−まきもくの−ひはらのやまの−はるのそまひと


00275
未入力 正徹 (xxx)

をちかたの霞の光あらはれて雨にかくれぬ山の色かな

をちかたの−かすみのひかり−あらはれて−あまにかくれぬ−やまのいろかな


00276
未入力 正徹 (xxx)

大和島かすみもいまたむら山に雪たちのこしさゆる春かな

やまとしま−かすみもいまた−むらやまに−ゆきたちのこし−さゆるはるかな


00277
未入力 正徹 (xxx)

春霞天のはらまて曇りきて雪におよはぬふしの四方山

はるかすみ−あまのはらまて−くもりきて−ゆきにおよはぬ−ふしのよもやま


00278
未入力 正徹 (xxx)

染めてけり霞の衣色をうすみ山のすそこの春の若草

そめてけり−かすみのころも−いろをうすみ−やまのすそこの−はるのわかくさ


00279
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袖と見しかすみのみたれ雪そけつ名におふ山の忍もちすり

そてとみし−かすみのみたれ−ゆきそけつ−なにおふやまの−しのふもちすり


00280
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坂こゆる人の袖かとみかの原国の都は山そかすめる

さかこゆる−ひとのそてかと−みかのはら−くにのみやこは−やまそかすめる


00281
未入力 正徹 (xxx)

時しらぬ色にもしるし春はきてふもとにかすむ富士の白雪

ときしらぬ−いろにもしるし−はるはきて−ふもとにかすむ−ふしのしらゆき


00282
未入力 正徹 (xxx)

いつくにも春を見せんと足引の山つたひして行く霞かな

いつくにも−はるをみせむと−あしひきの−やまつたひして−ゆくかすみかな


00283
未入力 正徹 (xxx)

春さむき霞のみをにけふしこそ御舟の山もうかふあは雪

はるさむき−かすみのみをに−けふしこそ−みふねのやまも−うかふあはゆき


00284
未入力 正徹 (xxx)

あし引の山たち花の袖のかもむかしにかすむ春のふる郷

あしひきの−やまたちはなの−そてのかも−むかしにかすむ−はるのふるさと


00285
未入力 正徹 (xxx)

春の色を日比見せつと足引の山たちはなれ行く霞かな

はるのいろを−ひころみせつと−あしひきの−やまたちはなれ−ゆくかすみかな


00286
未入力 正徹 (xxx)

棹姫のとほ山まゆもうす墨の夕ほのかにかすむ春かな

さほひめの−とほやままゆも−うすすみの−ゆふへほのかに−かすむはるかな


00287
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あさ霞かかれとてしもむは玉の黒髪山に春やこさらむ

あさかすみ−かかれとてしも−むはたまの−くろかみやまに−はるやこさらむ


00288
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朝日影ふもとの塵にかすめるをみぬ世の年も遠き山かな

あさひかけ−ふもとのちりに−かすめるを−みぬよのとしも−とほきやまかな


00289
未入力 正徹 (xxx)

いつる日のかすめる色もあさか山かけさへ雪にさゆる春かな

いつるひの−かすめるいろも−あさかやま−かけさへゆきに−さゆるはるかな


00290
未入力 正徹 (xxx)

霞たつ衣かせ山いつみ川舟のりさむし春のあさあけ

かすみたつ−ころもかせやま−いつみかは−ふなのりさむし−はるのあさあけ


00291
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木の葉なき秋の朝霧思出てぬ山たちかすむ春の初霜

このはなき−あきのあさきり−おもひいてぬ−やまたちかすむ−はるのはつしも


00292
未入力 正徹 (xxx)

朝ことに大内山の宮木をや春のかすみも綱手引くらん

あさことに−おほうちやまの−みやきをや−はるのかすみも−つなてひくらむ


00293
未入力 正徹 (xxx)

嶺出ててかすむ朝日の麓川くれなゐくくる浪もこほらす

みねいてて−かすむあさひの−ふもとかは−くれなゐくくる−なみもこほらす


00294
未入力 正徹 (xxx)

あさ明の嶺にそかすむ花さかぬ山さくら戸の春の白雪

あさあけの−みねにそかすむ−はなさかぬ−やまさくらとの−はるのしらゆき


00295
未入力 正徹 (xxx)

のほる日の光をこめて足引の山よりたかくかすむ空かな

のほるひの−ひかりをこめて−あしひきの−やまよりたかく−かすむそらかな


00296
未入力 正徹 (xxx)

山風の霞をまくや棹姫のおくるあしたの床のさむしろ

やまかせの−かすみをまくや−さほひめの−おくるあしたの−とこのさむしろ


00297
未入力 正徹 (xxx)

あまのきる春の衣のあさ妻やうら風なからかすむ山かな

あまのきる−はるのころもの−あさつまや−うらかせなから−かすむやまかな


00298
未入力 正徹 (xxx)

たかためそ霞のうちに出つる日のくれなゐそむる春のさ衣

たかためそ−かすみのうちに−いつるひの−くれなゐそむる−はるのさころも


00299
未入力 正徹 (xxx)

主やたれかすみのうちの松か枝も遠山すりの春のさ衣

ぬしやたれ−かすみのうちの−まつかえも−とほやますりの−はるのさころも


00300
未入力 正徹 (xxx)

よそにしてなひく霞や心あてに猶わきもこか二かみの山

よそにして−なひくかすみや−こころあてに−なほわきもこか−ふたかみのやま


00301
未入力 正徹 (xxx)

立ちこむるをちの山人それも見はわか住むさとや又霞むらん

たちこむる−をちのやまひと−それもみは−わかすむさとや−またかすむらむ


00302
未入力 正徹 (xxx)

雪そちる霞を山と御吉野のふる郷人の春の衣手

ゆきそちる−かすみをやまと−みよしのの−ふるさとひとの−はるのころもて


00303
未入力 正徹 (xxx)

行末も遠山鳥のをしほ山神代へたてすかすむ春かな

ゆくすゑも−とほやまとりの−をしほやま−かみよへたてす−かすむはるかな


00304
未入力 正徹 (xxx)

うつもれし我か身の霧はかつ晴れて今朝遠山の霞むをそみる

うつもれし−わかみのきりは−かつはれて−けさとほやまの−かすむをそみる


00305
未入力 正徹 (xxx)

難波かた霞も山もうす墨の絵島そにしの海にうかへる

なにはかた−かすみもやまも−うすすみの−えしまそにしの−うみにうかへる


00306
未入力 正徹 (xxx)

見えさりし霞かかれる色なから朝日にいつる春のとほ山

みえさりし−かすみかかれる−いろなから−あさひにいつる−はるのとほやま


00307
未入力 正徹 (xxx)

あさ明のかすみのおくに山ありとかねてしらすは海かとそみむ

あさあけの−かすみのおくに−やまありと−かねてしらすは−うみかとそみむ


00308
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朝みとりかすめる山の松杉もおなしよそ目にさゆる春かな

あさみとり−かすめるやまの−まつすきも−おなしよそめに−さゆるはるかな


00309
未入力 正徹 (xxx)

かすましな衣たちきるすまのあまや寒き都の山路こゆらん

かすましな−ころもたちきる−すまのあまや−さむきみやこの−やまちこゆらむ


00310
未入力 正徹 (xxx)

明けぬまにほすや霞のかり衣ぬく日もしらぬ天のかく山

あけぬまに−ほすやかすみの−かりころも−ぬくひもしらぬ−あまのかくやま


00311
未入力 正徹 (xxx)

朝日さす山の霞もくれなゐのこ染や春の衣なるらむ

あさひさす−やまのかすみも−くれなゐの−こそめやはるの−ころもなるらむ


00312
未入力 正徹 (xxx)

かすみきぬ夕山姫のたか春にくもる契の色をそふらん

かすみきぬ−ゆふやまひめの−たかはるに−くもるちきりの−いろをそふらむ


00313
未入力 正徹 (xxx)

春なれはふしの高ねの雪の上もかすむかたつか天の羽衣

はるなれは−ふしのたかねの−ゆきのうへも−かすむかたつか−あまのはころも


00314
未入力 正徹 (xxx)

ぬしやたれ山わけ衣みたれくる春のかすみの袖の追風

ぬしやたれ−やまわけころも−みたれくる−はるのかすみの−そてのおひかせ


00315
未入力 正徹 (xxx)

雲の浪かからぬ松もあらはれす霞や千重の嶺のはまゆふ

くものなみ−かからぬまつも−あらはれす−かすみやちへの−みねのはまゆふ


00316
未入力 正徹 (xxx)

朝日さす天の岩戸の関よりも山はかすみをいてぬ春かな

あさひさす−あまのいはとの−せきよりも−やまはかすみを−いてぬはるかな


00317
未入力 正徹 (xxx)

雪の色のきえぬもきえつ真砂山はまゆふ霞幾重立つらむ

ゆきのいろの−きえぬもきえつ−まさこやま−はまゆふかすみ−いくへたつらむ


00318
未入力 正徹 (xxx)

山は人かすみは山をへたてても行く旅とほしふる郷のはる

やまはひと−かすみはやまを−へたてても−ゆくたひとほし−ふるさとのはる


00319
未入力 正徹 (xxx)

朝かすみもも重をかくるうら風に浜ゆふたかき三くまのの山

あさかすみ−ももへをかくる−うらかせに−はまゆふたかき−みくまののやま


00320
未入力 正徹 (xxx)

ありとみし松杉なからははききのかすみにきゆる山のあけほの

ありとみし−まつすきなから−ははききの−かすみにきゆる−やまのあけほの


00321
未入力 正徹 (xxx)

松たてる嶺の緑も見えぬかな雪をやうつむ霞なるらん

まつたてる−みねのみとりも−みえぬかな−ゆきをやうつむ−かすみなるらむ


00322
未入力 正徹 (xxx)

霞みこめつらなる峰の塵はかり残るかわたる雁のおも影

かすみこめ−つらなるみねの−ちりはかり−のこるかわたる−かりのおもかけ


00323
未入力 正徹 (xxx)

雪消えて峰の霞やたつか弓春の関もるき路の遠山

ゆききえて−みねのかすみや−たつかゆみ−はるのせきもる−きちのとほやま


00324
未入力 正徹 (xxx)

なかれ行く霞のみをにかけてけりつつく高ねの雲の梯

なかれゆく−かすみのみをに−かけてけり−つつくたかねの−くものかけはし


00325
未入力 正徹 (xxx)

春よまた太山嵐の峰つたひ雪も霞の色はけすらん

はるよまた−みやまあらしの−みねつたひ−ゆきもかすみの−いろはけすらむ


00326
未入力 正徹 (xxx)

朝みとり若葉の松も色そこき山染めいたす春の霞に

あさみとり−わかはのまつも−いろそこき−やまそめいたす−はるのかすみに


00327
未入力 正徹 (xxx)

天地やなにの上にもくる春の色を千種にかすむ山かな

あめつちや−なにのうへにも−くるはるの−いろをちくさに−かすむやまかな


00328
未入力 正徹 (xxx)

野も山もおなし緑の色そこきふらぬ霞や木のめはるさめ

のもやまも−おなしみとりの−いろそこき−ふらぬかすみや−きのめはるさめ


00329
未入力 正徹 (xxx)

こすと見し浪は霞にしかれけり春の色こき末の松山

こすとみし−なみはかすみに−しかれけり−はるのいろこき−すゑのまつやま


00330
未入力 正徹 (xxx)

春の色に出雲八雲そあかねさす日の川上のあさ霞かも

はるのいろに−いつもやくもそ−あかねさす−ひのかはかみの−あさかすみかも


00331
未入力 正徹 (xxx)

春の色にうらなれにけり棹姫の霞の衣ころもへすして

はるのいろに−うらなれにけり−さほひめの−かすみのころも−ころもへすして


00332
未入力 正徹 (xxx)

春のきる衣さむしろ今朝そみる降りしく雪の山の霞に

はるのきる−ころもさむしろ−けさそみる−ふりしくゆきの−やまのかすみに


00333
未入力 正徹 (xxx)

世にひろく立つや霞の衣手にもれてみえたる山のはもなし

よにひろく−たつやかすみの−ころもてに−もれてみえたる−やまのはもなし


00334
未入力 正徹 (xxx)

さほ姫の春のかすみをおりはへてたれにともなくたつ衣かな

さほひめの−はるのかすみを−おりはへて−たれにともなく−たつころもかな


00335
未入力 正徹 (xxx)

川浪にもすそぬらすや霞立つ棹山姫の衣なるらん

かはなみに−もすそぬらすや−かすみたつ−さほやまひめの−ころもなるらむ


00336
未入力 正徹 (xxx)

聞ゆるや杣山人の斧ならん春もかすみの衣うつこゑ

きこゆるや−そまやまひとの−をのならむ−はるもかすみの−ころもうつこゑ


00337
未入力 正徹 (xxx)

かすむ日の松浦か興のから衣もろこし人やたち霞ぬらん

かすむひの−まつらかおきの−からころも−もろこしひとや−たちかさぬらむ


00338
未入力 正徹 (xxx)

さほ姫の衣の玉を春みせて霞のしたにかかる日のかけ

さほひめの−ころものたまを−はるみせて−かすみのしたに−かかるひのかけ


00339
未入力 正徹 (xxx)

霞たつ春は大津の宮人のふるき衣にうら風そふく

かすみたつ−はるはおほつの−みやひとの−ふるきころもに−うらかせそふく


00340
未入力 正徹 (xxx)

袖はへて梅かかうつすぬしや誰かすめる庭の春のさころも

そてはへて−うめかかうつす−ぬしやたれ−かすめるにはの−はるのさころも


00341
未入力 正徹 (xxx)

古の春のかすみをたちきるも猶身にあまるけふの袂そ

いにしへの−はるのかすみを−たちきるも−なほみにあまる−けふのたもとそ


00342
未入力 正徹 (xxx)

世は春の霞の衣きる人もあらし吹く日やぬきわかるらん

よははるの−かすみのころも−きるひとも−あらしふくひや−ぬきわかるらむ


00343
未入力 正徹 (xxx)

色色の衣はあれと世は春のかすみのうはききぬ人もなし

いろいろの−ころもはあれと−よははるの−かすみのうはき−きぬひともなし


00344
未入力 正徹 (xxx)

八幡山三の衣の玉くしけふたつはたてる雲よ霞よ

やはたやま−みつのころもの−たまくしけ−ふたつはたてる−くもよかすみよ


00345
未入力 正徹 (xxx)

天の川星合の空は程遠したれに霞の衣かすらむ

あまのかは−ほしあひのそらは−ほととほし−たれにかすみの−ころもかすらむ


00346
未入力 正徹 (xxx)

空にたつ衣のうらの玉かしはかすむ春日はなにはならねと

そらにたつ−ころものうらの−たまかしは−かすむはるひは−なにはならねと


00347
未入力 正徹 (xxx)

川社七日ひさらん衣ほせかすみそかかるあまのかく山

かはやしろ−なぬかひさらむ−ころもほせ−かすみそかかる−あまのかくやま


00348
未入力 正徹 (xxx)

春きても猶山姫の夜や寒き衣やうすきかすむともなし

はるきても−なほやまひめの−よやさむき−ころもやうすき−かすむともなし


00349
未入力 正徹 (xxx)

春のきる衣を寒みぬくとなき霞のひもをとく嵐かな

はるのきる−ころもをさむみ−ぬくとなき−かすみのひもを−とくあらしかな


00350
未入力 正徹 (xxx)

春はまたあさしや六のくらゐ山かすむみとりの衣をそきる

はるはまた−あさしやむつの−くらゐやま−かすむみとりの−ころもをそきる


00351
未入力 正徹 (xxx)

棹姫の袖ももすそもわきてみす衣といはん霞ともなし

さほひめの−そてももすそも−わきてみす−ころもといはむ−かすみともなし


00352
未入力 正徹 (xxx)

杣人の綱手ならねと山路より都に春を引くかすみかな

そまひとの−つなてならねと−やまちより−みやこにはるを−ひくかすみかな


00353
未入力 正徹 (xxx)

四方にたつ霞も春になれすとや山風吹けは遠さかるらん

よもにたつ−かすみもはるに−なれすとや−やまかせふけは−とほさかるらむ


00354
未入力 正徹 (xxx)

春のきるこや羽衣の天つひれふりはへなかしかすみ初むらん

はるのきる−こやはころもの−あまつひれ−ふりはへなかし−かすみそむらむ


00355
未入力 正徹 (xxx)

九重の山の霞ももろ人も今朝たなひくや春のきぬらん

ここのへの−やまのかすみも−もろひとも−けさたなひくや−はるのきぬらむ


00356
未入力 正徹 (xxx)

海山もたなひくしたに顕れぬいくかかすめる長路なるらん

うみやまも−たなひくしたに−あらはれぬ−いくかかすめる−なかちなるらむ


00357
未入力 正徹 (xxx)

けさみれはたな引ききえぬ夜の程は霞のなれる興つ島山

けさみれは−たなひききえぬ−よのほとは−かすみのなれる−おきつしまやま


00358
未入力 正徹 (xxx)

朝みとり春のかすみの山めくりしくれし秋に染めし色かな

あさみとり−はるのかすみの−やまめくり−しくれしあきに−そめしいろかな


00359
未入力 正徹 (xxx)

久かたの天つかすみの橋立を空にもかくるよさのうらなみ

ひさかたの−あまつかすみの−はしたてを−そらにもかくる−よさのうらなみ


00360
未入力 正徹 (xxx)

道辺をへたつる程もみえわかてかすみにちかきをちの里人

みちのへを−へたつるほとも−みえわかて−かすみにちかき−をちのさとひと


00361
未入力 正徹 (xxx)

かまとよりたつや煙も高き屋にのほる霞の色とみゆらん

かまとより−たつやけふりも−たかきやに−のほるかすみの−いろとみゆらむ


00362
未入力 正徹 (xxx)

朝霞空にみつはのむら雲やたつ川上の浪と見ゆらん

あさかすみ−そらにみつはの−むらくもや−たつかはかみの−なみとみゆらむ


00363
未入力 正徹 (xxx)

もしほ火の煙もみちてあまの住む村の朝けはかすむ春かな

もしほひの−けふりもみちて−あまのすむ−むらのあさけは−かすむはるかな


00364
未入力 正徹 (xxx)

大和路やさとはとをちの村山もありとはみえすかすむ春かな

やまとちや−さとはとをちの−むらやまも−ありとはみえす−かすむはるかな


00365
未入力 正徹 (xxx)

大和川音はかりして遠近のかすみにのこる春のむら山

やまとかは−おとはかりして−をちこちの−かすみにのこる−はるのむらやま


00366
未入力 正徹 (xxx)

吹きはらへ宿たちかくす村霞をちかた人の袖の春かせ

ふきはらへ−やとたちかくす−むらかすみ−をちかたひとの−そてのはるかせ


00367
未入力 正徹 (xxx)

杜たかき千枝を草葉とみるはかりしのたの方のかすむ野へかな

もりたかき−ちえをくさはと−みるはかり−しのたのかたの−かすむのへかな


00368
未入力 正徹 (xxx)

遠かたの梢の風やさわくらむかすみの衣しのふもちすり

をちかたの−こすゑのかせや−さわくらむ−かすみのころも−しのふもちすり


00369
未入力 正徹 (xxx)

たちのこす霞の袖につく墨はたかため恋の杜となるらん

たちのこす−かすみのそてに−つくすみは−たかためこひの−もりとなるらむ


00370
未入力 正徹 (xxx)

わたの原霞のうちもくもらぬや興の玉藻の光なるらん

わたのはら−かすみのうちも−くもらぬや−おきのたまもの−ひかりなるらむ


00371
未入力 正徹 (xxx)

春霞光そうすき伊勢の海の塩干の玉やけさひろひけん

はるかすみ−ひかりそうすき−いせのうみの−しほひのたまや−けさひろひけむ


00372
未入力 正徹 (xxx)

よもの海に二の袖やおほふらん霞の衣かきりなくして

よものうみに−ふたつのそてや−おほふらむ−かすみのころも−かきりなくして


00373
未入力 正徹 (xxx)

浪にしく霞の色もわかめ刈るあまの磯菜や雪の下もえ

なみにしく−かすみのいろも−わかめかる−あまのいそなや−ゆきのしたもえ


00374
未入力 正徹 (xxx)

春やくる浪に霞を敷たへの床のうら人おきはわかれし

はるやくる−なみにかすみを−しきたへの−とこのうらひと−おきはわかれし


00375
未入力 正徹 (xxx)

四方の海かすみおよはぬ興もあらは春のとまりを浪にみてまし

よものうみ−かすみおよはぬ−おきもあらは−はるのとまりを−なみにみてまし


00376
未入力 正徹 (xxx)

紅のゆたかにたてる袂かな霞によする春のうら人

くれなゐの−ゆたかにたてる−たもとかな−かすみによする−はるのうらひと


00377
未入力 正徹 (xxx)

わたの原春たちかへる雲の波霞の浪も風そのとけき

わたのはら−はるたちかへる−くものなみ−かすみのなみも−かせそのとけき


00378
未入力 正徹 (xxx)

春はいまうらこく舟の路の草玉ももえ出ててかすむ浪かな

はるはいま−うらこくふねの−みちのくさ−たまももえいてて−かすむなみかな


00379
未入力 正徹 (xxx)

わたの原山を見あてにとり梶もかすみにたゆる春の船人

わたのはら−やまをみあてに−とりかちも−かすみにたゆる−はるのふなひと


00380
未入力 正徹 (xxx)

そことなき霞は晴れてわたつ海に残るも曇る八重のしほかせ

そことなき−かすみははれて−わたつうみに−のこるもくもる−やへのしほかせ


00381
未入力 正徹 (xxx)

わたつ海のかさしの浪の花かつら霞をかけて浦風そ吹く

わたつうみの−かさしのなみの−はなかつら−かすみをかけて−うらかせそふく


00382
未入力 正徹 (xxx)

わたつ海の浪そとことは夕なきに霞や春の色をしくらん

わたつうみの−なみそとことは−ゆふなきに−かすみやはるの−いろをしくらむ


00383
未入力 正徹 (xxx)

白妙の浪のかさしのわたつ海に又さしはへてかすむ春かな

しろたへの−なみのかさしの−わたつうみに−またさしはへて−かすむはるかな


00384
未入力 正徹 (xxx)

うちはふる霞の網のめも春に入江のあしはうら風そ吹く

うちはふる−かすみのあみの−めもはるに−いりえのあしは−うらかせそふく


00385
未入力 正徹 (xxx)

石見かた山も高津のうら波にひれふる袖や霞なるらん

いはみかた−やまもたかつの−うらなみに−ひれふるそてや−かすみなるらむ


00386
未入力 正徹 (xxx)

淡路かた山のかさしのわたつ海は波さへしろくかすむ春かな

あはちかた−やまのかさしの−わたつうみは−なみさへしろく−かすむはるかな


00387
未入力 正徹 (xxx)

うら風におもひきえぬもみゆるかな世を海わたる霞ならねと

うらかせに−おもひきえぬも−みゆるかな−よをうみわたる−かすみならねと


00388
未入力 正徹 (xxx)

わたの原八百日行くともはてしらぬ浪と霞の遠つしらはま

わたのはら−やほかゆくとも−はてしらぬ−なみとかすみの−とほつしらはま


00389
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伊勢の海や渚の玉の光かも霞をみかく興つしら浪

いせのうみや−なきさのたまの−ひかりかも−かすみをみかく−おきつしらなみ


00390
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波の上の霞をわけて引く塩に夕日くらしぬ玉津しまやま

なみのうへの−かすみをわけて−ひくしほに−ゆふひくらしぬ−たまつしまやま


00391
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興つなみ雲のはたてにかけておれ霞のぬきのあまのさ衣

おきつなみ−くものはたてに−かけておれ−かすみのぬきの−あまのさころも


00392
未入力 正徹 (xxx)

むろの木のみとりを分けて霞むなりこき出つる舟のともの浦浪

むろのきの−みとりをわけて−かすむなり−こきいつるふねの−とものうらなみ


00393
未入力 正徹 (xxx)

春日さす氷は消えし霞にも遠さかり行くしかのうら浪

はるひさす−こほりはきえし−かすみにも−とほさかりゆく−しかのうらなみ


00394
未入力 正徹 (xxx)

山風もかすむふもとの夕波にたてるやいつこしかの浜松

やまかせも−かすむふもとの−ゆふなみに−たてるやいつこ−しかのはままつ


00395
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さくらあさも見ぬ名におふのうらなしに霞みこめたる浪の音かな

さくらあさも−みぬなにおふの−うらなしに−かすみこめたる−なみのおとかな


00396
未入力 正徹 (xxx)

梶をたえ行末もしらす由良の戸をわたる舟路の春の霞に

かちをたえ−ゆくへもしらす−ゆらのとを−わたるふなちの−はるのかすみに


00397
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あさ明の霞のかたほかけすててうら風遠くわたる舟人

あさあけの−かすみのかたほ−かけすてて−うらかせとほく−わたるふなひと


00398
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あらはるる時をはいつとしら浪の浜松かねも猶かすむらん

あらはるる−ときをはいつと−しらなみの−はままつかねも−なほかすむらむ


00399
未入力 正徹 (xxx)

霞にもはなれ小島はあらはれて又うつもるる沖つとほ山

かすみにも−はなれこしまは−あらはれて−またうつもるる−おきつとほやま


00400
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今朝そしるいふきおろしは波間よりみゆる小島の見えぬ霞に

けさそしる−いふきおろしは−なみまより−みゆるこしまの−みえぬかすみに


00401
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雲井にそけさほかすめる久かたの天つをとめの沖つしま松

くもゐにそ−けさほかすめる−ひさかたの−あまつをとめの−おきつしままつ


00402
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朝ほらけ興行く舟のほのほのと霞にのこるあとのしら浪

あさほらけ−おきゆくふねの−ほのほのと−かすみにのこる−あとのしらなみ


00403
未入力 正徹 (xxx)

行く舟のとものうら浪あと消えてむろの一木そ霞みのこれる

ゆくふねの−とものうらなみ−あときえて−むろのひときそ−かすみのこれる


00404
未入力 正徹 (xxx)

行く舟のあとの白浪かすむ日ほ此世中をなににたとへん

ゆくふねの−あとのしらなみ−かすむひほ−このよのなかを−なににたとへむ


00405
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あつさ弓八十の湊のあまを舟おしてささ浪今朝そかすめる

あつさゆみ−やそのみなとの−あまをふね−おしてささなみ−けさそかすめる


00406
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朝ほらけ霞や八重のしほならぬ浦風なから空にみつらん

あさほらけ−かすみややへの−しほならぬ−うらかせなから−そらにみつらむ


00407
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うきて行く春の霞のうらつたひ浜風しるしにほのささ浪

うきてゆく−はるのかすみの−うらつたひ−はまかせしるし−にほのささなみ


00408
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下くくるにほ冬こもるうら風のたつうは浪にかすむ春かな

したくくる−にほふゆこもる−うらかせの−たつうはなみに−かすむはるかな


00409
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うちなひきかすむ春日もにほてるやささ浪清く風そのとけき

うちなひき−かすむはるひも−にほてるや−ささなみきよく−かせそのとけき


00410
未入力 正徹 (xxx)

志賀のうらやみるめなきさに磯菜摘むあまのま袖もかすむ春かな

しかのうらや−みるめなきさに−いそなつむ−あまのまそても−かすむはるかな


00411
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霞さへあれ行く比良のみなと風かへるやあまの袖ならぬ浪

かすみさへ−あれゆくひらの−みなとかせ−かへるやあまの−そてならぬなみ


00412
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あまのきぬ霞の袖のみなと江はもろこし船のから衣かも

あまのきぬ−かすみのそての−みなとえは−もろこしふねの−からころもかも


00413
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朝日影さすや霞の下風に玉江をみかく春のしら浪

あさひかけ−さすやかすみの−したかせに−たまえをみかく−はるのしらなみ


00414
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三島江や枯葉なからに立つ芦の色も緑にかすむ春かな

みしまえや−かれはなからに−たつあしの−いろもみとりに−かすむはるかな


00415
未入力 正徹 (xxx)

朝あけの入江のさ浪音消えて霞のうちは浦風もなし

あさあけの−いりえのさなみ−おときえて−かすみのうちは−うらかせもなし


00416
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伊勢の海やをのの古江の朝霞長閑になひく春の神風

いせのうみや−をののふるえの−あさかすみ−のとかになひく−はるのかみかせ


00417
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しら浪の玉津島江にかすむなり真砂吹上の春の浜風

しらなみの−たまつしまえに−かすむなり−まさこふきあけの−はるのはまかせ


00418
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まのの浦の入江の春の初尾花袖に見ゆるや霞なるらん

まののうらの−いりえのはるの−はつをはな−そてにみゆるや−かすみなるらむ


00419
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ふりにける影やみさらん鏡山かすむ朝けのしかのはま松

ふりにける−かけやみさらむ−かかみやま−かすむあさけの−しかのはままつ


00420
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むかしたかすみけん床の莚とて春の霞を敷島の宮

むかしたか−すみけむゆかの−むしろとて−はるのかすみを−しきしまのみや


00421
未入力 正徹 (xxx)

世は春とたつや霞も君すめは都のよもや光そふらん

よははると−たつやかすみも−きみすめは−みやこのよもや−ひかりそふらむ


00422
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百敷や春のこすもる薫のにほふけふりも霞そふらん

ももしきや−はるのこすもる−たきものの−にほふけふりも−かすみそふらむ


00423
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明けわたる春の霞にことの葉のありと聞ゆる百千鳥かな

あけわたる−はるのかすみに−ことのはの−ありときこゆる−ももちとりかな


00424
未入力 正徹 (xxx)

明けわたる霞ににほひくる春の空はみとりの色もかはらて

あけわたる−かすみににほひ−くるはるの−そらはみとりの−いろもかはらて


00425
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あけほのの霞も春に心ひく色そかさなる嶺のよこ雲

あけほのの−かすみもはるに−こころひく−いろそかさなる−みねのよこくも


00426
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焼きすてし冬野の煙年越えてかすみとなるも遠き山かな

たきすてし−ふゆののけふり−としこえて−かすみとなるも−とほきやまかな


00427
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山よりも冬をそ遠くへたて行く霞や春の心なるらん

やまよりも−ふゆをそとほく−へたてゆく−かすみやはるの−こころなるらむ


00428
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野へとほき霞にましり行人の袖より袖に梅か香そする

のへとほき−かすみにましり−ゆくひとの−そてよりそてに−うめかかそする


00429
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春やとき花なき関の藤川や松にかかるは霞なりけり

はるやとき−はななきせきの−ふちかはや−まつにかかるは−かすみなりけり


00430
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古年の心のうらもあふ坂の関路まさしくかすむ山かな

ふるとしの−こころのうらも−あふさかの−せきちまさしく−かすむやまかな


00431
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関屋ふく霞のひさしあれまくもをしみそあへぬ不破の山風

せきやふく−かすみのひさし−あれまくも−をしみそあへぬ−ふはのやまかせ


00432
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すすか山春の霞のすゑおくや八十関こゆる四方の旅人

すすかやま−はるのかすみの−すゑおくや−やそせきこゆる−よものたひひと


00433
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行く浪もこゑ高からぬ袖なれや川口おほふ関の霞に

ゆくなみも−こゑたかからぬ−そてなれや−かはくちおほふ−せきのかすみに


00434
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清見かた君もる浪も春はきるかすみの衣ぬれぬ日そなき

きよみかた−きみもるなみも−はるはきる−かすみのころも−ぬれぬひそなき


00435
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守る関のあら垣かこふ霞より氷なかるる春の川くち

もるせきの−あらかきかこふ−かすみより−こほりなかるる−はるのかはくち


00436
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ふるき世の春待ちこふる難波人かすむや遠き三つの浜松

ふるきよの−はるまちこふる−なにはひと−かすむやとほき−みつのはままつ


00437
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山かくす霞の袖もほしあへすよを鴬のこゑたてて啼く

やまかくす−かすみのそても−ほしあへす−よをうくひすの−こゑたててなく


00438
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都にも春のかすみの古巣をはいてぬこゑしく鴬そ鳴く

みやこにも−はるのかすみの−ふるすをは−いてぬこゑしく−うくひすそなく


00439
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くもれとも空たちのこす村霞あらはれ消えて雁そ行くなる

くもれとも−そらたちのこす−むらかすみ−あらはれきえて−かりそゆくなる


00440
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雁のくるさとや玉川遠かたの天つかすみをゐての下帯

かりのくる−さとやたまかは−をちかたの−あまつかすみを−ゐてのしたおひ


00441
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なくさむる老の涙のひまはあれと霞忘れぬ春のよの月

なくさむる−おいのなみたの−ひまはあれと−かすみわすれぬ−はるのよのつき


00442
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くもらしな霞の袖の中川になかれての名をつつむ月かけ

くもらしな−かすみのそての−なかかはに−なかれてのなを−つつむつきかけ


00443
未入力 正徹 (xxx)

立ちそひて花にわかれし春霞はかなや月のくもるかたみは

たちそひて−はなにわかれし−はるかすみ−はかなやつきの−くもるかたみは


00444
未入力 正徹 (xxx)

めくれとも春のそらをは出てやらぬ霞や月のうき世なるらん

めくれとも−はるのそらをは−いてやらぬ−かすみやつきの−うきよなるらむ


00445
未入力 正徹 (xxx)

有明の月出ててこそ春の夜の千里も山もかすむとはみれ

ありあけの−つきいててこそ−はるのよの−ちさともやまも−かすむとはみれ


00446
未入力 正徹 (xxx)

たか中にぬきてわかれしさ夜衣草葉の床にしく霞かな

たかなかに−ぬきてわかれし−さよころも−くさはのとこに−しくかすみかな


00447
未入力 正徹 (xxx)

朝あけの嵐も春もしかの浦に山こえしてや霞みしくらん

あさあけの−あらしもはるも−しかのうらに−やまこえしてや−かすみしくらむ


00448
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程遠く四方にみえつる山もなしかすむやいつこ春の明ほの

ほととほく−よもにみえつる−やまもなし−かすむやいつこ−はるのあけほの


00449
未入力 正徹 (xxx)

嶺に見し松もこふらく横雲のきゆる朝は引く霞かな

みねにみし−まつもこふらく−よこくもの−きゆるあしたは−ひくかすみかな


00450
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棹姫のささわくる朝の袖かとも深山路遠く立つ霞かな

さほひめの−ささわくるあさの−そてかとも−みやまちとほく−たつかすみかな


00451
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氷りつつ今朝やかすみもあさか山やまのゐうつむ水の白雪

こほりつつ−けさやかすみも−あさかやま−やまのゐうつむ−みつのしらゆき


00452
未入力 正徹 (xxx)

春はまた蛙もなかす朝霞かひやか上の山そくもれる

はるはまた−かはつもなかす−あさかすみ−かひやかうへの−やまそくもれる


00453
未入力 正徹 (xxx)

立ちこゆるかすみの衣山風にささわくるあさの袖かへすなり

たちこゆる−かすみのころも−やまかせに−ささわくるあさの−そてかへすなり


00454
未入力 正徹 (xxx)

春の色はかすみの朝戸あけわたる天つ関路に急く日の影

はるのいろは−かすみのあさと−あけわたる−あまつせきちに−いそくひのかけ


00455
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とほくみる春のあさけの窓の戸に霞つつける花鳥の声

とほくみる−はるのあさけの−まとのとに−かすみつつける−はなとりのこゑ


00456
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ふもと行く霞の袖の朝しめり篠分くる嶺の日影やはしる

ふもとゆく−かすみのそての−あさしめり−ささわくるみねの−ひかけやはしる


00457
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暮れわたる遠山まゆのかたみたれのほる霞や先かくすらん

くれわたる−とほやままゆの−かたみたれ−のほるかすみや−まつかくすらむ


00458
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人の世のくもる契を夕かすみ春にかけてや立ちわたるらん

ひとのよの−くもるちきりを−ゆふかすみ−はるにかけてや−たちわたるらむ


00459
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花にさけ紅さくらうゑてみん入日色こき嶺の霞に

はなにさけ−くれなゐさくら−うゑてみむ−いりひいろこき−みねのかすみに


00460
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あとふかきわしのみ山の苔の洞霞に法のこゑそのこれる

あとふかき−わしのみやまの−こけのほら−かすみにのりの−こゑそのこれる


00461
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ぬしやたれ霞の袖に引く弓のかけあらはるる春の三日月

ぬしやたれ−かすみのそてに−ひくゆみの−かけあらはるる−はるのみかつき


00462
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月のきる霞の衣あけほのの光にそむる春のくれなゐ

つきのきる−かすみのころも−あけほのの−ひかりにそむる−はるのくれなゐ


00463
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秋もみす有明の月のかつらまてかすみにそむる春の紅

あきもみす−ありあけのつきの−かつらまて−かすみにそむる−はるのくれなゐ


00464
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橋姫の待つゆふ暮も中たえて霞はてぬるうちの川浪

はしひめの−まつゆふくれも−なかたえて−かすみはてぬる−うちのかはなみ


00465
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春のきる霞の袖もまきほさぬ山風よわみ淡雪そ降る

はるのきる−かすみのそても−まきほさぬ−やまかせよわみ−あはゆきそふる


00466
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杣木引くと山の正木春くれはたゆるやかすむ綱手なるらん

そまきひく−とやまのまさき−はるくれは−たゆるやかすむ−つなてなるらむ


00467
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引きううる子日の小松いく千世の陰を二葉にやとし初むらん

ひきううる−ねのひのこまつ−いくちよの−かけをふたはに−やとしそむらむ


00468
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いかなりしいつの子日の行末にいま老松の神となるらん

いかなりし−いつのねのひの−ゆくすゑに−いまおいまつの−かみとなるらむ


00469
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二葉さす子日の小松まつかひもありへん物そ千世の生末

ふたはさす−ねのひのこまつ−まつかひも−ありへむものそ−ちよのおひすゑ


00470
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千年とも身には思はす松をおきてこと葉の色に引く露かな

ちとせとも−みにはおもはす−まつをおき−てことはのいろ−にひくつゆかな


00471
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千世の色を人もみよとや消えぬらんあすの子日を松の白雪

ちよのいろを−ひともみよとや−きえぬらむ−あすのねのひを−まつのしらゆき


00472
未入力 正徹 (xxx)

春はけふきのえねの日と逢ひと合ひて松も千年の初とそしる

はるはけふ−きのえねのひと−あひとあひて−まつもちとせの−はしめとそしる


00473
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玉ははきてに取りもちて子の年のをとめやけふの塵はらふらん

たまははき−てにとりもちて−ねのとしの−をとめやけふの−ちりはらふらむ


00474
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うらわかみまた初草の妻やとふ春の野に出てて鴬そなく

うらわかみ−またはつくさの−つまやとふ−はるののにいてて−うくひすそなく


00475
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我か庵のそのふの竹に朝な夕な世を鴬となくそ友なる

わかいほの−そのふのたけに−あさなゆふな−よをうくひすと−なくそともなる


00476
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さく梅の色とはなしに鴬のこゑの匂ひや友さそふらん

さくうめの−いろとはなしに−うくひすの−こゑのにほひや−ともさそふらむ


00477
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くる春をさやかにや見む鴬の声はかりしてかすむ野へかな

くるはるを−さやかにやみむ−うくひすの−こゑはかりして−かすむのへかな


00478
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花やとき涙の氷梅かかに今朝うちとくる鴬のこゑ

はなやとき−なみたのこほり−うめかかに−けさうちとくる−うくひすのこゑ


00479
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岩浪もさへつるこゑやかへすらん巣たちし谷の鴬の滝

いはなみも−さへつるこゑや−かへすらむ−すたちしたにの−うくひすのたき


00480
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春寒みさそふへき花を松のはに猶冬こもる鴬の声

はるさむみ−さそふへきはなを−まつのはに−なほふゆこもる−うくひすのこゑ


00481
未入力 正徹 (xxx)

いつの春たれかはききし鴬のかひ子をいてし竹姫の声

いつのはる−たれかはききし−うくひすの−かひこをいてし−たけひめのこゑ


00482
未入力 正徹 (xxx)

鴬のさへつり出す初音より猶色わかき朝かすみかな

うくひすの−さへつりいたす−はつねより−なほいろわかき−あさかすみかな


00483
未入力 正徹 (xxx)

箸鷹の狩はの小野に巣立ちてやなら柴かくれ鴬の啼く

はしたかの−かりはのをのに−すたちてや−ならしはかくれ−うくひすのなく


00484
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梅はまたしつく小枝も花遠し鴬さそへ水のうき草

うめはまた−しつくさえたも−はなとほし−うくひすさそへ−みつのうきくさ


00485
未入力 正徹 (xxx)

鴬の初音の春に契りてや千世を八千代とゆらくたま松

うくひすの−はつねのはるに−ちきりてや−ちよをやちよと−ゆらくたままつ


00486
未入力 正徹 (xxx)

鴬のおのか涙のおつるにや氷とけ行く春をつくらむ

うくひすの−おのかなみたの−おつるにや−こほりとけゆく−はるをつくらむ


00487
未入力 正徹 (xxx)

声すなり鴬あをき鳥とてや春のつかひに山路越えきて

こゑすなり−うくひすあをき−とりとてや−はるのつかひに−やまちこえきて


00488
未入力 正徹 (xxx)

かへりこぬ鴬したふむもれ木の雪の花けつ谷川の浪

かへりこぬ−うくひすしたふ−うもれきの−ゆきのはなけつ−たにかはのなみ


00489
未入力 正徹 (xxx)

咲きてちる花そ川浪さそひてや谷にも春の鴬のこゑ

さきてちる−はなそかはなみ−さそひてや−たににもはるの−うくひすのこゑ


00490
未入力 正徹 (xxx)

氷とけ上こす花のささ浪にうくひすさそふ谷の埋木

こほりとけ−うへこすはなの−ささなみに−うくひすさそふ−たにのうもれき


00491
未入力 正徹 (xxx)

今はとてさそふか雪の花園にこゑひらけ行く春の鴬

いまはとて−さそふかゆきの−はなそのに−こゑひらけゆく−はるのうくひす


00492
未入力 正徹 (xxx)

消えのこる梢の雪の花にたにさそはれやすき春のうくひす

きえのこる−こすゑのゆきの−はなにたに−さそはれやすき−はるのうくひす


00493
未入力 正徹 (xxx)

春やとき都の雪の朝もよひ木ことに花と鴬そ鳴く

はるやとき−みやこのゆきの−あさもよひ−きことにはなと−うくひすそなく


00494
未入力 正徹 (xxx)

ふる雪に梅の花笠かたふけて梢やしのく鴬の声

ふるゆきに−うめのはなかさ−かたふけて−こすゑやしのく−うくひすのこゑ


00495
未入力 正徹 (xxx)

うくひすやかとりおるらん霞む日に木つたふ野への糸の乱は

うくひすや−かとりおるらむ−かすむひに−こつたふのへの−いとのみたれは


00496
未入力 正徹 (xxx)

春は又とけ行く松の霜の後ねにあらはるる野への鴬

はるはまた−とけゆくまつの−しもののち−ねにあらはるる−のへのうくひす


00497
未入力 正徹 (xxx)

さく梅の花の林にうくひすの老いたるわかき声そこもれる

さくうめの−はなのはやしに−うくひすの−おいたるわかき−こゑそこもれる


00498
未入力 正徹 (xxx)

その色とさたかならねとすまのうらのあまのさへつる鴬の声

そのいろと−さたかならねと−すまのうらの−あまのさへつる−うくひすのこゑ


00499
未入力 正徹 (xxx)

谷川の岩こす浪もこゑ高き真柴枯はに鴬そなく

たにかはの−いはこすなみも−こゑたかき−ましはかれはに−うくひすそなく


00500
未入力 正徹 (xxx)

こゑの綾おるかと見ゆる氷とけなく鴬の滝川の浪

こゑのあや−おるかとみゆる−こほりとけ−なくうくひすの−たきかはのなみ


00501
未入力 正徹 (xxx)

うくひすもまた出てやらね太山路の小川の浪の花に啼くなり

うくひすも−またいてやらね−みやまちの−おかわのなみの−はなになくなり


00502
未入力 正徹 (xxx)

有明の月かけ消えて鴬のこゑのにほひにかすむ山かな

ありあけの−つきかけきえて−うくひすの−こゑのにほひに−かすむやまかな


00503
未入力 正徹 (xxx)

朝戸あけはおとろきぬへし呉竹のちかきさ枝に来ゐる鴬

あさとあけは−おとろきぬへし−くれたけの−ちかきさえたに−きゐるうくひす


00504
未入力 正徹 (xxx)

かつにほふ花なき里の朝またき日影やさそふ鴬の声

かつにほふ−はななきさとの−あさまたき−ひかけやさそふ−うくひすのこゑ


00505
未入力 正徹 (xxx)

朝またき軒のつららもまたとけぬ雪の梢に鴬そなく

あさまたき−のきのつららも−またとけぬ−ゆきのこすゑに−うくひすそなく


00506
未入力 正徹 (xxx)

あさけたつ煙のうちの村竹に啼く音そむせふさとの鴬

あさけたつ−けふりのうちの−むらたけに−なくねそむせふ−さとのうくひす


00507
未入力 正徹 (xxx)

朝露もちりかひなひく柳風うくひすさそへ池のうき草

あさつゆも−ちりかひなひく−やなきかせ−うくひすさそへ−いけのうきくさ


00508
未入力 正徹 (xxx)

これそ春あかつきつけし庭鳥のそらねもしらぬけさの鴬

これそはる−あかつきつけし−にはとりの−そらねもしらぬ−けさのうくひす


00509
未入力 正徹 (xxx)

世は春といかてしるらん篭の内にねての朝けの鴬のこゑ

よははると−いかてしるらむ−このうちに−ねてのあさけの−うくひすのこゑ


00510
未入力 正徹 (xxx)

鴬の上毛の色も墨染のゆふへの山にこゑそのこれる

うくひすの−うはけのいろも−すみそめの−ゆふへのやまに−こゑそのこれる


00511
未入力 正徹 (xxx)

霞みしくそののむら竹くらき日も夕まとひせぬうくひすの声

かすみしく−そののむらたけ−くらきひも−ゆふまとひせぬ−うくひすのこゑ


00512
未入力 正徹 (xxx)

雪とちる羽風ををしめ鴬はきすともぬれし梅の花笠

ゆきとちる−はかせををしめ−うくひすは−きすともぬれし−うめのはなかさ


00513
未入力 正徹 (xxx)

たたならす霞のうちに声もせて鴬こもるそののむら竹

たたならす−かすみのうちに−こゑもせて−うくひすこもる−そののむらたけ


00514
未入力 正徹 (xxx)

雪はらふ竹のはすさふ風をいたみ園の垣根に鴬そなく

ゆきはらふ−たけのはすさふ−かせをいたみ−そののかきねに−うくひすそなく


00515
未入力 正徹 (xxx)

緑なるそのの林の竹のはに花もさそはぬうくひすそ啼く

みとりなる−そののはやしの−たけのはに−はなもさそはぬ−うくひすそなく


00516
未入力 正徹 (xxx)

うくひすも千世へん声をひらくなり木つたふ松や春の初はな

うくひすも−ちよへむこゑを−ひらくなり−こつたふまつや−はるのはつはな


00517
未入力 正徹 (xxx)

松か枝に千とせのかすを百千鳥とくさへつれときゐる鴬

まつかえに−ちとせのかすを−ももちとり−とくさへつれと−きゐるうくひす


00518
未入力 正徹 (xxx)

木つたひに鳴けとも妻は声たてすおなし巣立のをのの鴬

こつたひに−なけともつまは−こゑたてす−おなしすたちの−をののうくひす


00519
未入力 正徹 (xxx)

あまさかるひなの鴬声はかり老行く春のおくの深山路

あまさかる−ひなのうくひす−こゑはかり−おいゆくはるの−おくのみやまち


00520
未入力 正徹 (xxx)

みとりそふ木陰も苔の太山路や春なき谷にかへる鴬

みとりそふ−こかけもこけの−みやまちや−はるなきたにに−かへるうくひす


00521
未入力 正徹 (xxx)

山路にて声やあはせん時鳥いつれはかへる春のうくひす

やまちにて−こゑやあはせむ−ほとときす−いつれはかへる−はるのうくひす


00522
未入力 正徹 (xxx)

なくなくも山路やたのむ鴬の住みこし花の宿にわかれて

なくなくも−やまちやたのむ−うくひすの−すみこしはなの−やとにわかれて


00523
未入力 正徹 (xxx)

袖寒みかたみのわか菜沢水に摘みもたまらぬあわ雪そ降る

そてさむみ−かたみのわかな−さはみつに−つみもたまらぬ−あわゆきそふる


00524
未入力 正徹 (xxx)

きえかての春の氷をうちはらひたれ蓬生に若なつむらん

きえかての−はるのこほりを−うちはらひ−たれよもきふに−わかなつむらむ


00525
未入力 正徹 (xxx)

しつのめか雪まの野へを立ちかへり荒行く庭に若なをそ摘む

しつのめか−ゆきまののへを−たちかへり−あれゆくにはに−わかなをそつむ


00526
未入力 正徹 (xxx)

雪も消えのこる氷もあさ沢にまた水かくるるねせりをそ摘む

ゆきもきえ−のこるこほりも−あささはに−またみかくるる−ねせりをそつむ


00527
未入力 正徹 (xxx)

さと人や早苗とりてし古小田に又おり立ちてわかなつむらん

さとひとや−さなへとりてし−ふるをたに−またおりたちて−わかなつむらむ


00528
未入力 正徹 (xxx)

人めより古葉はかれぬ朝ことに若菜つむのの雪寒くして

ひとめより−ふるははかれぬ−あさことに−わかなつむのの−ゆきさむくして


00529
未入力 正徹 (xxx)

はむらめや雪野の駒の跡よきてよその若なを猶やたつねん

はむらめや−ゆきののこまの−あとよきて−よそのわかなを−なほやたつねむ


00530
未入力 正徹 (xxx)

つむ若な野へのままとや埋むらん帰るかたみの春のしらゆき

つむわかな−のへのままとや−うつむらむ−かへるかたみの−はるのしらゆき


00531
未入力 正徹 (xxx)

あらさらん後をしのふの種ならは春はかたみに摘むわかなかな

あらさらむ−のちをしのふの−たねならは−はるはかたみに−つむわかなかな


00532
未入力 正徹 (xxx)

雪のうちに老いたるしつか摘むとてや若なも手にはたまらさるらん

ゆきのうちに−おいたるしつか−つむとてや−わかなもてには−たまらさるらむ


00533
未入力 正徹 (xxx)

春やときここら出てつる里人の手ことにつめる野への若草

はるやとき−ここらいてつる−さとひとの−てことにつめる−のへのわかくさ


00534
未入力 正徹 (xxx)

うつめとも生ふる所をかねてしる野守や雪に若菜つむらん

うつめとも−おふるところを−かねてしる−のもりやゆきに−わかなつむらむ


00535
未入力 正徹 (xxx)

しつのめか声ききしらて鳥や立つ若菜かりくる野への雪間を

しつのめか−こゑききしらて−とりやたつ−わかなかりくる−のへのゆきまを


00536
未入力 正徹 (xxx)

春日野も大和にはあれとからなつなもろこし人のつむとこもなし

かすかのも−やまとにはあれと−からなつな−もろこしひとの−つむとこもなし


00537
未入力 正徹 (xxx)

あしたつのすりかり衣袖はへてたれ芹川にわかなつむらん

あしたつの−すりかりころも−そてはへて−たれせりかはに−わかなつむらむ


00538
未入力 正徹 (xxx)

摘むのみか野へのわかなの七種をしつくもたたく雪の松陰

つむのみか−のへのわかなの−ななくさを−しつくもたたく−ゆきのまつかけ


00539
未入力 正徹 (xxx)

春日影さすや若菜も紅の雪のすゑつむ花かたみかな

はるひかけ−さすやわかなも−くれなゐの−ゆきのすゑつむ−はなかたみかな


00540
未入力 正徹 (xxx)

雪なから先もそいれむかたみくむ竹田川原にわかな摘むなり

ゆきなから−まつもそいれむ−かたみくむ−たけたかはらに−わかなつむなり


00541
未入力 正徹 (xxx)

ふみわくる雪の跡より氷りつつ猶うつもるる若菜をそ摘む

ふみわくる−ゆきのあとより−こほりつつ−なほうつもるる−わかなをそつむ


00542
未入力 正徹 (xxx)

尋ねても雪のふる葉の下萌はあるにもあらぬ若菜をそ摘む

たつねても−ゆきのふるはの−したもえは−あるにもあらぬ−わかなをそつむ


00543
未入力 正徹 (xxx)

おりたてはこほる雪けの沢水に若菜もかけの見えぬ比かな

おりたては−こほるゆきけの−さはみつに−わかなもかけの−みえぬころかな


00544
未入力 正徹 (xxx)

三笠山雪けの沢に求子の名をかるしつか若菜とやせん

みかさやま−ゆきけのさはに−もとめこの−なをかるしつか−わかなとやせむ


00545
未入力 正徹 (xxx)

里人やわかなつむらし沢の上の松もたわわに鶴そむれゐる

さとひとや−わかなつむらし−さはのうへの−まつもたわわに−つるそむれゐる


00546
未入力 正徹 (xxx)

沢にゐる氷を人にくたかせてのこる若菜をたつあさるなり

さはにゐる−こほりをひとに−くたかせて−のこるわかなを−たつあさるなり


00547
未入力 正徹 (xxx)

さと人もはるはるきてや八橋のあたりの沢にわかなつむらん

さとひとも−はるはるきてや−やつはしの−あたりのさはに−わかなつむらむ


00548
未入力 正徹 (xxx)

見し秋のわさ田なりせは尋行く春の若菜も先やもえなん

みしあきの−わさたなりせは−たつねゆく−はるのわかなも−まつやもえなむ


00549
未入力 正徹 (xxx)

見し雪も都のたつみしかそなき八十うち人もわかなつむらし

みしゆきも−みやこのたつみ−しかそなき−やそうちひとも−わかなつむらし


00550
未入力 正徹 (xxx)

けさみれは夕陰草の露たかく春のよのまに生ふる野へかな

けさみれは−ゆふかけくさの−つゆたかく−はるのよのまに−おふるのへかな


00551
未入力 正徹 (xxx)

御吉野を立つや葛人九重の都のほかもわかなつむなり

みよしのを−たつやくすひと−ここのへの−みやこのほかも−わかなつむなり


00552
未入力 正徹 (xxx)

かきわくる岡の萱生の枯葉たにみえぬ雪間の若な摘むなり

かきわくる−をかのかやふの−かれはたに−みえぬゆきまの−わかなつむなり


00553
未入力 正徹 (xxx)

おきて行くたか手枕のおのつから別路に生ふる若なつむらん

おきてゆく−たかたまくらの−おのつから−わかれちにおふる−わかなつむらむ


00554
未入力 正徹 (xxx)

時過きぬ生田の小野は昨日たにとほぬは稀の若菜をそつむ

ときすきぬ−いくたのをのは−きのふたに−とほぬはまれの−わかなをそつむ


00555
未入力 正徹 (xxx)

かつつもる梢の雪の花のえはしつくに消ゆる朝日影かな

かつつもる−こすゑのゆきの−はなのえは−しつくにきゆる−あさひかけかな


00556
未入力 正徹 (xxx)

ときやらぬ氷の上にまよふなり滝の白淡の雪のむら消

ときやらぬ−こほりのうへに−まよふなり−たきのしらあわの−ゆきのむらきえ


00557
未入力 正徹 (xxx)

月に猶こほりにけりな日影にもつもりし庭の春のあわ雪

つきになほ−こほりにけりな−ひかけにも−つもりしにはの−はるのあわゆき


00558
未入力 正徹 (xxx)

雲さむみ春のみ友を松の戸は誰をともなき春の山路

くもさむみ−はるのみともを−まつのとは−たれをともなき−はるのやまみち


00559
未入力 正徹 (xxx)

木陰まていま消えはつる雪とみえて水なき庭の淡そ残れる

こかけまて−いまきえそむる−ゆきとみえて−みつなきにはの−あわそのこれる


00560
未入力 正徹 (xxx)

春さむみ杜の木のまをしのききてもとの朽はをしたふ雪かな

はるさむみ−もりのこのまを−しのききて−もとのくちはを−したふゆきかな


00561
未入力 正徹 (xxx)

消えのこる雪の太山の村からすたえたえおのか色そかくるる

きえのこる−ゆきのみやまの−むらからす−たえたえおのか−いろそかくるる


00562
未入力 正徹 (xxx)

松の葉のしつくは落ちて山風のさゆるやのこる雪の下柴

まつのはの−しつくはおちて−やまかせの−さゆるやのこる−ゆきのしたしは


00563
未入力 正徹 (xxx)

雲うすき日影の空にふり消えてしつくそつもる雪の山水

くもうすき−ひかけのそらに−ふりきえて−しつくそつもる−ゆきのやまみつ


00564
未入力 正徹 (xxx)

かつきえて岩根をあらふ淡雪の雫ににこる春の山の井

かつきえて−いはねをあらふ−あはゆきの−しつくににこる−はるのやまのゐ


00565
未入力 正徹 (xxx)

淡雪の空より消えて露とふり雫と落ちてこほる庭かな

あはゆきの−そらよりきえて−つゆとふり−しつくとおちて−こほるにはかな


00566
未入力 正徹 (xxx)

高砂や尾上の松にさく花も春にあひ生の雪の浦風

たかさこや−をのへのまつに−さくはなも−はるにあひおひの−ゆきのうらかせ


00567
未入力 正徹 (xxx)

今朝まても雪のきえつる色とたにみえぬ太山の松の夕風

けさまても−ゆきのきえつる−いろとたに−みえぬみやまの−まつのゆふかせ


00568
未入力 正徹 (xxx)

岡のへや松の雪消の春の水落葉なかれて又こほる比

をかのへや−まつのゆきけの−はるのみつ−おちはなかれて−またこほるころ


00569
未入力 正徹 (xxx)

とけて行く雪の雫も落はとちつららに高き岸の松かけ

とけてゆく−ゆきのしつくも−おちはとち−つららにたかき−きしのまつかけ


00570
未入力 正徹 (xxx)

山かつの垣ほの雪のむら消は枝にも見ゆる梅の初はな

やまかつの−かきほのゆきの−むらきえは−えたにもみゆる−うめのはつはな


00571
未入力 正徹 (xxx)

朝日さす宿の南のかきほかけ雪にきはある庭の草かな

あさひさす−やとのみなみの−かきほかけ−ゆきにきはある−にはのくさかな


00572
未入力 正徹 (xxx)

かささきのわたせる橋は滝の上のあさ野に白き春の淡雪

かささきの−わたせるはしは−たきのうへの−あさのにしろき−はるのあはゆき


00573
未入力 正徹 (xxx)

松かねの岩井の氷雪なから夏なき年の春のままなる

まつかねの−いはゐのこほり−ゆきなから−なつなきとしの−はるのままなる


00574
未入力 正徹 (xxx)

春きてもふしのは山のゆつりははとる人なしに雪にこもれる

はるきても−ふしのはやまの−ゆつりはは−とるひとなしに−ゆきにこもれる


00575
未入力 正徹 (xxx)

影みえぬ湊の小田ににこるなり春の雪けの水くきの岡

かけみえぬ−みなとのをたに−にこるなり−はるのゆきけの−みつくきのをか


00576
未入力 正徹 (xxx)

かけろふのもゆる春日のおのつからつもれは消えて淡雪そふる

かけろふの−もゆるはるひの−おのつから−つもれはきえて−あはゆきそふる


00577
未入力 正徹 (xxx)

花のひも水の氷もときなから春の心の淡雪そふる

はなのひも−みつのこほりも−ときなから−はるのこころの−あはゆきそふる


00578
未入力 正徹 (xxx)

天つ風はや雲雪をめくらすや春のつかひのたもとなるらん

あまつかせ−はやくもゆきを−めくらすや−はるのつかひの−たもとなるらむ


00579
未入力 正徹 (xxx)

新桑をかふこもまたき春の雪とくやしつ屋の軒の糸水

にひくはを−かふこもまたき−はるのゆき−とくやしつやの−のきのいとみつ


00580
未入力 正徹 (xxx)

むらむらに残りしままに残りける今朝の雪消の庭のしら淡

むらむらに−のこりしままに−のこりける−けさのゆきけの−にはのしらあわ


00581
未入力 正徹 (xxx)

長閑なる日影とともにちる雪の露のみつもる庭の若草

のとかなる−ひかけとともに−ちるゆきの−つゆのみつもる−にはのわかくさ


00582
未入力 正徹 (xxx)

いまも猶心つくしにうつろひし梅を哀と神や見るらん

いまもなほ−こころつくしに−うつろひし−うめをあはれと−かみやみるらむ


00583
未入力 正徹 (xxx)

住む人の心とめよと梅かかをうき世にしめて春風そふく

すむひとの−こころとめよと−うめかかを−うきよにしめて−はるかせそふく


00584
未入力 正徹 (xxx)

人はいさ心もしらすとはかりににほひ忘れぬ宿の梅かか

ひとはいさ−こころもしらす−とはかりに−にほひわすれぬ−やとのうめかか


00585
未入力 正徹 (xxx)

梅かえもほの見し夢のうつり香も行末かすめる月の衣手

うめかえも−ほのみしゆめの−うつりかも−ゆくへかすめる−つきのころもて


00586
未入力 正徹 (xxx)

よもの風吹きつたへける梅かかはいく世うつろふかたみなるらん

よものかせ−ふきつたへける−うめかかは−いくようつろふ−かたみなるらむ


00587
未入力 正徹 (xxx)

鴬の宿はととはぬ梅かかもさそふ嵐のこゑそこたふる

うくひすの−やとはととはぬ−うめかかも−さそふあらしの−こゑそこたふる


00588
未入力 正徹 (xxx)

三日月にむかへる岡の梅かかもかすむ夕の春の山かせ

みかつきに−むかへるをかの−うめかかも−かすむゆふへの−はるのやまかせ


00589
未入力 正徹 (xxx)

いつくとも木のもとしらぬみか月のうすき霞に匂ふ梅か香

いつくとも−このもとしらぬ−みかつきの−うすきかすみに−にほふうめかか


00590
未入力 正徹 (xxx)

そのそこにしろくさけるを梅そともしらぬ霞の匂ふ春風

そのそこに−しろくさけるを−うめそとも−しらぬかすみの−にほふはるかせ


00591
未入力 正徹 (xxx)

影うかふ山川あさみ水すみて夕の月ににほふむめかえ

かけうかふ−やまかはあさみ−みつすみて−ゆふへのつきに−にほふうめかえ


00592
未入力 正徹 (xxx)

かけにさへはねをならふる契あれやうかへる池のをしの梅かえ

かけにさへ−はねをならふる−ちきりあれや−うかへるいけの−をしのうめかえ


00593
未入力 正徹 (xxx)

春の色に鴬あをき鳥やきて枝にかくらん梅のはな笠

はるのいろに−うくひすあをき−とりやきて−えたにかくらむ−うめのはなかさ


00594
未入力 正徹 (xxx)

梅か枝の花は去年より花なから今朝さきそふる春の白雪

うめかえの−はなはこそより−はななから−けささきそふる−はるのしらゆき


00595
未入力 正徹 (xxx)

枕とふにほひもさむしさく梅の雪にとちたる窓の北風

まくらとふ−にほひもさむし−さくうめの−ゆきにとちたる−まとのきたかせ


00596
未入力 正徹 (xxx)

まとに今よみつる文を巻きもては眠そさむる梅のした風

まとにいま−よみつるふみを−まきもては−ねふりそさむる−うめのしたかせ


00597
未入力 正徹 (xxx)

袖ふれて遠かた人の心ひけ糸ならぬ梅の風ほそくとも

そてふれて−をちかたひとの−こころひけ−いとならぬうめの−かせほそくとも


00598
未入力 正徹 (xxx)

にほへなほとひくる人をわかためと思はぬ宿の梅の初花

にほへなほ−とひくるひとを−わかためと−おもはぬやとの−うめのはつはな


00599
未入力 正徹 (xxx)

梅花閨ちかくしてうつみ火のもとつ枝とくる露の下紐

うめのはな−ねやちかくして−うつみひの−もとつえとくる−つゆのしたひも


00600
未入力 正徹 (xxx)

宿の梅衣にほほせかつそとく人の心の花のしたひも

やとのうめ−ころもにほほせ−かつそとく−ひとのこころの−はなのしたひも


00601
未入力 正徹 (xxx)

庭となす土さへいまたあらかねに梅の匂ひのこまやかにして

にはとなす−つちさへいまた−あらかねに−うめのにほひの−こまやかにして


00602
未入力 正徹 (xxx)

さく梅の花の木陰のうす曇霞や袖に香をうつすらん

さくうめの−はなのこかけの−うすくもり−かすみやそてに−かをうつすらむ


00603
未入力 正徹 (xxx)

霞みきて梅の匂にむすはほれ風もきこえぬ苔の庭かな

かすみきて−うめのにほひに−むすほほれ−かせもきこえぬ−こけのにはかな


00604
未入力 正徹 (xxx)

古りにける梅のにほひを年年の若はにしむる庭の春草

ふりにける−うめのにほひを−としとしの−わかはにしむる−にはのはるくさ


00605
未入力 正徹 (xxx)

梅かえの匂の淵そなかれ行く千世の春せく花の遣水

うめかえの−にほひのふちそ−なかれゆく−ちよのはるせく−はなのやりみつ


00606
未入力 正徹 (xxx)

猶そまつ軒はの梅のさきしより匂ふあらしを宿の物とて

なほそまつ−のきはのうめの−さきしより−にほふあらしを−やとのものとて


00607
未入力 正徹 (xxx)

うつりきて軒端の花に成りにけり嵐にふかきよもの梅か香

うつりきて−のきはのはなに−なりにけり−あらしにふかき−よものうめかか


00608
未入力 正徹 (xxx)

梅かかも苔のみたれて匂ふまてふるき軒はに春風そ吹く

うめかかも−こけのみたれて−にほふまて−ふるきのきはに−はるかせそふく


00609
未入力 正徹 (xxx)

軒しろき月かとみれは更くるよの衣にほほす梅の下風

のきしろき−つきかとみれは−ふくるよの−ころもにほほす−うめのしたかせ


00610
未入力 正徹 (xxx)

身にそしむ軒のしのふも咲く梅の花に色つく春の秋風

みにそしむ−のきのしのふも−さくうめの−はなにいろつく−はるのあきかせ


00611
未入力 正徹 (xxx)

もえいうるる軒のしのふをかこととや袖にみたれてにほふ梅かか

もえいつる−のきのしのふを−かこととや−そてにみたれて−にほふうめかか


00612
未入力 正徹 (xxx)

むら鳥の羽風けちかき朝床に夢は軒はの梅かかそする

むらとりの−はかせけちかき−あさとこに−ゆめはのきはの−うめかかそする


00613
未入力 正徹 (xxx)

梅かえに其名もしらぬ鳥か鳴くあつまやかをる軒の春風

うめかえに−そのなもしらぬ−とりかなく−あつまやかをる−のきのはるかせ


00614
未入力 正徹 (xxx)

吹きおくる泊瀬おろしにさと人の袖にやとらぬ春の梅か香

ふきおくる−はつせおろしに−さとひとの−そてにやとらぬ−はるのうめかか


00615
未入力 正徹 (xxx)

梅かかもえやさそはれんなほさりに里とひすくる春の山風

うめかかも−えやさそはれむ−なほさりに−さととひすくる−はるのやまかせ


00616
未入力 正徹 (xxx)

難波かた小屋のもしほ火うら風に煙も春は梅かかそする

なにはかた−こやのもしほひ−うらかせに−けふりもはるは−うめかかそする


00617
未入力 正徹 (xxx)

なにはめか袖のかたしき梅かかも小屋のしのひにかよふうら風

なにはめか−そてのかたしき−うめかかも−こやのしのひに−かよふうらかせ


00618
未入力 正徹 (xxx)

すすふきししの屋は荒れて草莚吹きしく風は梅かかそする

すすふきし−しのやはあれて−くさむしろ−ふきしくかせは−うめかかそする


00619
未入力 正徹 (xxx)

鴬の屋との梅かえ隣とや手枕にほふ野へのはるかせ

うくひすの−やとのうめかえ−となりとや−たまくらにほふ−のへのはるかせ


00620
未入力 正徹 (xxx)

さく梅の花吹きちらす笛の音に風を恨みぬ木のもとの宿

さくうめの−はなふきちらす−ふえのねに−かせをうらみぬ−このもとのやと


00621
未入力 正徹 (xxx)

難波津のむかしの宮の跡そとや民のかまとに梅にほふらん

なにはつの−むかしのみやの−あとそとや−たみのかまとに−うめにほふらむ


00622
未入力 正徹 (xxx)

わけくらす遠かた野へに匂ふなりしろくさけるや梅の初花

わけくらす−をちかたのへに−にほふなり−しろくさけるや−うめのはつはな


00623
未入力 正徹 (xxx)

なには人ゆく袖ぬらせ玉鉾のみちくる塩も梅かかそする

なにはひと−ゆくそてぬらせ−たまほこの−みちくるしほも−うめかかそする


00624
未入力 正徹 (xxx)

袖のみか梅かかふるる駒の毛も香をしめぬとや道いさむらん

そてのみか−うめかかふるる−こまのけも−かをしめぬとや−みちいさむらむ


00625
未入力 正徹 (xxx)

風もをし道行ふりの梅かかや心なき人の袖したふらん

かせもをし−みちゆきふりの−うめかかや−こころなきひとの−そてしたふらむ


00626
未入力 正徹 (xxx)

行きかへる山路の梅に山人の此ころ袖は花のかそする

ゆきかへる−やまちのうめに−やまひとの−このころそては−はなのかそする


00627
未入力 正徹 (xxx)

ぬれつつそてゆくての梅の花笠はありてかひなき袖の春雨

ぬれつつそ−ゆくてのうめの−はなかさは−ありてかひなき−そてのはるさめ


00628
未入力 正徹 (xxx)

宿出てておほくの梅かかをしめはあたなる袖と花も頼まし

やといてて−おほくのうめか−かをしめは−あたなるそてと−はなもたのまし


00629
未入力 正徹 (xxx)

をとめ子も此世のむめの花のかを天のほ袖に春やしむらん

をとめこも−このよのうめの−はなのかを−あまのほそてに−はるやしむらむ


00630
未入力 正徹 (xxx)

梅かかの千しほの衣いつれとも色さたまらぬ袖の春風

うめかかの−ちしほのころも−いつれとも−いろさたまらぬ−そてのはるかせ


00631
未入力 正徹 (xxx)

ちる梅のにほひの淵となかれてもぬれぬ衣におつる春風

ちるうめの−にほひのふちと−なかれても−ぬれぬころもに−おつるはるかせ


00632
未入力 正徹 (xxx)

舟よせぬ春風なから梅かかのとまるや袖のみなとなるらん

ふねよせぬ−はるかせなから−うめかかの−とまるやそての−みなとなるらむ


00633
未入力 正徹 (xxx)

梅花さくや難波のあま衣塩なれし袖も匂ふ春風

うめのはな−さくやなにはの−あまころも−しほなれしそても−にほふはるかせ


00634
未入力 正徹 (xxx)

雨かをる雫を袖にかけてけり道行ふりのむめの花笠

あめかをる−しつくをそてに−かけてけり−みちゆきふりの−うめのはなかさ


00635
未入力 正徹 (xxx)

木間より袖もる月に梅かかのかすみてかよふ夜はの春風

このまより−そてもるつきに−うめかかの−かすみてかよふ−よはのはるかせ


00636
未入力 正徹 (xxx)

いく千世そ梅の花かめさしなから水のうき木にあへる匂ひは

いくちよそ−うめのはなかめ−さしなから−みつのうききに−あへるにほひは


00637
未入力 正徹 (xxx)

浮鳥のつかひはなれぬ池水に影そふ鮎の梅かかそする

うきとりの−つかひはなれぬ−いけみつに−かけそふをしの−うめかかそする


00638
未入力 正徹 (xxx)

滝つ浪かけ見ぬ梅も花のかもみわたにとまる春の川風

たきつなみ−かけみぬうめも−はなのかも−みわたにとまる−はるのかはかせ


00639
未入力 正徹 (xxx)

初瀬川花のやとりもさたかにて尾上の梅にかをる春かせ

はつせかは−はなのやとりも−さたかにて−をのへのうめに−かをるはるかせ


00640
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立田山梅かかむかふ初瀬風ゆふつけ鳥やこゑにほふらん

たつたやま−うめかかむかふ−はつせかせ−ゆふつけとりや−こゑにほふらむ


00641
未入力 正徹 (xxx)

むら雨に覚めてそにほふ夢人にきせてかへさぬ梅の花かさ

むらさめに−さめてそにほふ−ゆめひとに−きせてかへさぬ−うめのはなかさ


00642
未入力 正徹 (xxx)

春の夜の木のまの月の有明は思出あれやむめかかそする

はるのよの−このまのつきの−ありあけは−おもひいてあれや−うめかかそする


00643
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天つ風光も色も吹きわけて梅の匂ひにかすむ夜の月

あまつかせ−ひかりもいろも−ふきわけて−うめのにほひに−かすむよのつき


00644
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いとふなと梅のにほひを世にしめて霞に色を染むる月かけ

いとふなと−うめのにほひを−よにしめて−かすみにいろを−そむるつきかけ


00645
未入力 正徹 (xxx)

春の夜の枕の梅のうつり香にしくかた惜しきうたたねの袖

はるのよの−まくらのうめの−うつりかに−しくかたをしき−うたたねのそて


00646
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袖の上もかすめる閨にもる月を梅かかなから手枕にせむ

そてのうへも−かすめるねやに−もるつきを−うめかかなから−たまくらにせむ


00647
未入力 正徹 (xxx)

おもほえすやみはあやなき梅かかにねてか覚めてか袖をかしつる

おもほえす−やみはあやなき−うめかかに−ねてかさめてか−そてをかしつる


00648
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いく春そ木の間の月の有明に松のはかをるむめの下かせ

いくはるそ−このまのつきの−ありあけに−まつのはかをる−うめのしたかせ


00649
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袖しめし行へを人にこととひてさめぬ夢路ににほふ梅かか

そてしめし−ゆくへをひとに−こととひて−さめぬゆめちに−にほふうめかか


00650
未入力 正徹 (xxx)

風やしるいつくにさける梅ならんたた香はかりの春のよの闇

かせやしる−いつくにさける−うめならむ−たたかはかりの−はるのよのやみ


00651
未入力 正徹 (xxx)

梅かかもかすめる月のさ夜中に見はてぬ夢やわさと覚むらん

うめかかも−かすめるつきの−さよなかに−みはてぬゆめや−わさとさむらむ


00652
未入力 正徹 (xxx)

見し人の袖の香まかふ梅かえにかすめる月も深きよの夢

みしひとの−そてのかまかふ−うめかえに−かすめるつきも−ふかきよのゆめ


00653
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風ふけはさき初めし春も遠からぬ梅や千里ににほひ行くらん

かせふけは−さきそめしはるも−とほからぬ−うめやちさとに−にほひゆくらむ


00654
未入力 正徹 (xxx)

色香をも誰かかれとはをしへけん今年花しる梅の若枝に

いろかをも−たれかかれとは−をしへけむ−ことしはなしる−うめのわかえに


00655
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おく霜の氷吹きとく松風にうちいつる浪や梅の初はな

おくしもの−こほりふきとく−まつかせに−うちいつるなみや−うめのはつはな


00656
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散りうせぬこと葉の花を春うゑてさくや梅かえ匂ふ松かせ

ちりうせぬ−ことはのはなを−はるうゑて−さくやうめかえ−にほふまつかせ


00657
未入力 正徹 (xxx)

かたえさく梅の匂ひもたえたえに松の香ふかし庭の春風

かたえさく−うめのにほひも−たえたえに−まつのかふかし−にはのはるかせ


00658
未入力 正徹 (xxx)

宿にさく松の葉わけの梅かえも千代をはよそに匂ひやはせん

やとにさく−まつのはわけの−うめかえも−ちよをはよそに−にほひやはせむ


00659
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住吉の松の葉分の梅かかや難波のかたの春のうらかせ

すみよしの−まつのはわけの−うめかかや−なにはのかたの−はるのうらかせ


00660
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わつかなる春の胡蝶の羽風にも匂をちらす花そのの梅

わつかなる−はるのこてふの−はかせにも−にほひをちらす−はなそののうめ


00661
未入力 正徹 (xxx)

わか屋ととわきてはうゑしこの比の世はおしなへて梅かかそする

わかやとと−わきてはうゑし−このころの−よはおしなへて−うめかかそする


00662
未入力 正徹 (xxx)

ふかぬまそ袖にもとまる梅かえの匂や風のあと送るらん

ふかぬまそ−そてにもとまる−うめかえの−にほひやかせの−あとおくるらむ


00663
未入力 正徹 (xxx)

梅花にほふ朝日の山風や八十うち人の袖たつぬらむ

うめのはな−にほふあさひの−やまかせや−やそうちひとの−そてたつぬらむ


00664
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さく梅の星のまきれもくらき夜のやみのうつつは匂ふ春風

さくうめの−ほしのまきれも−くらきよの−やみのうつつは−にほふはるかせ


00665
未入力 正徹 (xxx)

なへて世のうらにみちぬる梅かかや天つをとめの袖の春風

なへてよの−うらにみちぬる−うめかかや−あまつをとめの−そてのはるかせ


00666
未入力 正徹 (xxx)

月出つる夕やみ晴れて家の風いまはたにほへ世世の梅か枝

つきいつる−ゆふやみはれて−いへのかせ−いまはたにほへ−よよのうめかえ


00667
未入力 正徹 (xxx)

わか宿と誰かしめゆふ梅かかを吹きくる風も遠つさと人

わかやとと−たれかしめゆふ−うめかかを−ふきくるかせも−とほつさとひと


00668
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かけなから梅の匂ひをおくりきぬ霞の末の月のした風

かけなから−うめのにほひを−おくりきぬ−かすみのすゑの−つきのしたかせ


00669
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嵐ふく遠き梅かえちらぬまも花にそはぬは匂なりけり

あらしふく−とほきうめかえ−ちらぬまも−はなにそはぬは−にほひなりけり


00670
未入力 正徹 (xxx)

よのつわの梅かえならすもろこしの南の江より風や吹くらん

よのつわの−うめかえならす−もろこしの−みなみのえより−かせやふくらむ


00671
未入力 正徹 (xxx)

梅かかもふりせぬ花のちらぬまにしらすいく世を宿にへぬらん

うめかかも−ふりせぬはなの−ちらぬまに−しらすいくよを−やとにへぬらむ


00672
未入力 正徹 (xxx)

梅かかに春は千里そこもり行くいくらの花に嵐吹くらむ

うめかかに−はるはちさとそ−こもりゆく−いくらのはなに−あらしふくらむ


00673
未入力 正徹 (xxx)

さく梅も松と竹とのよはひにて色香そ三の友にまされる

さくうめも−まつとたけとの−よはひにて−いろかそみつの−ともにまされる


00674
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家の風吹きまされなと香をとめて四代まてあふく梅の初花

いへのかせ−ふきまされなと−かをとめて−よよまてあふく−うめのはつはな


00675
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冬と春と行きかふ梅の花かたみめならぬ年をつむ匂かな

ふゆとはると−ゆきかふうめの−はなかたみ−めならぬとしを−つむにほひかな


00676
未入力 正徹 (xxx)

さかへ行く宿のかさしと成りぬとやほほゑむ梅の花のかほはせ

さかへゆく−やとのかさしと−なりぬとや−ほほゑむうめの−はなのかほはせ


00677
未入力 正徹 (xxx)

誰かしる梅の色香に染めおきしはしめの年の遠き心を

たれかしる−うめのいろかに−そめおきし−はしめのとしの−とほきこころを


00678
未入力 正徹 (xxx)

春ことにわれをいとはぬ色かゆゑ梅を手折りて老となりぬる

はることに−われをいとはぬ−いろかゆゑ−うめをたをりて−おいとなりぬる


00679
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匂ふとも色をはわかし行人の山路つつかぬやとの梅か枝

にほふとも−いろをはわかし−ゆくひとの−やまちつつかぬ−やとのうめかえ


00680
未入力 正徹 (xxx)

深かれとさらは思はし梅かかをしるはかりなる風にまかせて

ふかかれと−さらはおもはし−うめかかを−しるはかりなる−かせにまかせて


00681
未入力 正徹 (xxx)

袖の上にかつさく梅の花の香をふかくそしむる庭の春風

そてのうへに−かつさくうめの−はなのかを−ふかくそしむる−にはのはるかせ


00682
未入力 正徹 (xxx)

遠近の霞吹きとく春風にむすはほれたるむめかかそする

をちこちの−かすみふきとく−はるかせに−むすはほれたる−うめかかそする


00683
未入力 正徹 (xxx)

香そをしきかた山林むめならてましる木もなき花の春風

かそをしき−かたやまはやし−うめならて−ましるきもなき−はなのはるかせ


00684
未入力 正徹 (xxx)

梅かえの月をにほひのあるしにてかすむ色とふ花の春風

うめかえの−つきをにほひの−あるしにて−かすむいろとふ−はなのはるかせ


00685
未入力 正徹 (xxx)

みる夢のさむる枕の梅かかやむかしの風のかたみなるらん

みるゆめの−さむるまくらの−うめかかや−むかしのかせの−かたみなるらむ


00686
未入力 正徹 (xxx)

鴬のなみたの雨も紅に落ちそふむめの花のした露

うくひすの−なみたのあめも−くれなゐに−おちそふうめの−はなのしたつゆ


00687
未入力 正徹 (xxx)

吹きのほる尾上の松に浪そこす梅さく谷の春の川風

ふきのほる−をのへのまつに−なみそこす−うめさくたにの−はるのかはかせ


00688
未入力 正徹 (xxx)

おのかぬふ梅の花笠糸たえて散りかふ雨にぬるるうくひす

おのかぬふ−うめのはなかさ−いとたえて−ちりかふあめに−ぬるるうくひす


00689
未入力 正徹 (xxx)

むめなれや花のみそれの庭たつみあま風かをる雪のささ浪

うめなれや−はなのみそれの−にはたつみ−あまかせかをる−ゆきのささなみ


00690
未入力 正徹 (xxx)

つつみおく春の雪消の露もなし嵐の梅の春の衣手

つつみおく−はるのゆきけの−つゆもなし−あらしのうめの−はるのころもて


00691
未入力 正徹 (xxx)

初瀬風谷吹きのほる梅かかにかすむ尾上の月そいさよふ

はつせかせ−たにふきのほる−うめかかに−かすむをのへの−つきそいさよふ


00692
未入力 正徹 (xxx)

あすか川瀬による梅の花の春にもすそはぬらす春のたをやめ

あすかかは−せによるうめの−はなのはるに−もすそはぬらす−はるのたをやめ


00693
未入力 正徹 (xxx)

こん春も水にはさかし散る梅のなにうき草のねにかへるらん

こむはるも−みつにはさかし−ちるうめの−なにうきくさの−ねにかへるらむ


00694
未入力 正徹 (xxx)

行く河のみなきはふかくよりそくる梅ちる風の花のしら淡

ゆくかはの−みなきはふかく−よりそくる−うめちるかせの−はなのしらあわ


00695
未入力 正徹 (xxx)

ちる梅もあわとうかひてととまらす真砂をなかすいさら小河に

ちるうめも−あわとうかひて−ととまらす−まさこをなかす−いさらおかわに


00696
未入力 正徹 (xxx)

梅花ちらすか匂ふ飛鳥風君かあたりもみえぬ霞に

うめのはな−ちらすかにほふ−あすかかせ−きみかあたりも−みえぬかすみに


00697
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朝川の岸の藪梅ちりやせし水の煙にたつにほひかな

あさかはの−きしのやふうめ−ちりやせし−みつのけふりに−たつにほひかな


00698
未入力 正徹 (xxx)

さほ姫のかくる柳の花かつらみたれぬすちにまゆそこもれる

さほひめの−かくるやなきの−はなかつら−みたれぬすちに−まゆそこもれる


00699
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陰清き此川岸の糸柳むすふ契も世世にたえせし

かけきよき−このかはきしの−いとやなき−むすふちきりも−よよにたえせし


00700
未入力 正徹 (xxx)

老いぬれは柳のめさへかすむらん哀はかけよ春の川浪

おいぬれは−やなきのめさへ−かすむらむ−あはれはかけよ−はるのかはなみ


00701
未入力 正徹 (xxx)

立ちならふ柳のめにはさやかにも見ゆるやかすむ春の初花

たちならふ−やなきのめには−さやかにも−みゆるやかすむ−はるのはつはな


00702
未入力 正徹 (xxx)

春ことに柳のめにも恥ちぬへし老いてみたるる髪しありせは

はることに−やなきのめにも−はちぬへし−おいてみたるる−かみしありせは


00703
未入力 正徹 (xxx)

山もとの小川の水の淡と見しねしろの柳かすみ消えつつ

やまもとの−おかわのみつの−あわとみし−ねしろのやなき−かすみきえつつ


00704
未入力 正徹 (xxx)

民の戸にたてる柳の糸まゆを先引きはへて末いはふらん

たみのとに−たてるやなきの−いとまゆを−まつひきはへて−すゑいはふらむ


00705
未入力 正徹 (xxx)

日影さす一もと柳色そひてならふ春なき野への朝霜

ひかけさす−ひともとやなき−いろそひて−ならふはるなき−のへのあさしも


00706
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陰たかみ柳の糸につなく日のなかきも落ちて急く山のは

かけたかみ−やなきのいとに−つなくひの−なかきもおちて−いそくやまのは


00707
未入力 正徹 (xxx)

春にあふ柳もまゆをひらく門戸ささて御代のめくみまてとや

はるにあふ−やなきもまゆを−ひらくかと−とささてみよの−めくみまてとや


00708
未入力 正徹 (xxx)

ふる川や玉藻かくれの糸柳よるかたなしと身をも思はし

ふるかはや−たまもかくれの−いとやなき−よるかたなしと−みをもおもはし


00709
未入力 正徹 (xxx)

みなと川もろこし舟や陰にきてから藍そめし青柳の糸

みなとかは−もろこしふねや−かけにきて−からあゐそめし−あをやきのいと


00710
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春はまた浅せになひく藻上川岸の柳も色みえぬ比

はるはまた−あさせになひく−もかみかは−きしのやなきも−いろみえぬころ


00711
未入力 正徹 (xxx)

宇治川やたてる柳を橋姫の春の姿にたとへてや見ん

うちかはや−たてるやなきを−はしひめの−はるのすかたに−たとへてやみむ


00712
未入力 正徹 (xxx)

若草の野への緑もまたみえす一もと柳川風そふく

わかくさの−のへのみとりも−またみえす−ひともとやなき−かはかせそふく


00713
未入力 正徹 (xxx)

朽ちもせぬ岸の柳の花かつらむかしやかけし宇治のはし姫

くちもせぬ−きしのやなきの−はなかつら−むかしやかけし−うちのはしひめ


00714
未入力 正徹 (xxx)

川岸や柳の陰もうち霞みめくむか水のよとのわかこも

かはきしや−やなきのかけも−うちかすみ−めくむかみつの−よとのわかこも


00715
未入力 正徹 (xxx)

はし姫のみたす柳の花かつらまゆさへかすむ宇治の川風

はしひめの−みたすやなきの−はなかつら−まゆさへかすむ−うちのかはかせ


00716
未入力 正徹 (xxx)

いつからむ川戸の柳花落ちてうき草うつむ淀のわかこも

いつからむ−かはとのやなき−はなおちて−うきくさうつむ−よとのわかこも


00717
未入力 正徹 (xxx)

柳かも遠山姫のあさねかみみたれてたてる宿かともみゆ

やなきかも−とほやまひめの−あさねかみ−みたれてたてる−やとかともみゆ


00718
未入力 正徹 (xxx)

外山なる柳の目路のかすむより煙をたたぬ春の里人

とやまなる−やなきのめちの−かすむより−けふりをたたぬ−はるのさとひと


00719
未入力 正徹 (xxx)

山かつのおとろのかみにましりてもまよふすちなき青柳のいと

やまかつの−おとろのかみに−ましりても−まよふすちなき−あをやきのいと


00720
未入力 正徹 (xxx)

宿からのおもひありとやもえぬらん葎の門の春の青柳

やとからの−おもひありとや−もえぬらむ−むくらのかとの−はるのあをやき


00721
未入力 正徹 (xxx)

あふ坂や春にそあくる柳陰し水なかるる関の岩かと

あふさかや−はるにそあくる−やなきかけ−しみつなかるる−せきのいはかと


00722
未入力 正徹 (xxx)

色かへぬ千年の竹の世世の門たかき柳もまゆひらくなり

いろかへぬ−ちとせのたけの−よよのかと−たかきやなきも−まゆひらくなり


00723
未入力 正徹 (xxx)

ふかみとり杉たつ門の古柳めくむも春のしるしなりけり

ふかみとり−すきたつかとの−ふるやなき−めくむもはるの−しるしなりけり


00724
未入力 正徹 (xxx)

めも春をひらくか桑の門柳おなしみとりの苔の袖まて

めもはるを−ひらくかくはの−かとやなき−おなしみとりの−こけのそてまて


00725
未入力 正徹 (xxx)

春はなほたつや緑のめかれせす門もる柳いく世へぬらん

はるはなほ−たつやみとりの−めかれせす−かともるやなき−いくよへぬらむ


00726
未入力 正徹 (xxx)

朝かすみ煙の色にかけてけりかひ屋かつまの春の青柳

あさかすみ−けふりのいろに−かけてけり−かひやかつまの−はるのあをやき


00727
未入力 正徹 (xxx)

うちけふり野中の柳もゆるまて緑もみえぬ荻の焼原

うちけふり−のなかのやなき−もゆるまて−みとりもみえぬ−をきのやけはら


00728
未入力 正徹 (xxx)

あさみとり霞の中の小山田にかひ屋のけふり立つ柳かな

あさみとり−かすみのうちの−をやまたに−かひやのけふり−たつやなきかな


00729
未入力 正徹 (xxx)

煙をは木のめにみせてかけろふのもゆる春日にたつ柳かな

けふりをは−このめにみせて−かけろふの−もゆるはるひに−たつやなきかな


00730
未入力 正徹 (xxx)

浪にうく岸の柳の陰よりも猶なひきもの春の川風

なみにうく−きしのやなきの−かけよりも−なほなひきもの−はるのかはかせ


00731
未入力 正徹 (xxx)

柳かけふけはみたるる糸すちにやとりかねてや風の行くらん

やなきかけ−ふけはみたるる−いとすちに−やとりかねてや−かせのゆくらむ


00732
未入力 正徹 (xxx)

さほ姫の柳のかみのさかりはも衣のもすそにかすむ春風

さほひめの−やなきのかみの−さかりはも−きぬのもすそに−かすむはるかせ


00733
未入力 正徹 (xxx)

里とほみたかせの行て恋佗ひて野原の柳朽ちのこるちむ

さととほみ−たかせのゆくて−こひわひて−のはらのやなき−くちのこるちむ


00734
未入力 正徹 (xxx)

柳かけゆきやすらふをいな莚我しきほすと誰かみるらん

やなきかけ−ゆきやすらふを−いなむしろ−われしきほすと−たれかみるらむ


00735
未入力 正徹 (xxx)

かすむ日も柳にあそふ糸ゆふの消えぬみとりに春風そ吹く

かすむひも−やなきにあそふ−いとゆふの−きえぬみとりに−はるかせそふく


00736
未入力 正徹 (xxx)

春日さす柳の露の玉のをもみたれて空にあそふ糸ゆふ

はるひさす−やなきのつゆの−たまのをも−みたれてそらに−あそふいとゆふ


00737
未入力 正徹 (xxx)

をとめ子かかくる柳の玉かつらかさしの玉は露そこほるる

をとめこか−かくるやなきの−たまかつら−かさしのたまは−つゆそこほるる


00738
未入力 正徹 (xxx)

おしなへて春の錦や立田川入江の柳花にさかせて

おしなへて−はるのにしきや−たつたかは−いりえのやなき−はなにさかせて


00739
未入力 正徹 (xxx)

水草ゐる古江の柳朽ちすとももゆる緑のかけやなからん

みくさゐる−ふるえのやなき−くちすとも−もゆるみとりの−かけやなからむ


00740
未入力 正徹 (xxx)

氷とく古江の水草かたよりに糸もてはらふ青柳の風

こほりとく−ふるえのみくさ−かたよりに−いともてはらふ−あをやきのかせ


00741
未入力 正徹 (xxx)

江をめくる燕あまたの水すみて春日ゆるかぬ青柳の糸

えをめくる−つはめあまたの−みつすみて−はるひゆるかぬ−あをやきのいと


00742
未入力 正徹 (xxx)

川岸の大江の柳いつ朽ちて松はかりなる春のしるしそ

かはきしの−おほえのやなき−いつくちて−まつはかりなる−はるのしるしそ


00743
未入力 正徹 (xxx)

枝しつく岸の柳の糸水に又吹きみたす春の川かせ

えたしつく−きしのやなきの−いとみつに−またふきみたす−はるのかはかせ


00744
未入力 正徹 (xxx)

川岸やなかるる水のあわ糸をよるにはあらぬ春の青柳

かはきしや−なかるるみつの−あわいとを−よるにはあらぬ−はるのあをやき


00745
未入力 正徹 (xxx)

紙屋川水すむ岸の柳陰春はみとりの色そかさなる

かみやかは−みつすむきしの−やなきかけ−はるはみとりの−いろそかさなる


00746
未入力 正徹 (xxx)

はや川のあやふき岸の臥柳ことしもあれは緑そへつつ

はやかはの−あやふききしの−ふしやなき−ことしもあれは−みとりそへつつ


00747
未入力 正徹 (xxx)

なひけとも陰見ぬ野への山岸に川浪ほしくたつ柳かな

なひけとも−かけみぬのへの−やまきしに−かはなみほしく−たつやなきかな


00748
未入力 正徹 (xxx)

かれかれに見ゆへき色を忘草生ふてふ岸の春の青柳

かれかれに−みゆへきいろを−わすれくさ−おふてふきしの−はるのあをやき


00749
未入力 正徹 (xxx)

柳原舟行く岸のあさみとりいつるもかすむ末の川浪

やなきはら−ふねゆくきしの−あさみとり−いつるもかすむ−すゑのかはなみ


00750
未入力 正徹 (xxx)

わたつ海の南の岸の玉柳まゆのひかりや北のうら浪

わたつうみの−みなみのきしの−たまやなき−まゆのひかりや−きたのうらなみ


00751
未入力 正徹 (xxx)

春雨に野田の柳のいなむしろしくとはみれともる人もなし

はるさめに−のたのやなきの−いなむしろ−しくとはみれと−もるひともなし


00752
未入力 正徹 (xxx)

小山田のさかひの柳一かたにぬしさたまらすなひく春風

をやまたの−さかひのやなき−ひとかたに−ぬしさたまらす−なひくはるかせ


00753
未入力 正徹 (xxx)

真柴とる岩もとわらひ折りそへて行手ひまなき春の山人

ましはとる−いはもとわらひ−をりそへて−ゆくてひまなき−はるのやまひと


00754
未入力 正徹 (xxx)

わらひをるかた山ききす立ちかへりのこるほとろの陰やたのまん

わらひをる−かたやまききす−たちかへり−のこるほとろの−かけやたのまむ


00755
未入力 正徹 (xxx)

うつろひし山路の菊は紫のちりにそのこる春のさわらひ

うつろひし−やまちのきくは−むらさきの−ちりにそのこる−はるのさわらひ


00756
未入力 正徹 (xxx)

下蕨おへる薪にをりそへて花にやすらふ春のやま人

うちむれて−このしたわらひ−やまかつの−をるひやさとの−けふりともしき


00757
未入力 正徹 (xxx)

うちむれて木の下蕨山かつの折る日やさとの煙ともしき

したわらひ−おへるたききに−をりそへて−はなにやすらふ−はるのやまひと


00758
未入力 正徹 (xxx)

山かつの衣の色に紫のゆかりそ遠き道のさわらひ

やまかつの−ころものいろに−むらさきの−ゆかりそとほき−みちのさわらひ


00759
未入力 正徹 (xxx)

折よくもかた山林下草を先焼きすてき春のさわらひ

をりよくも−かたやまはやし−したくさを−まつたきすてき−はるのさわらひ


00760
未入力 正徹 (xxx)

末の世の人の心そとけかたき春の氷はしたにむすはて

すゑのよの−ひとのこころそ−とけかたき−はるのこほりは−したにむすはて


00761
未入力 正徹 (xxx)

氷とく沖中川も春の色にうち出つる浪の花の初しほ

こほりとく−おきなかかはも−はるのいろに−うちいつるなみの−はなのはつしほ


00762
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浪ともに氷の関をこえきてもいまた旅立つ春の川かせ

なみともに−こほりのせきを−こえきても−いまたたひたつ−はるのかはかせ


00763
未入力 正徹 (xxx)

朝ことに花そまさらぬ山風の霞吹きとく雪のしたひも

あさことに−はなそまさらぬ−やまかせの−かすみふきとく−ゆきのしたひも


00764
未入力 正徹 (xxx)

春の色の一しほ染の山ならぬ山こそなけれ霞そむらし

はるのいろの−ひとしほそめの−やまならぬ−やまこそなけれ−かすみそむらし


00765
未入力 正徹 (xxx)

民のため袖せはからす世におほへのこる山なき春の霞そ

たみのため−そてせはからす−よにおほへ−のこるやまなき−はるのかすみそ


00766
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朝霞所もわかぬ春の色をひとりよそなるふしの白雪

あさかすみ−ところもわかぬ−はるのいろを−ひとりよそなる−ふしのしらゆき


00767
未入力 正徹 (xxx)

色ふかき空の緑をうかへても水の心に春やあまれる

いろふかき−そらのみとりを−うかへても−みつのこころに−はるやあまれる


00768
未入力 正徹 (xxx)

高ねよりなひく霞やにほの海の浪の花おる春の衣手

たかねより−なひくかすみや−にほのうみの−なみのはなおる−はるのころもて


00769
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松陰そ千とせのあるし花鳥の春をうかふる宿の池水

まつかけそ−ちとせのあるし−はなとりの−はるをうかふる−やとのいけみつ


00770
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わかみとり色こき松の下染も藍よりいてぬ春のまし水

わかみとり−いろこきまつの−したそめも−あゐよりいてぬ−はるのましみつ


00771
未入力 正徹 (xxx)

松の色は四の常葉の春なからいかにおくりて千とせへぬらん

まつのいろは−よつのときはの−はるなから−いかにおくりて−ちとせへぬらむ


00772
未入力 正徹 (xxx)

春日さす緑や紅葉松のはの千世に千しほの色そまされる

はるひさす−みとりやもみち−まつのはの−ちよにちしほの−いろそまされる


00773
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行末もあへる君かな千千の春十度生ひかはる松のはしめに

ゆくすゑも−あへるきみかな−ちちのはると−たひおひかはる−まつのはしめに


00774
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八千とせの春ふる松や天地を二葉にわけし緑なるらん

やちとせの−はるふるまつや−あめつちを−ふたはにわけし−みとりなるらむ


00775
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宿しるき松もあるしの万代にかつそ千年の春を契れる

やとしるき−まつもあるしの−よろつよに−かつそちとせの−はるをちきれる


00776
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限なき此世に松したえせすは契かはらしゆくすゑのはる

かきりなき−このよにまつし−たえせすは−ちきりかはらし−ゆくすゑのはる


00777
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君はたた花に花さく松か枝の千世を弥継の年に逢見ん

きみはたた−はなにはなさく−まつかえの−ちよをやゆきの−としにあひみむ


00778
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此春は松に小松をならへみむ千とせの後も千世を契れと

このはるは−まつにこまつを−ならへみむ−ちとせののちも−ちよをちきれと


00779
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若葉さす松のありへむ千年山動なき色も春そ陰そふ

わかはさす−まつのありへむ−ちとせやま−うこきなきいろも−はるそかけそふ


00780
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古りにける軒はの松の若みとり立出ててまさる春の色かな

ふりにける−のきはのまつの−わかみとり−たちいててまさる−はるのいろかな


00781
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手向草松も花さくもくしら浜の庭の真砂やよろつ代の数

たむけくさ−まつもはなさく−しらはまの−にはのまさこや−よろつよのかす


00782
未入力 正徹 (xxx)

葉をかへぬ花さく春も万代を八尾の椿かけそふりせぬ

はをかへぬ−はなさくはるも−よろつよを−やつをのつはき−かけそふりせぬ


00783
未入力 正徹 (xxx)

呉竹そ先世になひく春の色は草にもあらす木にもなき比

くれたけそ−まつよになひく−はるのいろは−くさにもあらす−きにもなきころ


00784
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猶さえて雪けにかへる二月の雲やかすみを又かくすらん

なほさえて−ゆきけにかへる−きさらきの−くもやかすみを−またかくすらむ


00785
未入力 正徹 (xxx)

ふる年はのとかにこえし空さえて又二月に春やたつらん

ふるとしは−のとかにこえし−そらさえて−またきさらきに−はるやたつらむ


00786
未入力 正徹 (xxx)

風さゆる春の霞のむら消に又もえいつる野へのわか草

かせさゆる−はるのかすみの−むらきえに−またもえいつる−のへのわかくさ


00787
未入力 正徹 (xxx)

野も山も消ゆれはかてにふる雪の春日うらみてのこる木からし

のもやまも−きゆれはかてに−ふるゆきの−はるひうらみて−のこるこからし


00788
未入力 正徹 (xxx)

わひぬれはたたひとへのみきさらきの春もさえぬる苔のそてかな

わひぬれは−たたひとへのみ−きさらきの−はるもさえぬる−こけのそてかな


00789
未入力 正徹 (xxx)

雪さそふ嵐もさゆる衣手に今はた冬やきさらきの空

ゆきさそふ−あらしもさゆる−ころもてに−いまはたふゆや−きさらきのそら


00790
未入力 正徹 (xxx)

春の日も俄にさゆる風をいたみ花さきとまる二月の霜

はるのひも−にはかにさゆる−かせをいたみ−はなさきとまる−きさらきのしも


00791
未入力 正徹 (xxx)

さえかへるよもの桜も霜をいたみ又さきかぬる二月のはな

さえかへる−よものさくらも−しもをいたみ−またさきかぬる−きさらきのはな


00792
未入力 正徹 (xxx)

二月の雪に山風又さえて一むらかかる松のしら雪

きさらきの−ゆきにやまかせ−またさえて−ひとむらかかる−まつのしらゆき


00793
未入力 正徹 (xxx)

又さえて吹きのほる谷の春風にいくへの雪をきそのあさ衣

またさえて−ふきのほるたにの−はるかせに−いくへのゆきを−きそのあさきぬ


00794
未入力 正徹 (xxx)

猶さえて降りしく雪の光なき霞をほらふ春の谷風

なほさえて−ふりしくゆきの−ひかりなき−かすみをほらふ−はるのたにかせ


00795
未入力 正徹 (xxx)

天つ空よもの霞を吹きとちて春の嵐や冬こもるらむ

あまつそら−よものかすみを−ふきとちて−はるのあらしや−ふゆこもるらむ


00796
未入力 正徹 (xxx)

袖さむみ朝戸たてよとちる雪の又ふふき入る庭の春風

そてさむみ−あさとたてよと−ちるゆきの−またふふきいる−にはのはるかせ


00797
未入力 正徹 (xxx)

寒けさは秋にそまさる若草の霜の花さくをのの朝風

さむけさは−あきにそまさる−わかくさの−しものはなさく−をののあさかせ


00798
未入力 正徹 (xxx)

立ちかへり春の嵐の冬の霜たかもとゆひにみたれそふらん

たちかへり−はるのあらしの−ふゆのしも−たかもとゆひに−みたれそふらむ


00799
未入力 正徹 (xxx)

今はとて一重ぬきおく衣をも又きさらきの霜の朝風

いまはとて−ひとへぬきおく−ころもをも−またきさらきの−しものあさかせ


00800
未入力 正徹 (xxx)

降りきゆる雪の日影に松のはのしつくもこほる春の山風

ふりきゆる−ゆきのひかけに−まつのはの−しつくもこほる−はるのやまかせ


00801
未入力 正徹 (xxx)

春はまた嶺のささ原風さやきむら雲まよひ雪そ降りくる

はるはまた−みねのささはら−かせさやき−むらくもまよひ−ゆきそふりくる


00802
未入力 正徹 (xxx)

けぬか上に越路の嵐さえかへり雪をかさぬる春のしら山

けぬかうへに−こしちのあらし−さえかへり−ゆきをかさぬる−はるのしらやま


00803
未入力 正徹 (xxx)

早瀬川氷にせきて春さへも日数なかれぬ水のみなかみ

はやせかは−こほりにせきて−はるさへも−ひかすなかれぬ−みつのみなかみ


00804
未入力 正徹 (xxx)

かすむへきならひもしらす晴れくもり春のふふきをわたる月かけ

かすむへき−ならひもしらす−はれくもり−はるのふふきを−わたるつきかけ


00805
未入力 正徹 (xxx)

天つ風とけにし月のうは氷結ふかさゆる春の夜のかけ

あまつかせ−とけにしつきの−うはこほり−むすふかさゆる−はるのよのかけ


00806
未入力 正徹 (xxx)

かすみてそ猶さえかへる天つ風春のふふきをわたる月影

かすみてそ−なほさえかへる−あまつかせ−はるのふふきを−わたるつきかけ


00807
未入力 正徹 (xxx)

春寒み我か身霜ふるはかりこそ昔にもあらねかすむ月影

はるさむみ−わかみしもふる−はかりこそ−むかしにもあらね−かすむつきかけ


00808
未入力 正徹 (xxx)

さえかへる春やいつそも霞みつつくもるは晴るる月の雪けを

さえかへる−はるやいつそも−かすみつつ−くもるははるる−つきのゆきけを


00809
未入力 正徹 (xxx)

さゆる夜の雪の雫は音たてて軒のたるひにおつる月影

さゆるよの−ゆきのしつくは−おとたてて−のきのたるひに−おつるつきかけ


00810
未入力 正徹 (xxx)

天の原春の緑の色にすむ月の光はかすむともなし

あまのはら−はるのみとりの−いろにすむ−つきのひかりは−かすむともなし


00811
未入力 正徹 (xxx)

霞行く光そうつる春の夜の月のかつらの花染の袖

かすみゆく−ひかりそうつる−はるのよの−つきのかつらの−はなそめのそて


00812
未入力 正徹 (xxx)

夜もすから嵐に晴れぬ光かな月や霞をいとはさるらん

よもすから−あらしにはれぬ−ひかりかな−つきやかすみを−いとはさるらむ


00813
未入力 正徹 (xxx)

かすめとも空行く月の都にはしらす光を春やそふらん

かすめとも−そらゆくつきの−みやこには−しらすひかりを−はるやそふらむ


00814
未入力 正徹 (xxx)

中空にしはしやすらへ山のははいとと霞もふかきよの月

なかそらに−しはしやすらへ−やまのはは−いととかすみも−ふかきよのつき


00815
未入力 正徹 (xxx)

久かたの月のかつらももえいつる若葉のかけや猶かすむらん

ひさかたの−つきのかつらも−もえいつる−わかはのかけや−なほかすむらむ


00816
未入力 正徹 (xxx)

春のよの我かねし夢のうき橋をわたりにけりとのこる月かな

はるのよの−わかねしゆめの−うきはしを−わたりにけりと−のこるつきかな


00817
未入力 正徹 (xxx)

月にたにうかひそいてぬ興つしほかすめる浪の淡路島山

つきにたに−うかひそいてぬ−おきつしほ−かすめるなみの−あはちしまやま


00818
未入力 正徹 (xxx)

かすむへきならひはなにのゆゑそともなるる月さへしらぬ春のよ

かすむへき−ならひはなにの−ゆゑそとも−なるるつきさへ−しらぬはるのよ


00819
未入力 正徹 (xxx)

春ならす老いては月のくもる夜を霞みけりともいつまてかみし

はるならす−おいてはつきの−くもるよを−かすみけりとも−いつまてかみし


00820
未入力 正徹 (xxx)

うたたねの袖に落ちくる山風に花の香なからやとる月影

うたたねの−そてにおちくる−やまかせに−はなのかなから−やとるつきかけ


00821
未入力 正徹 (xxx)

月そすむ霞のうちになかれてもつひによる瀬ほ有明のかけ

つきそすむ−かすみのうちに−なかれても−つひによるせほ−ありあけのかけ


00822
未入力 正徹 (xxx)

天の川霞のみをにさかのほるうたかた消えて月や澄むらん

あまのかは−かすみのみをに−さかのほる−うたかたきえて−つきやすむらむ


00823
未入力 正徹 (xxx)

二月や春のよさむのうす氷空にのみしてのこる月かけ

きさらきや−はるのよさむの−うすこほり−そらにのみして−のこるつきかけ


00824
未入力 正徹 (xxx)

天つ風又や霞にたゆむらん月の氷の夜はのむらきえ

あまつかせ−またやかすみに−たゆむらむ−つきのこほりの−よはのむらきえ


00825
未入力 正徹 (xxx)

春はたたかすむならひの月影をさやかにみるや空めなるらん

はるはたた−かすむならひの−つきかけを−さやかにみるや−そらめなるらむ


00826
未入力 正徹 (xxx)

さほ姫の霞の袖の中なるやたかねし玉ののこる月かけ

さほひめの−かすみのそての−うちなるや−たかねしたまの−のこるつきかけ


00827
未入力 正徹 (xxx)

世世かけてうつまぬ春の光かなむかしの月のいまの霞に

よよかけて−うつまぬはるの−ひかりかな−むかしのつきの−いまのかすみに


00828
未入力 正徹 (xxx)

月ゆゑは霞もさこそいとふらめくもる名たての老の涙を

つきゆゑは−かすみもさこそ−いとふらめ−くもるなたての−おいのなみたを


00829
未入力 正徹 (xxx)

いとへ月花にうつりし春なからちるとて空にかへるこころを

いとへつき−はなにうつりし−はるなから−ちるとてそらに−かへるこころを


00830
未入力 正徹 (xxx)

老か身の昔見しにもかはらすは今夜の月やかすまさるらん

おいかみの−むかしみしにも−かはらすは−こよひのつきや−かすまさるらむ


00831
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さやかなる月のかつらの花かつら霞なかけそ天つはる風

さやかなる−つきのかつらの−はなかつら−かすみなかけそ−あまつはるかせ


00832
未入力 正徹 (xxx)

天つ空やみのうつつといふ程の夢路にちかくかすむ月かな

あまつそら−やみのうつつと−いふほとの−ゆめちにちかく−かすむつきかな


00833
未入力 正徹 (xxx)

立ちこむる霞の上の天の原おもへは月に春やなからむ

たちこむる−かすみのうへの−あまのはら−おもへはつきに−はるやなからむ


00834
未入力 正徹 (xxx)

老いてみる身はことわりの月の影秋なりともとかすむ春かな

おいてみる−みはことわりの−つきのかけ−あきなりともと−かすむはるかな


00835
未入力 正徹 (xxx)

天つ空月の光をうつしもて霞やひろく世をてらすらん

あまつそら−つきのひかりを−うつしもて−かすみやひろく−よをてらすらむ


00836
未入力 正徹 (xxx)

開きちるもえやは見えまし春霞月のかつらの花なかくしそ

さきちるも−えやはみえまし−はるかすみ−つきのかつらの−はななかくしそ


00837
未入力 正徹 (xxx)

天の川春の霞のみをつくし月の御舟そ立ちわかれ行く

あまのかは−はるのかすみの−みをつくし−つきのみふねそ−たちわかれゆく


00838
未入力 正徹 (xxx)

春のよをくもると見つつまとろめは夢路かすめる有明の月

はるのよを−くもるとみつつ−まとろめは−ゆめちかすめる−ありあけのつき


00839
未入力 正徹 (xxx)

わすられぬむかしの袖の影ならてかすめは遠き春のよの月

わすられぬ−むかしのそての−かけならて−かすめはとほき−はるのよのつき


00840
未入力 正徹 (xxx)

春はたた開きちる花に暮しても心やすめすかすむよの月

はるはたた−さきちるはなに−くらしても−こころやすめす−かすむよのつき


00841
未入力 正徹 (xxx)

花さかり望月の夜にめくりあへさてこそ春の最中ともみめ

はなさかり−もちつきのよに−めくりあへ−さてこそはるの−もなかともみめ


00842
未入力 正徹 (xxx)

空たかき中なへたてそ我か方を月のみるめもさそかすむらん

そらたかき−なかなへたてそ−わかかたを−つきのみるめも−さそかすむらむ


00843
未入力 正徹 (xxx)

限なく老いすはかすむ角やみんありやなしやもしらぬよの空

かきりなく−おいすはかすむ−つきやみむ−ありやなしやも−しらぬよのそら


00844
未入力 正徹 (xxx)

なかれくる氷も波も高島や此川上にかすむつきかけ

なかれくる−こほりもなみも−たかしまや−このかはかみに−かすむつきかけ


00845
未入力 正徹 (xxx)

春はたた月も霞を出てやらぬうき世の山や秋のよのそら

はるはたた−つきもかすみを−いてやらぬ−うきよのやまや−あきのよのそら


00846
未入力 正徹 (xxx)

さらしなを春の秋にてなかむれは霞もはてぬをはすての月

さらしなを−はるのあきにて−なかむれは−かすみもはてぬ−をはすてのつき


00847
未入力 正徹 (xxx)

老いらくのむかしをおもふ面影そみなものことにかすむ夜の月

おいらくの−むかしをおもふ−おもかけそ−みなものことに−かすむよのつき


00848
未入力 正徹 (xxx)

なれ行くを月もおもひの外なりと見るらん老の末の世の春

なれゆくを−つきもおもひの−ほかなりと−みるらむおいの−すゑのよのはる


00849
未入力 正徹 (xxx)

影もらてかすむ尾上の夕月よ深けてそ頼む空そすくなき

かけもらて−かすむをのへの−ゆふつくよ−ふけてそたのむ−そらそすくなき


00850
未入力 正徹 (xxx)

暮れぬまにかすむ光を待ちとるや入日にむかふ山の端の月

くれぬまに−かすむひかりを−まちとるや−いりひにむかふ−やまのはのつき


00851
未入力 正徹 (xxx)

夕ま暮かすみし梅の匂さへうす雲かかる月のかけかな

ゆふまくれ−かすみしうめの−にほひさへ−うすくもかかる−つきのかけかな


00852
未入力 正徹 (xxx)

緑そふ草を冬野の春さえて夕霜かすむ月の影かな

みとりそふ−くさをふゆのの−はるさえて−ゆふしもかすむ−つきのかけかな


00853
未入力 正徹 (xxx)

空にみて海士やはをしむ行く月の舟をなかして霞む夕風

そらにみて−あまやはをしむ−ゆくつきの−ふねをなかして−かすむゆふかせ


00854
未入力 正徹 (xxx)

めつらしき春たつ空の三日月を暮れなは誰か出てて見すらん

めつらしき−はるたつそらの−みかつきを−くれなはたれか−いててみすらむ


00855
未入力 正徹 (xxx)

さやかなる月をおほろにみるはてはやみともたとる老の春かな

さやかなる−つきをおほろに−みるはては−やみともたとる−おいのはるかな


00856
未入力 正徹 (xxx)

春の夜の袖そ朧のし水せく老の涙や大はらの月

はるのよの−そてそおほろの−しみつせく−おいのなみたや−おほはらのつき


00857
未入力 正徹 (xxx)

若草の末野の風の音もせて月そ霞のつまにこもれる

わかくさの−すゑののかせの−おともせて−つきそかすみの−つまにこもれる


00858
未入力 正徹 (xxx)

天つたふ道さまたけの霞ゆゑ月のあよみもいそくとはみす

あまつたふ−みちさまたけの−かすみゆゑ−つきのあよみも−いそくとはみす


00859
未入力 正徹 (xxx)

みすもあらす見もせぬ月の深くるまて無益空のかすむ夜はかな

みすもあらす−みもせぬつきの−ふくるまて−つれなくそらの−かすむよはかな


00860
未入力 正徹 (xxx)

村霞くもりみはれみ行く月に見し世の事もつつきやはする

むらかすみ−くもりみはれみ−ゆくつきに−みしよのことも−つつきやはする


00861
未入力 正徹 (xxx)

春の夜の晴れたる星の影ほとも袖にやとらてかすむ月かな

はるのよの−はれたるほしの−かけほとも−そてにやとらて−かすむつきかな


00862
未入力 正徹 (xxx)

行く春の山のはこえて朝日影にほふ雲間に残る月かな

ゆくはるの−やまのはこえて−あさひかけ−にほふくもまに−のこるつきかな


00863
未入力 正徹 (xxx)

うたたねの袖とふ月のかたはらに人こそみえね春のよの夢

うたたねの−そてとふつきの−かたはらに−ひとこそみえね−はるのよのゆめ


00864
未入力 正徹 (xxx)

しかの浦の春のかすみに残るらしふる郷人のそての月影

しかのうらの−はるのかすみに−のこるらし−ふるさとひとの−そてのつきかけ


00865
未入力 正徹 (xxx)

里はあれぬいととうき世と住佗ひて月や霞に身をかくすらん

さとはあれぬ−いととうきよと−すみわひて−つきやかすみに−みをかくすらむ


00866
未入力 正徹 (xxx)

世をうちのむなし涙や霞みけん難波の春の月のむかしに

よをうちの−むなしなみたや−かすみけむ−なにはのはるの−つきのむかしに


00867
未入力 正徹 (xxx)

くるるまはかすみし山も月出ててみれはさやけき春の色かな

くるるまは−かすみしやまも−つきいてて−みれはさやけき−はるのいろかな


00868
未入力 正徹 (xxx)

はるる夜は軒のしのふの山やみんみたれて霞む月の下風

はるるよは−のきのしのふの−やまやみむ−みたれてかすむ−つきのしたかせ


00869
未入力 正徹 (xxx)

夕霞月のかかみのうらなるや見し山鳥のをのへなるらん

ゆふかすみ−つきのかかみの−うらなるや−みしやまとりの−をのへなるらむ


00870
未入力 正徹 (xxx)

もしほやく海士のたくへき霞かは月を煙におほせさらなん

もしほやく−あまのたくへき−かすみかは−つきをけふりに−おほせさらなむ


00871
未入力 正徹 (xxx)

さ夜ふかく霞の網に入る月をひくや湊のあまのよひこゑ

さよふかく−かすみのあみに−いるつきを−ひくやみなとの−あまのよひこゑ


00872
未入力 正徹 (xxx)

行く春のかすみの袖のなかに入る玉かみなとにしたふ月かけ

ゆくはるの−かすみのそての−なかにいる−たまかみなとに−したふつきかけ


00873
未入力 正徹 (xxx)

ひらの海や雪吹きおろす山風に霞みてしつむみなと江の月

ひらのうみや−ゆきふきおろす−やまかせに−かすみてしつむ−みなとえのつき


00874
未入力 正徹 (xxx)

かすむ夜の月は真砂にうと浜や照すをとめの袖そ数そふ

かすむよの−つきはまさこに−うとはまや−てらすをとめの−そてそかすそふ


00875
未入力 正徹 (xxx)

興つ風あらき浜辺の白浪に霞をりふせやとる月影

おきつかせ−あらきはまへの−しらなみに−かすみをりふせ−やとるつきかけ


00876
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いもに恋ひたか折りしきし浜荻の春の枯葉に月やとるらん

いもにこひ−たかをりしきし−はまをきの−はるのかれはに−つきやとるらむ


00877
未入力 正徹 (xxx)

はまゆふもめくむはかりの月影をうすくへたててかすむ浪かな

はまゆふも−めくむはかりの−つきかけを−うすくへたてて−かすむなみかな


00878
未入力 正徹 (xxx)

玉よする玉津島江にかすむなり波を光の春の夜の月

たまよする−たまつしまえに−かすむなり−なみをひかりの−はるのよのつき


00879
未入力 正徹 (xxx)

春の夜のいさら小川の音深けてこほらぬ浪にくたく月かけ

はるのよの−いさらをかはの−おとふけて−こほらぬなみに−くたくつきかけ


00880
未入力 正徹 (xxx)

田上や川浪かけてやとるなりうすきかすみの衣手の月

たなかみや−かはなみかけて−やとるなり−うすきかすみの−ころもてのつき


00881
未入力 正徹 (xxx)

明かたの入野のかすみたなひくや弓張月の末そかくるる

あけかたの−いるののかすみ−たなひくや−ゆみはりつきの−すゑそかくるる


00882
未入力 正徹 (xxx)

おも影の猶うとまれぬ有明にゆかりかすめる月のうす雲

おもかけの−なほうとまれぬ−ありあけに−ゆかりかすめる−つきのうすくも


00883
未入力 正徹 (xxx)

山かつらかけのたれをのなかき夜は春にもありと月そ残れる

やまかつら−かけのたれをの−なかきよは−はるにもありと−つきそのこれる


00884
未入力 正徹 (xxx)

二月の在明の比も開きあはぬ月の木の間は花そつれなき

きさらきの−ありあけのころも−さきあはぬ−つきのこのまは−はなそつれなき


00885
未入力 正徹 (xxx)

のこるなりちりて花なき有明に春の心はとはかりの月

のこるなり−ちりてはななき−ありあけに−はるのこころは−とはかりのつき


00886
未入力 正徹 (xxx)

風そうき月な恨みそいもとせの山のかすみのきぬきぬの空

かせそうき−つきなうらみそ−いもとせの−やまのかすみの−きぬきぬのそら


00887
未入力 正徹 (xxx)

あひに逢ひて春行く色を染川の淵の緑にかすむ月影

あひにあひて−はるゆくいろを−そめかはの−ふちのみとりに−かすむつきかけ


00888
未入力 正徹 (xxx)

さためすよ秋の夕のことわりも又明ほのの春のあはれに

さためすよ−あきのゆふへの−ことわりも−またあけほのの−はるのあはれに


00889
未入力 正徹 (xxx)

見す聞かぬ山の花鳥色も音も霞にこもる春の明ほの

みすきかぬ−やまのはなとり−いろもねも−かすみにこもる−はるのあけほの


00890
未入力 正徹 (xxx)

雲鳥の色ねもにたる時やなき花に明行く春ならすとも

くもとりの−いろねもにたる−ときやなき−はなにあけゆく−はるならすとも


00891
未入力 正徹 (xxx)

春のよの花も匂はす月もなき霞そ明くる光なりける

はるのよの−はなもにほはす−つきもなき−かすみそあくる−ひかりなりける


00892
未入力 正徹 (xxx)

行く月も霞をわくる山風に花の香ほしき春の明ほの

ゆくつきも−かすみをわくる−やまかせに−はなのかほしき−はるのあけほの


00893
未入力 正徹 (xxx)

あくる夜の月と花との哀をもたたおし篭めて霞む春かな

あくるよの−つきとはなとの−あはれをも−たたおしこめて−かすむはるかな


00894
未入力 正徹 (xxx)

曙も花にあへるやをしからん木すゑわかれぬ嶺の横くも

あけほのも−はなにあへるや−をしからむ−こすゑわかれぬ−みねのよこくも


00895
未入力 正徹 (xxx)

花に月霞に鳥はさへつりて山もとくらき春の明ほの

はなにつき−かすみにとりは−さへつりて−やまもとくらき−はるのあけほの


00896
未入力 正徹 (xxx)

比はまた花も匂はす月もなし行末そかすむ春の明ほの

ころはまた−はなもにほはす−つきもなし−ゆくへそかすむ−はるのあけほの


00897
未入力 正徹 (xxx)

山風も花の香なから真木の戸をおして春雨曙の空

やまかせも−はなのかなから−まきのとを−おしてはるさめ−あけほののそら


00898
未入力 正徹 (xxx)

百千鳥ふかき霞に声消えぬ山は軒端の春の明ほの

ももちとり−ふかきかすみに−こゑきえぬ−やまはのきはの−はるのあけほの


00899
未入力 正徹 (xxx)

明ほのも花そ夜ふかき百千鳥さへつりいたす山の霞に

あけほのも−はなそよふかき−ももちとり−さへつりいたす−やまのかすみに


00900
未入力 正徹 (xxx)

山さくら色わく程の明ほのに霞をいつる鳥のこゑかな

やまさくら−いろわくほとの−あけほのに−かすみをいつる−とりのこゑかな


00901
未入力 正徹 (xxx)

いたつらにかすむ山かな曙の花もにほはす月も無きころ

いたつらに−かすむやまかな−あけほのの−はなもにほはす−つきもなきころ


00902
未入力 正徹 (xxx)

かくなから見はや鴬の雲霞嶺たちのこす明ほのの松

かくなから−みはやうくひすの−くもかすみ−みねたちのこす−あけほののまつ


00903
未入力 正徹 (xxx)

にほふ花かすめる山を形見にて又遠さかる月の明ほの

にほふはな−かすめるやまを−かたみにて−またとほさかる−つきのあけほの


00904
未入力 正徹 (xxx)

春ならぬ山とはなりぬ雪消えてさく花おそくさゆる曙

はるならぬ−やまとはなりぬ−ゆききえて−さくはなおそく−さゆるあけほの


00905
未入力 正徹 (xxx)

漁火のかすむそ見ゆるあまのたくなはの浦わの春の明ほの

いさりひの−かすむそみゆる−あまのたく−なはのうらわの−はるのあけほの


00906
未入力 正徹 (xxx)

春の夜のうら島かすみ雲そ立つこや玉くしけあけほのの空

はるのよの−うらしまかすみ−くもそたつ−こやたまくしけ−あけほののそら


00907
未入力 正徹 (xxx)

浦風もかすみのほりて高塩の曙おそきすまの山もと

うらかせも−かすみのほりて−たかしほの−あけほのおそき−すまのやまもと


00908
未入力 正徹 (xxx)

わたの原かすむ限はしら浪のへたてもとほし春の明ほの

わたのはら−かすむかきりは−しらなみの−へたてもとほし−はるのあけほの


00909
未入力 正徹 (xxx)

かすむ夜の花に枕をそはたてて曙しらぬすまの浦人

かすむよの−はなにまくらを−そはたてて−あけほのしらぬ−すまのうらひと


00910
未入力 正徹 (xxx)

霞みしく興つ白浪うら風に匂はぬ花の春の明ほの

かすみしく−おきつしらなみ−うらかせに−にほはぬはなの−はるのあけほの


00911
未入力 正徹 (xxx)

明けにけりあらましかはの春の花なきさにかすむしかの山本

あけにけり−あらましかはの−はるのはな−なきさにかすむ−しかのやまもと


00912
未入力 正徹 (xxx)

木のもとは花にむらむら明けそめて霞にくらき春の深山路

このもとは−はなにむらむら−あけそめて−かすみにくらき−はるのみやまち


00913
未入力 正徹 (xxx)

天地に雲をかさねて花そみつこれや神代の春の明ほの

あめつちに−くもをかさねて−はなそみつ−これやかみよの−はるのあけほの


00914
未入力 正徹 (xxx)

明ほのを花にゆつりて横雲のわかれてきゆる嶺の春風

あけほのを−はなにゆつりて−よこくもの−わかれてきゆる−みねのはるかせ


00915
未入力 正徹 (xxx)

散るよりも先そあたなるかつ消えて花にわかるる峰のよこ雲

ちるよりも−まつそあたなる−かつきえて−はなにわかるる−みねのよこくも


00916
未入力 正徹 (xxx)

あけすとも花さく嶺の横雲になかはかくして月は見まほし

あけすとも−はなさくみねの−よこくもに−なかはかくして−つきはみまほし


00917
未入力 正徹 (xxx)

百千鳥かすめる雨の花の香にぬれてさへつる曙の山

ももちとり−かすめるあめの−はなのかに−ぬれてさへつる−あけほののやま


00918
未入力 正徹 (xxx)

鳥かなくいまそ時しる山のはによひよりかけし花の横雲

とりかなく−いまそときしる−やまのはに−よひよりかけし−はなのよこくも


00919
未入力 正徹 (xxx)

命をやにしかへん庭鳥のおのれあらそふ春の比かな

いのちをや−あふにしかへむ−にはとりの−おのれあらそふ−はるのころかな


00920
未入力 正徹 (xxx)

雲ま行く月に木のめもかすむらんはらへ老その杜の春風

くもまゆく−つきにこのめも−かすむらむ−はらへおいその−もりのはるかせ


00921
未入力 正徹 (xxx)

なからふる我か世の年の春ことにかすむやとほき昔なるらん

なからふる−わかよのとしの−はることに−かすむやとほき−むかしなるらむ


00922
未入力 正徹 (xxx)

むら雨の梢の露も置きとめぬ花のやとりに山風そふく

むらさめの−こすゑのつゆも−おきとめぬ−はなのやとりに−やまかせそふく


00923
未入力 正徹 (xxx)

しからきや遠山の正木うつ紐をたな引きそむる春霞かな

しからきや−とほやまのまさき−うつひもを−たなひきそむる−はるかすみかな


00924
未入力 正徹 (xxx)

名にたかき尾上の鐘の声は猶かすみにさえてあくる春かな

なにたかき−をのへのかねの−こゑはなほ−かすみにさえて−あくるはるかな


00925
未入力 正徹 (xxx)

しるしらぬ袖ともわかぬ梅かかにおなしやとりの春の夜の月

しるしらぬ−そてともわかぬ−うめかかに−おなしやとりの−はるのよのつき


00926
未入力 正徹 (xxx)

うすこほりのこるはあれと初せ川はやくもなかは過くる春かな

うすこほり−のこるはあれと−はつせかは−はやくもなかは−すくるはるかな


00927
未入力 正徹 (xxx)

めかれしよ御戸の錦のひらくるは春の花よりあふそ稀なる

めかれしよ−みとのにしきの−ひらくるは−はるのはなより−あふそまれなる


00928
未入力 正徹 (xxx)

なへて世の天つ空にも君か住む宮このかすみ光そふらし

なへてよの−あまつそらにも−きみかすむ−みやこのかすみ−ひかりそふらし


00929
未入力 正徹 (xxx)

色見ゆる春の衣をいま一重世の人ことにたつかすみかな

いろみゆる−はるのころもを−いまひとへ−よのひとことに−たつかすみかな


00930
未入力 正徹 (xxx)

いくさとの花鳥の音もかすむ日の光のうちに篭る春かな

いくさとの−はなとりのねも−かすむひの−ひかりのうちに−こもるはるかな


00931
未入力 正徹 (xxx)

ほしかくる霞の衣ひまもなしいつくの空か天のかくやま

ほしかくる−かすみのころも−ひまもなし−いつくのそらか−あまのかくやま


00932
未入力 正徹 (xxx)

あふきみぬ人こそなけれ久かたの神代の春や天くたるらん

あふきみぬ−ひとこそなけれ−ひさかたの−かみよのはるや−あまくたるらむ


00933
未入力 正徹 (xxx)

うたたねの床のさ夜風吹きかすみ月やあらぬと梅かかそする

うたたねの−とこのさよかせ−ふきかすみ−つきやあらぬと−うめかかそする


00934
未入力 正徹 (xxx)

ねかはくは過きし年年引きかへて入をかすむる霞をは見し

ねかはくは−すきしとしとし−ひきかへて−ひとをかすむる−かすみをはみし


00935
未入力 正徹 (xxx)

吹きまよふ音こそきかね花とちる雲に枝なき天つ春風

ふきまよふ−おとこそきかね−はなとちる−くもにえたなき−あまつはるかせ


00936
未入力 正徹 (xxx)

久かたのすめるは空となりし世や春の光もてらし初めけん

ひさかたの−すめるはそらと−なりしよや−はるのひかりも−てらしそめけむ


00937
未入力 正徹 (xxx)

久堅の天にましける神代には空はかりにや春も立ちけん

ひさかたの−あめにましける−かみよには−そらはかりにや−はるもたちけむ


00938
未入力 正徹 (xxx)

よろつ民つくらむ田にも畠にもまく種ことにみのりさかへよ

よろつたみ−つくらむたにも−はたけにも−まくたねことに−みのりさかへよ


00939
未入力 正徹 (xxx)

たれか見しもと此土のあらかねになひく草木の春のわか葉を

たれかみし−もとこのつちの−あらかねに−なひくくさきの−はるのわかはを


00940
未入力 正徹 (xxx)

春は今朝八百日行きてや知らすらん浜の真砂の雪にかすめる

はるはけさ−やほかゆきてや−しらすらむ−はまのまさこの−ゆきにかすめる


00941
未入力 正徹 (xxx)

春や夢さきそめしよりぬるかうちにみるにもあらぬ花そ散行く

はるやゆめ−さきそめしより−ぬるかうちに−みるにもあらぬ−はなそちりゆく


00942
未入力 正徹 (xxx)

さまさまの誰かねかひもさもあらはあれ此春かなへ敷島のみち

さまさまの−たれかねかひも−さもあらはあれ−このはるかなへ−しきしまのみち


00943
未入力 正徹 (xxx)

此春は御代にありとしあらん人上はあはれとしもはしたかへ

このはるは−みよにありとし−あらむひと−かみはあはれと−しもはしたかへ


00944
未入力 正徹 (xxx)

めくりあひてかつみる花を惜むへき命もしらぬ老の春かな

めくりあひて−かつみるはなを−をしむへき−いのちもしらぬ−おいのはるかな


00945
未入力 正徹 (xxx)

梅かかそ去年にかはらぬもろ人の心の花を先ひらけとて

うめかかそ−こそにかはらぬ−もろひとの−こころのはなを−まつひらけとて


00946
未入力 正徹 (xxx)

しかのうらやのこる石井のもと桜花もむかしの陰やすくなき

しかのうらや−のこるいしゐの−もとさくら−はなもむかしの−かけやすくなき


00947
未入力 正徹 (xxx)

ことの葉の花ともかなや鴬も梅もさそはて見ん人のため

ことのはの−はなともかなや−うくひすも−うめもさそはて−みむひとのため


00948
未入力 正徹 (xxx)

花の香に翅をしめて白雲の嶺越えやらぬ春の雁かね

はなのかに−つはさをしめて−しらくもの−みねこえやらぬ−はるのかりかね


00949
未入力 正徹 (xxx)

木の間より花にかすみて久堅の光のとけき鳥の声かな

このまより−はなにかすみて−ひさかたの−ひかりのとけき−とりのこゑかな


00950
未入力 正徹 (xxx)

塵もゐぬ天つ雲井のかすめるを朝きよめする春の風かな

ちりもゐぬ−あまつくもゐの−かすめるを−あさきよめする−はるのかせかな


00951
未入力 正徹 (xxx)

久かたの天の戸出つる日の光春をそてらす御代もくもらし

ひさかたの−あまのといつる−ひのひかり−はるをそてらす−みよもくもらし


00952
未入力 正徹 (xxx)

花の香に世はうち霞み春の日の光になひく風はゆるくて

はなのかに−よはうちかすみ−はるのひの−ひかりになひく−かせはゆるくて


00953
未入力 正徹 (xxx)

春の空のなかはめくるも冬の日の時にも絶えぬ花の陰かな

はるのそらの−なかはめくるも−ふゆのひの−ときにもたえぬ−はなのかけかな


00954
未入力 正徹 (xxx)

雪消えし春の枯野の夕霞うつめはもゆる草の色かな

ゆききえし−はるのかれのの−ゆふかすみ−うつめはもゆる−くさのいろかな


00955
未入力 正徹 (xxx)

匂ふなりなきさの海士の家桜かすみてうつる月の夕浪

にほふなり−なきさのあまの−いへさくら−かすみてうつる−つきのゆふなみ


00956
未入力 正徹 (xxx)

こまかなる星の光はみな消えて霞みのこせる夜はの夕つつ

こまかなる−ほしのひかりは−みなきえて−かすみのこせる−よはのゆふつつ


00957
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けふそみる滝つ氷の関の戸もひらくる浪の春の初花

けふそみる−たきつこほりの−せきのとも−ひらくるなみの−はるのはつはな


00958
未入力 正徹 (xxx)

木の間よりおつる雪消の水澄みて春をふかむる滝の白浪

このまより−おつるゆきけの−みつすみて−はるをふかむる−たきのしらなみ


00959
未入力 正徹 (xxx)

今そうき宿かる春の花の露きえし所もむなし山風

いまそうき−やとかるはるの−はなのつゆ−きえしところも−むなしやまかせ


00960
未入力 正徹 (xxx)

世は春の霞にこもる思ひたに晴れぬさくらの雲となる比

よははるの−かすみにこもる−おもひたに−はれぬさくらの−くもとなるころ


00961
未入力 正徹 (xxx)

色にふけ草木も春をしらぬまの人の心の花のはつ風

いろにふけ−くさきもはるを−しらぬまの−ひとのこころの−はなのはつかせ


00962
未入力 正徹 (xxx)

貫川や風の心もやはらかに氷吹きとく瀬瀬のしら浪

ぬきかはや−かせのこころも−やはらかに−こほりふきとく−せせのしらなみ


00963
未入力 正徹 (xxx)

風ませに雪ちろほひて朝戸明の日影を寒み梅かかそする

かせませに−ゆきちろほひて−あさとあけの−ひかけをさむみ−うめかかそする


00964
未入力 正徹 (xxx)

篠むすふ庵の戸細も明けぬよに霰音して春風そ吹く

ささむすふ−いほのとほそも−あけぬよに−あられおとして−はるかせそふく


00965
未入力 正徹 (xxx)

ゆふかけてひくやしめ野の神風も長き草葉も春をしるらし

ゆふかけて−ひくやしめのの−かみかせも−なかきくさはも−はるをしるらし


00966
未入力 正徹 (xxx)

山おろし初瀬の霞吹きまよひこもりもはてぬ花の色色

やまおろし−はつせのかすみ−ふきまよひ−こもりもはてぬ−はなのいろいろ


00967
未入力 正徹 (xxx)

過きかての野への小松の末の世も花にや春の鴬のこゑ

すきかての−のへのこまつの−すゑのよも−はなにやはるの−うくひすのこゑ


00968
未入力 正徹 (xxx)

夢となる人にみせはや芦のはのもゆる難波の春のうつつを

ゆめとなる−ひとにみせはや−あしのはの−もゆるなにはの−はるのうつつを


00969
未入力 正徹 (xxx)

めくる江のなかれ洲崎のはなれ屋に燕出入る春日のとけし

めくるえの−なかれすさきの−はなれやに−つはめいている−はるひのとけし


00970
未入力 正徹 (xxx)

穂にいてて麦の秋風待つころは田かへす春とみるそすくなき

ほにいてて−むきのあきかせ−まつころは−たかへすはると−みるそすくなき


00971
未入力 正徹 (xxx)

すさましやあらすく牛のつく息もかすむ朝の春の小山田

すさましや−あらすくうしの−つくいきも−かすむあしたの−はるのをやまた


00972
未入力 正徹 (xxx)

道辺の鳥井も今そあひにあふみしめはへたる小田の苗代

みちのへの−とりゐもいまそ−あひにあふ−みしめはへたる−をたのなはしろ


00973
未入力 正徹 (xxx)

土かたき春のあら田の一かへしくるしきしつか初とそ見る

つちかたき−はるのあらたの−ひとかへし−くるしきしつか−はしめとそみる


00974
未入力 正徹 (xxx)

山もとの風ならねとますらをか霞をかへす春のあら小田

やまもとの−あらしならねと−ますらをか−かすみをかへす−はるのあらをた


00975
未入力 正徹 (xxx)

種まきし山田のくろに里の子の鳥おふ春の暮そさひしき

たねまきし−やまたのくろに−さとのこの−とりおふはるの−くれそさひしき


00976
未入力 正徹 (xxx)

種おろす苗代水にゐる鷺のいさなとるをもたつる里の子

たねおろす−なはしろみつに−ゐるさきの−いさなとるをも−たつるさとのこ


00977
未入力 正徹 (xxx)

鳴きつくす花の香かすむ大空も風ゆるき日の春のうくひす

なきつくす−はなのかかすむ−おほそらも−かせゆるきひの−はるのうくひす


00978
未入力 正徹 (xxx)

梢より羽風をふれて桜さく野への雲雀もおつる花かな

こすゑより−はかせをふれて−さくらさく−のへのひはりも−おつるはなかな


00979
未入力 正徹 (xxx)

春山や色音をかくす明くれに花も百千の鳥そこもれる

はるやまや−いろねをかくす−あけくれに−はなもももちの−とりそこもれる


00980
未入力 正徹 (xxx)

かひやなき遠山もとの雲霞おりたつ田子のかへす嵐は

かひやなき−とほやまもとの−くもかすみ−おりたつたこの−かへすあらしは


00981
未入力 正徹 (xxx)

山路行く夕のあらし松にかれ花こそあらめしら雲の宿

やまちゆく−ゆふへのあらし−まつにかれ−はなこそあらめ−しらくものやと


00982
未入力 正徹 (xxx)

しかのうらの霞をしのきいまもさそ山立ちのほる五色の雲

しかのうらの−かすみをしのき−いまもさそ−やまたちのほる−いついろのくも


00983
未入力 正徹 (xxx)

松の藤岩もとつつし下わらひ山をさなから折りやつす比

まつのふち−いはもとつつし−したわらひ−やまをさなから−をりやつすころ


00984
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降る雪もしはしな消えそ春たにも猶花さかぬいささむら竹

ふるゆきも−しはしなきえそ−はるたにも−なほはなさかぬ−いささむらたけ


00985
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春は先あらすきかへす小山田のすくなき水に蛙なくなり

はるはまつ−あらすきかへす−をやまたの−すくなきみつに−かはつなくなり


00986
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野へとほくもゆる千草のうす緑かすむ夕の松むしもかな

のへとほく−もゆるちくさの−うすみとり−かすむゆふへの−まつむしもかな


00987
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影もらぬ月のかりねの花の宿霞の光明けてかへらむ

かけもらぬ−つきのかりねの−はなのやと−かすみのひかり−あけてかへらむ


00988
未入力 正徹 (xxx)

松の上に春たちきてや千世の宿今朝よりしめて霞みしくらん

まつのうへに−はるたちきてや−ちよのやと−けさよりしめて−かすみしくらむ


00989
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夕ま暮野かひの牛は歩みきてかすめる道に逢ふ人もなし

ゆふまくれ−のかひのうしは−あゆみきて−かすめるみちに−あふひともなし


00990
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夕間暮春の野かひのうしとたに住むよをしらてたてる哀さ

ゆふまくれ−はるののかひの−うしとたに−すむよをしらて−たてるあはれさ


00991
未入力 正徹 (xxx)

たのめつる人は春の夜暮れやらて先まちとほの入会の声

たのめつる−ひとははるのよ−くれやらて−まつまちとほの−いりあひのこゑ


00992
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小泊瀬や川せに嶺の灯も落ちたる鐘そかすみあらそふ

をはつせや−かはせにみねの−ともしひも−おちたるかねそ−かすみあらそふ


00993
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夕霞なほこもり江に立ちこめぬ春ははつせの外よりや行く

ゆふかすみ−なほこもりえに−たちこめぬ−はるははつせの−ほかよりやゆく


00994
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川上の浪のこゑさへかすむなり月の笠置の山寺のかね

かはかみの−なみのこゑさへ−かすむなり−つきのかさきの−やまてらのかね


00995
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野へにしく霞のもすそたれ引くも雲そかさしの山桜花

のへにしく−かすみのもすそ−たれひくも−くもそかさしの−やまさくらはな


00996
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夕日さす霞の袖も立ちましり友とそあそふ野への糸ゆふ

ゆふひさす−かすみのそても−たちましり−ともとそあそふ−のへのいとゆふ


00997
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山もとやかすむ木の間をたえたえにかかれていつる春の川浪

やまもとや−かすむこのまを−たえたえに−かかれていつる−はるのかはなみ


00998
未入力 正徹 (xxx)

山こえて千里をみれは朝霞さわくはさらに浦風そ吹く

やまこえて−ちさとをみれは−あさかすみ−さわくはさらに−うらかせそふく


00999
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花ゆゑに見し雲雪の跡もなしあすや宿もる春の古郷

はなゆゑに−みしくもゆきの−あともなし−あすややともる−はるのふるさと


01000
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うらわかき此手柏をおほふかひなら山桜あらしにそちる

うらわかき−このてかしはを−おほふかひ−ならやまさくら−あらしにそちる


01001
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しかの山ここや聖のあとならむ霞にゆらく玉のを柳

しかのやま−ここやひしりの−あとならむ−かすみにゆらく−たまのをやなき


01002
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待ちもせぬしつ山かつの家さくらちるををしまぬ春や馴れけん

まちもせぬ−しつやまかつの−いへさくら−ちるををしまぬ−はるやなれけむ


01003
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春をへて身は住みなから山なしの花にかりなる此世をそしる

はるをへて−みはすみなから−やまなしの−はなにかりなる−このよをそしる


01004
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氷ゐし竹のほそ水音たてて軒はの山にかすむ梅かか

こほりゐし−たけのほそみつ−おとたてて−のきはのやまに−かすむうめかか


01005
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人はこて霞みそわたる足引の山さくら戸の前のたな橋

ひとはこて−かすみそわたる−あしひきの−やまさくらとの−まへのたなはし


01006
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風さむしまた初春の雲とみてかへすなうつむ花の荒小田

かせさむし−またはつはるの−くもとみて−かへすなうつむ−はなのあらをた


01007
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もる人はかりほも今はつくる田の苗見ぬ程の鳥いとふとて

もるひとは−かりほもいまは−つくるたの−なへみぬほとの−とりいとふとて


01008
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ひなの空長路くるしき花の陰あひやとりせよ春の山人

ひなのそら−なかちくるしき−はなのかけ−あひやとりせよ−はるのやまひと


01009
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いかかねん春のみなとの山桜浦風にほふ梶のまくらは

いかかねむ−はるのみなとの−やまさくら−うらかせにほふ−かちのまくらは


01010
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かさなるを春の初そおとろかし今はうからぬ老の年かな

かさなるを−はるのはしめそ−おとろかし−いまはうからぬ−おいのとしかな


01011
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おろかにも野への雲雀に事よせてあからぬ道を何学ひけん

おろかにも−のへのひはりに−ことよせて−あからぬみちを−なにまなひけむ


01012
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いつの代かねこし北野の神路山したつ岩ほに老松の風

いつのよか−ねこしきたのの−かみちやま−したついはほに−おいまつのかせ


01013
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久堅の神代のままに春の袖ふりさけみよと霞む空かな

ひさかたの−かみよのままに−はるのそて−ふりさけみよと−かすむそらかな


01014
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梅かえにかつ見え初めて草も木も御法の花にひもそとけ行く

うめかえに−かつみえそめて−くさもきも−みのりのはなに−ひもそとけゆく


01015
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待惜みさき散る花のふる郷や本のさとりの都なるらん

まちをしみ−さきちるはなの−ふるさとや−もとのさとりの−みやこなるらむ


01016
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をさまれといふは中中立ちかへり事新しき御代の年かな

をさまれと−いふはなかなか−たちかへり−ことあたらしき−みよのとしかな


01017
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今年より今年よりとそいはれけるねかひおほかる世をいはふとて

ことしより−ことしよりとそ−いはれける−ねかひおほかる−よをいはふとて


01018
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豊年の春としらする民の戸を明けてや今夜雪をみるらん

とよとしの−はるとしらする−たみのとを−あけてやこよひ−ゆきをみるらむ


01019
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うちむれていさみにゆかん諸人もいさみある世のけふの白馬

うちむれて−いさみにゆかむ−もろひとも−いさみあるよの−けふのあをうま


01020
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諸人の春の初のことふきに行末あへる御代の年かな

もろひとの−はるのはしめの−ことふきに−ゆくすゑあへる−みよのとしかな


01021
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山さくらむかふ硯の水の上にちらんこと葉の花そすくなき

やまさくら−むかふすすりの−みつのうへに−ちらむことはの−はなそすくなき


01022
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霞むなりいつくの花のおくよりか匂にもれて鐘きこゆらん

かすむなり−いつくのはなの−おくよりか−にほひにもれて−かねきこゆらむ


01023
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百敷にのほるや春のつかさめし筆のつかとる人もかしこし

ももしきに−のほるやはるの−つかさめし−ふてのつかとる−ひともかしこし


01024
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新桑の木の目は春のまゆこもりいふせくもあらす遊ふ糸ゆふ

にひくはの−このめははるの−まゆこもり−いふせくもあらす−あそふいとゆふ


01025
未入力 正徹 (xxx)

見すもあらぬ心にとふもこたへぬは旅ねむなしき春のよの夢

みすもあらぬ−こころにとふも−こたへぬは−たひねむなしき−はるのよのゆめ


01026
未入力 正徹 (xxx)

春の夜のみしかくもゆる灯の色さへかへの草となり行く

はるのよの−みしかくもゆる−ともしひの−いろさへかへの−くさとなりゆく


01027
未入力 正徹 (xxx)

すか莚なかく成行く日にそへてしきしのふ夜の夢の短さ

すかむしろ−なかくなりゆく−ひにそへて−しきしのふよの−ゆめのみしかさ


01028
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最上川岸の柳のいな莚夢はよそなる春の舟をさ

もかみかは−きしのやなきの−いなむしろ−ゆめはよそなる−はるのふなをさ


01029
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宇治川の車にかけし行末とや苗代水もめくりきぬらん

うちかはの−くるまにかけし−ゆくへとや−なはしろみつも−めくりきぬらむ


01030
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閨ちかく梅かかすなり鴬もおきいつる花の床や立ちうき

ねやちかく−うめかかすなり−うくひすも−おきいつるはなの−とこやたちうき


01031
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浪の上に春をしたふやあまを舟空にもさしてつるる雁かね

なみのうへに−はるをしたふや−あまをふね−そらにもさして−つるるかりかね


01032
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うゑてこそさくに逢ひぬれ昔せしわか兼言の春の初花

うゑてこそ−さくにあひぬれ−むかしせし−わかかねことの−はるのはつはな


01033
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吉野山あかぬ心をしをりにてわけ入る花は見ぬかたもなし

よしのやま−あかぬこころを−しをりにて−わけいるはなは−みぬかたもなし


01034
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さく花の陰まてゆかぬ衣手に匂ひにあまる春の山風

さくはなの−かけまてゆかぬ−ころもてに−にほひにあまる−はるのやまかせ


01035
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たちそははやかてを消えよ白雲にまかへはつへき山桜かは

たちそはは−やかてをきえよ−しらくもに−まかへはつへき−やまさくらかは


01036
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けふも又春はうき世の外にきてあへる花かとなかめくらしつ

けふもまた−はるはうきよの−ほかにきて−あへるはなかと−なかめくらしつ


01037
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ちらぬまも枝に青葉のかすそひて盛過行く花の色かな

ちらぬまも−えたにあをはの−かすそひて−さかりすきゆく−はなのいろかな


01038
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よきて吹く風はありとも心からととまらしとや花のちるらん

よきてふく−かせはありとも−こころから−ととまらしとや−はなのちるらむ


01039
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空かけて雲のかけはしわたるなりさくや吉野と小泊瀬の花

そらかけて−くものかけはし−わたるなり−さくやよしのと−をはつせのはな


01040
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此世にてみてるはくるし桜花さきそろはぬを盛とや見ん

このよにて−みてるはくるし−さくらはな−さきそろはぬを−さかりとやみむ


01041
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跡とめぬ雲にまかふにしるかりきうき世に花は久しからしと

あととめぬ−くもにまかふに−しるかりき−うきよにはなは−ひさしからしと


01042
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人とはぬしかの花その昔たにあれしもしらすさける春かな

ひととはぬ−しかのはなその−むかしたに−あれしもしらす−さけるはるかな


01043
未入力 正徹 (xxx)

せめてふけ花の手枕よのつねのすきまの風と思ふはかりは

せめてふけ−はなのたまくら−よのつねの−すきまのかせと−おもふはかりは


01044
未入力 正徹 (xxx)

さのみなとうき夕暮そみし花のかたみの雲をちらす山風

さのみなと−うきゆふくれそ−みしはなの−かたみのくもを−ちらすやまかせ


01045
未入力 正徹 (xxx)

めかれせぬいつの人まも時過きてうつろひはつる花の春風

めかれせぬ−いつのひとまも−ときすきて−うつろひはつる−はなのはるかせ


01046
未入力 正徹 (xxx)

高ねなる花の香さそふ夕風も今朝よりふかき御吉のの山

たかねなる−はなのかさそふ−ゆふかせも−けさよりふかき−みよしののやま


01047
未入力 正徹 (xxx)

咲くままに花しちらすは白雲の消えせぬ年を立ちやかさねん

さくままに−はなしちらすは−しらくもの−きえせぬとしを−たちやかさねむ


01048
未入力 正徹 (xxx)

物ことにおとろふる世は色もかもむかしの花の程やなからむ

ものことに−おとろふるよは−いろもかも−むかしのはなの−ほとやなからむ


01049
未入力 正徹 (xxx)

又そみる花も今年は老か世に開きあひかたくさそおもふらん

またそみる−はなもことしは−おいかよに−さきあひかたく−さそおもふらむ


01050
未入力 正徹 (xxx)

見てもしれ花もうき世に宿かりて風まつ程の春の盛を

みてもしれ−はなもうきよに−やとかりて−かせまつほとの−はるのさかりを


01051
未入力 正徹 (xxx)

年年に老のすかたも面なれて花にはつへき心たになし

としとしに−おいのすかたも−おもなれて−はなにはつへき−こころたになし


01052
未入力 正徹 (xxx)

花の色もなとか此世におはさらむ空に月日の光をそみる

はなのいろも−なとかこのよに−おはさらむ−そらにつきひの−ひかりをそみる


01053
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さくとたにおもひ出さて忘れなん花のうき世の春の山風

さくとたに−おもひいたさて−わすれなむ−はなのうきよの−はるのやまかせ


01054
未入力 正徹 (xxx)

木のもとに朽ちゆく色をみせしとや遠くも風の花さそふらん

このもとに−くちゆくいろを−みせしとや−とほくもかせの−はなさそふらむ


01055
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こゑはせよ花の木玉のよふこ鳥山路まよはす見ん人のため

こゑはせよ−はなのこたまの−よふことり−やまちまよはす−みむひとのため


01056
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ふりいてむ花の雪気は空晴れて梢にあらき春風そふく

ふりいてむ−はなのゆきけは−そらはれて−こすゑにあらき−はるかせそふく


01057
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枝かくす雲かさなりて高砂の松の木立そ花のままなる

えたかくす−くもかさなりて−たかさこの−まつのこたちそ−はなのままなる


01058
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花さかり誰も心は山にありておもひそよらぬ春のうらなみ

はなさかり−たれもこころは−やまにありて−おもひそよらぬ−はるのうらなみ


01059
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あまを舟初瀬しら浪をりかけて桜にたかき春の川風

あまをふね−はつせしらなみ−をりかけて−さくらにたかき−はるのかはかせ


01060
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網代木にいさよふ花の浪越えて八十うち山にちるさくらかな

あしろきに−いさよふはなの−なみこえて−やそうちやまに−ちるさくらかな


01061
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天つ空漕きゆく舟の白浪は散りかふ花に春の雁かね

あまつそら−こきゆくふねの−しらなみは−ちりかふはなに−はるのかりかね


01062
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此ころや色も匂も初瀬女かつくるゆふ花花にけたなむ

このころや−いろもにほひも−はつせめか−つくるゆふはな−はなにけたなむ


01063
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春はまたかた待つ比の山さくら枝をわけてや花もいそかむ

はるはまた−かたまつころの−やまさくら−えたをわけてや−はなもいそかむ


01064
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待遠の花を心にかけよとや今朝嶺こえてきさらきの雲

まちとほの−はなをこころに−かけよとや−けさみねこえて−きさらきのくも


01065
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春はまた立ちそふ嶺の雪かけて花待遠にさゆるしら雲

はるはまた−たちそふみねの−ゆきかけて−はなまちとほに−さゆるしらくも


01066
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山さくら一木は匂へおそくとも待ちそろへたる花はなくとも

やまさくら−ひときはにほへ−おそくとも−まちそろへたる−はなはなくとも


01067
未入力 正徹 (xxx)

みなと舟おひてなきさのうきねより猶いそかるる山桜かな

みなとふね−おひてなきさの−うきねより−なほいそかるる−やまさくらかな


01068
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さきやらす雨もふらなんと花ゆゑにくもる契そ先待たれける

さきやらす−あめもふらなむと−はなゆゑに−くもるちきりそ−まつまたれける


01069
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さかぬまをいそく心のいく度か花も匂はぬ山路こゆらん

さかぬまを−いそくこころの−いくたひか−はなもにほはぬ−やまちこゆらむ


01070
未入力 正徹 (xxx)

おそくとふ人ならはこそ待佗ひて恨みもやらめ春のはつ花

おそくとふ−ひとならはこそ−まちわひて−うらみもやらめ−はるのはつはな


01071
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さもあらぬ心なかさの行末とや老いても花の猶またるらん

さもあらぬ−こころなかさの−ゆくへとや−おいてもはなの−なほまたるらむ


01072
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いそかすや人まつさ夜の更かたにならひ久しき花の日数は

いそかすや−ひとまつさよの−ふけかたに−ならひひさしき−はなのひかすは


01073
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さく花を待つとせしまの有明にたくひつれなき峰の白雲

さくはなを−まつとせしまの−ありあけに−たくひつれなき−みねのしらくも


01074
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さくら咲く遠山守の使しも道さまたけの花やみるらん

さくらさく−とほやまもりの−つかひしも−みちさまたけの−はなやみるらむ


01075
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又そあらん花待つ山の時鳥色音をかへむ心つくしは

またそあらむ−はなまつやまの−ほとときす−いろねをかへむ−こころつくしは


01076
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尋ねしよいつくの春も桜花待かね山に秋風そふく

たつねしよ−いつくのはるも−さくらはな−まちかねやまに−あきかせそふく


01077
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けふ見てのおなし山路の時鳥待ちかさぬへき花の陰かな

けふみての−おなしやまちの−ほとときす−まちかさぬへき−はなのかけかな


01078
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偽の雲のみ引きてかさなれと嶺のさくらそ下につれなき

いつはりの−くものみひきて−かさなれと−みねのさくらそ−したにつれなき


01079
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つれなさをならひやすらむ初桜花まつ春の山郭公

つれなさを−ならひやすらむ−はつさくら−はなまつはるの−やまほとときす


01080
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山さくらたのめてかかるしら雲もまた偽のはれねゆふくれ

やまさくら−たのめてかかる−しらくもも−またいつはりの−はれねゆふくれ


01081
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いつまてか花よりも猶待とほに老の命をのへていそかむ

いつまてか−はなよりもなほ−まちとほに−おいのいのちを−のへていそかむ


01082
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けふもみすうきたる雲の足たゆく急雨はこふ山桜かな

けふもみす−うきたるくもの−あしたゆく−むらさめはこふ−やまさくらかな


01083
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いく春の花の下紐なかき日にめくりあひては心とくらむ

いくはるの−はなのしたひも−なかきひに−めくりあひては−こころとくらむ


01084
未入力 正徹 (xxx)

時をしる一木なからも心とき枝にや花の今朝はみゆらん

ときをしる−ひときなからも−こころとき−えたにやはなの−けさはみゆらむ


01085
未入力 正徹 (xxx)

匂ふなり花の下紐なかき日にかつとけわたる春の山かせ

にほふなり−はなのしたひも−なかきひに−かつとけわたる−はるのやまかせ


01086
未入力 正徹 (xxx)

開出てぬかそいろとなる雨をうけて先このかみの春の初花

さきいてぬ−かそいろとなる−あめをうけて−まつこのかみの−はるのはつはな


01087
未入力 正徹 (xxx)

とくおそく世はさまさまに待つ人も心そろはぬ花の下ひも

とくおそく−よはさまさまに−まつひとも−こころそろはぬ−はなのしたひも


01088
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過きにけりおもへは程も夏桜去年見し山の春の初花

すきにけり−おもへはほとも−なつさくら−こそみしやまの−はるのはつはな


01089
未入力 正徹 (xxx)

見すしらすおよはぬ里に一枝もあまりて匂へ初さくら花

みすしらす−およはぬさとに−ひとえたも−あまりてにほへ−はつさくらはな


01090
未入力 正徹 (xxx)

消えはてしたかねのみ雪又見えて世はのとけきや春の初花

きえはてし−たかねのみゆき−またみえて−よはのとけきや−はるのはつはな


01091
未入力 正徹 (xxx)

開きいつる花の色香の初染は人の心と春やしるらむ

さきいつる−はなのいろかの−はつそめは−ひとのこころと−はるやしるらむ


01092
未入力 正徹 (xxx)

さく花にあへるを春の光とや今朝は霞も色にそふらん

さくはなに−あへるをはるの−ひかりとや−けさはかすみも−いろにそふらむ


01093
未入力 正徹 (xxx)

初はなにたつや霞のうす衣つま吹きかへす春の山風

はつはなに−たつやかすみの−うすころも−つまふきかへす−はるのやまかせ


01094
未入力 正徹 (xxx)

山さくら花の下紐ときかけて苔の莚に誰をまつらん

やまさくら−はなのしたひも−ときかけて−こけのむしろに−たれをまつらむ


01095
未入力 正徹 (xxx)

しら雲の八重山遠く匂ふなり逢ふをかきりの花の春風

しらくもの−やへやまとほく−にほふなり−あふをかきりの−はなのはるかせ


01096
未入力 正徹 (xxx)

桜かり舟出してけり此ままに蓬かしまの花やたつねん

さくらかり−ふなてしてけり−このままに−よもきかしまの−はなやたつねむ


01097
未入力 正徹 (xxx)

おくれ猶また花の香もととまらぬ山路暮行く袖の月影

おくれなほ−またはなのかも−ととまらぬ−やまちくれゆく−そてのつきかけ


01098
未入力 正徹 (xxx)

山さくら初かり衣たつ日より花の香むかふ袖のはる風

やまさくら−はつかりころも−たつひより−はなのかむかふ−そてのはるかせ


01099
未入力 正徹 (xxx)

山ふかく花にあはすは帰らしと我そ入りにし雲のかよひち

やまふかく−はなにあはすは−かへらしと−われそいりにし−くものかよひち


01100
未入力 正徹 (xxx)

花の香の袖に匂ふをしるへにて霞にまよふもすの草茎

はなのかの−そてににほふを−しるへにて−かすみにまよふ−もすのくさくき


01101
未入力 正徹 (xxx)

行くもをし遠山桜めにかけていそくも浪の花の舟路は

ゆくもをし−とほやまさくら−めにかけて−いそくもなみの−はなのふなちは


01102
未入力 正徹 (xxx)

さく花のありかやいつこ白雲の空にをしへよかよふまほろし

さくはなの−ありかやいつこ−しらくもの−そらにをしへよ−かよふまほろし


01103
未入力 正徹 (xxx)

おくる霞のま袖ふりはへて山路にあふも花のかそする

かせおくる−かすみのまそて−ふりはへて−やまちにあふも−はなのかそする


01104
未入力 正徹 (xxx)

さくら花つつく山路を分行けは今朝そ雲井をかよふまほろし

さくらはな−つつくやまちを−わけゆけは−けさそくもゐを−かよふまほろし


01105
未入力 正徹 (xxx)

尋行くいつくの花ももろこしの吉野の奥にさゆる白雲

たつねゆく−いつくのはなも−もろこしの−よしののおくに−さゆるしらくも


01106
未入力 正徹 (xxx)

もろこしの吉野とおもふ花もなし秋津島ねをつくす山路に

もろこしの−よしのとおもふ−はなもなし−あきつしまねを−つくすやまちに


01107
未入力 正徹 (xxx)

さく花のやとりそ遠き分けつくす山路の鳥の声にまかせて

さくはなの−やとりそとほき−わけつくす−やまちのとりの−こゑにまかせて


01108
未入力 正徹 (xxx)

それなからむなしき雲に分暮れぬ有りてつれなき山さくらかな

それなから−むなしきくもに−わけくれぬ−ありてつれなき−やまさくらかな


01109
未入力 正徹 (xxx)

明日や見ん山ふみしても今夜まて桜にあらぬ雲の下ふし

あすやみむ−やまふみしても−こよひまて−さくらにあらぬ−くものしたふし


01110
未入力 正徹 (xxx)

暁の雲にあへるをしるへにて花を高根の月に尋ねん

あかつきの−くもにあへるを−しるへにて−はなをたかねの−つきにたつねむ


01111
未入力 正徹 (xxx)

おとろふる我か身の春の面影にのこすをうしと花やいとはん

おとろふる−わかみのはるの−おもかけに−のこすをうしと−はなやいとはむ


01112
未入力 正徹 (xxx)

軒はまてかすめる花の朝くもりあかてや花にめをきらすらん

のきはまて−かすめるはなの−あさくもり−あかてやはなに−めをきらすらむ


01113
未入力 正徹 (xxx)

こゑそうき花をみるめのまへわたりかこたんとすれは過くる松風

こゑそうき−はなをみるめの−まへわたり−かこたむとすれは−すくるまつかせ


01114
未入力 正徹 (xxx)

いにしへもなれしこと葉の花の陰色そふ春の友にあひぬる

いにしへも−なれしことはの−はなのかけ−いろそふはるの−ともにあひぬる


01115
未入力 正徹 (xxx)

二なき契もしらす山さくらなとをちこちの人に見ゆらん

ふたつなき−ちきりもしらす−やまさくら−なとをちこちの−ひとにみゆらむ


01116
未入力 正徹 (xxx)

石はしる滝ある花のをられすはみつともいはし見ぬ人のため

いしはしる−たきあるはなの−をられすは−みつともいはし−みぬひとのため


01117
未入力 正徹 (xxx)

花をのみみぬ人おほし朝霞たちましはるも都なりけり

はなをのみ−みぬひとおほし−あさかすみ−たちましはるも−みやこなりけり


01118
未入力 正徹 (xxx)

山桜花に見るめをかけぬとやうら風ならて浪はちるらん

やまさくら−はなにみるめを−かけぬとや−うらかせならて−なみはちるらむ


01119
未入力 正徹 (xxx)

人ならぬ木のめもなへてみる世とや太山の春の花はさくらん

ひとならぬ−このめもなへて−みるよとや−みやまのはるの−はなはさくらむ


01120
未入力 正徹 (xxx)

しるらめや去年見し花の春の友また世にあるもつれぬ習を

しるらめや−こそみしはなの−はるのとも−またよにあるも−つれぬならひを


01121
未入力 正徹 (xxx)

さくら花いかにあひみる心ともしらてや人にさきてちるらん

さくらはな−いかにあひみる−こころとも−しらてやひとに−さきてちるらむ


01122
未入力 正徹 (xxx)

尋ねきてけふそしつかにむかひみる千世もへぬへき花盛かな

たつねきて−けふそしつかに−むかひみる−ちよもへぬへき−はなさかりかな


01123
未入力 正徹 (xxx)

さやかなる色こそくもれ桜花みね世の春をおもふ涙に

さやかなる−いろこそくもれ−さくらはな−みねよのはるを−おもふなみたに


01124
未入力 正徹 (xxx)

霞みくる老の空めといふ事はたた雲とみる花の色かも

かすみくる−おいのそらめと−いふことは−たたくもとみる−はなのいろかも


01125
未入力 正徹 (xxx)

おも影も梢の月にかすむなり花に見し世の春の夜の夢

おもかけも−こすゑのつきに−かすむなり−はなにみしよの−はるのよのゆめ


01126
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日をかさねなれにし後はめを開きめを閉つれとも花そみえける

ひをかさね−なれにしのちは−めをひらき−めをとつれとも−はなそみえける


01127
未入力 正徹 (xxx)

山桜にほひも色もわかものとみるらん霞む木のもとの宿

やまさくら−にほひもいろも−わかものと−みるらむかすむ−このもとのやと


01128
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吹きはらふ花の朝露置きもあへす消えて世にふる雪の山風

ふきはらふ−はなのあさつゆ−おきもあへす−きえてよにふる−ゆきのやまかせ


01129
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ふかき夜の村雨かかる朝しめりまた開きしらぬ花の色かな

ふかきよの−むらさめかかる−あさしめり−またさきしらぬ−はなのいろかな


01130
未入力 正徹 (xxx)

露分けて山桜戸を出つる日のまれなる色そ花にうつろふ

つゆわけて−やまさくらとを−いつるひの−まれなるいろそ−はなにうつろふ


01131
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夕はえの色なる露も秋にして花そ身にしむ宿の春風

ゆふはえの−いろなるつゆも−あきにして−はなそみにしむ−やとのはるかせ


01132
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春も猶ひとりある人のいねかては月にかすめる花の下陰

はるもなほ−ひとりあるひとの−いねかては−つきにかすめる−はなのしたかけ


01133
未入力 正徹 (xxx)

見すや人木立も朽ちてかたふきぬ花こそ老を隔てさりけれ

みすやひと−こたちもくちて−かたふきぬ−はなこそおいを−へたてさりけれ


01134
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けふさくらめかれせぬまもそふ老を思ひも出てぬ花の陰かな

けふさくら−めかれせぬまも−そふおいを−おもひもいてぬ−はなのかけかな


01135
未入力 正徹 (xxx)

うゑし植ゑははや木高かれ山桜白雲まかふ花とみるまて

うゑしうゑは−はやこたかかれ−やまさくら−しらくもまかふ−はなとみるまて


01136
未入力 正徹 (xxx)

かたみとも見んともしらす老か世にたた花なれはうゑてけるかな

かたみとも−みむともしらす−おいかよに−たたはななれは−うゑてけるかな


01137
未入力 正徹 (xxx)

なからふる年をはならへ老か世にうゑおく花の行末の春

なからふる−としをはならへ−おいかよに−うゑおくはなの−ゆくすゑのはる


01138
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さくら花うゑけん時のしるしさへふる野の杉や生ひかはるらん

さくらはな−うゑけむときの−しるしさへ−ふるののすきや−おひかはるらむ


01139
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植ゑおくもよしなしさくら末の世の人のおもひの種をあまたに

うゑおくも−よしなしさくら−すゑのよの−ひとのおもひの−たねをあまたに


01140
未入力 正徹 (xxx)

誰もとへ人もおもひの種うゑし花もむくらの宿の夕暮

たれもとへ−ひともおもひの−たねうゑし−はなもむくらの−やとのゆふくれ


01141
未入力 正徹 (xxx)

うきなから春にあひみし老か身の年をやうゑて花にゆつらん

うきなから−はるにあひみし−おいかみの−としをやうゑて−はなにゆつらむ


01142
未入力 正徹 (xxx)

身をかへてみるともしらし桜花老いてうゑおく行末のはる

みをかへて−みるともしらし−さくらはな−おいてうゑおく−ゆくすゑのはる


01143
未入力 正徹 (xxx)

立ちかへり花の都のつとにおきてみるさへなれし友そ恋しき

たちかへり−はなのみやこの−つとにおきて−みるさへなれし−ともそこひしき


01144
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此春そかさしても見む桜花けには四十の老そかくれん

このはるそ−かさしてもみむ−さくらはな−けにはよそちの−おいそかくれむ


01145
未入力 正徹 (xxx)

かくるらむよそめそしらぬさくら花折りかさしても老は忘れす

かくるらむ−よそめそしらぬ−さくらはな−をりかさしても−おいはわすれす


01146
未入力 正徹 (xxx)

捨てしより心まかせの身にしあれと花ゆゑ行かぬかたそおほかる

すてしより−こころまかせの−みにしあれと−はなゆゑゆかぬ−かたそおほかる


01147
未入力 正徹 (xxx)

折りてさす花そ久しき玉たれのかめの上なる山さくらかも

をりてさす−はなそひさしき−たまたれの−かめのうへなる−やまさくらかも


01148
未入力 正徹 (xxx)

思ふともあはれ見ぬ世の春の花あかぬ色香や我を忘れむ

おもふとも−あはれみぬよの−はるのはな−あかぬいろかや−われをわすれむ


01149
未入力 正徹 (xxx)

さきにほふ花の春日の影もよし夜よしといひし月は霞みて

さきにほふ−はなのはるひの−かけもよし−よよしといひし−つきはかすみて


01150
未入力 正徹 (xxx)

散りちらすわくるま袖に匂ふなりさらぬかさしの花の山ふみ

ちりちらす−わくるまそてに−にほふなり−さらぬかさしの−はなのやまふみ


01151
未入力 正徹 (xxx)

梓弓この家さくら末たわに心ひかるる花さかりかな

あつさゆみ−このいへさくら−すゑたわに−こころひかるる−はなさかりかな


01152
未入力 正徹 (xxx)

ほとそなき散る桜あれは開くといふことのはたかふ花の日数は

ほとそなき−ちるさくらあれは−さくといふ−ことのはたかふ−はなのひかすは


01153
未入力 正徹 (xxx)

山さくら折りかさしても花は花老は老とやかくれなからん

やまさくら−をりかさしても−はなははな−おいはおいとや−かくれなからむ


01154
未入力 正徹 (xxx)

老か身をかくさんためと成りぬへし手折らて花を飽くまてやみん

おいかみを−かくさむためと−なりぬへし−たをらてはなを−あくまてやみむ


01155
未入力 正徹 (xxx)

嵐ふく花は今年も春の夢見はてん月にきゆる白雲

あらしふく−はなはことしも−はるのゆめ−みはてむつきに−きゆるしらくも


01156
未入力 正徹 (xxx)

山路行くたもとににほふ花の枝を朝露なから折りてかささむ

やまちゆく−たもとににほふ−はなのえを−あさつゆなから−をりてかささむ


01157
未入力 正徹 (xxx)

手折りつつかさす桜の花のかをうつるは老の袖にいとはす

たをりつつ−かさすさくらの−はなのかを−うつるはおいの−そてにいとはす


01158
未入力 正徹 (xxx)

をとめ子かかさしの桜かつ散りて雲の袖ふる山風そふく

をとめこか−かさしのさくら−かつちりて−くものそてふる−やまかせそふく


01159
未入力 正徹 (xxx)

開きみちて春はありとしある人のかさしの花の都ならすや

さきみちて−はるはありとし−あるひとの−かさしのはなの−みやこならすや


01160
未入力 正徹 (xxx)

あすか川花のかふれて行く袖の匂の淵よせになかはりそ

あすかかは−はなのかふれて−ゆくそての−にほひのふちよ−せになかはりそ


01161
未入力 正徹 (xxx)

心なく分入る苔の衣たに中にあらすと花やいとはむ

こころなく−わけいるこけの−ころもたに−なかにあらすと−はなやいとはむ


01162
未入力 正徹 (xxx)

ちらはうし雲をいく村あつめてか花の市なす春の山踏

ちらはうし−くもをいくむら−あつめてか−はなのいちなす−はるのやまふみ


01163
未入力 正徹 (xxx)

友と見て市のことくに立つ雲をいさわけいらん花さくら人

ともとみて−いちのことくに−たつくもを−いさわけいらむ−はなさくらひと


01164
未入力 正徹 (xxx)

山かつの行く袖すりの花のかをいとふにもあらししめむともせし

やまかつの−ゆくそてすりの−はなのかを−いとふにもあらし−しめむともせし


01165
未入力 正徹 (xxx)

しるらめや哀むかしの春の花身も盛にてみしそ忘れぬ

しるらめや−あはれむかしの−はるのはな−みもさかりにて−みしそわすれぬ


01166
未入力 正徹 (xxx)

墨染に打ちやつすとも色みえぬにほひを花の袖とまかへん

すみそめに−うちやつすとも−いろみえぬ−にほひをはなの−そてとまかへむ


01167
未入力 正徹 (xxx)

身におはぬ花をはしひて手折るとも猶家つととえこそ思はね

みにおはぬ−はなをはしひて−たをるとも−なほいへつとと−えこそおもはね


01168
未入力 正徹 (xxx)

手折りつつかさす桜の色にこそいとと老いぬる年はかくれね

たをりつつ−かさすさくらの−いろにこそ−いととおいぬる−としはかくれね


01169
未入力 正徹 (xxx)

心なくたをれる花の哀をもしらぬ翁といとと成行く

こころなく−たをれるはなの−あはれをも−しらぬおきなと−いととなりゆく


01170
未入力 正徹 (xxx)

石はしる滝をしのきて手折りこし枝とや花の浪もちるらん

いしはしる−たきをしのきて−たをりこし−えたとやはなの−なみもちるらむ


01171
未入力 正徹 (xxx)

契あれやたをれる枝にのこりきてわか閏にとく花の下ひも

ちきりあれや−たをれるえたに−のこりきて−わかねやにとく−はなのしたひも


01172
未入力 正徹 (xxx)

折りかさす花も時のまおとろへて果はかくれぬ老の春かな

をりかさす−はなもときのま−おとろへて−はてはかくれぬ−おいのはるかな


01173
未入力 正徹 (xxx)

さくら花折りてかささは中中に老いぬる人としるからむかも

さくらはな−をりてかささは−なかなかに−おいぬるひとと−しるからむかも


01174
未入力 正徹 (xxx)

色も香もまれなる花をかた人に頼みてまつもとはぬ宿かな

いろもかも−まれなるはなを−かたひとに−たのみてまつも−とはぬやとかな


01175
未入力 正徹 (xxx)

木のもとにけふうちむれてめかれせぬ花は誰にか心そむらん

このもとに−けふうちむれて−めかれせぬ−はなはたれにか−こころそむらむ


01176
未入力 正徹 (xxx)

やとりかす花のことの葉ならなくに旅ねしつけき松風の声

やとりかす−はなのことのは−ならなくに−たひねしつけき−まつかせのこゑ


01177
未入力 正徹 (xxx)

あかて行く花にかくれとかけさそふ岩まの水やさかのほるらん

あかてゆく−はなにかくれと−かけさそふ−いはまのみつや−さかのはるらむ


01178
未入力 正徹 (xxx)

われも見て花もろともに老いぬれと若枝たつなり行末の春

われもみて−はなもろともに−おいぬれと−わかえたつなり−ゆくすゑのはる


01179
未入力 正徹 (xxx)

盛なる花のよはひを思ふには老をや春の友とみさらん

さかりなる−はなのよはひを−おもふには−おいをやはるの−ともとみさらむ


01180
未入力 正徹 (xxx)

春をへし花はすかたもおとろへすわれをやもとの友とみさらん

はるをへし−はなはすかたも−おとろへす−われをやもとの−ともとみさらむ


01181
未入力 正徹 (xxx)

老いぬれはいとふならひを咲く花の心もしらすなるる春かな

おいぬれは−いとふならひを−さくはなの−こころもしらす−なるるはるかな


01182
未入力 正徹 (xxx)

年ふとも花は春にやそひはてんわかれぬへくも老いにけるかな

としふとも−はなははるにや−そひはてむ−わかれぬへくも−おいにけるかな


01183
未入力 正徹 (xxx)

ちる花に夢の枕はならへねと友なひきてし身とそ驚く

ちるはなに−ゆめのまくらは−ならへねと−ともなひきてし−みとそおとろく


01184
未入力 正徹 (xxx)

老か身を花は友とも思はてやかつは散行く庭となるらん

おいかみを−はなはともとも−おもはてや−かつはちりゆく−にはとなるらむ


01185
未入力 正徹 (xxx)

忘れなむ花に日かすのへにけるもいさしら雪の宿そふる郷

わすれなむ−はなにひかすの−へにけるも−いさしらゆきの−やとそふるさと


01186
未入力 正徹 (xxx)

尋ねきてちるまて花を水の江のうら島か子の世をやへにけん

たつねきて−ちるまてはなを−みつのえの−うらしまかこの−よをやへにけむ


01187
未入力 正徹 (xxx)

散るまては花にかへらし春の風我か家さくら咲くと告けすは

ちるまては−はなにかへらし−はるのかせ−わかいへさくら−さくとつけすは


01188
未入力 正徹 (xxx)

帰らしなうつろふまての花の陰日数かそへて人はまつとも

かへらしな−うつろふまての−はなのかけ−ひかすかそへて−ひとはまつとも


01189
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古郷を立ちぬる月のけふ出ててなれしもあかぬ花の陰かな

ふるさとを−たちぬるつきの−けふいてて−なれしもあかぬ−はなのかけかな


01190
未入力 正徹 (xxx)

あれまくも誰惜むらん花の陰日数うつろふ春のふる郷

あれまくも−たれをしむらむ−はなのかけ−ひかすうつろふ−はるのふるさと


01191
未入力 正徹 (xxx)

見る人の心の色とちる花のうつれはかはる日数をそつむ

みるひとの−こころのいろと−ちるはなの−うつれはかはる−ひかすをそつむ


01192
未入力 正徹 (xxx)

木のもとはうつろふ花の古郷にのこる日数や我を待つらん

このもとは−うつろふはなの−ふるさとに−のこるひかすや−われをまつらむ


01193
未入力 正徹 (xxx)

雪わくる山路まよふな花みつつ日をふる郷の春のよの夢

ゆきわくる−やまちまよふな−はなみつつ−ひをふるさとの−はるのよのゆめ


01194
未入力 正徹 (xxx)

暁のわかれもしらし朝霞花と春との中のころもは

あかつきの−わかれもしらし−あさかすみ−はなとはるとの−なかのころもは


01195
未入力 正徹 (xxx)

散過くる比しも花にのこる月いととつれなき在明の空

ちりすくる−ころしもはなに−のこるつき−いととつれなき−ありあけのそら


01196
未入力 正徹 (xxx)

桜花年にまれなる春をおきて時こそ有りけれ曙の空

さくらはな−としにまれなる−はるをおきて−ときこそありけれ−あけほののそら


01197
未入力 正徹 (xxx)

よのつねの鳥のさへつる声ならす此世にも似ぬ花の曙

よのつねの−とりのさへつる−こゑならす−このよにもにぬ−はなのあけほの


01198
未入力 正徹 (xxx)

光みぬ月ともわかす世は花の匂にかすむ春の明ほの

ひかりみぬ−つきともわかす−よははなの−にほひにかすむ−はるのあけほの


01199
未入力 正徹 (xxx)

山の色もうすき霞を匂にて明ほのいそく花鳥のこゑ

やまのいろも−うすきかすみを−にほひにて−あけほのいそく−はなとりのこゑ


01200
未入力 正徹 (xxx)

散らぬまと頼みやはせむ朝露の消えすはありとも花の下風

ちらぬまと−たのみやはせむ−あさつゆの−きえすはありとも−はなのしたかせ


01201
未入力 正徹 (xxx)

木のまよりいつる日影にみかくなり雲に玉ゐる花の朝露

このまより−いつるひかけに−みかくなり−くもにたまゐる−はなのあさつゆ


01202
未入力 正徹 (xxx)

香こそちれ露なき花の朝しめり枝うちなひく風ゆるくして

かこそちれ−つゆなきはなの−あさしめり−えたうちなひく−かせゆるくして


01203
未入力 正徹 (xxx)

みかけ猶朝露かすむ花のみに日数さしいつる春の白玉

みかけなほ−あさつゆかすむ−はなのみに−ひかすさしいつる−はるのしらたま


01204
未入力 正徹 (xxx)

山のはの花の梢にいつる日の朝露みかく影なかすみそ

やまのはの−はなのこすゑに−いつるひの−あさつゆみかく−かけなかすみそ


01205
未入力 正徹 (xxx)

山姫のあさ露分けて立ちいつるたもとか花のにほふ霞は

やまひめの−あさつゆわけて−たちいつる−たもとかはなの−にほふかすみは


01206
未入力 正徹 (xxx)

暮れやらてむへ山風も雪とふる花にやとらぬ入相のこゑ

くれやらて−うへやまかせも−ゆきとふる−はなにやとらぬ−いりあひのこゑ


01207
未入力 正徹 (xxx)

山さくら花吹きよわる夕嵐あすのなこりや猶のこすらん

やまさくら−はなふきよわる−ゆふあらし−あすのなこりや−なほのこすらむ


01208
未入力 正徹 (xxx)

墨染の夕かけ草の色もなし光にてらす花の木の本

すみそめの−ゆふかけくさの−いろもなし−ひかりにてらす−はなのこのもと


01209
未入力 正徹 (xxx)

花盛さやかにみかく星たにもまとほにかすむ春の夕やみ

はなさかり−さやかにみかく−ほしたにも−まとほにかすむ−はるのゆふやみ


01210
未入力 正徹 (xxx)

見し人の帰るや道にたとるらんたそかれ時の花の木の本

みしひとの−かへるやみちに−たとるらむ−たそかれときの−はなのこのもと


01211
未入力 正徹 (xxx)

色みえぬたそかれ時はかすめとも花はこたへぬ山風のこゑ

いろみえぬ−たそかれときは−かすめとも−はなはこたへぬ−やまかせのこゑ


01212
未入力 正徹 (xxx)

影みよと花の鏡を暮れぬまの梢にかけていつる月かな

かけみよと−はなのかかみを−くれぬまの−こすゑにかけて−いつるつきかな


01213
未入力 正徹 (xxx)

めくりあふ花の木のまの夕月夜又いつの世の春かかからむ

めくりあふ−はなのこのまの−ゆふつくよ−またいつのよの−はるかかからむ


01214
未入力 正徹 (xxx)

心あれや朧月夜の花の色の明くるををしむ霞はかりは

こころあれや−おほろつきよの−はなのいろの−あくるををしむ−かすみはかりは


01215
未入力 正徹 (xxx)

夜に広き夜はの嵐の花さかり心におほふ袖はせはくて

よにひろき−よはのあらしの−はなさかり−こころにおほふ−そてはせはくて


01216
未入力 正徹 (xxx)

花もさそよるの思ひの家桜いとへうき世の春の山風

はなもさそ−よるのおもひの−いへさくら−いとへうきよの−はるのやまかせ


01217
未入力 正徹 (xxx)

風ふけは花ちる山におもひ入る夢路の雪も深きよの空

かせふけは−はなちるやまに−おもひいる−ゆめちのゆきも−ふかきよのそら


01218
未入力 正徹 (xxx)

深き夜の花の木陰にそむけ置きてともにあはれむ春の灯

ふかきよの−はなのこかけに−そむけおきて−ともにあはれむ−はるのともしひ


01219
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木の本の雪に光をそへんとや朧月夜に花はちるらむ

このもとの−ゆきにひかりを−そへむとや−おほろつきよに−はなはちるらむ


01220
未入力 正徹 (xxx)

おのつからさくは雲井にすめるかな花の都の月の宮人

おのつから−さくはくもゐに−すめるかな−はなのみやこの−つきのみやひと


01221
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世は春の花にかすめる月のかに幾里人の袖のせはけむ

よははるの−はなにかすめる−つきのかに−いくさとひとの−そてのせはけむ


01222
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色そそふ月も木の間にうつりきて花の香つたふ在明の影

いろそそふ−つきもこのまに−うつりきて−はなのかつたふ−ありあけのかけ


01223
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光ありと見しは霞の空めにて木の間の月そ花に色そふ

ひかりありと−みしはかすみの−そらめにて−このまのつきそ−はなにいろそふ


01224
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色もかもけふを盛の花の枝ゆるくはかりの風たにもなし

いろもかも−けふをさかりの−はなのえた−ゆるくはかりの−かせたにもなし


01225
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さきてちる花のよはひも程なきを盛の色に心とめつつ

さきてちる−はなのよはひも−ほとなきを−さかりのいろに−こころとめつつ


01226
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庭の苔空のみとりもひとつにて花開きのほる春の白雲

にはのこけ−そらのみとりも−ひとつにて−はなさきのほる−はるのしらくも


01227
未入力 正徹 (xxx)

開きにほふ嶺のさくらの花かつらあかてそむかふ永き日くらし

さきにほふ−みねのさくらの−はなかつら−あかてそむかふ−なかきひくらし


01228
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今朝は猶見し白雲も高からす開きてかたふく峰の桜木

けさはなほ−みししらくもも−たかからす−さきてかたふく−みねのさくらき


01229
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雨風も心ある年の春なれや日数そちらぬ花にうつろふ

あめかせも−こころあるとしの−はるなれや−ひかすそちらぬ−はなにうつろふ


01230
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あらかねの土にも天つ白雲のたねはありける花さかりかな

あらかねの−つちにもあまつ−しらくもの−たねはありける−はなさかりかな


01231
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今年さく若木の桜行末の春にまさらん花をしそ思ふ

ことしさく−わかきのさくら−ゆくすゑの−はるにまさらむ−はなをしそおもふ


01232
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山風もにほひ色こき白雲のあつきはおくの花盛かも

やまかせも−にほひいろこき−しらくもの−あつきはおくの−はなさかりかも


01233
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花のえも風さへゆらく玉たれの簾にかかる庭の白雲

はなのえも−かせさへゆらく−たまたれの−すたれにかかる−にはのしらくも


01234
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桜さく山分衣袖の上に匂ひそおもきはなの下かせ

さくらさく−やまわけころも−そてのうへに−にほひそおもき−はなのしたかせ


01235
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露そちる花の色香をしめて行く山路の雲の中の衣手

つゆそちる−はなのいろかを−しめてゆく−やまちのくもの−なかのころもて


01236
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われそうきむかしの花の面影はいととさかりにかはるすかたを

われそうき−むかしのはなの−おもかけは−いととさかりに−かはるすかたを


01237
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風ふかぬ春日のとけみ開匂ふ花に心をあはせてそ見る

かせふかぬ−はるひのとけみ−さきにほふ−はなにこころを−あはせてそみる


01238
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身にしめて春の日くらしむかふとや花の心に秋風の吹く

みにしめて−はるのひくらし−むかふとや−はなのこころに−あきかせのふく


01239
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朝露はかかれとてしも消えさりし夕の風に散るさくらかな

あさつゆは−かかれとてしも−きえさりし−ゆふへのかせに−ちるさくらかな


01240
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いかにせんをはすて山の月の秋かかる桜のさく世なりせは

いかにせむ−をはすてやまの−つきのあき−かかるさくらの−さくよなりせは


01241
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玉ゆらの花に心をやすめてそ露けき老のさかも残らん

たまゆらの−はなにこころを−やすめてそ−つゆけきおいの−さかものこらむ


01242
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わか庵は老をなくさの浜ひさし袖によりくる花のしら浪

わかいほは−おいをなくさの−はまひさし−そてによりくる−はなのしらなみ


01243
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袖ふれつ老を忘れてなるるをも花はいとはぬならひはかりに

そてふれつ−おいをわすれて−なるるをも−はなはいとはぬ−ならひはかりに


01244
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をしめとも庭に散りしく花莚それも心をのふる老かな

をしめとも−にはにちりしく−はなむしろ−それもこころを−のふるおいかな


01245
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春の花都のつとにつつみおく山のかすみを風なおくりそ

はるのはな−みやこのつとに−つつみおく−やまのかすみを−かせなおくりそ


01246
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うすもののあやなき春の衣かな霞にすける山桜はな

うすものの−あやなきはるの−ころもかな−かすみにすける−やまさくらはな


01247
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霞かはかねて煙の色なから花に立ちそひし松もうらめし

かすみかは−かねてけふりの−いろなから−はなにたちそひし−まつもうらめし


01248
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さほ姫の霞のま袖ふりはへてあかすやたてる花の木の本

さほひめの−かすみのまそて−ふりはへて−あかすやたてる−はなのこのもと


01249
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木のもとに心なとめそ桜かりかりの此世に匂ふ山かせ

このもとに−こころなとめそ−さくらかり−かりのこのよに−にほふやまかせ


01250
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紅ににほふか上と見し菊の遠山さくらかすむ君かな

くれなゐに−にほふかうへと−みしきくの−とほやまさくら−かすむきみかな


01251
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御吉野の出した風そ匂ひくる霞のおくの花盛かも

みよしのの−やましたかせそ−にほひくる−かすみのおくの−はなさかりかも


01252
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さくら花匂みちくるしほつ山浪も春なる浦風そ吹く

さくらはな−にほひみちくる−しほつやま−なみもはるなる−うらかせそふく


01253
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榊葉にかけし神代や水も又花の鏡と成りはしめけん

さかきはに−かけしかみよや−みつもまた−はなのかかみと−なりはしめけむ


01254
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玉くしけあけてそ見まし桜さく遠山鳥のをろの鏡を

たまくしけ−あけてそみまし−さくらさく−とほやまとりの−をろのかかみを


01255
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にほの海のなきさの桜花もねに帰る白波春なあらしそ

にほのうみの−なきさのさくら−はなもねに−かへるしらなみ−はるなあらしそ


01256
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こゑ聞けは古すをいそく鳥もなしまたきも花のねに帰るらん

こゑきけは−ふるすをいそく−とりもなし−またきもはなの−ねにかへるらむ


01257
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時しもあれおつる梢の花そちる在明の月のわさならねとも

ときしもあれ−おつるこすゑの−はなそちる−ありあけのつきの−わさならねとも


01258
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白雲のさくらかもとと立行くや盛に花のさきおもるらん

しらくもの−さくらかもとと−たちゆくや−さかりにはなの−さきおもるらむ


01259
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風ゆるく日はのとけくて開く花の枝もたわわに匂ふ比かな

かせゆるく−ひはのとけくて−さくはなの−えたもたわわに−にほふころかな


01260
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吹く風そちらはやうしと思ひたつ花の心のたよりなるらむ

ふくかせそ−ちらはやうしと−おもひたつ−はなのこころの−たよりなるらむ


01261
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ぬししらぬ花の錦木千つかまて立つ春もなくちらさすもかな

ぬししらぬ−はなのにしきき−ちつかまて−たつはるもなく−ちらさすもかな


01262
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朝あけの雲の浪分け嶺こえて花の初しほさす日影かな

あさあけの−くものなみわけ−みねこえて−はなのはつしほ−さすひかけかな


01263
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春のきる霞の衣くれなゐのこ染や花の色かさぬらん

はるのきる−かすみのころも−くれなゐの−こそめやはなの−いろかさぬらむ


01264
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梢にてうつろひはてし桜花又色かはる庭のはる風

こすゑにて−うつろひはてし−さくらはな−またいろかはる−にはのはるかせ


01265
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まれにきて此世にほはぬ花のかをしむらん物そ天の羽衣

まれにきて−このよにほはぬ−はなのかを−しむらむものそ−あまのはころも


01266
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苔むしろ誰かためつらき色みせてうつろふ花の塵つもるらん

こけむしろ−たかためつらき−いろみせて−うつろふはなの−ちりつもるらむ


01267
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泊瀬山花よりいつる鐘はなとくもる契をよそに告くらむ

はつせやま−はなよりいつる−かねはなと−くもるちきりを−よそにつくらむ


01268
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散る花の雪の夜さむの衣とや今朝も霞の立ちのこるらん

ちるはなの−ゆきのよさむの−ころもとや−けさもかすみの−たちのこるらむ


01269
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石はしる滝なき花をかさしても猶あらはるる老の浪かな

いしはしる−たきなきはなを−かさしても−なほあらはるる−おいのなみかな


01270
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舟人もはやぬさまつれかさはやのみほの磯山花さかりかも

ふなひとも−はやぬさまつれ−かさはやの−みほのいそやま−はなさかりかも


01271
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花さかり世はおしなへて雲にあけ雲にくるるは天つ空かも

はなさかり−よはおしなへて−くもにあけ−くもにくるるは−あまつそらかも


01272
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あかさりし雲と雨とのかたみかは花の滴ににこる山の井

あかさりし−くもとあめとの−かたみかは−はなのしつくに−にこるやまのゐ


01273
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海士小舟初せやいつこさく花の雲の浪路にみる山もなし

あまをふね−はつせやいつこ−さくはなの−くものなみちに−みるやまもなし


01274
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ほのみつる遠山さくら白雲のすすむる花になる心かな

ほのみつる−とほやまさくら−しらくもの−すすむるはなに−なるこころかな


01275
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山さくら枝のうこくや白雲の今朝わき出つる花の下風

やまさくら−えたのうこくや−しらくもの−けさわきいつる−はなのしたかせ


01276
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吉野川高ねの花のかたしろも散らぬにうかふ瀬瀬の白雲

よしのかは−たかねのはなの−かたしろも−ちらぬにうかふ−せせのしらくも


01277
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をちかたに今朝見し雲のかへらぬを入日や嶺の花になすらん

をちかたに−けさみしくもの−かへらぬを−いりひやみねの−はなになすらむ


01278
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花なれや日影にちるも雫とはならてそやかて雪に落ちくる

はななれや−ひかけにちるも−しつくとは−ならてそやかて−ゆきにおちくる


01279
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日影にも消えぬを花と猶や見む風に友まつ雪の木の本

ひかけにも−きえぬをはなと−なほやみむ−かせにともまつ−ゆきのこのもと


01280
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なかめつつ木陰にむすふ山の井におもふ心を花やしるらん

なかめつつ−こかけにむすふ−やまのゐに−おもふこころを−はなやしるらむ


01281
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けふさくらわくともわかし散る花の庭も梢もおなし盛を

けふさくら−わくともわかし−ちるはなの−にはもこすゑも−おなしさかりを


01282
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わか心春の霞に染めおかはしらぬ野山に色やまよはむ

わかこころ−はるのかすみに−そめおかは−しらぬのやまに−いろやまよはむ


01283
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うゑさりしなへて此世の花もしれせはき袂になつる心を

うゑさりし−なへてこのよの−はなもしれ−せはきたもとに−なつるこころを


01284
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花さかり深山かくれに音はしてちらぬをいとふ春の風かな

はなさかり−みやまかくれに−おとはして−ちらぬをいとふ−はるのかせかな


01285
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まてしはしやとる朝露朝風にもろく散りてな花にをしへそ

まてしはし−やとるあさつゆ−あさかせに−もろくちりてな−はなにをしへそ


01286
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雨風に心あはせて春の花うつろほんとやおもひ立つらん

あめかせに−こころあはせて−はるのはな−うつろはむとや−おもひたつらむ


01287
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しるらめやあまた日数をさきたてて花におくるる春のかたみを

しるらめや−あまたひかすを−さきたてて−はなにおくるる−はるのかたみを


01288
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山さくら松よりうつる嵐とも見えぬ緑の花のしらゆき

やまさくら−まつよりうつる−あらしとも−みえぬみとりの−はなのしらゆき


01289
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木のもとの形見の水のみ草とや花を忍ふの種は生ふらん

このもとの−かたみのみつの−みくさとや−はなをしのふの−たねはおふらむ


01290
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山さくらつらき嵐の嶺の雲しをるも形見ちるもゆかりを

やまさくら−つらきあらしの−みねのくも−しをるもかたみ−ちるもゆかりを


01291
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のこしおく花の鏡は手にたにもとらぬ形見の水からそうき

のこしおく−はなのかかみは−てにたにも−とらぬかたみの−みつからそうき


01292
未入力 正徹 (xxx)

さそはれし花のなき世の雲にふけうきを形見の春の山風

さそはれし−はなのなきよの−くもにふけ−うきをかたみの−はるのやまかせ


01293
未入力 正徹 (xxx)

かすむなよ花の光をゆつりおきて散りしかたみの有明の月

かすむなよ−はなのひかりを−ゆつりおきて−ちりしかたみの−ありあけのつき


01294
未入力 正徹 (xxx)

さく花にうつる心やうらむらん去年の桜のふかき面影

さくはなに−うつるこころや−うらむらむ−こそのさくらの−ふかきおもかけ


01295
未入力 正徹 (xxx)

見し色を忘れし花の貌鳥も音に啼く山の春の面影

みしいろを−わすれしはなの−かほとりも−ねになくやまの−はるのおもかけ


01296
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わすられね去年のおも影あらそははいつれの花を身にはそへまし

わすられね−こそのおもかけ−あらそはは−いつれのはなを−みにはそへまし


01297
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忘れはや見しおも影を老か身にそふるもうしと花やいとはむ

わすれはや−みしおもかけを−おいかみに−そふるもうしと−はなやいとはむ


01298
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昔見し花も我か身も物いはてむかへは涙露そこほるる

むかしみし−はなもわかみも−ものいはて−むかへはなみた−つゆそこほるる


01299
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なおそます庭にうつして年をふる松より遠き花のにほひは

なおそます−にはにうつして−としをふる−まつよりとほき−はなのにほひは


01300
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皇の代代になれにしいにしへの春をみはしの花にとははや

すめらきの−よよになれにし−いにしへの−はるをみはしの−はなにとははや


01301
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のこりなく雨ははれつる庭たつみ猶雲うつす花の下陰

のこりなく−あめははれつる−にはたつみ−なほくもうつす−はなのしたかけ


01302
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大井河花のうきはし遠近にわたしてたゆる春の山風

おほゐかは−はなのうきはし−をちこちに−わたしてたゆる−はるのやまかせ


01303
未入力 正徹 (xxx)

古郷の花の中道春過きて雪にあとなきふるの高はし

ふるさとの−はなのなかみち−はるすきて−ゆきにあとなき−ふるのたかはし


01304
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花園の花のうき浪風こえて匂ひにしつむ竹川の橋

はなそのの−はなのうきなみ−かせこえて−にほひにしつむ−たけかはのはし


01305
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ぬさちらし関もる神の相坂を花に旅たつ春の山かせ

ぬさちらし−せきもるかみの−あふさかを−はなにたひたつ−はるのやまかせ


01306
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神もいまみるめよいかに散る花の木の島こゆる春のささ浪

かみもいま−みるめよいかに−ちるはなの−きのしまこゆる−はるのささなみ


01307
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色はゆる淵の緑も竹川の橋のまへなる花そののはな

いろはゆる−ふちのみとりも−たけかはの−はしのまへなる−はなそののはな


01308
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開く花の雲の衣も袖ほさす朝露かけし夕暮の雨

さくはなの−くものころもも−そてほさす−あさつゆかけし−ゆふくれのあめ


01309
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かそいろとやしなひたてしかひもなくあらくも雨の花をうつ声

かそいろと−やしなひたてし−かひもなく−あらくもあめの−はなをうつこゑ


01310
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あらかりし雨の名残の花の露吹きほす程も風やいとはむ

あらかりし−あめのなこりの−はなのつゆ−ふきほすほとも−かせやいとはむ


01311
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ちらぬまも青葉立ちいつる花の枝の色おとろへてはるる雨かな

ちらぬまも−あをはたちいつる−はなのえの−いろおとろへて−はるるあめかな


01312
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惜しむらし折りもかこはぬ松かきのおのれと風を花にへたてて

をしむらし−をりもかこはぬ−まつかきの−おのれとかせを−はなにへたてて


01313
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木にもあらす草にもあらぬ竹そとや雲か花かの枝ましるらむ

きにもあらす−くさにもあらぬ−たけそとや−くもかはなかの−えたましるらむ


01314
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天つ風にほひを分けて匂ふなり雲間の雲や桜なるらむ

あまつかせ−にほひをわけて−にほふなり−くもまのくもや−さくらなるらむ


01315
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うらつつく桜のおくつの嵐かも山のかひよりいつるしら浪

うらつつく−さくらのおくの−あらしかも−やまのかひより−いつるしらなみ


01316
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今夜かせ玉もかるをの磯まくらねての朝けの花をみるまて

こよひかせ−たまもかるをの−いそまくら−ねてのあさけの−はなをみるまて


01317
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くらき夜の磯山さくら木のしたに篝みせたるあまのいさり火

くらきよの−いそやまさくら−このしたに−かかりみせたる−あまのいさりひ


01318
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長閑なる塩ひのかたの夕浪にあまそ釣せぬ花やちるらん

のとかなる−しほひのかたの−ゆふなみに−あまそつりせぬ−はなやちるらむ


01319
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これも又神代の雲やこり初めておのころ島の花と成りけん

これもまた−かみよのくもや−こりそめて−おのころしまの−はなとなりけむ


01320
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桜花ちるや松風いほ崎のみほの興つに浪たかくみゆ

さくらはな−ちるやまつかせ−いほさきの−みほのおきつに−なみたかくみゆ


01321
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匂ふてふたれに心をくみしれとあくる川戸に花のまつらん

にほふてふ−たれにこころを−くみしれと−あくるかはとに−はなのまつらむ


01322
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音もせすむれゐる鷺の色もみす花の古江の雪の下波

おともせす−むれゐるさきの−いろもみす−はなのふるえの−ゆきのしたなみ


01323
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岸にます神のみけしか住の江に花の錦をあらふしら浪

きしにます−かみのみけしか−すみのえに−はなのにしきを−あらふしらなみ


01324
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谷川の瀬瀬にかたよる白淡や滝のうへなる山さくらはな

たにかはの−せせにかたよる−しらあわや−たきのうへなる−やまさくらはな


01325
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かたえさし磯屋匂はす花もをし塩焼く煙あまはいとはて

かたえさし−いそやにほはす−はなもをし−しほやくけふり−あまはいとはて


01326
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かすむなよ山の桜戸明けぬよの花よりいつるふし待の月

かすむなよ−やまのさくらと−あけぬよの−はなよりいつる−ふしまちのつき


01327
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ふしのねにうつみしよりや水ならぬ花の鏡もまとほなるらん

ふしのねに−うつみしよりや−みつならぬ−はなのかかみも−まとほなるらむ


01328
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つくは山はやまの里に開きしよりしけき人めとなる桜かな

つくはやま−はやまのさとに−さきしより−しけきひとめと−なるさくらかな


01329
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花さかり雲か雪かとまかへみし情ゆるさぬ春の山風

はなさかり−くもかゆきかと−まかへみし−こころゆるさぬ−はるのやまかせ


01330
未入力 正徹 (xxx)

又寒き嵐にとちて雪もなし消えすは花と嶺のさくら戸

またさむき−あらしにとちて−ゆきもなし−きえすははなと−みねのさくらと


01331
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さくら山雲に春風吹きさえて猶あらましの花そ雪ちる

さくらやま−くもにはるかせ−ふきさえて−なほあらましの−はなそゆきちる


01332
未入力 正徹 (xxx)

山川もこほる下紐ときやらて花にかけたる風のしからみ

やまかはも−こほるしたひも−ときやらて−はなにかけたる−かせのしからみ


01333
未入力 正徹 (xxx)

梅かかも衣におつる雪なからさくらを手折る春の山ふみ

うめかかも−ころもにおつる−ゆきなから−さくらをたをる−はるのやまふみ


01334
未入力 正徹 (xxx)

開きつくせ四方の嵐も吹きこさす花にめくれる山たかくして

さきつくせ−よものあらしも−ふきこさす−はなにめくれる−やまたかくして


01335
未入力 正徹 (xxx)

神ならて風にまかすな開く花におほふはかりの山そめくれる

かみならて−かせにまかすな−さくはなに−おほふはかりの−やまそめくれる


01336
未入力 正徹 (xxx)

なかめやる程も雲井の山桜生ひけむ年の春やはるけき

なかめやる−ほともくもゐの−やまさくら−おひけむとしの−はるやはるけき


01337
未入力 正徹 (xxx)

昨日かも遠山さくら春きにけり所もさらぬ雲の一むら

きのふかも−とほやまさくら−はるきにけり−ところもさらぬ−くものひとむら


01338
未入力 正徹 (xxx)

雲ふかき花のあたりの入相に峰の奥しる春の山てら

くもふかき−はなのあたりの−いりあひに−みねのおくしる−はるのやまてら


01339
未入力 正徹 (xxx)

花をそへ花をのこして行きかへる嵐のをちの峰のしら雲

はなをそへ−はなをのこして−ゆきかへる−あらしのをちの−みねのしらくも


01340
未入力 正徹 (xxx)

夕時雨音も外山の松のははうつもれきゆる花のした風

ゆふしくれ−おともとやまの−まつのはは−うつもれきゆる−はなのしたかせ


01341
未入力 正徹 (xxx)

高ねこす木のまの夕日影消えて桜にかへる花の色かな

たかねこす−このまのゆふひ−かけきえて−さくらにかへる−はなのいろかな


01342
未入力 正徹 (xxx)

まきなかす袖こそ匂へ散りかかる浪さへ花ににふの杣人

まきなかす−そてこそにほへ−ちりかかる−なみさへはなに−にふのそまひと


01343
未入力 正徹 (xxx)

開く花の春は雲のみなりのほる物とそみゆるかつらきの山

さくはなの−はるはくものみ−なりのほる−ものとそみゆる−かつらきのやま


01344
未入力 正徹 (xxx)

あたに見し此世の色を雲にさへまかへもはてぬ山さくらかな

あたにみし−このよのいろを−くもにさへ−まかへもはてぬ−やまさくらかな


01345
未入力 正徹 (xxx)

色もをし初時鳥興にいててなかはかくやと深山辺の花

いろもをし−はつほとときす−おきにいてて−なかはかくやと−みやまへのはな


01346
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枝なからなひき初めてや山さくらおもふ嵐と花のちるらん

えたなから−なひきそめてや−やまさくら−おもふあらしと−はなのちるらむ


01347
未入力 正徹 (xxx)

それをこそとふにはなさめさくら花散りなむ後の春の山踏

それをこそ−とふにはなさめ−さくらはな−ちりなむのちの−はるのやまふみ


01348
未入力 正徹 (xxx)

とちぬとも風の便やこえゆかむ山桜戸の雲の関守

とちぬとも−かせのたよりや−こえゆかむ−やまさくらとの−くものせきもり


01349
未入力 正徹 (xxx)

花さかりしつ心なき山里は物のさひしき春やしられぬ

はなさかり−しつこころなき−やまさとは−もののさひしき−はるやしられぬ


01350
未入力 正徹 (xxx)

山里は花におもひそかへさるる世のうきよりの春の夕風

やまさとは−はなにおもひそ−かへさるる−よのうきよりの−はるのゆふかせ


01351
未入力 正徹 (xxx)

法とはぬ此山さとの人そくるふるせる寺の花の一木に

のりとはぬ−このやまさとの−ひとそくる−ふるせるてらの−はなのひときに


01352
未入力 正徹 (xxx)

おく山の花の錦のくらき夜はみる人もこぬ春の日くらし

おくやまの−はなのにしきの−くらきよは−みるひともこぬ−はるのひくらし


01353
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待つ人に遠き尾上の初桜関きぬとみえむ雲なかくしそ

まつひとに−とほきをのへの−はつさくら−さきぬとみえむ−くもなかくしそ


01354
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匂ふなり花のあるしは山かつの垣ほの桜春をあらさて

にほふなり−はなのあるしは−やまかつの−かきほのさくら−はるをあらさて


01355
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軒はまて開入る山の花の枝に簾うこかし人おともせす

のきはまて−さきいるやまの−はなのえに−すたれうこかし−ひとおともせす


01356
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出てぬるか暮れぬに松の戸を閉ちて花の宿もる人音もせす

いてぬるか−くれぬにまつの−とをとちて−はなのやともる−ひとおともせす


01357
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明けわたる山桜戸のかはさくらとちける雲をとく嵐かな

あけわたる−やまさくらとの−かはさくら−とちけるくもを−とくあらしかな


01358
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とふ人のなきにつけても奥山の花の戸さしそさし忘れぬる

とふひとの−なきにつけても−おくやまの−はなのとさしそ−さしわすれぬる


01359
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さきてちる花にうき世やさとるらん幾春か見し鷲の山人

さきてちる−はなにうきよや−さとるらむ−いくはるかみし−わしのやまひと


01360
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くろにさく一もと桜おのつから花のあるしの小田のかり庵

くろにさく−ひともとさくら−おのつから−はなのあるしの−をたのかりいほ


01361
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春の花もるとしもなき木の本に荒れてそのこる小田のかり庵

はるのはな−もるとしもなき−このもとに−あれてそのこる−をたのかりいほ


01362
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まきるへき風さへふかて散りかかる花の音きく窓の内かな

まきるへき−かせさへふかて−ちりかかる−はなのおときく−まとのうちかな


01363
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松風の吹く日そ宿に声はせししはしも花のありやわふらん

まつかせの−ふくひそやとに−こゑはせし−しはしもはなの−ありやわふらむ


01364
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しつかなる所やいつこ春の花風にしらるる夕暮のやと

しつかなる−ところやいつこ−はるのはな−かせにしらるる−ゆふくれのやと


01365
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開きてちる花の日数の程はかり宿を立ちいてて春にしられし

さきてちる−はなのひかすの−ほとはかり−やとをたちいてて−はるにしられし


01366
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此春は都なからにたれこめて太山桜そおも影にたつ

このはるは−みやこなからに−たれこめて−みやまさくらそ−おもかけにたつ


01367
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袖にほふ花の雲井のさと人は春やたちきる天の羽衣

そてにほふ−はなのくもゐの−さとひとは−はるやたちきる−あまのはころも


01368
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雲そゐる此手柏は青によきなら山さくらいまさかりかも

くもそゐる−このてかしはは−あをによき−ならやまさくら−いまさかりかも


01369
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山路こしあまた旅ねの花の香も袖の別の野への朝露

やまちこし−あまたたひねの−はなのかも−そてのわかれの−のへのあさつゆ


01370
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木のもとの旅ねなりとも花莚こよひなしきそ春の山風

このもとの−たひねなりとも−はなむしろ−こよひなしきそ−はるのやまかせ


01371
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日数ふるひなの長路の花に花おとろへ行くそわれにまされる

ひかすふる−ひなのなかちの−はなにはな−おとろへゆくそ−われにまされる


01372
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春ことの道の行てに折りすててもとあらの桜花そすくなき

はることの−みちのゆくてに−をりすてて−もとあらのさくら−はなそすくなき


01373
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すまの山や陰なる花にくもるなり関路こえくる春の塩かせ

すまのやまや−かけなるはなに−くもるなり−せきちこえくる−はるのしほかせ


01374
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逢坂や浪も岩ほもちる花の行く春さそふ関の走ゐ

あふさかや−なみもいはほも−ちるはなの−ゆくはるさそふ−せきのはしりゐ


01375
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あふ坂やゆふつけ鳥のゆふしても関路の花に春はかけつつ

あふさかや−ゆふつけとりの−ゆふしても−せきちのはなに−はるはかけつつ


01376
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逢坂や関もる神も惜むらし老木となりぬ山さくらはな

あふさかや−せきもるかみも−をしむらし−おいきとなりぬ−やまさくらはな


01377
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初瀬女か春の手染の糸桜かつ色ふかき峰のあけほの

はつせめか−はるのてそめの−いとさくら−かついろふかき−みねのあけほの


01378
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はつせ山尾上の名もさく花の匂ひの淵にしつむこゑかな

はつせやま−をのへのはなも−さくはなの−にほひのふちに−しつむこゑかな


01379
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清水さへもとの心の花の陰みゆる野中の杜のさくら木

しみつさへ−もとのこころの−はなのかけ−みゆるのなかの−もりのさくらき


01380
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雨の日は池やよりこし木の本の真砂にのこる花のみなきは

あめのひは−いけやよりこし−このもとの−まさこにのこる−はなのみなきは


01381
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行く春もおくれぬ花の木の間よりことをあまたの有明の月

ゆくはるも−おくれぬはなの−このまより−ことをあまたの−ありあけのつき


01382
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のこるなりたかうたたねの山桜みはてぬ夢の雲の一むら

のこるなり−たかうたたねの−やまさくら−みはてぬゆめの−くものひとむら


01383
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太山陰なへての花の春もをし心おくれてさくさくらかな

みやまかけ−なへてのはなの−はるもをし−こころおくれて−さくさくらかな


01384
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吹く風の心のやみのうつつをは夢にもなさて花そちり行く

ふくかせの−こころのやみの−うつつをは−ゆめにもなさて−はなそちりゆく


01385
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青柳のなひくはちらてさくら花さそはれ安き庭の春風

あをやきの−なひくはちらて−さくらはな−さそはれやすき−にはのはるかせ


01386
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嶺はらふ霞のひまにうち出てし雲の浪ちる花の山風

みねはらふ−かすみのひまに−うちいてし−くものなみちる−はなのやまかせ


01387
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又もみん老にはあらねと花に今猶うらめしき嶺の松風

またもみむ−おいにはあらねと−はなにいま−なほうらめしき−みねのまつかせ


01388
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散りぬらんさくを尋ねし花の山踏みちかへてやのこるをも見む

ちりぬらむ−さくをたつねし−はなのやま−ふみちかへてや−のこるをもみむ


01389
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初瀬山尾上の鐘も川浪も花のためとや春はのとけき

はつせやま−をのへのかねも−かはなみも−はなのためとや−はるはのとけき


01390
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おくふかき軒のかはらに松ふりて花にかすめる春のともしひ

おくふかき−のきのかはらに−まつふりて−はなにかすめる−はるのともしひ


01391
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色うつむ初せの桧原くもりかね花に緑もきゆる山かな

いろうつむ−はつせのひはら−くもりかね−はなにみとりも−きゆるやまかな


01392
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木の本にちるをしみてや歎きつつあかぬ心の花もしをれむ

このもとに−ちるをしみてや−なけきつつ−あかぬこころの−はなもしをれむ


01393
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いかにしてまかせさらなむ散りやすき花をうき世の風の心に

いかにして−まかせさらなむ−ちりやすき−はなをうきよの−かせのこころに


01394
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心せよ花も花をや惜むらん吹くほとちらぬ春の山かせ

こころせよ−はなもはなをや−をしむらむ−ふくほとちらぬ−はるのやまかせ


01395
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散る花におほふ霞も荒き風ふせきかねたる春の衣手

ちるはなに−おほふかすみも−あらきかせ−ふせきかねたる−はるのころもて


01396
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したひ佗ひみるもうらめしさくら花風のためなる心よわさを

したひわひ−みるもうらめし−さくらはな−かせのためなる−こころよわさを


01397
未入力 正徹 (xxx)

ととまらぬ花に心をつくしきていよいよ春や老をそふらむ

ととまらぬ−はなにこころを−つくしきて−いよいよはるや−おいをそふらむ


01398
未入力 正徹 (xxx)

又あはん花はありともいかさまに名残すくなき老の春かな

またあはむ−はなはありとも−いかさまに−なこりすくなき−おいのはるかな


01399
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花みよとならふ林にてる月のくもるもかすむ春の山風

はなみよと−ならふはやしに−てるつきの−くもるもかすむ−はるのやまかせ


01400
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風にちる花そ一日に限りけるをしまれて入る月はよなよな

かせにちる−はなそひとひに−かきりける−をしまれている−つきはよなよな


01401
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惜ますやちらす物そと立ちそめしうき名のままの花の春風

をしますや−ちらすものそと−たちそめし−うきなのままの−はなのはるかせ


01402
未入力 正徹 (xxx)

吹く風も花ちる里のわかれにてつらさそ嶺の松にかへれる

ふくかせも−はなちるさとの−わかれにて−つらさそみねの−まつにかへれる


01403
未入力 正徹 (xxx)

花そちるあはれなれきて池にすむ鳥のなつらき庭の春かせ

はなそちる−あはれなれきて−いけにすむ−とりのなつらき−にはのはるかせ


01404
未入力 正徹 (xxx)

あとのこる此水茎に散る花のあわと消えにし人や恋しき

あとのこる−このみつくきに−ちるはなの−あわときえにし−ひとやこひしき


01405
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ことしさはかほりてちらせ桜木の木の葉を春に花を秋風

ことしさは−かほりてちらせ−さくらきの−このはをはるに−はなをあきかせ


01406
未入力 正徹 (xxx)

春の花おもふは別いとふにはそふをうき世のあとの山風

はるのはな−おもふはわかれ−いとふには−そふをうきよの−あとのやまかせ


01407
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わかるるはなにか此世に惜しからむ思ひ捨てなん花の音かせ

わかるるは−なにかこのよに−をしからむ−おもひすてなむ−はなのはるかせ


01408
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老いはてぬことしはかりとしたひてもあまたの春の花に逢ひねる

おいはてぬ−ことしはかりと−したひても−あまたのはるの−はなにあひねる


01409
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風そうき人待つ時を夕暮のならひもしらす花のわかるる

かせそうき−ひとまつときを−ゆふくれの−ならひもしらす−はなのわかるる


01410
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相かたき人は今夜を契るとも花にな暮れそ雲も霞も

あひかたき−ひとはこよひを−ちきるとも−はなになくれそ−くももかすみも


01411
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嵐ふく花はちりかひくもる世をよそにやかすむ春のよの月

あらしふく−はなはちりかひ−くもるよを−よそにやかすむ−はるのよのつき


01412
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比しもあれ風もさそはす風もなし恨なくてや花のちるらん

ころしもあれ−かせもさそはす−かせもなし−うらみなくてや−はなのちるらむ


01413
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住みわひぬ花散るさとのあれまくも有りしにまさる春の暮かた

すみわひぬ−はなちるさとの−あれまくも−ありしにまさる−はるのくれかた


01414
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ちらはちれ惜まし花よ世中の心まかせになきはくるしき

ちらはちれ−をしましはなよ−よのなかの−こころまかせに−なきはくるしき


01415
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のとかなる春日もなかき谷風に心みしかくちる桜かな

のとかなる−はるひもなかき−たにかせに−こころみしかく−ちるさくらかな


01416
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今はとて枝に別れてちる花をのこるさくらや先惜むらん

いまはとて−えたにわかれて−ちるはなを−のこるさくらや−まつをしむらむ


01417
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かへりきてねくらあれぬと鳴く鳥のちる花の枝に暮るる春かな

かへりきて−ねくらあれぬと−なくとりの−ちるはなのえに−くるるはるかな


01418
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みたれ行く霞の袖にこき入れてちるかたみせぬ花の山風

みたれゆく−かすみのそてに−こきいれて−ちるかたみせぬ−はなのやまかせ


01419
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梢にも庭にものこせ花ちらす風の心の石木ならすは

こすゑにも−にはにものこせ−はなちらす−かせのこころの−いはきならすは


01420
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老いにける滝の水上ならなくに黒きすちなく花そ落ちちる

おいにける−たきのみなかみ−ならなくに−くろきすちなく−はなそおちちる


01421
未入力 正徹 (xxx)

さくら花ちるにさそはぬ風もなしいつくの春をわきて恨みん

さくらはな−ちるにさそはぬ−かせもなし−いつくのはるを−わきてうらみむ


01422
未入力 正徹 (xxx)

わかためや嵐の末の春の花なかれての世のうきをみすらん

わかためや−あらしのすゑの−はるのはな−なかれてのよの−うきをみすらむ


01423
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此春の花より後は開きてちるならひなくとも風や恨みむ

このはるの−はなよりのちは−さきてちる−ならひなくとも−かせやうらみむ


01424
未入力 正徹 (xxx)

色もなき人の心の末の世にあへるをうしと花やちるらん

いろもなき−ひとのこころの−すゑのよに−あへるをうしと−はなやちるらむ


01425
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開けはちる夜のまの花の夢のうちにやかてまきれぬ嶺の白雲

さけはちる−よのまのはなの−ゆめのうちに−やかてまきれぬ−みねのしらくも


01426
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さくら花ちるも心にまかせねは雪とふり行く春の山かせ

さくらはな−ちるもこころに−まかせねは−ゆきとふりゆく−はるのやまかせ


01427
未入力 正徹 (xxx)

まとろまてこその桜の塵の世をおもふ枕につもるおもかけ

まとろまて−こそのさくらの−ちりのよを−おもふまくらに−つもるおもかけ


01428
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哀とや散行く花を嶺の雲はしめまかひし色のゆかりを

あはれとや−ちりゆくはなを−みねのくも−はしめまかひし−いろのゆかりを


01429
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限なくみまくほしかる我かためやさらぬ別の花の山かせ

かきりなく−みまくほしかる−わかためや−さらぬわかれの−はなのやまかせ


01430
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かりの世の色をはかなみ散る花にましるこ蝶も夢をみよとや

かりのよの−いろをはかなみ−ちるはなに−ましるこてふも−ゆめをみよとや


01431
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跡とふも袖そ露ちる春の風さそひし花の木の本の宿

あととふも−そてそつゆちる−はるのかせ−さそひしはなの−このもとのやと


01432
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しらさりしけふも命のうちにして又さきたつる花の春風

しらさりし−けふもいのちの−うちにして−またさきたつる−はなのはるかせ


01433
未入力 正徹 (xxx)

山と成るふもとの桜塵の世にまよふ嵐そやむ時もなき

やまとなる−ふもとのさくら−ちりのよに−まよふあらしそ−やむときもなき


01434
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吉野川岩浪たかくなる神に山風きほふ花の夕たち

よしのかは−いはなみたかく−なるかみに−やまかせきほふ−はなのゆふたち


01435
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嵐ふく霞の袖の別さへ花ちるみねのあり明の月

あらしふく−かすみのそての−わかれさへ−はなちるみねの−ありあけのつき


01436
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かへらめや梢わかれし花莚山の霞のしきしのふとも

かへらめや−こすゑわかれし−はなむしろ−やまのかすみの−しきしのふとも


01437
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吹きさそふ嵐の庭の花よりもわか身世にふる春そつもれる

ふきさそふ−あらしのにはの−はなよりも−わかみよにふる−はるそつもれる


01438
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散りましる空ものとけき春の日にあそふ糸かの山桜花

ちりましる−そらものとけき−はるのひに−あそふいとかの−やまさくらはな


01439
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先たえぬけふも命のうちにしてあらまし花のなきそ数そふ

まつたえぬ−けふもいのちの−うちにして−あらましはなの−なきそかすそふ


01440
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散りて行く花の所もさりあへぬ野山の末の道のはる風

ちりてゆく−はなのところも−さりあへぬ−のやまのすゑの−みちのはるかせ


01441
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荒ち山花の雪折しかすかに音せぬ嶺の春の木からし

あらちやま−はなのゆきをれ−しかすかに−おとせぬみねの−はるのこからし


01442
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月にとふ庭の嵐にちる花のやとりむなしき暁の露

つきにとふ−にはのあらしに−ちるはなの−やとりむなしき−あかつきのつゆ


01443
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さくら花こしのしらねの冬の雪つもりかさなるよもきふの宿

さくらはな−こしのしらねの−ふゆのゆき−つもりかさなる−よもきふのやと


01444
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のとかなる嶺の朝日にあそふ糸のみたれて共に散る桜かな

のとかなる−みねのあさひに−あそふいとの−みたれてともに−ちるさくらかな


01445
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散りかかる夕かけ草やうつもれて露をへたつる花をうらみん

ちりかかる−ゆふかけくさや−うつもれて−つゆをへたつる−はなをうらみむ


01446
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花のえにねくら尋ぬる鳥もあらはいかかこたへん春の山風

はなのえに−ねくらたつぬる−とりもあらは−いかかこたへむ−はるのやまかせ


01447
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はやくあけ夕暮おそき色もみす花はかたかたうき別かな

はやくあけ−ゆふくれおそき−いろもみす−はなはかたかた−うきわかれかな


01448
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さくら花ちりかひかくす高ねより嵐をこえていつる月かけ

さくらはな−ちりかひかくす−たかねより−あらしをこえて−いつるつきかけ


01449
未入力 正徹 (xxx)

出つるまの月のかつらの花とちる高ねの桜嵐ふくらし

いつるまの−つきのかつらの−はなとちる−たかねのさくら−あらしふくらし


01450
未入力 正徹 (xxx)

はかなくも花はうき世のことわりにまかせてちるをととめかぬらん

はかなくも−はなはうきよの−ことわりに−まかせてちるを−ととめかぬらむ


01451
未入力 正徹 (xxx)

香をしめて花にそふ夜の衣衣はあるにもあらぬ春の山風

かをしめて−はなにそふよの−きぬきぬは−あるにもあらぬ−はるのやまかせ


01452
未入力 正徹 (xxx)

東路にありとそききし花もそふ風の心のままのつきはし

あつまちに−ありとそききし−はなもそふ−かせのこころの−ままのつきはし


01453
未入力 正徹 (xxx)

よしやふけちるを見さらん花は猶あかぬ心の春の山かせ

よしやふけ−ちるをみさらむ−はなはなほ−あかぬこころの−はるのやまかせ


01454
未入力 正徹 (xxx)

吉野山花も嵐に荒れしより木すゑそ春の古郷のそら

よしのやま−はなもあらしに−あれしより−こすゑそはるの−ふるさとのそら


01455
未入力 正徹 (xxx)

ねにかへる雲も嵐も花ならす雪とわかれし嶺の桜木

ねにかへる−くももあらしも−はなならす−ゆきとわかれし−みねのさくらき


01456
未入力 正徹 (xxx)

散るとたにわきてはみえす久堅のあまきりかすむ花の山風

ちるとたに−わきてはみえす−ひさかたの−あまきりかすむ−はなのやまかせ


01457
未入力 正徹 (xxx)

里はあれぬしのふの簾糸絶えて袖もあらはに花そみたるる

さとはあれぬ−しのふのすたれ−いとたえて−そてもあらはに−はなそみたるる


01458
未入力 正徹 (xxx)

軒ふるきこすのあみ糸絶絶に花ちる閨は春風そふく

のきふるき−こすのあみいと−たえたえに−はなちるねやは−はるかせそふく


01459
未入力 正徹 (xxx)

山さくらちらても人はとひかたみ花や身をしる夕暮の雨

やまさくら−ちらてもひとは−とひかたみ−はなやみをしる−ゆふくれのあめ


01460
未入力 正徹 (xxx)

雨とふり暮と世にちる白雪のありてはてうき春の花かな

あめとふり−ゆきとよにちる−しらくもの−ありてはてうき−はるのはなかな


01461
未入力 正徹 (xxx)

夕嵐あらく吹くとも花はなと惜む心の道うつむらん

ゆふあらし−あらくふくとも−はなはなと−をしむこころの−みちうつむらむ


01462
未入力 正徹 (xxx)

敷島の道まよひきぬ無き跡の我か名もうつめ花の白雪

しきしまの−みちまよひきぬ−なきあとの−わかなもうつめ−はなのしらゆき


01463
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開きいてて花に世やうき吉野山入りにし人のあとうつむなり

さきいてて−はなによやうき−よしのやま−いりにしひとの−あとうつむなり


01464
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梢にはなきかおほかる花の陰あらましかはの雪も消えつつ

こすゑには−なきかおほかる−はなのかけ−あらましかはの−ゆきもきえつつ


01465
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花やこれ雪葉にすかくささかにの糸にかかれる宮の一むら

はなやこれ−ゆきはにすかく−ささかにの−いとにかかれる−みやのひとむら


01466
未入力 正徹 (xxx)

山かくれつひに嵐の音きかて心と花のいくかちるらん

やまかくれ−つひにあらしの−おときかて−こころとはなの−いくかちるらむ


01467
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花そなきさめたる松は嶺に明けてまかひし雲も春のよの夢

はなそなき−さめたるまつは−みねにあけて−まかひしくもも−はるのよのゆめ


01468
未入力 正徹 (xxx)

あとみえぬ雪の朝となるはかり花の夢路をうつむ春風

あとみえぬ−ゆきのあしたと−なるはかり−はなのゆめちを−うつむはるかせ


01469
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咲きにほへならへる庭の松か枝に千世の年かる花の付すゑ

さきにほへ−ならへるにはの−まつかえに−ちよのとしかる−はなのゆくすゑ


01470
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色も香も山の霞にむすほほれとけしもしらぬ花の下ひも

いろもかも−やまのかすみに−むすほほれ−とけしもしらぬ−はなのしたひも


01471
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あさ明の日影ちかつく山のはも紅さくら露しろくして

あさあけの−ひかけちかつく−やまのはも−くれなゐさくら−つゆしろくして


01472
未入力 正徹 (xxx)

さくら咲く花の錦をあらふなり入江の雨の露のはる風

さくらさく−はなのにしきを−あらふなり−いりえのあめの−つゆのはるかせ


01473
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嶺こえし花の錦をみてかへる雲ともみえぬ古郷のくれ

みねこえし−はなのにしきを−みてかへる−くもともみえぬ−ふるさとのくれ


01474
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おく露かなにそは花の玉のをにみたれやすくもちる桜かな

おくつゆか−なにそははなの−たまのをに−みたれやすくも−ちるさくらかな


01475
未入力 正徹 (xxx)

此世にはとまらぬ花の春ことにふるき枕の夢そ数そふ

このよには−とまらぬはなの−はることに−ふるきまくらの−ゆめそかすそふ


01476
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春は猶花の香さそへ玉琴のしらへにかよふ嶺の松風

はるはなほ−はなのかさそへ−たまことの−しらへにかよふ−みねのまつかせ


01477
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山つとに手折りてのする花筏あらくおろすな春の川風

やまつとに−たをりてのする−はないかた−あらくおろすな−はるのかはかせ


01478
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さほ姫や錦おりさす露のぬき霞のたての花の山風

さほひめや−にしきおりさす−つゆのぬき−かすみのたての−はなのやまかせ


01479
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七十の夢に開きちる春の花眠のうちにいつまてか見ん

ななそちの−ゆめにさきちる−はるのはな−ねふりのうちに−いつまてかみむ


01480
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山さくら苔の莚にちりそしく夢はふたたひかへる枕を

やまさくら−こけのむしろに−ちりそしく−ゆめはふたたひ−かへるまくらを


01481
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待ちいつる日の川上の山さくらいつももかくや花の八重雲

まちいつる−ひのかはかみの−やまさくら−いつももかくや−はなのやへくも


01482
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にほふらむはらふ霞のおくなきも程は雲井の花の山風

にほふらむ−はらふかすみの−おくなきも−ほとはくもゐの−はなのやまかせ


01483
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さきのほる山の一木のさくら花巌より立つ雲とみるらん

さきのほる−やまのひときの−さくらはな−いはほよりたつ−くもとみるらむ


01484
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花やいむさかりの色にむかふにも老の涙はちりやすき身を

はなやいむ−さかりのいろに−むかふにも−おいのなみたは−ちりやすきみを


01485
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老いはてぬ山さくら花又やみむ又はみすともさのみやはへん

おいはてぬ−やまさくらはな−またやみむ−またはみすとも−さのみやはへむ


01486
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春の花月に開きあふ年まれに友なふ人のおほきよはかな

はるのはな−つきにさきあふ−としまれに−ともなふひとの−おほきよはかな


01487
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花にても身は心なきけたものの雲に吠えけんためしをそしる

はなにても−みはこころなき−けたものの−くもにほえけむ−ためしをそしる


01488
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雨風もをしほのさくら立ちかへり其日みすはとおもふ夢かな

あめかせも−をしほのさくら−たちかへり−そのひみすはと−おもふゆめかな


01489
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月のかほ花の姿にいにしへのおも影のこすすまのすら浪

つきのかほ−はなのすかたに−いにしへの−おもかけのこす−すまのすらなみ


01490
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花をまつ世は春しるき木の本の袖とふ月に秋風そふく

はなをまつ−よははるしるき−このもとの−そてとふつきに−あきかせそふく


01491
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なさけなく吹きてそ老の坂くたるのこる心の花の追風

なさけなく−ふきてそおいの−さかくたる−のこるこころの−はなのおひかせ


01492
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今よりそこと葉の花の宿の庭山とつもらん適を分けこむ

いまよりそ−ことはのはなの−やとのには−やまとつもらむ−みちをわけこむ


01493
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高ねより花の木の間を見くたせは千里に霞む春の雲水

たかねより−はなのこのまを−みくたせは−ちさとにかすむ−はるのくもみつ


01494
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暮れぬとてととむる人の声せねと花あれは入る道辺の宿

くれぬとて−ととむるひとの−こゑせねと−はなあれはいる−みちのへのやと


01495
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千千の手にみるめもあかし春の花入の心を哀とやしる

ちちのてに−みるめもあかし−はるのはな−ひとのこころを−あはれとやしる


01496
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春ことに花物いはてとく法の心しられてちるあらしかな

はることに−はなものいはて−とくのりの−こころしられて−ちるあらしかな


01497
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みたれゆく心のままに手折りてそ花をかはらぬ仏とも見ん

みたれゆく−こころのままに−たをりてそ−はなをかはらぬ−ほとけともみむ


01498
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今も世につたへやすらん法の師の一花見せしふかきさとりを

いまもよに−つたへやすらむ−のりのしの−ひとはなみせし−ふかきさとりを


01499
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此ころのこと葉の花をみもしらぬ身は山人に猶そおとれる

このころの−ことはのはなを−みもしらぬ−みはやまひとに−なほそおとれる


01500
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松程やこたへさらましつたへきくむかしの風を花にとふとも

まつほとや−こたへさらまし−つたへきく−むかしのかせを−はなにとふとも


01501
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我なくは花やあらむと誰こひむ春や昔の名はのこるとも

われなくは−はなやあらむと−たれこひむ−はるやむかしの−なはのこるとも


01502
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遠さかる程は雲井の春の花此世の旅のわかれたにうし

とほさかる−ほとはくもゐの−はるのはな−このよのたひの−わかれたにうし


01503
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いく度か生ひかはりけむ天くたる神代の春の花のさくら木

いくたひか−おひかはりけむ−あまくたる−かみよのはるの−はなのさくらき


01504
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さそはれん風の心を先しるやふかき梢の花そちり行く

さそはれむ−かせのこころを−まつしるや−ふかきこすゑの−はなそちりゆく


01505
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いかかあらむおもひを花にのこすとも我か後の世の夕暮の空

いかかあらむ−おもひをはなに−のこすとも−わかのちのよの−ゆふくれのそら


01506
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匂ふなり嵐の下のかり衣花の旅ねのこしのしらゆき

にほふなり−あらしのしたの−かりころも−はなのたひねの−こしのしらゆき


01507
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山さくら春はなかはの日数にもあまりてにほふ花の色かな

やまさくら−はるはなかはの−ひかすにも−あまりてにほふ−はなのいろかな


01508
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世中にちらすしほれぬ花もあらはたた松杉の色やまさらん

よのなかに−ちらすしほれぬ−はなもあらは−たたまつすきの−いろやまさらむ


01509
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見ても世におもひまきるる事そなき捨てしは花のためならねとも

みてもよに−おもひまきるる−ことそなき−すてしははなの−ためならねとも


01510
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世にみちてさけるを花のあるしとや桜になひくよもの里人

よにみちて−さけるをはなの−あるしとや−さくらになひく−よものさとひと


01511
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山かつのそのの垣うち程せはき春をしめたる花もある世を

やまかつの−そののかきうち−ほとせはき−はるをしめたる−はなもあるよを


01512
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岩か根の滝のしら淡幾めくり年にあたなる花にましらむ

いはかねの−たきのしらあわ−いくめくり−としにあたなる−はなにましらむ


01513
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春とたにふかぬ嵐の山さくら光のとけき花の色かな

はるとたに−ふかぬあらしの−やまさくら−ひかりのとけき−はなのいろかな


01514
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ふもと寺杉の庵の山さくら今朝おも影そ在明の月

ふもとてら−すきのいほりの−やまさくら−けさおもかけそ−ありあけのつき


01515
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山風の吹きしくならて桜花さくや川辺の里のしら雲

やまかせの−ふきしくならて−さくらはな−さくやかはへの−さとのしらくも


01516
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一さかり過きにし後に花さくや花のおくての春のさくら田

ひとさかり−すきにしのちに−はなさくや−はなのおくての−はるのさくらた


01517
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山のはの夕日の色はさやかにてかすめる庭にのこる春雨

やまのはの−ゆふひのいろは−さやかにて−かすめるにはに−のこるはるさめ


01518
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いたつらにあるは過きうき春雨の降る日をひまとなしやはてまし

いたつらに−あるはすきうき−はるさめの−ふるひをひまと−なしやはてまし


01519
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いたつらにふる野の草そ色まさる哀都の花の春雨

いたつらに−ふるののくさそ−いろまさる−あはれみやこの−はなのはるさめ


01520
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軒はにも音せぬ雨の遠かたにちりかひかすむ春の色かな

のきはにも−おとせぬあめの−をちかたに−ちりかひかすむ−はるのいろかな


01521
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庭の面にくもる日影を猶みせてかすめるかたに春雨そ降る

にはのおもに−くもるひかけを−なほみせて−かすめるかたに−はるさめそふる


01522
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ふる春は花を養ひうるとしれ親のいさめのうたたねの雨

ふるはるは−はなをやしなひ−うるとしれ−おやのいさめの−うたたねのあめ


01523
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草の露木木のしつくにしられけり川音高き春雨の空

くさのつゆ−ききのしつくに−しられけり−かはおとたかき−はるさめのそら


01524
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梅かかも星のまきれはすくなくて春雨そそく深きよの闇

うめかかも−ほしのまきれは−すくなくて−はるさめそそく−ふかきよのやみ


01525
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閨ちかくよるひかるてふ玉水や月影かすむ軒の春雨

ねやちかく−よるひかるてふ−たまみつや−つきかけかすむ−のきのはるさめ


01526
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草も木もめくみにもれぬ春の雨苔の袂をよそに過すな

くさもきも−めくみにもれぬ−はるのあめ−こけのたもとを−よそにすくすな


01527
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近からし空よりおほれ降る雨に月のある夜のかすむとほ山

ちかからし−そらよりおほれ−ふるあめに−つきのあるよの−かすむとほやま


01528
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雪消えし野原の雨の下縁草も枯葉をうつむ色かな

ゆききえし−のはらのあめの−したみとり−くさもかれはを−うつむいろかな


01529
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朝日さすかた空はれて吹く風に山もと遠くかすむ春雨

あさひさす−かたそらはれて−ふくかせに−やまもととほく−かすむはるさめ


01530
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紐ときし花のねくらの鳥のこゑにほふ雨夜の明ほのの山

ひもときし−はなのねくらの−とりのこゑ−にほふあまよの−あけほののやま


01531
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もる庵にさむる涙をそふるかなうき春雨のふるき世の夢

もるいほに−さむるなみたを−そふるかな−うきはるさめの−ふるきよのゆめ


01532
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日をへつつ宿をは出てすまゆこもりいふせくもあるか春雨の空

ひをへつつ−やとをはいてす−まゆこもり−いふせくもあるか−はるさめのそら


01533
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軒はなるしのふの枯葉ぬれ延ひて紅葉にかへる春雨そふる

のきはなる−しのふのかれは−ぬれのひて−もみちにかへる−はるさめそふる


01534
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いつくよりさそひて庭の春雨を花のみそれと風のなすらん

いつくより−さそひてにはの−はるさめを−はなのみそれと−かせのなすらむ


01535
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露はらふ色しをれても春雨は猶山なしの花の一枝

つゆはらふ−いろしをれても−はるさめは−なほやまなしの−はなのひとえた


01536
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軒はなる有明の月の影なから霞みておつる袖のはる雨

のきはなる−ありあけのつきの−かけなから−かすみておつる−そてのはるさめ


01537
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山風の松に木ふかき音はして花の香くらき明ほのの雨

やまかせの−まつにこふかき−おとはして−はなのかくらき−あけほののあめ


01538
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花はちりぬ夕の雨にふりはてよ鳥の入るてふ雲のなきまて

はなはちりぬ−ゆふへのあめに−ふりはてよ−とりのいるてふ−くものなきまて


01539
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いかはかり夕の雨の遠かたにかすむさと人袖しほるらむ

いかはかり−ゆふへのあめの−をちかたに−かすむさとひと−そてしほるらむ


01540
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遠かたの霞の衣たれかきるあまつつみせり夕暮の空

をちかたの−かすみのころも−たれかきる−あまつつみせり−ゆふくれのそら


01541
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のこるなり夕山かつらかすみかけふる春雨にあくるおもかけ

のこるなり−ゆふやまかつら−かすみかけ−ふるはるさめに−あくるおもかけ


01542
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春雨のくるる軒はにいくすちかいとゆふみたすしつのをた巻

はるさめの−くるるのきはに−いくすちか−いとゆふみたす−しつのをたまき


01543
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春はたた嶺に夕ゐる雲もなし大かた空のかすむ雨かな

はるはたた−みねにゆふゐる−くももなし−おほかたそらの−かすむあめかな


01544
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雨も又たか手枕に明けぬらん雲そとたゆる春のよの夢

あめもまた−たかたまくらに−あけぬらむ−くもそとたゆる−はるのよのゆめ


01545
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枕とふ雨と成りてや絶えぬらん月も春の夜夢のうき雲

まくらとふ−あめとなりてや−たえぬらむ−つきもはるのよ−ゆめのうきくも


01546
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雨そそく円田の草に花そ咲くおくてになしてしはしかへすな

あめそそく−かとたのくさに−はなそさく−おくてになして−しはしかへすな


01547
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過きぬるか閨のあれまにもる雨の雫もかすむ袖の月かけ

すきぬるか−ねやのあれまに−もるあめの−しつくもかすむ−そてのつきかけ


01548
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春の雨晴行くしもつ出雲寺のこるは雲やはつさくら花

はるのあめ−はれゆくしもつ−いつもてら−のこるはくもや−はつさくらはな


01549
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草の庵ねぬにそおもふ春雨のこまかに遠き世世の古こと

くさのいほ−ねぬにそおもふ−はるさめの−こまかにとほき−よよのふること


01550
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さもそ世はうき山風の音たえて春の花なき夕暮の雨

さもそよは−うきやまかせの−おとたえて−はるのはななき−ゆふくれのあめ


01551
未入力 正徹 (xxx)

わか袖も春の老その杜のはも涙かきくらす雨そ色つく

わかそても−はるのおいその−もりのはも−なみたかきくらす−あめそいろつく


01552
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江の上の水のうき草紅にふりいてて松をそむる春雨

えのうへの−みつのうきくさ−くれなゐに−ふりいててまつを−そむるはるさめ


01553
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わかかたをしのふの軒の春雨に古郷人も袖しほるらむ

わかかたを−しのふののきの−はるさめに−ふるさとひとも−そてしほるらむ


01554
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主やたれ春の苗代つくる雨に田面の雲をかへす山かせ

ぬしやたれ−はるのなはしろ−つくるあめに−たのものくもを−かへすやまかせ


01555
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ぬれつつもあへる時かな雨の足もあらすき返す春の小山田

ぬれつつも−あへるときかな−あめのあしも−あらすきかへす−はるのをやまた


01556
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夜の雨にあさのさ衣かへす田を夢にもみるやいそくしつのを

よるのあめに−あさのさころも−かへすたを−ゆめにもみるや−いそくしつのを


01557
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すさむらむ御牧の草の古葉さへ又駒かへる春とみえつつ

すさむらむ−みまきのくさの−ふるはさへ−またこまかへる−はるとみえつつ


01558
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程ちかき手馴の駒を放ちおきてなれも草かる野へのあけまき

ほとちかき−たなれのこまを−はなちおきて−なれもくさかる−のへのあけまき


01559
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あれそ行く御牧の駒のしたりかみおきふし野への草にみたれて

あれそゆく−みまきのこまの−したりかみ−おきふしのへの−くさにみたれて


01560
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野辺の駒つなける縄に草そふすいたくな引きそ秋の花みん

のへのこま−つなけるなはに−くさそふす−いたくなひきそ−あきのはなみむ


01561
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駒はみな春の御牧の野へにひく霞の色をかす毛はかりそ

こまはみな−はるのみまきの−のへにひく−かすみのいろを−かすけはかりそ


01562
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春はまつ心なき駒の形代をいたたきいはふこゑもいさめる

はるはまつ−こころなきこまの−かたしろを−いたたきいはふ−こゑもいさめる


01563
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春日よみ遠き野原の放駒ねふりたてるも哀とそみる

はるひよみ−とほきのはらの−はなれこま−ねふりたてるも−あはれとそみる


01564
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二葉ともみつの御牧の春の草もゆれはやかて駒そすさむる

ふたはとも−みつのみまきの−はるのくさ−もゆれはやかて−こまそすさむる


01565
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秋は又民も草葉にいさまなん御牧にいはふのへの春駒

あきはまた−たみもくさはに−いさまなむ−みまきにいはふ−のへのはるこま


01566
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春ふかみ草おふ駒もかる人もかへるみつ野の夕暮の雨

はるふかみ−くさおふこまも−かるひとも−かへるみつのの−ゆふくれのあめ


01567
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草もまた古葉の色をはむ駒の毛さへ栗栖の野へそ春なき

くさもまた−ふるはのいろを−はむこまの−けさへくるすの−のへそはるなき


01568
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駒の毛のひはり立つなりくるすのの御牧の草やはみあらすらん

こまのけの−ひはりたつなり−くるすのの−みまきのくさや−はみあらすらむ


01569
未入力 正徹 (xxx)

御牧より春草おひてくる駒のおのれやせたる世中のうさ

みまきより−はるくさおひて−くるこまの−おのれやせたる−よのなかのうさ


01570
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哀にもかすむ夕の広き野に静に立ちて駒そかへらぬ

あはれにも−かすむゆふへの−ひろきのに−しつかにたちて−こまそかへらぬ


01571
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立ちこむる野への霞をはむ駒にもゆるそしるき春の若草

たちこむる−のへのかすみを−はむこまに−もゆるそしるき−はるのわかくさ


01572
未入力 正徹 (xxx)

春ふかみ沢におり立つつるふちの駒のすさむる草そ荒行く

はるふかみ−さはにおりたつ−つるふちの−こまのすさむる−くさそあれゆく


01573
未入力 正徹 (xxx)

いそくらん心もさそなあれわたる春の田面の雁のとこよを

いそくらむ−こころもさそな−あれわたる−はるのたのもの−かりのとこよを


01574
未入力 正徹 (xxx)

ととめこし子をおもふ雁や春のよのくらきやみ路に猶かへるらん

ととめこし−こをおもふかりや−はるのよの−くらきやみちに−なほかへるらむ


01575
未入力 正徹 (xxx)

空になとおもひたつらん春の雁おのか床よの塵ならぬ身を

そらになと−おもひたつらむ−はるのかり−おのかとこよの−ちりならぬみを


01576
未入力 正徹 (xxx)

こととはむしらすとこよは此比を秋にさためて雁や行くらん

こととはむ−しらすとこよは−このころを−あきにさためて−かりやゆくらむ


01577
未入力 正徹 (xxx)

二月の午ならねとも稲荷山さかの名しるくこゆる雁か音

きさらきの−うまならねとも−いなりやま−さかのなしるく−こゆるかりかね


01578
未入力 正徹 (xxx)

春の色を空にそしらぬ雁の行くとこよや花の都なるらん

はるのいろを−そらにそしらぬ−かりのゆく−とこよやはなの−みやこなるらむ


01579
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かきつらね秋こし数のそのままにかへるやかたき春のかりかね

かきつらね−あきこしかすの−そのままに−かへるやかたき−はるのかりかね


01580
未入力 正徹 (xxx)

都にてむすひし雁の玉章もとくやとこよの花の下紐

みやこにて−むすひしかりの−たまつさも−とくやとこよの−はなのしたひも


01581
未入力 正徹 (xxx)

あとつくる真砂の鳥を形見とや又もし消えて帰る雁か音

あとつくる−まさこのとりを−かたみとや−またもしきえて−かへるかりかね


01582
未入力 正徹 (xxx)

霞たつしのふもちすり衣手にみたれて帰る春の雁か音

かすみたつ−しのふもちすり−ころもてに−みたれてかへる−はるのかりかね


01583
未入力 正徹 (xxx)

春のきる霞の衣した帯をひきてわかるる雁の一むら

はるのきる−かすみのころも−したおひを−ひきてわかるる−かりのひとむら


01584
未入力 正徹 (xxx)

古郷にいまた思ひやたえさらん南にいそく春のかりか音

ふるさとに−いまたおもひや−たえさらむ−みなみにいそく−はるのかりかね


01585
未入力 正徹 (xxx)

燕くるかた岡の辺の柳原なひく梢にかへるかりかね

つはめくる−かたをかのへの−やなきはら−なひくこすゑに−かへるかりかね


01586
未入力 正徹 (xxx)

みこし路にいまゆかすとも春の雁北にむかふをかへるとやみん

みこしちに−いまゆかすとも−はるのかり−きたにむかふを−かへるとやみむ


01587
未入力 正徹 (xxx)

風吹けは駒もいはふる古郷をいそくか北にむかふかりかね

かせふけは−こまもいはふる−ふるさとを−いそくかきたに−むかふかりかね


01588
未入力 正徹 (xxx)

天つ雁秋の衣をぬきすてて帰るに似たる雲そのこれる

あまつかり−あきのころもを−ぬきすてて−かへるににたる−くもそのこれる


01589
未入力 正徹 (xxx)

春の雁ゆふへの雲に声すなり哀かへらぬ老のなみかな

はるのかり−ゆふへのくもに−こゑすなり−あはれかへらぬ−おいのなみかな


01590
未入力 正徹 (xxx)

なかき日の空に正木の綱はへてと山を遠みかすむ雁かね

なかきひの−そらにまさきの−つなはへて−とやまをとほみ−かすむかりかね


01591
未入力 正徹 (xxx)

真葛葉もたえすかへりし秋風の行へはしるや春のかりかね

まくすはも−たえすかへりし−あきかせの−ゆくへはしるや−はるのかりかね


01592
未入力 正徹 (xxx)

こえて行く嶺のま葛の若葉さへ雁の羽風にいまかへるなり

こえてゆく−みねのまくすの−わかはさへ−かりのはかせに−いまかへるなり


01593
未入力 正徹 (xxx)

雁に又めくりあふらし小車のとこよの花の春のさと人

かりにまた−めくりあふらし−をくるまの−とこよのはなの−はるのさとひと


01594
未入力 正徹 (xxx)

比良の海の浪に釣するあまの袖かへるも雁の羽風とそみる

ひらのうみの−なみにつりする−あまのそて−かへるもかりの−はかせとそみる


01595
未入力 正徹 (xxx)

雁なれや雲にことちを立つとみてかへりこゑする春のしらへは

かりなれや−くもにことちを−たつとみて−かへりこゑする−はるのしらへは


01596
未入力 正徹 (xxx)

行く雁の都の夢もかへるらんこしの浪路の荒き旅ねに

ゆくかりの−みやこのゆめも−かへるらむ−こしのなみちの−あらきたひねに


01597
未入力 正徹 (xxx)

春いてて冬にそむかふ天つ雁都の霞こしのしら雪

はるいてて−ふゆにそむかふ−あまつかり−みやこのかすみ−こしのしらゆき


01598
未入力 正徹 (xxx)

毛衣に花の錦も立ちあへすかへるかいそくかりのふる郷

けころもに−はなのにしきも−たちあへす−かへるかいそく−かりのふるさと


01599
未入力 正徹 (xxx)

待てしはしとこ世も此よ花ならぬ花やはさかん春の雁か音

まてしはし−とこよもこのよ−はなならぬ−はなやはさかむ−はるのかりかね


01600
未入力 正徹 (xxx)

春をあさみまた北海や荒れぬらん漕きかへるなり雁のとも舟

はるをあさみ−またきたうみや−あれぬらむ−こきかへるなり−かりのともふね


01601
未入力 正徹 (xxx)

行く雁は啼きてもさそふ有明の月そおもはぬ空に残れる

ゆくかりは−なきてもさそふ−ありあけの−つきそおもはぬ−そらにのこれる


01602
未入力 正徹 (xxx)

星合は秋そわかるみ天の川かはたれ時にかへるかりかね

ほしあひは−あきそわかるみ−あまのかは−かはたれときに−かへるかりかね


01603
未入力 正徹 (xxx)

鳴きて行く雁の涙もかくれあらし雲も霞も袖につつまて

なきてゆく−かりのなみたも−かくれあらし−くももかすみも−そてにつつまて


01604
未入力 正徹 (xxx)

梢にも宿やはからん霞わけねに行く鳥につるる雁か音

こすゑにも−やとやはからむ−かすみわけ−ねにゆくとりに−つるるかりかね


01605
未入力 正徹 (xxx)

玉章は中中見えし墨染のゆふへをかけて帰る雁かね

たまつさは−なかなかみえし−すみそめの−ゆふへをかけて−かへるかりかね


01606
未入力 正徹 (xxx)

三日月もわか有明かくるるまとたのむる比の雁の別は

みかつきも−わかありあけか−くるるまと−たのむるころの−かりのわかれは


01607
未入力 正徹 (xxx)

ねに行くもましる鳥かな明けはとも雁はたのめぬ春の夕暮

ねにゆくも−ましるとりかな−あけはとも−かりはたのめぬ−はるのゆふくれ


01608
未入力 正徹 (xxx)

古郷に今夜なつきそ花にふれてやみの錦をかりの毛衣

ふるさとに−こよひなつきそ−はなにふれて−やみのにしきを−かりのけころも


01609
未入力 正徹 (xxx)

いるとみる弓張月もおとろかす雁や霞に身をかくすらん

いるとみる−ゆみはりつきも−おとろかす−かりやかすみに−みをかくすらむ


01610
未入力 正徹 (xxx)

霞にも雲にもまよふ空なから春をしるへと雁や行くらん

かすみにも−くもにもまよふ−そらなから−はるをしるへと−かりやゆくらむ


01611
未入力 正徹 (xxx)

玉章のこすみ薄墨かきつらね今遠近にかへる雁か音

たまつさの−こすみうすすみ−かきつらね−いまをちこちに−かへるかりかね


01612
未入力 正徹 (xxx)

夕ま暮かすみて雁もとふさ立つ足から山にかへる雲かな

ゆふまくれ−かすみてかりも−とふさたつ−あしからやまに−かへるくもかな


01613
未入力 正徹 (xxx)

みなの川霞のうちに音はして今よりおつる春の雁か音

みなのかは−かすみのうちに−おとはして−いまよりおつる−はるのかりかね


01614
未入力 正徹 (xxx)

朽ちねたた花ちる嶺に行く雁のなこりもしらぬ谷の埋木

くちねたた−はなちるみねに−ゆくかりの−なこりもしらぬ−たにのうもれき


01615
未入力 正徹 (xxx)

おくれとや夕へは北に吹く風のむかしの谷をしたふかりかね

おくれとや−ゆふへはきたに−ふくかせの−むかしのたにを−したふかりかね


01616
未入力 正徹 (xxx)

はしたての松もかくとや浪の上に霞みてならふ春のかりかね

はしたての−まつもかくとや−なみのうへに−かすみてならふ−はるのかりかね


01617
未入力 正徹 (xxx)

春とてや雁かへるらん海松や時そともなき浪にならはて

はるとてや−かりかへるらむ−うみまつや−ときそともなき−なみにならはて


01618
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浪の上につはさならへてうけ縄の長きに似たる春の雁か音

なみのうへに−つはさならへて−うけなはの−なかきににたる−はるのかりかね


01619
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蘆辺より浪よる磯にみつ塩のいやましにのみ帰る雁か音

あしへより−なみよるいそに−みつしほの−いやましにのみ−かへるかりかね


01620
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ひらの海や湊の春の荒小田に夕浪こえて雁そむれゐる

ひらのうみや−みなとのはるの−あらをたに−ゆふなみこえて−かりそむれゐる


01621
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かへるかりわたれとぬれぬえそしらぬ翅の雨に春のささ浪

かへるかり−わたれとぬれぬ−えそしらぬ−つはさのあめに−はるのささなみ


01622
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帰るらし浪にうち出の浜つつらつらなる雁もはねかつらして

かへるらし−なみにうちての−はまつつら−つらなるかりも−はねかつらして


01623
未入力 正徹 (xxx)

雁かゐし春の渚のあととめてかへりつくさぬにほのうら浪

かりかゐし−はるのなきさの−あととめて−かへりつくさぬ−にほのうらなみ


01624
未入力 正徹 (xxx)

かすかすに筑波根こえてから衣すそわの田井にかすむ雁か音

かすかすに−つくはねこえて−からころも−すそわのたゐに−かすむかりかね


01625
未入力 正徹 (xxx)

すきかへす春の荒田はすむ程の水さへなしと雁や行くらむ

すきかへす−はるのあらたは−すむほとの−みつさへなしと−かりやゆくらむ


01626
未入力 正徹 (xxx)

雁そ行く又わたらしともろこしの橋にかきてし文字をつらねて

かりそゆく−またわたらしと−もろこしの−はしにかきてし−もしをつらねて


01627
未入力 正徹 (xxx)

春のきる雲の衣の帯にしてかへるをつるる雁の一すち

はるのきる−くものころもの−おひにして−かへるをつるる−かりのひとすち


01628
未入力 正徹 (xxx)

かすむ日にこえ行く雲の一枝は雁のつらぬるみねの松はら

かすむひに−こえゆくくもの−ひとえたは−かりのつらぬる−みねのまつはら


01629
未入力 正徹 (xxx)

遠かたの霞のみをになかれ行く雁のはの字や書くかひもなき

をちかたの−かすみのみをに−なかれゆく−かりのはのしや−かくかひもなき


01630
未入力 正徹 (xxx)

なかれ行く水なき空に水茎のあとさへ消えてかすむ雁かね

なかれゆく−みつなきそらに−みつくきの−あとさへきえて−かすむかりかね


01631
未入力 正徹 (xxx)

春のよはかりねの夢のうき橋もみしかき雲に渡る雁かね

はるのよは−かりねのゆめの−うきはしも−みしかきくもに−わたるかりかね


01632
未入力 正徹 (xxx)

影うつる苗代水やさそふらん遠山もとにおつるかりかね

かけうつる−なはしろみつや−さそふらむ−とほやまもとに−おつるかりかね


01633
未入力 正徹 (xxx)

霞行く翅の風や寒き日のとほ山すりのころも雁か音

かすみゆく−つはさのかせや−さむきひの−とほやますりの−ころもかりかね


01634
未入力 正徹 (xxx)

むかしたかかきける筆のあととてか消えつつ遠く雁帰るらん

むかしたか−かきけるふての−あととてか−きえつつとほく−かりかへるらむ


01635
未入力 正徹 (xxx)

棹姫のかすみの袖につく墨のおつるやこゆる春の雁かね

さほひめの−かすみのそてに−つくすみの−おつるやこゆる−はるのかりかね


01636
未入力 正徹 (xxx)

春の雁帰るも空に遠き世をわれそ心に思ひつらぬる

はるのかり−かへるもそらに−とほきよを−われそこころに−おもひつらぬる


01637
未入力 正徹 (xxx)

さほ姫の遠山まゆのおも形に今朝そみたれて帰る雁かね

さほひめの−とほやままゆの−おもかけに−けさそみたれて−かへるかりかね


01638
未入力 正徹 (xxx)

いくつらと見ゆるものからあま雲のよそにのみして帰る雁かね

いくつらと−みゆるものから−あまくもの−よそにのみして−かへるかりかね


01639
未入力 正徹 (xxx)

かすめやる心雲路をしのけとや昔にかすむ春のかりかね

かすめやる−こころくもちを−しのけとや−むかしにかすむ−はるのかりかね


01640
未入力 正徹 (xxx)

いさ今夜うれしき道にともなはむ我も昔にかへる雁かね

いさこよひ−うれしきみちに−ともなはむ−われもむかしに−かへるかりかね


01641
未入力 正徹 (xxx)

かへりこぬ空に心を送れはやむかしにかすむ春のかりかね

かへりこぬ−そらにこころを−おくれはや−むかしにかすむ−はるのかりかね


01642
未入力 正徹 (xxx)

春の雁まてニかたにしたふとも花ちる嶺のこゆるをそみむ

はるのかり−まてふたかたに−したふとも−はなちるみねの−こゆるをそみむ


01643
未入力 正徹 (xxx)

ゐるかたやかすむ嵐の末ならん塵に立行く春のかりかね

ゐるかたや−かすむあらしの−すゑならむ−ちりにたちゆく−はるのかりかね


01644
未入力 正徹 (xxx)

友なはぬ昨日の雁の雲ゐ路に鳴きて帰るをあすやしたはん

ともなはぬ−きのふのかりの−くもゐちに−なきてかへるを−あすやしたはむ


01645
未入力 正徹 (xxx)

巣をいてて山の霞にまよへはや子を呼ふ鳥の鳴きくらすらん

すをいてて−やまのかすみに−まよへはや−こをよふとりの−なきくらすらむ


01646
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いとへとやうき世の人を喚子鳥ひとり太山にねを尽すらん

いとへとや−うきよのひとを−よふことり−ひとりみやまに−ねをつくすらむ


01647
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こたふるをきかてやさのみ呼子鳥太山の滝の近きひひきに

こたふるを−きかてやさのみ−よふことり−みやまのたきの−ちかきひひきに


01648
未入力 正徹 (xxx)

そことなく子を喚ふ鳥のこゑきくを鷲のみ山と思はましかは

そことなく−こをよふとりの−こゑきくを−わしのみやまと−おもはましかは


01649
未入力 正徹 (xxx)

朽ちてこそ種をもとめめ水底に水草かりしく春の苗代

くちてこそ−たねをもとめめ−みなそこに−みくさかりしく−はるのなはしろ


01650
未入力 正徹 (xxx)

あつさ弓五十串のみしめ引きはへて種まく小田は鳥もかよはす

あつさゆみ−いくしのみしめ−ひきはへて−たねまくをたは−とりもかよはす


01651
未入力 正徹 (xxx)

神楽とはよも苗代のみな口に川頭やうたふ春のささ浪

かくらとは−よもなはしろの−みなくちに−かはつやうたふ−はるのささなみ


01652
未入力 正徹 (xxx)

おもへとや鳥おふ水の苗代に鹿立つ嶺のかけもみゆらむ

おもへとや−とりおふみつの−なはしろに−しかたつみねの−かけもみゆらむ


01653
未入力 正徹 (xxx)

花なれや苗代小田にしめ越えて御ぬさ手向くる春の山風

はななれや−なはしろをたに−しめこえて−みぬさたむくる−はるのやまかせ


01654
未入力 正徹 (xxx)

春の田の苗の牆代いくしたて鳥驚かすしめのゆふして

はるのたの−なへのかきしろ−いくしたて−とりおとろかす−しめのゆふして


01655
未入力 正徹 (xxx)

五十串たてまつるとなしの水口にうすの玉まく春の苗代

いくしたて−まつるとなしの−みなくちに−うすのたままく−はるのなはしろ


01656
未入力 正徹 (xxx)

白妙になひくみしめの夕つくひさすや岡辺の小田の苗代

しろたへに−なひくみしめの−ゆふつくひ−さすやをかへの−をたのなはしろ


01657
未入力 正徹 (xxx)

あら小田や野へによろつなつむ賎は知らすやこれも民の草はと

あらをたや−のへによろつな−つむしつは−しらすやこれも−たみのくさはと


01658
未入力 正徹 (xxx)

野を寒みまた新草は手にたにもたまらぬ雪の下に萌えつつ

のをさむみ−またにひくさは−てにたにも−たまらぬゆきの−したにもえつつ


01659
未入力 正徹 (xxx)

末遠き野への若葉の新草にやとり初めたる春の朝露

すゑとほき−のへのわかはの−にひくさに−やとりそめたる−はるのあさつゆ


01660
未入力 正徹 (xxx)

若草の花さくそのの初蝶も春日のとけみ遊ふ糸ゆふ

わかくさの−はなさくそのの−はつてふも−はるひのとけみ−あそふいとゆふ


01661
未入力 正徹 (xxx)

松陰のをかの屋かたの雪間より秋風しるき葛の下萌

まつかけの−をかのやかたの−ゆきまより−あきかせしるき−くすのしたもえ


01662
未入力 正徹 (xxx)

春は又落葉かきても松陰の礒菜摘むなりあまのをとめ子

はるはまた−おちはかきても−まつかけの−いそなつむなり−あまのをとめこ


01663
未入力 正徹 (xxx)

なかめすよ花さく春の草はあれとめかり塩焼く磯のあま人

なかめすよ−はなさくはるの−くさはあれと−めかりしほやく−いそのあまひと


01664
未入力 正徹 (xxx)

たか春の草のたもとそあさ緑しなくたりてもみえぬ色かな

たかはるの−くさのたもとそ−あさみとり−しなくたりても−みえぬいろかな


01665
未入力 正徹 (xxx)

冬かれし遠かた野へに小松原ありとみゆるや春のむら草

ふゆかれし−をちかたのへに−こまつはら−ありとみゆるや−はるのむらくさ


01666
未入力 正徹 (xxx)

ふる雨のうるほす庭にむす苔とみるはかりなる春の草かな

ふるあめの−うるほすにはに−むすこけと−みるはかりなる−はるのくさかな


01667
未入力 正徹 (xxx)

消えはをし野への若葉の初もえき染めいたす春の雪の一入

きえはをし−のへのわかはの−はつもえき−そめいたすはるの−ゆきのひとしほ


01668
未入力 正徹 (xxx)

秋かけてたちそつつけん若草の花の錦のおくの色色

あきかけて−たちそつつけむ−わかくさの−はなのにしきの−おくのいろいろ


01669
未入力 正徹 (xxx)

春も猶山にはもえす若草のつま木こる男の道芝にして

はるもなほ−やまにはもえす−わかくさの−つまきこるをの−みちしはにして


01670
未入力 正徹 (xxx)

初みとり色もこもらす宿に咲くこや若草のつまなしの花

はつみとり−いろもこもらす−やとにさく−こやわかくさの−つまなしのはな


01671
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みとりしく春のわか草やはらかにぬるよしらるる庭の夕露

みとりしく−はるのわかくさ−やはらかに−ぬるよしらるる−にはのゆふつゆ


01672
未入力 正徹 (xxx)

若草につまもかくさて朝明の霞もしかもわたるのへかな

わかくさに−つまもかくさて−あさあけの−かすみもしかも−わたるのへかな


01673
未入力 正徹 (xxx)

摘むもをしわかむらさきの菫草しのふのみたれのこるあさ露

つむもをし−わかむらさきの−すみれくさ−しのふのみたれ−のこるあさつゆ


01674
未入力 正徹 (xxx)

たた一夜ねての朝けの露さむし菫摘むのの春の衣手

たたひとよ−ねてのあさけの−つゆさむし−すみれつむのの−はるのころもて


01675
未入力 正徹 (xxx)

菫つむ沢辺の水の春さむみ一夜ねはかせ鶴の毛ころも

すみれつむ−さはへのみつの−はるさむみ−ひとよねはかせ−つるのけころも


01676
未入力 正徹 (xxx)

つますとも菫ましりの若草の野をなつかしみ宿やからまし

つますとも−すみれましりの−わかくさの−のをなつかしみ−やとやからまし


01677
未入力 正徹 (xxx)

行人も野へのしの屋に一夜ねぬつまぬ菫の春の名たてに

ゆくひとも−のへのしのやに−ひとよねぬ−つまぬすみれの−はるのなたてに


01678
未入力 正徹 (xxx)

うゑおきて花さへ春を三ちとせになるてふ桃のよはひをそしる

うゑおきて−はなさへはるを−みちとせに−なるてふももの−よはひをそしる


01679
未入力 正徹 (xxx)

めくりきぬけふさく花もももちとりさへつる宿の春の杯

めくりきぬ−けふさくはなも−ももちとり−さへつるやとの−はるのさかつき


01680
未入力 正徹 (xxx)

山里にあさてかけおくはつきより桃の林とさける花かな

やまさとに−あさてかけおく−はつきより−もものはやしと−さけるはなかな


01681
未入力 正徹 (xxx)

あさてほす棹かけわたす山奴のそのふの竹に桃そ交れる

あさてほす−さをかけわたす−やまかつの−そのふのたけに−ももそましれる


01682
未入力 正徹 (xxx)

山さとのそのの垣ほにさく桃の枝をはつ木とあさてほすみゆ

やまさとの−そののかきほに−さくももの−えたをはつきと−あさてほすみゆ


01683
未入力 正徹 (xxx)

なかれきて桃の杯過くるとも手もさへきらし飲む身ならねは

なかれきて−もものさかつき−すくるとも−てもさへきらし−のむみならねは


01684
未入力 正徹 (xxx)

紅にしろき花さく薗の桃むへ山かつもこころありけり

くれなゐに−しろきはなさく−そののもも−うへやまかつも−こころありけり


01685
未入力 正徹 (xxx)

よくしれは夕かけまたぬあさかほもたた三千とせそ桃園の花

よくしれは−ゆふかけまたぬ−あさかほも−たたみちとせそ−ももそののはな


01686
未入力 正徹 (xxx)

杯の石にさはるもことの葉もせかるる程ほまたれやはせん

さかつきの−いしにさはるも−ことのはも−せかるるほとほ−またれやはせむ


01687
未入力 正徹 (xxx)

稀なれやけふの巳の日の御祓川めくりあふてふももの杯

まれなれや−けふのみのひの−みそきかは−めくりあふてふ−もものさかつき


01688
未入力 正徹 (xxx)

まちけめや弥生の三日の水の上にうきたる鳥の春のさか月

まちけめや−やよひのみかの−みつのうへに−うきたるとりの−はるのさかつき


01689
未入力 正徹 (xxx)

花さけは錦かけほす桃そのの春のふる宮人しなけれと

はなさけは−にしきかけほす−ももそのの−はるのふるみや−ひとしなけれと


01690
未入力 正徹 (xxx)

たちわたる春のまといのともねまてきこえて高き雲の上人

たちわたる−はるのまといの−ともねまて−きこえてたかき−くものうへひと


01691
未入力 正徹 (xxx)

九重に春の霞も引く弓の影見ぬ庭はともねとそしる

ここのへに−はるのかすみも−ひくゆみの−かけみぬにはは−ともねとそしる


01692
未入力 正徹 (xxx)

ささ波もかすめる池のかきつはたいつれかつひに春をへたてん

ささなみも−かすめるいけの−かきつはた−いつれかつひに−はるをへたてむ


01693
未入力 正徹 (xxx)

花の色をかたみとやみしたとへけん人ははかなし一枝の雨

はなのいろを−かたみとやみし−たとへけむ−ひとははかなし−ひとえたのあめ


01694
未入力 正徹 (xxx)

わたのはらうち出ててみれは山なしの花とやいはん沖つ白浪

わたのはら−うちいててみれは−やまなしの−はなとやいはむ−おきつしらなみ


01695
未入力 正徹 (xxx)

浪こゆる入江にかすむ蘆の子のわか葉もいまたみえぬ春かな

なみこゆる−いりえにかすむ−あしのこの−わかはもいまた−みえぬはるかな


01696
未入力 正徹 (xxx)

夕霞野かひの牛のあよみくる入江の蘆もかつそ角くむ

ゆふかすみ−のかひのうしの−あよみくる−いりえのあしも−かつそつのくむ


01697
未入力 正徹 (xxx)

天の世のはしめは神も蘆牙の姿なりける江にや角くむ

あまのよの−はしめはかみも−あしかひの−すかたなりける−えにやつのくむ


01698
未入力 正徹 (xxx)

哀にも軒はの燕きなくなり去年も巣かけし宿を尋ねて

あはれにも−のきはのつはめ−きなくなり−こそもすかけし−やとをたつねて


01699
未入力 正徹 (xxx)

永き日の柳の糸にみたれきてつはめあまたの庭の春風

なかきひの−やなきのいとに−みたれきて−つはめあまたの−にはのはるかせ


01700
未入力 正徹 (xxx)

あまたこゑ簾にかかる春の日のかすめる庭にちるつはめかな

あまたこゑ−すたれにかかる−はるのひの−かすめるにはに−ちるつはめかな


01701
未入力 正徹 (xxx)

庭めくる燕入るなりなかはあけておしはるみすの下もあらはに

にはめくる−つはめいるなり−なかはあけて−おしはるみすの−したもあらはに


01702
未入力 正徹 (xxx)

つはくらめ簾うこかす羽風にもかつ散る庭の花そ匂へる

つはくらめ−すたれうこかす−はかせにも−かつちるにはの−はなそにほへる


01703
未入力 正徹 (xxx)

子をおもふ野へのおとろの下蕨折りてなふれそききす鳴くなり

こをおもふ−のへのおとろの−したわらひ−をりてなふれそ−ききすなくなり


01704
未入力 正徹 (xxx)

行ふりに聞けはのとけし永き日のかすむ春野に雉なくこゑ

ゆきふりに−きけはのとけし−なかきひの−かすむはるのに−ききすなくこゑ


01705
未入力 正徹 (xxx)

子を思ふ心しるらし雉鳴くかすみも袖をおほふ野へかな

こをおもふ−こころしるらし−ききすなく−かすみもそてを−おほふのへかな


01706
未入力 正徹 (xxx)

おもふらん子をいかにとも今そ聞く焼野を行けは雉なくこゑ

おもふらむ−こをいかにとも−いまそきく−やけのをゆけは−ききすなくこゑ


01707
未入力 正徹 (xxx)

若草のもゆる春日も猶さゆるうたの枯野にききす鳴くなり

わかくさの−もゆるはるひも−なほさゆる−うたのかれのに−ききすなくなり


01708
未入力 正徹 (xxx)

あつさ弓山桜かりわれならぬことわりしらて立つききすかな

あつさゆみ−やまさくらかり−われならぬ−ことわりしらて−たつききすかな


01709
未入力 正徹 (xxx)

子をおもふ道のささ原岡越に誰ふみたてて雉なくらん

こをおもふ−みちのささはら−をかこしに−たれふみたてて−ききすなくらむ


01710
未入力 正徹 (xxx)

子をおもふききす鳴くなりかの岡に草刈るをのこ春なくもかな

こをおもふ−ききすなくなり−かのをかに−くさかるをのこ−はるなくもかな


01711
未入力 正徹 (xxx)

さくらちるかた野の原に立つ雉の羽風も春は花のかそする

さくらちる−かたののはらに−たつきしの−はかせもはるは−はなのかそする


01712
未入力 正徹 (xxx)

真柴もて草葉そよかす山人のおりくる野へに雉立つなり

ましはもて−くさはそよかす−やまひとの−おりくるのへに−ききすたつなり


01713
未入力 正徹 (xxx)

啼くききす子を思ひ草秋かけて涙や春の野へを染むらん

なくききす−こをおもひくさ−あきかけて−なみたやはるの−のへをそむらむ


01714
未入力 正徹 (xxx)

雪そちる草のはら野の朝かしはぬるや雉の声はまたせて

ゆきそちる−くさのはらのの−あさかしは−ぬるやききすの−こゑはまたせて


01715
未入力 正徹 (xxx)

おなしえに子をおもふ雉うらふれて鴫くや沢へのたつのもろこゑ

おなしえに−こをおもふききす−うらふれて−しきくやさはへの−たつのもろこゑ


01716
未入力 正徹 (xxx)

秋の鴫春のききすの立つ沢に哀こもれる霧かすみかな

あきのしき−はるのききすの−たつさはに−あはれこもれる−きりかすみかな


01717
未入力 正徹 (xxx)

むら薄のこるを陰とねせりつむ沢田のくろにふす雉かな

むらすすき−のこるをかけと−ねせりつむ−さはたのくろに−ふすききすかな


01718
未入力 正徹 (xxx)

鶴のすむ入江の沢に鳴く雉もろ心にや子をおもふらん

つるのすむ−いりえのさはに−なくききす−もろこころにや−こをおもふらむ


01719
未入力 正徹 (xxx)

子をおもふ心しれとやかけろふのもゆる春日にききす啼くらん

こをおもふ−こころしれとや−かけろふの−もゆるはるひに−ききすなくらむ


01720
未入力 正徹 (xxx)

あらき風わか葉な吹きそ鳴くききす子を思ふ野への末の芝生そ

あらきかせ−わかはなふきそ−なくききす−こをおもふのへの−すゑのしはふそ


01721
未入力 正徹 (xxx)

のかれこしうき世わするる山陰に子を思ふ雉の声なをしへそ

のかれこし−うきよわするる−やまかけに−こをおもふきしの−こゑなをしへそ


01722
未入力 正徹 (xxx)

消えかねし雪の跡とや雉鳴くかた山かくれ草もみしかき

きえかねし−ゆきのあととや−ききすなく−かたやまかくれ−くさもみしかき


01723
未入力 正徹 (xxx)

こゑさへもあるかなきかを糸ゆふにまかへてあかる夕雲雀かな

こゑさへも−あるかなきかを−いとゆふに−まかへてあかる−ゆふひはりかな


01724
未入力 正徹 (xxx)

さしのほる春日の上の空しめてかすむ雲雀の野へのこゑこゑ

さしのほる−はるひのうへの−そらしめて−かすむひはりの−のへのこゑこゑ


01725
未入力 正徹 (xxx)

春日よくかすめる空の村鳥や野辺のひはりの皆あかるらん

はるひよく−かすめるそらの−むらとりや−のへのひはりの−みなあかるらむ


01726
未入力 正徹 (xxx)

かささきの橋に鳴くまて天の川かたのの雲雀あかるとそみし

かささきの−はしになくまて−あまのかは−かたののひはり−あかるとそみし


01727
未入力 正徹 (xxx)

空たかくあかる雲雀もにくからす哀わか身の程知らぬ世に

そらたかく−あかるひはりも−にくからす−あはれわかみの−ほとしらぬよに


01728
未入力 正徹 (xxx)

野への床草葉をあらす駒の毛の雲雀や空に声恨むらん

のへのとこ−くさはをあらす−こまのけの−ひはりやそらに−こゑうらむらむ


01729
未入力 正徹 (xxx)

つまこめし野守の鏡面影のかすめる空になくひはりかな

つまこめし−のもりのかかみ−おもかけの−かすめるそらに−なくひはりかな


01730
未入力 正徹 (xxx)

影清き野守の鏡折折にくもるはあかるむら雲雀かも

かけきよき−のもりのかかみ−をりをりに−くもるはあかる−むらひはりかも


01731
未入力 正徹 (xxx)

玉鉾の野へのひはりもねをそ鳴くあかりての世の道や恋しき

たまほこの−のへのひはりも−ねをそなく−あかりてのよの−みちやこひしき


01732
未入力 正徹 (xxx)

夕雲雀こゑの雲井に高島やかちのの草は嵐たつらし

ゆふひはり−こゑのくもゐに−たかしまや−かちののくさは−あらしたつらし


01733
未入力 正徹 (xxx)

若葉たつ末野の茅原かくろへて巣のうちふかく鳴く雲雀かな

わかはたつ−すゑののちはら−かくろへて−すのうちふかく−なくひはりかな


01734
未入力 正徹 (xxx)

啼くひはり空にあるまにすき返す田面の草に床はなくして

なくひはり−そらにあるまに−すきかへす−たのものくさに−とこはなくして


01735
未入力 正徹 (xxx)

かへすよりあれにし野田の草の原むなしき床をとふひはりかな

かへすより−あれにしのたの−くさのはら−むなしきとこを−とふひはりかな


01736
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山もとの夕かけ草を吹く風におく露またてたつ雲雀かな

やまもとの−ゆふかけくさを−ふくかせに−おくつゆまたて−たつひはりかな


01737
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夕雲雀空にこゑして落ちこぬやなれし床なき荻の焼原

ゆふひはり−そらにこゑして−おちこぬや−なれしとこなき−をきのやけはら


01738
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野辺の草はねもしをれし夕露の結はぬ先に雲雀落つなり

のへのくさ−はねもしをれし−ゆふつゆの−むすはぬさきに−ひはりおつなり


01739
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野への露夕かけ草にのほるさへおつる雲雀の床のかたしき

のへのつゆ−ゆふかけくさに−のほるさへ−おつるひはりの−とこのかたしき


01740
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菫つむ遠かた人もいそくらし春の野に出ててあそふ糸ゆふ

すみれつむ−をちかたひとも−いそくらし−はるののにいてて−あそふいとゆふ


01741
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春日影をちかた野への若草に里の子ましりあそふ糸ゆふ

はるひかけ−をちかたのへの−わかくさに−さとのこましり−あそふいとゆふ


01742
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世にかくてあるかなきかの身をしるもたくひむなしき春の糸ゆふ

よにかくて−あるかなきかの−みをしるも−たくひむなしき−はるのいとゆふ


01743
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天つ人かさしにむすふ糸ゆふやみとりの空にみたれゆくらん

あまつひと−かさしにむすふ−いとゆふや−みとりのそらに−みたれゆくらむ


01744
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蘆のやの野への春風くりかへしたか糸ゆふをしつのをた巻

あしのやの−のへのはるかせ−くりかへし−たかいとゆふを−しつのをたまき


01745
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若みとりまた長からぬ初草に春日をつなく野へのいとゆふ

わかみとり−またなかからぬ−はつくさに−はるひをつなく−のへのいとゆふ


01746
未入力 正徹 (xxx)

草もゆる野島か崎の永き日にあまや約する棹の糸ゆふ

くさもゆる−のしまかさきの−なかきひに−あまやつりする−さをのいとゆふ


01747
未入力 正徹 (xxx)

老か身はあるかなきかの糸ゆふになひく日影をはらふ春風

おいかみは−あるかなきかの−いとゆふに−なひくひかけを−はらふはるかせ


01748
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世中はけに事しけき春の野の草葉にあそふ糸まなの身や

よのなかは−けにことしけき−はるののの−くさはにあそふ−いとまなのみや


01749
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はれくもりわたる春日もかけろふのあるかなきかの小野の糸ゆふ

はれくもり−わたるはるひも−かけろふの−あるかなきかの−をののいとゆふ


01750
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風わたる野への緑のみたるるもあそふも草の糸そみしかき

かせわたる−のへのみとりの−みたるるも−あそふもくさの−いとそみしかき


01751
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春の夜も初はひとりまきの戸の水鶏に似たる蛙なくなり

はるのよも−はしめはひとり−まきのとの−くひなににたる−かはつなくなり


01752
未入力 正徹 (xxx)

おもふらむ山田の水に数しらぬ子はこゑたてす鳴く川頭かな

おもふらむ−やまたのみつに−かすしらぬ−こはこゑたてす−なくかはつかな


01753
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木の本の山田の水にすみなから蛙や春の花になくらむ

このもとの−やまたのみつに−すみなから−かはつやはるの−はなになくらむ


01754
未入力 正徹 (xxx)

うきて鳴く水の蛙のいきのをもよるやさ浪のしけき小やま田

うきてなく−みつのかはつの−いきのをも−よるやさなみの−しけきをやまた


01755
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おりたちて田歌の声をならすなり水の蛙の春のゆふくれ

おりたちて−たうたのこゑを−ならすなり−みつのかはつの−はるのゆふくれ


01756
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手もふれぬ荒田の草の水かくれに初こゑいたす蛙なくなり

てもふれぬ−あらたのくさの−みかくれに−はつこゑいたす−かはつなくなり


01757
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小山田やまかする水の萍にかくれあらはれかはつなくなり

をやまたや−まかするみつの−うきくさに−かくれあらはれ−かはつなくなり


01758
未入力 正徹 (xxx)

鳥をこそおふ人もあれ苗代の水の蛙のなにうらむらん

とりをこそ−おふひともあれ−なはしろの−みつのかはつの−なにうらむらむ


01759
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春の夜の苗代水に秋田もるいねかてにしてなく蛙かな

はるのよの−なはしろみつに−あきたもる−いねかてにして−なくかはつかな


01760
未入力 正徹 (xxx)

山もとの夕の鐘も霞消えて寺の前田に蛙なくなり

やまもとの−ゆふへのかねも−かすみきえて−てらのまへたに−かはつなくなり


01761
未入力 正徹 (xxx)

数しらぬ子は蛙とも苗代の水のあはれむ声かとそ聞く

かすしらぬ−こはかはつとも−なはしろの−みつのあはれむ−こゑかとそきく


01762
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数しらすすたく蛙のこゑことに玉うきいつる水の苗代

かすしらす−すたくかはつの−こゑことに−たまうきいつる−みつのなはしろ


01763
未入力 正徹 (xxx)

なく蛙身をうき草にかくしてもねをこそたえね水の苗代

なくかはつ−みをうきくさに−かくしても−ねをこそたえね−みつのなはしろ


01764
未入力 正徹 (xxx)

水にすむ名のみなかれて苗代の外面の草に鳴くかはつかな

みつにすむ−なのみなかれて−なはしろの−そとものくさに−なくかはつかな


01765
未入力 正徹 (xxx)

苗代の水の蛙のうたかたにこぬさをとめのこゑならすなり

なはしろの−みつのかはつの−うたかたに−こぬさをとめの−こゑならすなり


01766
未入力 正徹 (xxx)

春はまた苗代水のうたかたに消えて蛙のこゑそまれなる

はるはまた−なはしろみつの−うたかたに−きえてかはつの−こゑそまれなる


01767
未入力 正徹 (xxx)

散る花にましる蛙のうたかたも色なる川の水のしらあわ

ちるはなに−ましるかはつの−うたかたも−いろなるかはの−みつのしらあわ


01768
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水ひろきすみかもしらす底みえぬ板井にひとり鳴く蛙かな

みつひろき−すみかもしらす−そこみえぬ−いたゐにひとり−なくかはつかな


01769
未入力 正徹 (xxx)

蛙かも水の下にてなく声にうかひ出てたる淡そなかるる

かはつかも−みつのしたにて−なくこゑに−うかひいてたる−あわそなかるる


01770
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水の上に蛙の鳴くも山川の瀬のなるなみのよるそまきるる

みつのうへに−かはつのなくも−やまかはの−せのなるなみの−よるそまきるる


01771
未入力 正徹 (xxx)

夕暮の春行く水に啼く蛙風にはれせぬ声そかすめる

ゆふくれの−はるゆくみつに−なくかはつ−かせにはれせぬ−こゑそかすめる


01772
未入力 正徹 (xxx)

夕川やなかるる淡と消えそ行く水の蛙のはるの初こゑ

ゆふかはや−なかるるあわと−きえそゆく−みつのかはつの−はるのはつこゑ


01773
未入力 正徹 (xxx)

湊川しほに瀬のなる夕浪に小田の蛙そこゑけたれ行く

みなとかは−しほにせのなる−ゆふなみに−をたのかはつそ−こゑけたれゆく


01774
未入力 正徹 (xxx)

夕かすみ山田の川にたつ袖の中なるよとに蛙啼くなり

ゆふかすみ−やまたのかはに−たつそての−うちなるよとに−かはつなくなり


01775
未入力 正徹 (xxx)

池まれにつくる田もなき都たに暮るれはしけく蛙鳴くこゑ

いけまれに−つくるたもなき−みやこたに−くるれはしけく−かはつなくこゑ


01776
未入力 正徹 (xxx)

玉のをの長かりけるも春の日の暮れかたきこそ思ひしらるる

たまのをの−なかかりけるも−はるのひの−くれかたきこそ−おもひしらるる


01777
未入力 正徹 (xxx)

なつるまの岩ほも雪と成りぬへし春日そ秋のいなつまのかけ

なつるまの−いはほもゆきと−なりぬへし−はるひそあきの−いなつまのかけ


01778
未入力 正徹 (xxx)

春の日のまた出てぬまの秋ならはかたふく影に入相のかね

はるのひの−またいてぬまの−あきならは−かたふくかけに−いりあひのかね


01779
未入力 正徹 (xxx)

花そ雪またかたふかね春の日に冬の一日をおくる山風

はなそゆき−またかたふかね−はるのひに−ふゆのひとひを−おくるやまかせ


01780
未入力 正徹 (xxx)

なへて世も花の色かに霞む日のやすらふ空や道まよふらん

なへてよも−はなのいろかに−かすむひの−やすらふそらや−みちまよふらむ


01781
未入力 正徹 (xxx)

朝日影いつる高ねに程遠してらしかへさむ西の山の端

あさひかけ−いつるたかねに−ほととほし−てらしかへさむ−にしのやまのは


01782
未入力 正徹 (xxx)

今朝のまの昨日をけふとおもふにはあすもや過きし春の夕暮

けさのまの−きのふをけふと−おもふには−あすもやすきし−はるのゆふくれ


01783
未入力 正徹 (xxx)

猶そちる高ねのつつしさく花の色に入日の跡のうき雲

なほそちる−たかねのつつし−さくはなの−いろにいりひの−あとのうきくも


01784
未入力 正徹 (xxx)

道辺の岩もとつつし紅のあか裳ぬきすて誰かいにけむ

みちのへの−いはもとつつし−くれなゐの−あかもぬきすて−たれかいにけむ


01785
未入力 正徹 (xxx)

山ふかくさくや蓮の花つつししましうき世ににこる心は

やまふかく−さくやはちすの−はなつつし−しましうきよに−にこるこころは


01786
未入力 正徹 (xxx)

いそくなよ手折るつつしの灯によるの山路はかへりいてなん

いそくなよ−たをるつつしの−ともしひに−よるのやまちは−かへりいてなむ


01787
未入力 正徹 (xxx)

嶺たかき松の下てるひめつつし花開きわたせ天のうき橋

みねたかき−まつのしたてる−ひめつつし−はなさきわたせ−あめのうきはし


01788
未入力 正徹 (xxx)

にこりにもします蓮の花つつし池をよそなる岩根にそ咲く

にこりにも−しますはちすの−はなつつし−いけをよそなる−いはねにそさく


01789
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川上にたく火をけちて滝つ浪こゆる岩ほにさくつつしかな

かはかみに−たくひをけちて−たきつなみ−こゆるいはほに−さくつつしかな


01790
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夜こえむ人のためにとくらふ山木の下つつし折りもつくさし

よるこえむ−ひとのためにと−くらふやま−このしたつつし−をりもつくさし


01791
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心せよ柴おふ駒もむれて行く山路おしなみつつしさくなり

こころせよ−しはおふこまも−むれてゆく−やまちおしなみ−つつしさくなり


01792
未入力 正徹 (xxx)

岩根ふむ隣に今朝も火やこはむ松の煙もおそのつつしに

いはねふむ−となりにけさも−ひやこはむ−まつのけふりも−おそのつつしに


01793
未入力 正徹 (xxx)

雲なれや木たかき松の末こえてみとりの空になひく藤なみ

くもなれや−こたかきまつの−すゑこえて−みとりのそらに−なひくふちなみ


01794
未入力 正徹 (xxx)

こりしきて巌そはたつ山岸に落ちたる滝やかかる藤なみ

こりしきて−いはほそはたつ−やまきしに−おちたるたきや−かかるふちなみ


01795
未入力 正徹 (xxx)

池の上にさきちる藤の花かたみ色をつつくる鴛の毛ころも

いけのうへに−さきちるふちの−はなかたみ−いろをつつくる−をしのけころも


01796
未入力 正徹 (xxx)

花かつらかけまく浪もあら妙の藤江のうらの海士のをとめ子

はなかつら−かけまくなみも−あらたへの−ふちえのうらの−あまのをとめこ


01797
未入力 正徹 (xxx)

さく藤の松を憑むもあるものをなににかかれる人の命そ

さくふちの−まつをたのむも−あるものを−なににかかれる−ひとのいのちそ


01798
未入力 正徹 (xxx)

いかかみる藤江のうらの藤浪をかつきもしらね春のあま人

いかかみる−ふちえのうらの−ふちなみを−かつきもしらね−はるのあまひと


01799
未入力 正徹 (xxx)

さく瀬の花のかつらか棹姫の袖のみとりの松にかかれる

さくふしの−はなのかつらか−さほひめの−そてのみとりの−まつにかかれる


01800
未入力 正徹 (xxx)

紫の色こき春の時過きてちるか水なき池の藤なみ

むらさきの−いろこきはるの−ときすきて−ちるかみつなき−いけのふちなみ


01801
未入力 正徹 (xxx)

色たへにさける藤なみ世世かけて春の名たかの浦風そ吹く

いろたへに−さけるふちなみ−よよかけて−はるのなたかの−うらかせそふく


01802
未入力 正徹 (xxx)

花にたつ松のうら葉の若みとり又藤浪をこゆるはるかな

はなにたつ−まつのうらはの−わかみとり−またふちなみを−こゆるはるかな


01803
未入力 正徹 (xxx)

さく藤の色こき時や玉かつらはふ木あまたに秋を待つらん

さくふちの−いろこきときや−たまかつら−はふきあまたに−あきをまつらむ


01804
未入力 正徹 (xxx)

開く藤もかかれとてこそなひきけめしつえ枯れぬる岸の松かな

さくふちも−かかれとてこそ−なひきけめ−しつえかれぬる−きしのまつかな


01805
未入力 正徹 (xxx)

あまも見しうらの八島にむかふとも松の藤戸をとつる霞に

あまもみし−うらのやしまに−むかふとも−まつのふちとを−とつるかすみに


01806
未入力 正徹 (xxx)

興つ風ふきもふかすも住吉の松かえあらふ春の藤波

おきつかせ−ふきもふかすも−すみよしの−まつかえあらふ−はるのふちなみ


01807
未入力 正徹 (xxx)

わか花の色にもあらぬ松のはをゆかりとかかる春の藤波

わかはなの−いろにもあらぬ−まつのはを−ゆかりとかかる−はるのふちなみ


01808
未入力 正徹 (xxx)

春のみと滝の水上あらはれて松よりおつる嶺の藤浪

はるのみと−たきのみなかみ−あらはれて−まつよりおつる−みねのふちなみ


01809
未入力 正徹 (xxx)

からろおす雁の舟路はのこりけり雲ゐに嶺の松の藤波

からろおす−かりのふなちは−のこりけり−くもゐにみねの−まつのふちなみ


01810
未入力 正徹 (xxx)

風ふけは浪より下の波の声松なりけりな藤のうら葉は

かせふけは−なみよりしたの−なみのこゑ−まつなりけりな−ふちのうらはは


01811
未入力 正徹 (xxx)

さく藤の花のかつらもみたれなき松の葉分けて春風そ吹く

さくふちの−はなのかつらも−みたれなき−まつのはわけて−はるかせそふく


01812
未入力 正徹 (xxx)

高砂の山松かえの藤なみにおくれてわたる雁の友舟

たかさこの−やままつかえの−ふちなみに−おくれてわたる−かりのともふね


01813
未入力 正徹 (xxx)

藤浪の花そ十かへり松のはもおよはぬ千世の色やわくらん

ふちなみの−はなそとかへり−まつのはも−およはぬちよの−いろやわくらむ


01814
未入力 正徹 (xxx)

緑そふ若葉をこめて開く藤の花のませゆふ松そ木高き

みとりそふ−わかはをこめて−さくふちの−はなのませゆふ−まつそこたかき


01815
未入力 正徹 (xxx)

子をおもふ鶴そ鳴くなる浜松の梢の藤の浪のうき巣に

こをおもふ−つるそなくなる−はままつの−こすゑのふちの−なみのうきすに


01816
未入力 正徹 (xxx)

露そちる梢の藤は浪こえてみなそこならぬ杜の下草

つゆそちる−こすゑのふちは−なみこえて−みなそこならぬ−もりのしたくさ


01817
未入力 正徹 (xxx)

高砂の尾上に匂ふ松の藤夕そかねのこゑにかかれる

たかさこの−をのへににほふ−まつのふち−ゆふへそかねの−こゑにかかれる


01818
未入力 正徹 (xxx)

さく藤の花のかつらもなひきもの春の名たかの浦風そ吹く

さくふちの−はなのかつらも−なひきもの−はるのなたかの−うらかせそふく


01819
未入力 正徹 (xxx)

いつまてそ山路の岸のかたくつれ残る岩根の松の藤波

いつまてそ−やまちのきしの−かたくつれ−のこるいはねの−まつのふちなみ


01820
未入力 正徹 (xxx)

川音もきこえぬ滝や高ねより藤開きくたる花の岩波

かはおとも−きこえぬたきや−たかねより−ふちさきくたる−はなのいはなみ


01821
未入力 正徹 (xxx)

陰おほふ松のはひ枝にさく藤に岩浪まさる滝の水上

かけおほふ−まつのはひえに−さくふちに−いはなみまさる−たきのみなかみ


01822
未入力 正徹 (xxx)

岩こえて音なき浪も立水のなかれあまたにさける藤かな

いはこえて−おとなきなみも−たつみつの−なかれあまたに−さけるふちかな


01823
未入力 正徹 (xxx)

月も日も関やはすゑむ雲水のうき世をさそふ春の藤浪

つきもひも−せきやはすゑむ−くもみつの−うきよをさそふ−はるのふちなみ


01824
未入力 正徹 (xxx)

月そもる関屋のひさし開く花もひまあら妙の藤川の浪

つきそもる−せきやのひさし−さくはなも−ひまあらたへの−ふちかはのなみ


01825
未入力 正徹 (xxx)

花の枝も細谷川をうちわたりむかひの庵に松の藤波

はなのえも−ほそたにかはを−うちわたり−むかひのいほに−まつのふちなみ


01826
未入力 正徹 (xxx)

水の上のしけみさ枝やかのみゆる池辺にかかる春の藤なみ

みつのうへの−しけみさえたや−かのみゆる−いけへにかかる−はるのふちなみ


01827
未入力 正徹 (xxx)

風ふけは池のうき草かたよりに又影さわく春の藤なみ

かせふけは−いけのうきくさ−かたよりに−またかけさわく−はるのふちなみ


01828
未入力 正徹 (xxx)

かせふけは池に影せぬ鴛の毛も玉藻にあそふ花の藤波

かせふけは−いけにかけせぬ−をしのけも−たまもにあそふ−はなのふちなみ


01829
未入力 正徹 (xxx)

藤なれや堤の下樋朽ちはてて水なき池に浪そまされる

ふちなれや−つつみのしたひ−くちはてて−みつなきいけに−なみそまされる


01830
未入力 正徹 (xxx)

鳰鳥や藤さく春の池水にうきても浪の下くくるなり

にほとりや−ふちさくはるの−いけみつに−うきてもなみの−したくくるなり


01831
未入力 正徹 (xxx)

かの池にうつろふ色のそか菊を春もかけたる松の藤なみ

かのいけに−うつろふいろの−そかきくを−はるもかけたる−まつのふちなみ


01832
未入力 正徹 (xxx)

紫の塵をそよする藤の花ちりかひうかふ池のささ浪

むらさきの−ちりをそよする−ふちのはな−ちりかひうかふ−いけのささなみ


01833
未入力 正徹 (xxx)

春日山峰にさく藤うつりきて池に浪たつさる沢の岸

かすかやま−みねにさくふち−うつりきて−いけになみたつ−さるさはのきし


01834
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住吉の松の葉うつむ藤の花岸に生ふてふ草にやつるな

すみよしの−まつのはうつむ−ふちのはな−きしにおふてふ−くさにやつるな


01835
未入力 正徹 (xxx)

松にはふ末の世遠くさかふなり南の岸の北の藤なみ

まつにはふ−すゑのよとほく−さかふなり−みなみのきしの−きたのふちなみ


01836
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谷の松いつまちとらむ開きにほふ高ねの岸の藤のさかり枝

たにのまつ−いつまちとらむ−さきにほふ−たかねのきしの−ふちのさかりえ


01837
未入力 正徹 (xxx)

花さかていつかは春を忘草生ふてふきしにかかる藤波

はなさかて−いつかははるを−わすれくさ−おふてふきしに−かかるふちなみ


01838
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山奴のわたりそをしき開く藤の花のませゆふ嶺のかけはし

やまかつの−わたりそをしき−さくふちの−はなのませゆふ−みねのかけはし


01839
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開きかかる軒はの藤を横雲になして明行く鐘のこゑかな

さきかかる−のきはのふちを−よこくもに−なしてあけゆく−かねのこゑかな


01840
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寺よりも西にかかりてさく藤のかつらき山の雲をしそ思ふ

てらよりも−にしにかかりて−さくふちの−かつらきやまの−くもをしそおもふ


01841
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木のもとの庵をせはみはふ藤や垣ほの柴のねりそゆふらん

このもとの−いほりをせはみ−はふふちや−かきほのしはの−ねりそゆふらむ


01842
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手折りつつかさしてゆかん藤なみを浪そふ老のしわとやはみむ

たをりつつ−かさしてゆかむ−ふちなみを−なみそふおいの−しわとやはみむ


01843
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かつそちる夜のまの藤の初花に結ひもなれぬ春の朝露

かつそちる−よのまのふちの−はつはなに−むすひもなれぬ−はるのあさつゆ


01844
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吹きおつる山松風やあらたへの藤なみこゆる滝のいはかと

ふきおつる−やままつかせや−あらたへの−ふちなみこゆる−たきのいはかと


01845
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池ふるき松の経にける年なみをかけてそ匂ふ宿の藤か枝

いけふるき−まつのへにける−としなみを−かけてそにほふ−やとのふちかえ


01846
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手折るとも人にかたるな山吹の花にわけくる露はおちにき

たをるとも−ひとにかたるな−やまふきの−はなにわけくる−つゆはおちにき


01847
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露かけてむすふやいかに款冬の花はひもとく井ての下帯

つゆかけて−むすふやいかに−やまふきの−はなはひもとく−ゐてのしたおひ


01848
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し水せく八重山吹の花の露いとと浪こす井てのしからみ

しみつせく−やへやまふきの−はなのつゆ−いととなみこす−ゐてのしからみ


01849
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女良花秋やかたみの色にいてん朽行く庭の春の山吹

をみなへし−あきやかたみの−いろにいてむ−くちゆくにはの−はるのやまふき


01850
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行く春をしたふとみえて山吹の花も散りあへぬ露そこほるる

ゆくはるを−したふとみえて−やまふきの−はなもちりあへぬ−つゆそこほるる


01851
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人もかくおもふをいはぬ色こそはあらまほしけれ山吹のはな

ひともかく−おもふをいはぬ−いろこそは−あらまほしけれ−やまふきのはな


01852
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思川千しほの木の葉ととまらてあさき色せく山吹の花

おもひかは−ちしほのこのは−ととまらて−あさきいろせく−やまふきのはな


01853
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かけ行くもこゑする水に山吹の花ものいふに人やきかまし

かけゆくも−こゑするみつに−やまふきの−はなものいふに−ひとやきかまし


01854
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あやふしや花のよはひも行く春に開きてかたふく岸の山吹

あやふしや−はなのよはひも−ゆくはるに−さきてかたふく−きしのやまふき


01855
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かつそ見る井ての蛙のこゑこゑを花やききうき春の山吹

かつそみる−ゐてのかはつの−こゑこゑを−はなやききうき−はるのやまふき


01856
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思川かけても見せぬ山吹を花にしら淡よるそかなしき

おもひかは−かけてもみせぬ−やまふきを−はなにしらあわ−よるそかなしき


01857
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山城のゐてこす浪に橘の実さへ恋しき山ふきの花

やましろの−ゐてこすなみに−たちはなの−みさへこひしき−やまふきのはな


01858
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山里の春の木の下紅葉葉や岩かきこむる山吹の花

やまさとの−はるのこのした−もみちはや−いはかきこむる−やまふきのはな


01859
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鐘つきて暮行く春の山吹はたかししまをか色にみすらん

かねつきて−くれゆくはるの−やまふきは−たかししまをか−いろにみすらむ


01860
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時しらぬ籬の上の白雪やうつろふ色の山吹のはな

ときしらぬ−まかきのうへの−しらゆきや−うつろふいろの−やまふきのはな


01861
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つつしさく山の千しほの下染も花にそ浅き水の山吹

つつしさく−やまのちしほの−したそめも−はなにそあさき−みつのやまふき


01862
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橘の花さく比の実そまかふ宿の軒はの山吹のいろ

たちはなの−はなさくころの−みそまかふ−やとののきはの−やまふきのいろ


01863
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春は又たれめてさらむ女郎花おなし色そふ山吹の花

はるはまた−たれめてさらむ−をみなへし−おなしいろそふ−やまふきのはな


01864
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ちりかかるさくらか本の山吹やうき紅葉はの雪のおもかけ

ちりかかる−さくらかもとの−やまふきや−うきもみちはの−ゆきのおもかけ


01865
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川浪になひく玉藻を染めかねて色になかるる水の款冬

かはなみに−なひくたまもを−そめかねて−いろになかるる−みつのやまふき


01866
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山吹もさくや川辺に行く春の花に休らふ宇治の中宿

やまふきも−さくやかはへに−ゆくはるの−はなにやすらふ−うちのなかやと


01867
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春もをし又川浪にくちなしのあせ行く色の山ふきの花

はるもをし−またかはなみに−くちなしの−あせゆくいろの−やまふきのはな


01868
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川長もかけをそからん行く水の玉藻にうつる山吹の花

かはをさも−かけをそからむ−ゆくみつの−たまもにうつる−やまふきのはな


01869
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こゑたてぬ水の心をくむ花やたた色にのみゐての山吹

こゑたてぬ−みつのこころを−くむはなや−たたいろにのみ−ゐてのやまふき


01870
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池水もこゑをはたてすなに事をつつみにさける山吹の花

いけみつも−こゑをはたてす−なにことを−つつみにさける−やまふきのはな


01871
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山吹のうつれる池の水底に花はこかねのいさこをそしく

やまふきの−うつれるいけの−みなそこに−はなはこかねの−いさこをそしく


01872
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こゑたてぬそこに心や川島の水にかたふく山吹はな

こゑたてぬ−そこにこころや−かはしまの−みつにかたふく−やまふきのはな


01873
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身にかかる法の衣の色をかるこや彼岸の山吹のはな

みにかかる−のりのころもの−いろをかる−こやかのきしの−やまふきのはな


01874
未入力 正徹 (xxx)

水のあわもたくひあやふき川岸に開きてかたふく山吹の露

みつのあわも−たくひあやふき−かはきしに−さきてかたふく−やまふきのつゆ


01875
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薄くこく咲くや籬の山つつし紅ましるやまふきのはな

うすくこく−さくやまかきの−やまつつし−くれなゐましる−やまふきのはな


01876
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過きかてにたれとはさらん山吹の花のさかりの玉川の里

すきかてに−たれとはさらむ−やまふきの−はなのさかりの−たまかはのさと


01877
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契あれな井ての下帯花のひもときかさねたる水の山吹

ちきりあれな−ゐてのしたおひ−はなのひも−ときかさねたる−みつのやまふき


01878
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籬こす夏の草葉の露のかすならす夕の山吹のはな

まかきこす−なつのくさはの−つゆのかす−ならすゆふへの−やまふきのはな


01879
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散るままにあかてや露は桔ふ手のしつくににこる山吹のはな

ちるままに−あかてやつゆは−むすふての−しつくににこる−やまふきのはな


01880
未入力 正徹 (xxx)

日に染むる八重山吹は朝露のへたつる色もをしき花かな

ひにそむる−やへやまふきは−あさつゆの−へたつるいろも−をしきはなかな


01881
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折りかさす心そいはぬかくせ花八十にちかし八重の山ふき

をりかさす−こころそいはぬ−かくせはな−やそちにちかし−やへのやまふき


01882
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山吹のこと葉の花を水茎にいはてやかきてゐての玉川

やまふきの−ことはのはなを−みつくきに−いはてやかきて−ゐてのたまかは


01883
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うこかさて心のやとる身をしけはけふの春日に過くる百年

うこかさて−こころのやとる−みをしけは−けふのはるひに−すくるももとせ


01884
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鴬のかへる山路の遅さくら春の色音をよそにうつすな

うくひすの−かへるやまちの−おそさくら−はるのいろねを−よそにうつすな


01885
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いまもをし此三日月の山のはをいてむ弥生の有明の夜は

いまもをし−このみかつきの−やまのはを−いてむやよひの−ありあけのよは


01886
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月のこる嶺の朝けの花鳥に別れかねてや春も行くらむ

つきのこる−みねのあさけの−はなとりに−わかれかねてや−はるもゆくらむ


01887
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暮れて行く春の日数をかそふれは又三日月を朝にそみる

くれてゆく−はるのひかすを−かそふれは−またみかつきを−あしたにそみる


01888
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行く春の朝ひく雲の糸すちにかかるも細き山のはの月

ゆくはるの−あさひくくもの−いとすちに−かかるもほそき−やまのはのつき


01889
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とくさける弥生の山の卯花やのこるさくらの木木の下陰

とくさける−やよひのやまの−うのはなや−のこるさくらの−ききのしたかけ


01890
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山月山尾上の雲の糸すちをならへていつる月そ明行く

やよひやま−をのへのくもの−いとすちを−ならへていつる−つきそあけゆく


01891
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比良の山消えさりけりとみる程もあかぬ三月をのこす雪かな

ひらのやま−きえさりけりと−みるほとも−あかぬやよひを−のこすゆきかな


01892
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行く春も家路わすれよ軒はまて幾重霞みて山なしの花

ゆくはるも−いへちわすれよ−のきはまて−いくへかすみて−やまなしのはな


01893
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いつかたと行へしられぬ花鳥の跡をや春の猶したふらん

いつかたと−ゆくへしられぬ−はなとりの−あとをやはるの−なほしたふらむ


01894
未入力 正徹 (xxx)

雲に入り又ねにかへる花をめて鳥をうらやむ春や行くらん

くもにいり−またねにかへる−はなをめて−とりをうらやむ−はるやゆくらむ


01895
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この夕吹きくる風を便にておもふかたにや春の行くらむ

このゆふへ−ふきくるかせを−たよりにて−おもふかたにや−はるのゆくらむ


01896
未入力 正徹 (xxx)

ふけ嵐春行く野への夕ま暮若葉の葛も恨みかぬらん

ふけあらし−はるゆくのへの−ゆふまくれ−わかはのくすも−うらみかぬらむ


01897
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人ことに別れなれにし春をなとをしむならひと思初めけん

ひとことに−わかれなれにし−はるをなと−をしむならひと−おもひそめけむ


01898
未入力 正徹 (xxx)

したはしよおもへは夏の花鳥にかはらんまての春の名残を

したはしよ−おもへはなつの−はなとりに−かはらむまての−はるのなこりを


01899
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しらさりき春の限の夕暮を尾上の鐘にしたふへしとは

しらさりき−はるのかきりの−ゆふくれを−をのへのかねに−したふへしとは


01900
未入力 正徹 (xxx)

今はとて雲に入りにし鳥の子のかへるや春のかたみなるらん

いまはとて−くもにいりにし−とりのこの−かへるやはるの−かたみなるらむ


01901
未入力 正徹 (xxx)

いつかたに道ふみわけし跡をみんむなしき空に春のゆかすは

いつかたに−みちふみわけし−あとをみむ−むなしきそらに−はるのゆかすは


01902
未入力 正徹 (xxx)

ととまらぬ春の湊の川淵に望たえてや山吹のちる

ととまらぬ−はるのみなとの−かはふちに−のそみたえてや−やまふきのちる


01903
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暮れて行くしるしもみえす遠かたの霞に春や立ちかくすらん

くれてゆく−しるしもみえす−をちかたの−かすみにはるや−たちかくすらむ


01904
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引きとめよ暮るる三月の末たわに弓張月の影そのこれる

ひきとめよ−くるるやよひの−すゑたわに−ゆみはりつきの−かけそのこれる


01905
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くるかたもかへる所もなき春を送りむかふと何おもふらん

くるかたも−かへるところも−なきはるを−おくりむかふと−なにおもふらむ


01906
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花はちり鳥も古巣に入相の鐘なる山にかへる春かな

はなはちり−とりもふるすに−いりあひの−かねなるやまに−かへるはるかな


01907
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まちをしむ花鳥の音の後さきに霞そ春の匂なりける

まちをしむ−はなとりのねの−あとさきに−かすみそはるの−にほひなりける


01908
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しはしまてかへる鴬うかるへし春にわかれん谷の古巣は

しはしまて−かへるうくひす−うかるへし−はるにわかれむ−たにのふるすは


01909
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けふのこる花のかとりの白かさねあすたちかへむ春そすくなき

けふのこる−はなのかとりの−しらかさね−あすたちかへむ−はるそすくなき


01910
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雲に入る鳥よりも猶心なき嵐や花を根にかへすらん

くもにいる−とりよりもなほ−こころなき−あらしやはなを−ねにかへすらむ


01911
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吹く風のめに見ぬかたに行く春を消えてもをしめ山吹の露

ふくかせの−めにみぬかたに−ゆくはるを−きえてもをしめ−やまふきのつゆ


01912
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藤波のかかる巌をうつたへにととまりかたく帰る春かな

ふちなみの−かかるいはほを−うつたへに−ととまりかたく−かへるはるかな


01913
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藤の花夏にかかるを行く春やうらむらさきの色かはるらん

ふちのはな−なつにかかるを−ゆくはるや−うらむらさきの−いろかはるらむ


01914
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散りてなき花もわかれの春よりはうらみ所のあり明の月

ちりてなき−はなもわかれの−はるよりは−うらみところの−ありあけのつき


01915
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天の川あかつき出つる月の舟春の湊にこきなかくれそ

あまのかは−あかつきいつる−つきのふね−はるのみなとに−こきなかくれそ


01916
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雁そ鳴く有明の空に月の舟さしかへる春の湊をしへよ

かりそなく−ありあけのそらに−つきのふね−さしかへるはるの−みなとをしへよ


01917
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月か舟湊におくれ行く春の別路にかすむ有明の空

つきかふね−みなとにおくれ−ゆくはるの−わかれちにかすむ−ありあけのそら


01918
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雲もけふ袖のみぬれてふる雨のさはるもしらすかへる春かな

くももけふ−そてのみぬれて−ふるあめの−さはるもしらす−かへるはるかな


01919
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夕暮は朝の雲の立ちわかれ雨と成りてや春のゆくらむ

ゆふくれは−あしたのくもの−たちわかれ−あめとなりてや−はるのゆくらむ


01920
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なこりをもしはしととめし花鳥の入りにし雪をさそふ春かな

なこりをも−しはしととめし−はなとりの−いりにしゆきを−さそふはるかな


01921
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吹く風にかさねて春を惜しめとや鳥の入りにし雲そ飛行く

ふくかせに−かさねてはるを−をしめとや−とりのいりにし−くもそとひゆく


01922
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おくれしと春行く空やしたふらんおりゐる雲のみえぬ山かな

おくれしと−はるゆくそらや−したふらむ−おりゐるくもの−みえぬやまかな


01923
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花ちりし雪にあとなく行く春にいつはりならぬ嶺の白雲

はなちりし−ゆきにあとなく−ゆくはるに−いつはりならぬ−みねのしらくも


01924
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霞みつつ夕ゐる嶺を立別れ春よりさきにかへる雲かな

かすみつつ−ゆふゐるみねを−たちわかれ−はるよりさきに−かへるくもかな


01925
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日数へてさきつく花の陰ことにうかりし風も過くる春かな

ひかすへて−さきつくはなの−かけことに−うかりしかせも−すくるはるかな


01926
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春にたに契あさはの野へにたつすけなや今日は行くもしたはて

はるにたに−ちきりあさはの−のへにたつ−すけなやけふは−ゆくもしたはて


01927
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霞さへ日のたてぬきにおる雲のはたても薄く暮るる春かな

かすみさへ−ひのたてぬきに−おるくもの−はたてもうすく−くるるはるかな


01928
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うかりけるたか待つさとを契るとて夕の鐘に春の行くらん

うかりける−たかまつさとを−ちきるとて−ゆふへのかねに−はるのゆくらむ


01929
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此夕いり会の鐘のかすむかな音せぬかたに春やゆくらん

このゆふへ−いりあひのかねの−かすむかな−おとせぬかたに−はるやゆくらむ


01930
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心なく暁かねもなりたかしみそかに春やゆかむとすらん

こころなく−あかつきかねも−なりたかし−みそかにはるや−ゆかむとすらむ


01931
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よもさめしこ蝶も花もそのの外にさりて帰らぬ春のよの夢

よもさめし−こてふもはなも−そののほかに−さりてかへらぬ−はるのよのゆめ


01932
未入力 正徹 (xxx)

草の原こ蝶うち散り尋ぬなりむなしきあとの春の花園

くさのはら−こてふうちちり−たつぬなり−むなしきあとの−はるのはなその


01933
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思ひたつ春の太山になく猿のことわりしるき夕くれの雨

おもひたつ−はるのみやまに−なくさるの−ことわりしるき−ゆふくれのあめ


01934
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みしかしな春のひま行く駒にむち打ちわたすまの前のたな橋

みしかしな−はるのひまゆく−こまにむち−うちわたすまの−まへのたなはし


01935
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日数のみふる江の蘆のいま一夜のこるも夢にくるる春かな

ひかすのみ−ふるえのあしの−いまひとよ−のこるもゆめに−くるるはるかな


01936
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末遠き玉江に生ふるまろ小菅永き日なからくるる春かな

すゑとほき−たまえにおふる−まろこすけ−なかきひなから−くるるはるかな


01937
未入力 正徹 (xxx)

陸人のわたる裳すそもぬれぬ江に契あさくもかへる春かな

かちひとの−わたるもすそも−ぬれぬえに−ちきりあさくも−かへるはるかな


01938
未入力 正徹 (xxx)

春ははやいなさ細江に住む鳥のこは世にしらぬ別路もうし

はるははや−いなさほそえに−すむとりの−こはよにしらぬ−わかれちもうし


01939
未入力 正徹 (xxx)

夕日影入江のあまの釣の糸にかかるともなく春や行くらむ

ゆふひかけ−いりえのあまの−つりのいとに−かかるともなく−はるやゆくらむ


01940
未入力 正徹 (xxx)

海士もうし湊の小舟行く春をこきもかへさぬ浪にかすみて

あまもうし−みなとのをふね−ゆくはるを−こきもかへさぬ−なみにかすみて


01941
未入力 正徹 (xxx)

したへ猶暮行く春を忘貝それもなきさのよその舟人

したへなほ−くれゆくはるを−わすれかひ−それもなきさの−よそのふなひと


01942
未入力 正徹 (xxx)

ゆくへなき春をおひてに漕く舟のほかけかすむをそれと知らすや

ゆくへなき−はるをおひてに−こくふねの−ほかけかすむを−それとしらすや


01943
未入力 正徹 (xxx)

旅の空春行く行にやすらひていさ待ちつれむかへる雲鳥

たひのそら−はるゆくみちに−やすらひて−いさまちつれむ−かへるくもとり


01944
未入力 正徹 (xxx)

春もいぬ鳥の入りにし雲消えて見ゆらん嶺の宿をかたみは

はるもいぬ−とりのいりにし−くもきえて−みゆらむみねの−やとをかたみは


01945
未入力 正徹 (xxx)

けふもをし花のかとりの声のうちにあすの日影の春の限は

けふもをし−はなのかとりの−こゑのうちに−あすのひかけの−はるのかきりは


01946
未入力 正徹 (xxx)

暮れてゆく霞の袖はひかふとも春の衣はてにもかからし

くれてゆく−かすみのそては−ひかふとも−はるのころもは−てにもかからし


01947
未入力 正徹 (xxx)

春そ猶ひま行く駒の行くことはまさきの綱もつなきととめし

はるそなほ−ひまゆくこまの−ゆくことは−まさきのつなも−つなきととめし


01948
未入力 正徹 (xxx)

やすらひて世を卯月にはあはしとやけふの夕に春の行くらん

やすらひて−よをうつきには−あはしとや−けふのゆふへに−はるのゆくらむ


01949
未入力 正徹 (xxx)

春は又去年もかへりし古路を尋ねてけふやおもひ立つらん

はるはまた−こそもかへりし−ふるみちを−たつねてけふや−おもひたつらむ


01950
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さしも夜の長月のはてを思ふにも三月の夢の今日の夕くれ

さしもよの−なかつきのはてを−おもふにも−やよひのゆめの−けふのゆふくれ


01951
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しのひにや夜ふかき空にうかれゆかむなれし三月のみそか心は

しのひにや−よふかきそらに−うかれゆかむ−なれしやよひの−みそかこころは


01952
未入力 正徹 (xxx)

常よりもをしき春かな時守のうつやつつみもけふなきかせそ

つねよりも−をしきはるかな−ときもりの−うつやつつみも−けふなきかせそ


01953
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先そおもふあすの朝気の春の道遠くはゆかし野にも山にも

まつそおもふ−あすのあさけの−はるのみち−とほくはゆかし−のにもやまにも


01954
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春も此ゆふへはかりの山の端にのこる霞や立ちおくれまし

はるもこの−ゆふへはかりの−やまのはに−のこるかすみや−たちおくれまし



草根集 夏

01955
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けふも又青葉の桜雪とふる山路かけてや夏のきぬらん

けふもまた−あをはのさくら−ゆきとふる−やまちかけてや−なつのきぬらむ


01956
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見しやいつ開きちる花の春の夢覚むるともなく夏はきにけり

みしやいつ−さきちるはなの−はるのゆめ−さむるともなく−なつはきにけり


01957
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しけれたた春におくれてひとりとも思ふ色なきみ山木の陰

しけれたた−はるにおくれて−ひとりとも−おもふいろなき−みやまきのかけ


01958
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榊とる卯月のいみのさしなから立ちくる夏になひくしらゆふ

さかきとる−うつきのいみの−さしなから−たちくるなつに−なひくしらゆふ


01959
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宮人の卯月の袖も榊葉の神さひにける夏衣かな

みやひとの−うつきのそても−さかきはの−かみさひにける−なつころもかな


01960
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卯花のほかにや夏はきさらきの雪まにかへる山の下柴

うのはなの−ほかにやなつは−きさらきの−ゆきまにかへる−やまのしたしは


01961
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花もまたのこる梢の初もえき夏と春との色やわくらん

はなもまた−のこるこすゑの−はつもえき−なつとはるとの−いろやわくらむ


01962
未入力 正徹 (xxx)

行く春のすみれ咲く野に朝立つやたた一夜ねて夏はきにけり

ゆくはるの−すみれさくのに−あさたつや−たたひとよねて−なつはきにけり


01963
未入力 正徹 (xxx)

けふならは卯月のいみにさしとめて春をもやらぬ夏に逢ふらん

けふならは−うつきのいみに−さしとめて−はるをもやらぬ−なつにあふらむ


01964
未入力 正徹 (xxx)

榊とる心のしめにかけ置きし神わさしるく夏はきにけり

さかきとる−こころのしめに−かけおきし−かみわさしるく−なつはきにけり


01965
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春暮れて夏なき宿をけふそとふ見さりし桐の風の広はに

はるくれて−なつなきやとを−けふそとふ−みさりしきりの−かせのひろはに


01966
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今朝そみる弥生のうちに立つ夏の日かすはかりにかふる衣を

けさそみる−やよひのうちに−たつなつの−ひかすはかりに−かふるころもを


01967
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花に見し卯月のよひの月にそふ霞や春のにほひなるらん

はなにみし−うつきのよひの−つきにそふ−かすみやはるの−にほひなるらむ


01968
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けふみれは卯月の花の下紐もはやときかくる衣かへかな

けふみれは−うつきのはなの−したひもも−はやときかくる−ころもかへかな


01969
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いつくにもけふあけそむる氷室ゆゑ夏のくる日の風そ涼しき

いつくにも−けふあけそむる−ひむろゆゑ−なつのくるひの−かせそすすしき


01970
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あかさりし春は夜のまの夢路にもとほくはゆかし夏の曙

あかさりし−はるはよのまの−ゆめちにも−とほくはゆかし−なつのあけほの


01971
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春はいぬ花のかかみもくもりなき夏の陰見る宿のまし水

はるはいぬ−はなのかかみも−くもりなき−なつのかけみる−やとのましみつ


01972
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今朝そ見る春をとなりの中垣に衣かけほしさける卯花

けさそみる−はるをとなりの−なかかきに−ころもかけほし−さけるうのはな


01973
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埋火のもとの夜床もわすられす又朝さむき夏衣かな

うつみひの−もとのよとこも−わすられす−またあささむき−なつころもかな


01974
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朝またき夏のはつ風吹初めぬいかはかりかは袖にまたまし

あさまたき−なつのはつかせ−ふきそめぬ−いかはかりかは−そてにまたまし


01975
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夏きても春はありその海松や猶ときそとも浪に霞みて

なつきても−はるはありその−うみまつや−なほときそとも−なみにかすみて


01976
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竹の子も世のうきふしをそへかほに窓につのくむ夏はきにけり

たけのこも−よのうきふしを−そへかほに−まとにつのくむ−なつはきにけり


01977
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今朝かすみ春をへたてて立ちかふる天つ衣のうら風そ吹く

けさかすみ−はるをへたてて−たちかふる−あまつころもの−うらかせそふく


01978
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佗ひぬれは朽ちはつるまて立ちかへぬ苔の衣に夏はきにけり

わひぬれは−くちはつるまて−たちかへぬ−こけのころもに−なつはきにけり


01979
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夏きても匂ふ藤浪あらたへの衣かへせぬ山かとそ見る

なつきても−にほふふちなみ−あらたへの−ころもかへせぬ−やまかとそみる


01980
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しけりゆくうらはの下に咲く藤の春にかへらぬ花のなみかな

しけりゆく−うらはのしたに−さくふちの−はるにかへらぬ−はなのなみかな


01981
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咲きそむる卯花月にみかの夜のかけ天地をてらす夏かな

さきそむる−うのはなつきに−みかのよの−かけあめつちを−てらすなつかな


01982
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夏きては袖をかさねて薄からす卯花山の雲のさころも

なつきては−そてをかさねて−うすからす−うのはなやまの−くものさころも


01983
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八幡山あふくめくみの陰しけき嶺のたつ木に夏はきにけり

やはたやま−あふくめくみの−かけしけき−みねのたつきに−なつはきにけり


01984
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三日月の中にかつらはしけるともかた枝に夏の影やしくらん

みかつきの−うちにかつらは−しけるとも−かたえになつの−かけやしくらむ


01985
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夜もすから月のきせつる白かさねあくれはうすき夏衣かな

よもすから−つきのきせつる−しらかさね−あくれはうすき−なつころもかな


01986
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声たかし卯月のけふの忍音といふへくもあらぬ郭公かな

こゑたかし−うつきのけふの−しのひねと−いふへくもあらぬ−ほとときすかな


01987
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夏きても花にまかへししら雲を送りつくさぬよその春風

なつきても−はなにまかへし−しらくもを−おくりつくさぬ−よそのはるかせ


01988
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蝉のはの衣手よりも猶うすく匂ふ桜にのこる春風

せみのはの−ころもてよりも−なほうすく−にほふさくらに−のこるはるかせ


01989
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夏にけふ扇の風そいそかるる吹くともあかし六月の空

なつにけふ−あふきのかせそ−いそかるる−ふくともあかし−みなつきのそら


01990
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夏衣袖にまちえついにしへの風の心を今も伝へて

なつころも−そてにまちえつ−いにしへの−かせのこころを−いまもつたへて


01991
未入力 正徹 (xxx)

行く春を送りし川のいつへよりさそふ水ありて夏のきねらん

ゆくはるを−おくりしかはの−いつへより−さそふみつありて−なつのきねらむ


01992
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神山の卯月の雲も引くしめの夕の雨ににほふ榊葉

かみやまの−うつきのくもも−ひくしめの−ゆふへのあめに−にほふさかきは


01993
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もろ人のかふる衣の一重山うすくは見えぬ夏木立かな

もろひとの−かふるころもの−ひとへやま−うすくはみえぬ−なつこたちかな


01994
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いまよりの手引もたえし桜麻は夏そに成りぬうな上の山

いまよりの−てひきもたえし−さくらあさは−なつそになりぬ−うなかみのやま


01995
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ま柴とり入る山人の夏衣うすきやのこる霞なるらん

ましはとり−いるやまひとの−なつころも−うすきやのこる−かすみなるらむ


01996
未入力 正徹 (xxx)

袖かろし此山たつに杣板のすくなる道を夏や来にけん

そてかろし−このやまたつに−そまいたの−すくなるみちを−なつやきにけむ


01997
未入力 正徹 (xxx)

郭公これや卯月の都鳥軒く音こととふ雲の上人

ほとときす−これやうつきの−みやことり−なくねこととふ−くものうへひと


01998
未入力 正徹 (xxx)

ことの葉はいつれかしけき夏きぬとゆふしてかくる杜の下草

ことのはは−いつれかしけき−なつきぬと−ゆふしてかくる−もりのしたくさ


01999
未入力 正徹 (xxx)

惜むかな花の林の春の陰あるるはしける夏のこすゑを

をしむかな−はなのはやしの−はるのかけ−あるるはしける−なつのこすゑを


02000
未入力 正徹 (xxx)

かけしけくならふ梢のふか緑あさくは夏を契らさりけり

かけしけく−ならふこすゑの−ふかみとり−あさくはなつを−ちきらさりけり


02001
未入力 正徹 (xxx)

しろたへも茂る林にかくろへてかふるか夏の鷺の毛衣

しろたへも−しけるはやしに−かくろへて−かふるかなつの−さきのけころも


02002
未入力 正徹 (xxx)

榊たて卯月のしめの外になす春遠さかるかもの神山

さかきたて−うつきのしめの−ほかになす−はるとほさかる−かものかみやま


02003
未入力 正徹 (xxx)

立ちかふるならひもしらぬ墨染の衣はいつのかたみなるらん

たちかふる−ならひもしらぬ−すみそめの−ころもはいつの−かたみなるらむ


02004
未入力 正徹 (xxx)

たちかへて袖になれにし名残たにいさ白かさね花の香もなし

たちかへて−そてになれにし−なこりたに−いさしらかさね−はなのかもなし


02005
未入力 正徹 (xxx)

花の春もかへはかへなん惜むへき袖にもあらね麻のさ衣

はなのはるも−かへはかへなむ−をしむへき−そてにもあらね−あさのさころも


02006
未入力 正徹 (xxx)

けふよりも涼しくかふる衣手を知るらむものそ六月の風

けふよりも−すすしくかふる−ころもてを−しるらむものそ−みなつきのかせ


02007
未入力 正徹 (xxx)

夏衣人こそかふれ花の香ををしむににたる苔の袖かな

なつころも−ひとこそかふれ−はなのかを−をしむににたる−こけのそてかな


02008
未入力 正徹 (xxx)

織りいたす香取をとめもひまやなきけふもろ人のかふる衣に

おりいたす−かとりをとめも−ひまやなき−けふもろひとの−かふるころもに


02009
未入力 正徹 (xxx)

思はすにけさぬきかへて花のかをうつし心もなきたもとかな

おもはすに−けさぬきかへて−はなのかを−うつしこころも−なきたもとかな


02010
未入力 正徹 (xxx)

しろたへにかふるを見ても墨染の袖のよそなる夏そしらるる

しろたへに−かふるをみても−すみそめの−そてのよそなる−なつそしらるる


02011
未入力 正徹 (xxx)

あかすしてなれにし春の衣手も花の香取にうつる夏かな

あかすして−なれにしはるの−ころもても−はなのかとりに−うつるなつかな


02012
未入力 正徹 (xxx)

榊とるけふ神山に入る人やいもひのために衣かふらん

さかきとる−けふかみやまに−いるひとや−いもひのために−ころもかふらむ


02013
未入力 正徹 (xxx)

立残る山の霞もたた一重衣かへするけふにあひぬる

たちのこる−やまのかすみも−たたひとへ−ころもかへする−けふにあひぬる


02014
未入力 正徹 (xxx)

水にすむたくひを見ても今しはしかへまく袖の鴛の毛衣

みつにすむ−たくひをみても−いましはし−かへまくそての−をしのけころも


02015
未入力 正徹 (xxx)

見し花の香取のうらのあま衣立ちかふる日もぬれつつやふる

みしはなの−かとりのうらの−あまころも−たちかふるひも−ぬれつつやふる


02016
未入力 正徹 (xxx)

つつりさす衣はなにか惜しからんかへはや春の花のかもなし

つつりさす−ころもはなにか−をしからむ−かへはやはるの−はなのかもなし


02017
未入力 正徹 (xxx)

遅桜のこるにほひをさそひきてかふる衣に春風そふく

おそさくら−のこるにほひを−さそひきて−かふるころもに−はるかせそふく


02018
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八重霞山も七重をぬき捨ててうすき衣になる朝かな

やへかすみ−やまもななへを−ぬきすてて−うすきころもに−なるあしたかな


02019
未入力 正徹 (xxx)

雲路にてけふやはかへん行く春の花の香しめし鳥の毛衣

くもちにて−けふやはかへむ−ゆくはるの−はなのかしめし−とりのけころも


02020
未入力 正徹 (xxx)

したひつる春いかなれはぬきかふる衣にうすき契なるらん

したひつる−はるいかなれは−ぬきかふる−ころもにうすき−ちきりなるらむ


02021
未入力 正徹 (xxx)

壁代もみすにそへたるうす物も今朝立ちかへて袖や涼しき

かへしろも−みすにそへたる−うすものも−けさたちかへて−そてやすすしき


02022
未入力 正徹 (xxx)

猶もをし花の香のこる朝露のぬれてひるまにかふる衣は

なほもをし−はなのかのこる−あさつゆの−ぬれてひるまに−かふるころもは


02023
未入力 正徹 (xxx)

誰かけふあはてねしよの春過きてさえ分くるあさの衣かふらん

たれかけふ−あはてねしよの−はるすきて−さえわくるあさの−ころもかふらむ


02024
未入力 正徹 (xxx)

立ちかふる衣の袖の朝しめり露も夏にやうつりきぬらん

たちかふる−ころものそての−あさしめり−つゆもなつにや−うつりきぬらむ


02025
未入力 正徹 (xxx)

花の香を惜むにもあらす夏衣朝寒くしてかへまくはうし

はなのかを−をしむにもあらす−なつころも−あささむくして−かへまくはうし


02026
未入力 正徹 (xxx)

このねぬる朝露なからぬき置きて猶袖かろき夏衣かな

このねぬる−あさつゆなから−ぬきおきて−なほそてかろき−なつころもかな


02027
未入力 正徹 (xxx)

卯花の木の下てらす夕月夜春にまされる山さくらかな

うのはなの−このしたてらす−ゆふつくよ−はるにまされる−やまさくらかな


02028
未入力 正徹 (xxx)

山さくら花こそのこれ一枝をけふのかつらに折りやうゑまし

やまさくら−はなこそのこれ−ひとえたを−けふのかつらに−をりやうゑまし


02029
未入力 正徹 (xxx)

尋見ん春にあはぬを恨にてさくや卯月の山桜花

たつねみむ−はるにあはぬを−うらみにて−さくやうつきの−やまさくらはな


02030
未入力 正徹 (xxx)

夏もみる春の湊かさし藤の波に雲ゐる山さくら花

なつもみる−はるのみなとか−さしふちの−なみにくもゐる−やまさくらはな


02031
未入力 正徹 (xxx)

しけるなりさけるやいつこ御吉野の山桜はに花のかそする

しけるなり−さけるやいつこ−みよしのの−やまさくらはに−はなのかそする


02032
未入力 正徹 (xxx)

あかて見し人のためとや夏きても桜かさせる山の井の水

あかてみし−ひとのためとや−なつきても−さくらかさせる−やまのゐのみつ


02033
未入力 正徹 (xxx)

三月たにさえつるふしの山桜ふもとの雲そ夏にかかれる

やよひたに−さえつるふしの−やまさくら−ふもとのくもそ−なつにかかれる


02034
未入力 正徹 (xxx)

咲く藤も夏にかかるをしるへにて又たつねつる山桜かな

さくふちも−なつにかかるを−しるへにて−またたつねつる−やまさくらかな


02035
未入力 正徹 (xxx)

夏山に猶花ありとよふこ鳥声にも春を忘れやはする

なつやまに−なほはなありと−よふことり−こゑにもはるを−わすれやはする


02036
未入力 正徹 (xxx)

桜かりゆけとも花は夏山のしけみか上に雪そちりくる

さくらかり−ゆけともはなは−なつやまの−しけみかうへに−ゆきそちりくる


02037
未入力 正徹 (xxx)

尋見ん卯月の山の桜かりしけきの風に花のかそする

たつねみむ−うつきのやまの−さくらかり−しけきのかせに−はなのかそする


02038
未入力 正徹 (xxx)

夏山のしけみかおくにかくろへて春をやとせる花の陰かな

なつやまの−しけみかおくに−かくろへて−はるをやとせる−はなのかけかな


02039
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夏衣きその朝露袖かけて桜にほはせつるる山風

なつころも−きそのあさつゆ−そてかけて−さくらにほはせ−つるるやまかせ


02040
未入力 正徹 (xxx)

夏きてそしけれる谷の埋木も人にしらるる花の下陰

なつきてそ−しけれるたにの−うもれきも−ひとにしらるる−はなのしたかけ


02041
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けふとるやま榊の葉のかをしめて袂に春の花を忘れし

けふとるや−まさかきのはの−かをしめて−たもとにはるの−はなをわすれし


02042
未入力 正徹 (xxx)

うすけれと袖さむからす夏衣たちあはせたる白かさねかな

うすけれと−そてさむからす−なつころも−たちあはせたる−しらかさねかな


02043
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夏衣かふるともなく立つ波の花の香取のうら風そふく

なつころも−かふるともなく−たつなみの−はなのかとりの−うらかせそふく


02044
未入力 正徹 (xxx)

松風の色もかすまて千重による木のまの浪に夏や立つらん

まつかせの−いろもかすまて−ちへによる−このまのなみに−なつやたつらむ


02045
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夏はまた遠山鳥も見し雲のしたり尾なかくこゆる嶺かな

なつはまた−とほやまとりも−みしくもの−したりをなかく−こゆるみねかな


02046
未入力 正徹 (xxx)

しけり行く色は緑の夏山になにの花そものこる白雲

しけりゆく−いろはみとりの−なつやまに−なにのはなそも−のこるしらくも


02047
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若葉たつ嶺の林の薄雲も秋の色かる夏そきにける

わかはたつ−みねのはやしの−うすくもも−あきのいろかる−なつそきにける


02048
未入力 正徹 (xxx)

ねにかへり鳥の入りぬと見し雲もききの林の茂る夏かな

ねにかへり−とりのいりぬと−みしくもも−ききのはやしの−しけるなつかな


02049
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茂りあふ木の下遠き夕やみに道はまよはすさける卯花

しけりあふ−このもととほき−ゆふやみに−みちはまよはす−さけるうのはな


02050
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夕ま暮月は此比有明の影先きたつる庭の卯花

ゆふまくれ−つきはこのころ−ありあけの−かけさきたつる−にはのうのはな


02051
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垣ほなる卯花月夜ふけぬともそらにしられぬ木の本の宿

かきほなる−うのはなつきよ−ふけぬとも−そらにしられぬ−このもとのやと


02052
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山かつの垣ほにさける卯花や玉しく庭に猶まさるらん

やまかつの−かきほにさける−うのはなや−たましくにはに−なほまさるらむ


02053
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木の本の卯花月の出入をまちもをしまぬ遠近の山

このもとの−うのはなつきの−いていりを−まちもをしまぬ−をちこちのやま


02054
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しろたへに卯花さける氷室山うつみし雪や色に出つらん

しろたへに−うのはなさける−ひむろやま−うつみしゆきや−いろにいつらむ


02055
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久かたの雲まの影はくもる夜を卯月そてらす花の下みち

ひさかたの−くもまのかけは−くもるよを−うつきそてらす−はなのしたみち


02056
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夏きてもまた三日の夜は卯花のさける光そ月にまされる

なつきても−またみかのよは−うのはなの−さけるひかりそ−つきにまされる


02057
未入力 正徹 (xxx)

影うすき卯花山の夕月よしくれにきえぬ嶺の松風

かけうすき−うのはなやまの−ゆふつくよ−しくれにきえぬ−みねのまつかせ


02058
未入力 正徹 (xxx)

つひに世を卯花山におもひ入る雪のふるすは鴬そなく

つひによを−うのはなやまに−おもひいる−ゆきのふるすは−うくひすそなく


02059
未入力 正徹 (xxx)

山やみなしけりはつらん木の下の卯月の花の雪のむらきえ

やまやみな−しけりはつらむ−このもとの−うつきのはなの−ゆきのむらきえ


02060
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氷室山こほりにさゆる川風にふらぬ雪ちる岸の卯花

ひむろやま−こほりにさゆる−かはかせに−ふらぬゆきちる−きしのうのはな


02061
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初春の卯つちにきりし枝もをし夏の垣ほに先さける花

はつはるの−うつちにきりし−えたもをし−なつのかきほに−まつさけるはな


02062
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春過きて卯花さける氷室山こほらぬ雪をいたすとそみる

はるすきて−うのはなさける−ひむろやま−こほらぬゆきを−いたすとそみる


02063
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咲きあまる卯花山の山人や月またさらむ此月はかり

さきあまる−うのはなやまの−やまひとや−つきまたさらむ−このつきはかり


02064
未入力 正徹 (xxx)

見てもあかぬ大宮人もたをれとや神の井垣をうゆる卯花

みてもあかぬ−おほみやひとも−たをれとや−かみのゐかきを−うゆるうのはな


02065
未入力 正徹 (xxx)

時過きてうつろふ杜の卯花やゆふしてくつる色にみゆらん

ときすきて−うつろふもりの−うのはなや−ゆふしてくつる−いろにみゆらむ


02066
未入力 正徹 (xxx)

山かつの霧の籬はあれはてて又雪かこふ庭の卯花

やまかつの−きりのまかきは−あれはてて−またゆきかこふ−にはのうのはな


02067
未入力 正徹 (xxx)

遠かたやさらすあさ衣一むらを月まてかくるさとの卯花

をちかたや−さらすあさきぬ−ひとむらを−つきまてかくる−さとのうのはな


02068
未入力 正徹 (xxx)

これや此あな卯花とおもへとも立ちかへり見る敷島の道

これやこの−あなうのはなと−おもへとも−たちかへりみる−しきしまのみち


02069
未入力 正徹 (xxx)

山風や宮の直路も寒からすかへしま袖にわくる卯花

やまかせや−みやのたたちも−さむからす−かへしまそてに−わくるうのはな


02070
未入力 正徹 (xxx)

分けゆかは山路の雪のすり衣卯花散りて露そみたれん

わけゆかは−やまちのゆきの−すりころも−うのはなちりて−つゆそみたれむ


02071
未入力 正徹 (xxx)

山ふかみ世を卯花に分けいらは更にわか身をすつるとやみん

やまふかみ−よをうのはなに−わけいらは−さらにわかみを−すつるとやみむ


02072
未入力 正徹 (xxx)

春過きて木の下雪そたとらるる花に卯杖を又やきらまし

はるすきて−このしたゆきそ−たとらるる−はなにうつゑを−またやきらまし


02073
未入力 正徹 (xxx)

雨そそく木の下露も卯花の雪の光をみかくしら玉

あめそそく−このしたつゆも−うのはなの−ゆきのひかりを−みかくしらたま


02074
未入力 正徹 (xxx)

うつ木原木の下おくる夕月よ花としらてやかへる山人

うつきはら−このもとおくる−ゆふつくよ−はなとしらてや−かへるやまひと


02075
未入力 正徹 (xxx)

夏来てもくるる色なき卯花にいまもあけおく山の桜戸

なつきても−くるるいろなき−うのはなに−いまもあけおく−やまのさくらと


02076
未入力 正徹 (xxx)

雪かともえそ見えわかぬ川舟ののはれはくたる岸の卯花

ゆきかとも−えそみえわかぬ−かはふねの−のはれはくたる−きしのうのはな


02077
未入力 正徹 (xxx)

雪の色を高ねにつつく卯花の岸に棹さすふしの川船

ゆきのいろを−たかねにつつく−うのはなの−きしにさをさす−ふしのかはふね


02078
未入力 正徹 (xxx)

早川やくたす鵜舟に岸うつりとふ白鳥やさける卯花

はやかはや−くたすうふねに−きしうつり−とふしらとりや−さけるうのはな


02079
未入力 正徹 (xxx)

卯花のさける淡路をあわとみて塩あひよくるせとの舟人

うのはなの−さけるあはちを−あわとみて−しほあひよくる−せとのふなひと


02080
未入力 正徹 (xxx)

川上の滝のしら淡なかれきて雪をあらそふ岸の卯花

かはかみの−たきのしらあわ−なかれきて−ゆきをあらそふ−きしのうのはな


02081
未入力 正徹 (xxx)

なつみ川山陰にして見し雪ののこるかさくか岸の卯花

なつみかは−やまかけにして−みしゆきの−のこるかさくか−きしのうのはな


02082
未入力 正徹 (xxx)

影うつす卯花さける木の本に消ゆとはなしの雪の下水

かけうつす−うのはなさける−このもとに−きゆとはなしの−ゆきのしたみつ


02083
未入力 正徹 (xxx)

岸たかみ牆ほつつきの卯花に川辺の里をうつむ白波

きしたかみ−かきほつつきの−うのはなに−かはへのさとを−うつむしらなみ


02084
未入力 正徹 (xxx)

天つ空光は見えす卯花の咲くや卯月の夕やみの庭

あまつそら−ひかりはみえす−うのはなの−さくやうつきの−ゆふやみのには


02085
未入力 正徹 (xxx)

卯花のさける山路の夕ま暮送らぬ月にいつる里人

うのはなの−さけるやまちの−ゆふまくれ−おくらぬつきに−いつるさとひと


02086
未入力 正徹 (xxx)

ねくらなき身をうの花の雪の山月ともわかす鳥や鳴くらん

ねくらなき−みをうのはなの−ゆきのやま−つきともわかす−とりやなくらむ


02087
未入力 正徹 (xxx)

杣木きる嵐やたくふ山岸に咲く卯花や雪折のこゑ

そまききる−あらしやたくふ−やまきしに−さくうのはなや−ゆきをれのこゑ


02088
未入力 正徹 (xxx)

郭公わか名をもらせ人とはは床の山なるいさとこたへん

ほとときす−わかなをもらせ−ひととはは−とこのやまなる−いさとこたへむ


02089
未入力 正徹 (xxx)

ほのかにそ月はのこれる郭公今一こゑを面影にして

ほのかにそ−つきはのこれる−ほとときす−いまひとこゑを−おもかけにして


02090
未入力 正徹 (xxx)

待見つる山郭公一こゑの後にそなかき夏のよの空

まちみつる−やまほとときす−ひとこゑの−のちにそなかき−なつのよのそら


02091
未入力 正徹 (xxx)

立ちかへり老をたのみしかひありて山郭公ね覚にそきく

たちかへり−おいをたのみし−かひありて−やまほとときす−ねさめにそきく


02092
未入力 正徹 (xxx)

をしか待つは山をいつる郭公ともすほくしの影に鳴くなり

をしかまつ−はやまをいつる−ほとときす−ともすほくしの−かけになくなり


02093
未入力 正徹 (xxx)

郭公鳴きてやすらふ山すけのなかき日くらしあかすもあるかな

ほとときす−なきてやすらふ−やますけの−なかきひくらし−あかすもあるかな


02094
未入力 正徹 (xxx)

四月まちてそのまにもなけ郭公道たとたとし夕やみの空

つきまちて−そのまにもなけ−ほとときす−みちたとたとし−ゆふやみのそら


02095
未入力 正徹 (xxx)

かたらはんなれもまた世に出てやらて鳴く音そこもる山郭公

かたらはむ−なれもまたよに−いてやらて−なくねそこもる−やまほとときす


02096
未入力 正徹 (xxx)

晴れやらて八重たつ雲に郭公なくやよ川のすきかての空

はれやらて−やへたつくもに−ほとときす−なくやよかはの−すきかてのそら


02097
未入力 正徹 (xxx)

こゑそきく山郭公なのりそを磯にはよせぬにほのうら波

こゑそきく−やまほとときす−なのりそを−いそにはよせぬ−にほのうらなみ


02098
未入力 正徹 (xxx)

鳴きすかる声を聞けとも郭公あかてそむすふ山の井の水

なきすかる−こゑをきけとも−ほとときす−あかてそむすふ−やまのゐのみつ


02099
未入力 正徹 (xxx)

郭公わかなをたてて忍ねをたかもらしつと世をはうらみん

ほとときす−わかなをたてて−しのひねを−たかもらしつと−よをはうらみむ


02100
未入力 正徹 (xxx)

とくいてしわかはらからの鴬や卯月もさらぬ山郭公

とくいてし−わかはらからの−うくひすや−うつきもさらぬ−やまほとときす


02101
未入力 正徹 (xxx)

老いにけりいまこん年の一こゑを鳴きてはなとか山郭公

おいにけり−いまこむとしの−ひとこゑを−なきてはなとか−やまほとときす


02102
未入力 正徹 (xxx)

郭公初鳥やこめの箸鷹に心あはせて出てぬ山かな

ほとときす−はつとやこめの−はしたかに−こころあはせて−いてぬやまかな


02103
未入力 正徹 (xxx)

うたたねをやかておき出つる一声はおやのいさめの郭公かな

うたたねを−やかておきいつる−ひとこゑは−おやのいさめの−ほとときすかな


02104
未入力 正徹 (xxx)

むら雨は山田の杉のもとかしはぬれぬかけしる郭公かな

むらさめは−やまたのすきの−もとかしは−ぬれぬかけしる−ほとときすかな


02105
未入力 正徹 (xxx)

しはしまて木幡の山の郭公こゑ此ころや口なしの花

しはしまて−こはたのやまの−ほとときす−こゑこのころや−くちなしのはな


02106
未入力 正徹 (xxx)

橘のちるは色かををしむなりきなれしものを山ほとときす

たちはなの−ちるはいろかを−をしむなり−きなれしものを−やまほとときす


02107
未入力 正徹 (xxx)

ををよわみ涙の玉もおちかへりみたれてをなけ山郭公

ををよわみ−なみたのたまも−おちかへり−みたれてをなけ−やまほとときす


02108
未入力 正徹 (xxx)

郭公こゑもこよひの影なから窓もる竹の臥待の月

ほとときす−こゑもこよひの−かけなから−まともるたけの−ふしまちのつき


02109
未入力 正徹 (xxx)

郭公稀なるこゑを恨みてや夕の雲も立ちかへるらん

ほとときす−まれなるこゑを−うらみてや−ゆふへのくもも−たちかへるらむ


02110
未入力 正徹 (xxx)

榊とる山路をいてて郭公鳴くや卯月のしめの外まて

さかきとる−やまちをいてて−ほとときす−なくやうつきの−しめのほかまて


02111
未入力 正徹 (xxx)

郭公おほえぬ夜の一こゑの後そ心をつけのをまくら

ほとときす−おほえぬよるの−ひとこゑの−のちそこころを−つけのをまくら


02112
未入力 正徹 (xxx)

一こゑをうたかひあへる人ことにものいひとまる郭公かな

ひとこゑを−うたかひあへる−ひとことに−ものいひとまる−ほとときすかな


02113
未入力 正徹 (xxx)

五月かも麦の秋風蝉のこゑましはる杜になく郭公

さつきかも−むきのあきかせ−せみのこゑ−ましはるもりに−なくほとときす


02114
未入力 正徹 (xxx)

落ちくるも声しら淡にききてけり滝の上なる山郭公

おちくるも−こゑしらあわに−ききてけり−たきのうへなる−やまほとときす


02115
未入力 正徹 (xxx)

しのふとも思はてしもや郭公深山かくれに初音鳴くらん

しのふとも−おもはてしもや−ほとときす−みやまかくれに−はつねなくらむ


02116
未入力 正徹 (xxx)

夜もすからやすらへ空の郭公月に鳴くとも涙くもらし

よもすから−やすらへそらの−ほとときす−つきになくとも−なみたくもらし


02117
未入力 正徹 (xxx)

おやよりも世に名そたかき鴬のかひこの中の鳥の一こゑ

おやよりも−よになそたかき−うくひすの−かひこのうちの−とりのひとこゑ


02118
未入力 正徹 (xxx)

駒とむるひのくま川の夕浪にささめことせぬ郭公かな

こまとむる−ひのくまかはの−ゆふなみに−ささめことせぬ−ほとときすかな


02119
未入力 正徹 (xxx)

郭公まつにつけてもまとろます蚊の初こゑの渡る枕は

ほとときす−まつにつけても−まとろます−かのはつこゑの−わたるまくらは


02120
未入力 正徹 (xxx)

郭公すかたはしらす年へてもきくに老いせぬこゑの色かな

ほとときす−すかたはしらす−としへても−きくにおいせぬ−こゑのいろかな


02121
未入力 正徹 (xxx)

またれつる心のうらもあひねとや此夕とふ郭公かな

またれつる−こころのうらも−あひねとや−このゆふへとふ−ほとときすかな


02122
未入力 正徹 (xxx)

郭公心にかけて思ふ夜は雲まの月のおも影のこゑ

ほとときす−こころにかけて−おもふよは−くもまのつきの−おもかけのこゑ


02123
未入力 正徹 (xxx)

雲まよふいさよひの月の村雨を先まちいつる郭公かな

くもまよふ−いさよひのつきの−むらさめを−まつまちいつる−ほとときすかな


02124
未入力 正徹 (xxx)

時鳥きかぬ山路に分けいれは心あらはすみねの松風

ほとときす−きかぬやまちに−わけいれは−こころあらはす−みねのまつかせ


02125
未入力 正徹 (xxx)

郭公しれかし山の尾の上にもひとつ心の一木たつなり

ほとときす−しれかしやまの−をのへにも−ひとつこころの−ひときたつなり


02126
未入力 正徹 (xxx)

年もへぬまつに心はみしかくて玉のをなかき郭公かな

としもへぬ−まつにこころは−みしかくて−たまのをなかき−ほとときすかな


02127
未入力 正徹 (xxx)

時鳥わか松山をこえてなけ契りし末はそれそかはらぬ

ほとときす−わかまつやまを−こえてなけ−ちきりしすゑは−それそかはらぬ


02128
未入力 正徹 (xxx)

郭公雨の名残もつれなくてまたぬに出つる山のはの雲

ほとときす−あめのなこりも−つれなくて−またぬにいつる−やまのはのくも


02129
未入力 正徹 (xxx)

きかし猶老いて名をかるみみなしの山郭公なきふるすとも

きかしなほ−おいてなをかる−みみなしの−やまほとときす−なきふるすとも


02130
未入力 正徹 (xxx)

時鳥鳴くや涙のはつ染に木木の若葉や色に出つらん

ほとときす−なくやなみたの−はつそめに−ききのわかはや−いろにいつらむ


02131
未入力 正徹 (xxx)

郭公なかなく声の初しほは色なき袖に涙おちつつ

ほとときす−なかなくこゑの−はつしほは−いろなきそてに−なみたおちつつ


02132
未入力 正徹 (xxx)

郭公卯月に手折る榊葉の色もかはらぬ初音をそ聞く

ほとときす−うつきにたをる−さかきはの−いろもかはらぬ−はつねをそきく


02133
未入力 正徹 (xxx)

郭公初音のけふの玉手箱この明かたや太山出つらん

ほとときす−はつねのけふの−たまてはこ−このあけかたや−みやまいつらむ


02134
未入力 正徹 (xxx)

手にとらぬ初音のけふの郭公これにも又やゆらく玉のを

てにとらぬ−はつねのけふの−ほとときす−これにもまたや−ゆらくたまのを


02135
未入力 正徹 (xxx)

初こゑになれもめててや時鳥けふのうつきに落ちかへりなく

はつこゑに−なれもめててや−ほとときす−けふのうつきに−おちかへりなく


02136
未入力 正徹 (xxx)

時鳥人もことはのおほかるは品すくなしと又そこゑせぬ

ほとときす−ひともことはの−おほかるは−しなすくなしと−またそこゑせぬ


02137
未入力 正徹 (xxx)

郭公たかねの月も二こゑとなかて色そふ松の夕かせ

ほとときす−たかねのつきも−ふたこゑと−なかていろそふ−まつのゆふかせ


02138
未入力 正徹 (xxx)

もりいつる雲まの月の一こゑに声なかさねそ山郭公

もりいつる−くもまのつきの−ひとこゑに−こゑなかさねそ−やまほとときす


02139
未入力 正徹 (xxx)

山のはに雲あつまりぬ郭公しはしかたらへ一こゑそせし

やまのはに−くもあつまりぬ−ほとときす−しはしかたらへ−ひとこゑそせし


02140
未入力 正徹 (xxx)

神まつる卯月のしめのうちにたにこといみしける山郭公

かみまつる−うつきのしめの−うちにたに−こといみしける−やまほとときす


02141
未入力 正徹 (xxx)

神山の卯月のしめのよそにたにゆふかけてなく郭公かな

かみやまの−うつきのしめの−よそにたに−ゆふかけてなく−ほとときすかな


02142
未入力 正徹 (xxx)

此夕一こゑ過きぬほとときすかへさを契れあかつきの空

このゆふへ−ひとこゑすきぬ−ほとときす−かへさをちきれ−あかつきのそら


02143
未入力 正徹 (xxx)

よしさらはあかすは老のひかききもましれと思ふ郭公かな

よしさらは−あかすはおいの−ひかききも−ましれとおもふ−ほとときすかな


02144
未入力 正徹 (xxx)

いくこゑと人のいふにそ郭公遅く聞きつる数もくやしき

いくこゑと−ひとのいふにそ−ほとときす−おそくききつる−かすもくやしき


02145
未入力 正徹 (xxx)

郭公老の枕にかすかなるこゑいかはかりさやけかるらん

ほとときす−おいのまくらに−かすかなる−こゑいかはかり−さやけかるらむ


02146
未入力 正徹 (xxx)

きけは先心そらなる郭公たのますとてや遠さかるらん

きけはまつ−こころそらなる−ほとときす−たのますとてや−とほさかるらむ


02147
未入力 正徹 (xxx)

聞きあへす人にかたれは我かための初音ふりねる郭公かな

ききあへす−ひとにかたれは−わかための−はつねふりねる−ほとときすかな


02148
未入力 正徹 (xxx)

郭公又あひかたしこれや此わしの高ねの法の一こゑ

ほとときす−またあひかたし−これやこの−わしのたかねの−のりのひとこゑ


02149
未入力 正徹 (xxx)

時鳥鳴く山ことに山ひこのあらまほしきもあるそまれなる

ほとときす−なくやまことに−やまひこの−あらまほしきも−あるそまれなる


02150
未入力 正徹 (xxx)

桜かり夏やのこると初音をも尋ぬる山に鳴く郭公

さくらかり−なつやのこると−はつねをも−たつぬるやまに−なくほとときす


02151
未入力 正徹 (xxx)

時鳥とほさかるなり覚めつるは近き夢路にこゑや行くらん

ほとときす−とほさかるなり−さめつるは−ちかきゆめちに−こゑやゆくらむ


02152
未入力 正徹 (xxx)

郭公ききても老と思はぬやことしはかりのね覚ならまし

ほとときす−ききてもおいと−おもはぬや−ことしはかりの−ねさめならまし


02153
未入力 正徹 (xxx)

夢さめておきいつる閨の郭公いま一こゑは月にきくなり

ゆめさめて−おきいつるねやの−ほとときす−いまひとこゑは−つきにきくなり


02154
未入力 正徹 (xxx)

うき夢の床の涙のよそなからなきおとろかす郭公かな

うきゆめの−とこのなみたの−よそなから−なきおとろかす−ほとときすかな


02155
未入力 正徹 (xxx)

横雲を空にすゑおく関と見てやすらひあかす郭公かな

よこくもを−そらにすゑおく−せきとみて−やすらひあかす−ほとときすかな


02156
未入力 正徹 (xxx)

つれなさは暁はかりうき物とおもひもはてぬ郭公かな

つれなさは−あかつきはかり−うきものと−おもひもはてぬ−ほとときすかな


02157
未入力 正徹 (xxx)

郭公たか衣衣のあかつきにしたはぬ声の落ちかへるらん

ほとときす−たかきぬきぬの−あかつきに−したはぬこゑの−おちかへるらむ


02158
未入力 正徹 (xxx)

雲まよふ山郭公こゑ過きて青葉にあくる木木のむら立

くもまよふ−やまほとときす−こゑすきて−あをはにあくる−ききのむらたち


02159
未入力 正徹 (xxx)

郭公又もきかれぬ里の子の夕ととろきに声ましりつつ

ほとときす−またもきかれぬ−さとのこの−ゆふととろきに−こゑましりつつ


02160
未入力 正徹 (xxx)

雨かかる山のはきえて郭公鳴くや夕にまよふ浮雲

あめかかる−やまのはきえて−ほとときす−なくやゆふへに−まよふうきくも


02161
未入力 正徹 (xxx)

鳴きぬなり卯花月夜すみ染のゆふ暮あさき山郭公

なきぬなり−うのはなつきよ−すみそめの−ゆふくれあさき−やまほとときす


02162
未入力 正徹 (xxx)

思はすにねに行くからすなかめやる雲路にきなく郭公かな

おもはすに−ねにゆくからす−なかめやる−くもちにきなく−ほとときすかな


02163
未入力 正徹 (xxx)

時鳥ときのつつみの九こゑきかて過きぬるさ夜中もうし

ほとときす−ときのつつみの−ここのこゑ−きかてすきぬる−さよなかもうし


02164
未入力 正徹 (xxx)

郭公雲のいつくの月とたにしらぬやとりのあくる一こゑ

ほとときす−くものいつくの−つきとたに−しらぬやとりの−あくるひとこゑ


02165
未入力 正徹 (xxx)

さむるとていかなる夢か惜しからむ声おとろかせ山ほとときす

さむるとて−いかなるゆめか−をしからむ−こゑおとろかせ−やまほとときす


02166
未入力 正徹 (xxx)

郭公心のやみも晴れぬとや山のはいつる月になくらん

ほとときす−こころのやみも−はれぬとや−やまのはいつる−つきになくらむ


02167
未入力 正徹 (xxx)

雲路行く月のこゑかとたとるまて光にちかき郭公かな

くもちゆく−つきのこゑかと−たとるまて−ひかりにちかき−ほとときすかな


02168
未入力 正徹 (xxx)

明けぬるかおなしたかねの郭公なく一こゑにいつる月かけ

あけぬるか−おなしたかねの−ほとときす−なくひとこゑに−いつるつきかけ


02169
未入力 正徹 (xxx)

一こゑはまたすしもあらす月影に夜よしとつくる郭公かな

ひとこゑは−またすしもあらす−つきかけに−よよしとつくる−ほとときすかな


02170
未入力 正徹 (xxx)

郭公月や雲まに出てぬらんひかりもおつる一こゑの空

ほとときす−つきやくもまに−いてぬらむ−ひかりもおつる−ひとこゑのそら


02171
未入力 正徹 (xxx)

をちかへりなくへきそらを郭公いつれの雲に声かくすらん

をちかへり−なくへきそらを−ほとときす−いつれのくもに−こゑかくすらむ


02172
未入力 正徹 (xxx)

衣かも雲のはたてのぬきを辞み声もたまらぬほとときナかな

ころもかも−くものはたての−ぬきをうすみ−こゑもたまらぬ−ほとときすかな


02173
未入力 正徹 (xxx)

吹きまよふ風もうらめし郭公鳴くやなこりをみねのむら雲

ふきまよふ−かせもうらめし−ほとときす−なくやなこりを−みねのむらくも


02174
未入力 正徹 (xxx)

恨みても恋ひてもなけと郭公こゑする雲のきゆる空かな

うらみても−こひてもなけと−ほとときす−こゑするくもの−きゆるそらかな


02175
未入力 正徹 (xxx)

をちかへりたひたひきなく時鳥いつれの雲に羽をやすむらん

をちかへり−たひたひきなく−ほとときす−いつれのくもに−はをやすむらむ


02176
未入力 正徹 (xxx)

又きかまほしのまきれの郭公のこるは軒のむら雨のこゑ

またきかま−ほしのまきれの−ほとときす−のこるはのきの−むらさめのこゑ


02177
未入力 正徹 (xxx)

さおりする田長をおのかしるへとやしつやに近き郭公かな

さおりする−たをさをおのか−しるへとや−しつやにちかき−ほとときすかな


02178
未入力 正徹 (xxx)

雲とちてねん山やなき五月やみくらせるよひに鳴く郭公

くもとちて−ねむやまやなき−さつきやみ−くらせるよひに−なくほとときす


02179
未入力 正徹 (xxx)

風わたる岡のま草の夕露に落ちかへりなく郭公かな

かせわたる−をかのまくさの−ゆふつゆに−おちかへりなく−ほとときすかな


02180
未入力 正徹 (xxx)

夕波にこゑをちかへれ入海の松のむかひの山郭公

ゆふなみに−こゑをちかへれ−いりうみの−まつのむかひの−やまほとときす


02181
未入力 正徹 (xxx)

すまのうらの山郭公わくらはにこゑしほちまてかへる波かな

すまのうらの−やまほとときす−わくらはに−こゑしほちまて−かへるなみかな


02182
未入力 正徹 (xxx)

松風も心ありけるさとの名のね覚うれしき郭公かな

まつかせも−こころありける−さとのなの−ねさめうれしき−ほとときすかな


02183
未入力 正徹 (xxx)

たれかきくあたら初音を里とよむ市はの上の山郭公

たれかきく−あたらはつねを−さととよむ−いちはのうへの−やまほとときす


02184
未入力 正徹 (xxx)

郭公なくや涙の露も見すゆふ暮ふかき森の下草

ほとときす−なくやなみたの−つゆもみす−ゆふくれふかき−もりのしたくさ


02185
未入力 正徹 (xxx)

郭公田中の杜にをちかへり生ふるさなへのねをつくすなり

ほとときす−たなかのもりに−をちかへり−おふるさなへの−ねをつくすなり


02186
未入力 正徹 (xxx)

鳴行くをかそへんとすれは遠かたにこゑまきらはす郭公かな

なきゆくを−かそへむとすれは−をちかたに−こゑまきらはす−ほとときすかな


02187
未入力 正徹 (xxx)

落ちかへり野にも山にも郭公こゑのたねまけこん年のため

おちかへり−のにもやまにも−ほとときす−こゑのたねまけ−こむとしのため


02188
未入力 正徹 (xxx)

むら雨も村山めくる郭公こゑにさとわくかたやなからん

むらさめも−むらやまめくる−ほとときす−こゑにさとわく−かたやなからむ


02189
未入力 正徹 (xxx)

夏をしる世におしなへて郭公こゑをふらせる夕暮の雨

なつをしる−よにおしなへて−ほとときす−こゑをふらせる−ゆふくれのあめ


02190
未入力 正徹 (xxx)

今は世にこゑききのこす里人も稀なる比のほとときすかな

いまはよに−こゑききのこす−さとひとも−まれなるころの−ほとときすかな


02191
未入力 正徹 (xxx)

たちきかむ心はやます山の井のあかても過くる郭公かな

たちきかむ−こころはやます−やまのゐの−あかてもすくる−ほとときすかな


02192
未入力 正徹 (xxx)

つまこめになくやね山の郭公八雲のおくの夕暮のこゑ

つまこめに−なくやねやまの−ほとときす−やくものおくの−ゆふくれのこゑ


02193
未入力 正徹 (xxx)

夏ふかみ花ちる山の遅さくら見しより稀の郭公かな

なつふかみ−はなちるやまの−おそさくら−みしよりまれの−ほとときすかな


02194
未入力 正徹 (xxx)

うたたねのこれは夢路か郭公おとつれたえし後の一こゑ

うたたねの−これはゆめちか−ほとときす−おとつれたえし−のちのひとこゑ


02195
未入力 正徹 (xxx)

郭公なくや五月の玉さかになるは程なき有明の空

ほとときす−なくやさつきの−たまさかに−なるはほとなき−ありあけのそら


02196
未入力 正徹 (xxx)

ほとときす時に一たひさく花にきかまほしきは声の色かな

ほとときす−ときにひとたひ−さくはなに−きかまほしきは−こゑのいろかな


02197
未入力 正徹 (xxx)

郭公まれなる中の契ゆゑこゑをまとほにおもふ夜もなし

ほとときす−まれなるなかの−ちきりゆゑ−こゑをまとほに−おもふよもなし


02198
未入力 正徹 (xxx)

芹川やまれの御幸の跡たえし初音をさかの山ほとときす

せりかはや−まれのみゆきの−あとたえし−はつねをさかの−やまほとときす


02199
未入力 正徹 (xxx)

つれなくて有明過きぬ郭公此三か月にきえし一こゑ

つれなくて−ありあけすきぬ−ほとときす−このみかつきに−きえしひとこゑ


02200
未入力 正徹 (xxx)

花ちりて茂る桜の陰にさへ年にまれなる山郭公

はなちりて−しけるさくらの−かけにさへ−としにまれなる−やまほとときす


02201
未入力 正徹 (xxx)

よろつ木のおなし緑も天地のめくみたかくやしけりそふらん

よろつきの−おなしみとりも−あめつちの−めくみたかくや−しけりそふらむ


02202
未入力 正徹 (xxx)

夏そひくうなての杜の葉をしけみまとりすむともみえぬ陰かな

なつそひく−うなてのもりの−はをしけみ−まとりすむとも−みえぬかけかな


02203
未入力 正徹 (xxx)

ふか緑夏もたけ行く木木の葉のうらわかからぬ風の音かな

ふかみとり−なつもたけゆく−ききのはの−うらわかからぬ−かせのおとかな


02204
未入力 正徹 (xxx)

水鳥の苛羽の山の色そこきおなしうは毛としける梢に

みつとりの−あをはのやまの−いろそこき−おなしうはけと−しけるこすゑに


02205
未入力 正徹 (xxx)

見し春にかはらぬ岡の常盤木もよその緑に茂る夏かな

みしはるに−かはらぬをかの−ときはきも−よそのみとりに−しけるなつかな


02206
未入力 正徹 (xxx)

松風も千世の緑をかしは木のひろはにあまる夏の声かな

まつかせも−ちよのみとりを−かしはきの−ひろはにあまる−なつのこゑかな


02207
未入力 正徹 (xxx)

夏草の末野の森そたかからぬ茂りかたふく露の梢に

なつくさの−すゑののもりそ−たかからぬ−しけりかたふく−つゆのこすゑに


02208
未入力 正徹 (xxx)

庭ちかくしけりつつきてひまもなし都も山もひとつ木すゑに

にはちかく−しけりつつきて−ひまもなし−みやこもやまも−ひとつこすゑに


02209
未入力 正徹 (xxx)

葛の葉のかからぬ嶺のしけみにもはふきあまたの横雲のそら

くすのはの−かからぬみねの−しけみにも−はふきあまたの−よこくものそら


02210
未入力 正徹 (xxx)

夏山の若葉にましるふか緑もとの松とも見えぬ松かな

なつやまの−わかはにましる−ふかみとり−もとのまつとも−みえぬまつかな


02211
未入力 正徹 (xxx)

いにしへの林にしけきたくひにもおよはすあさき心ことのは

いにしへの−はやしにしけき−たくひにも−およはすあさき−こころことのは


02212
未入力 正徹 (xxx)

花なくて見るかひなくは思はれす青葉の山にかかるしら雲

はななくて−みるかひなくは−おもはれす−あをはのやまに−かかるしらくも


02213
未入力 正徹 (xxx)

しける木の若葉の色や紅の一花そめの山ひめの袖

しけるきの−わかはのいろや−くれなゐの−ひとはなそめの−やまひめのそて


02214
未入力 正徹 (xxx)

よもの木に朝おく露の玉のえも茂るよもきか庭の島かな

よものきに−あさおくつゆの−たまのえも−しけるよもきか−にはのしまかな


02215
未入力 正徹 (xxx)

露しける木下はらひ吹く風のめに見ぬ色や秋のおも影

つゆしける−このもとはらひ−ふくかせの−めにみぬいろや−あきのおもかけ


02216
未入力 正徹 (xxx)

山風も梢をわたるむら猿のこゑさへふかくしける夏かな

やまかせも−こすゑをわたる−むらさるの−こゑさへふかく−しけるなつかな


02217
未入力 正徹 (xxx)

花ならぬ山の林になる梅の実さへ若葉の色に匂へる

はなならぬ−やまのはやしに−なるうめの−みさへわかはの−いろににほへる


02218
未入力 正徹 (xxx)

にほの海にこきいててみれは茂るらん若葉波よるひらのねおろし

にほのうみに−こきいててみれは−しけるらむ−わかはなみよる−ひらのねおろし


02219
未入力 正徹 (xxx)

時しもあれ卯月の嶺の緑さへうすき木の葉の衣ほすなり

ときしもあれ−うつきのみねの−みとりさへ−うすきこのはの−ころもほすなり


02220
未入力 正徹 (xxx)

筑波根やしけれはいととみなの川峰よりおつる音はかりして

つくはねや−しけれはいとと−みなのかは−みねよりおつる−おとはかりして


02221
未入力 正徹 (xxx)

まきもくもしけりまさきの綱たえて杣木引くなり嶺のよこ雲

まきもくも−しけりまさきの−つなたえて−そまきひくなり−みねのよこくも


02222
未入力 正徹 (xxx)

つくはねの嶺そ緑の淵となるおつるやいつこみなの川波

つくはねの−みねそみとりの−ふちとなる−おつるやいつこ−みなのかはなみ


02223
未入力 正徹 (xxx)

筑波山茂りかさねてみなの川嶺よりおつと見えぬ夏かな

つくはやま−しけりかさねて−みなのかは−みねよりおつと−みえぬなつかな


02224
未入力 正徹 (xxx)

ゆふしてを茂りかくしてかた岡の森もみしめも見えぬ比かな

ゆふしてを−しけりかくして−かたをかの−もりもみしめも−みえぬころかな


02225
未入力 正徹 (xxx)

木のもとの岡の屋かたの妻見えてこもりもはてす茂る夏かな

このもとの−をかのやかたの−つまみえて−こもりもはてす−しけるなつかな


02226
未入力 正徹 (xxx)

えそみえぬねにこしからす幾つれかとまる林は木の葉のみして

えそみえぬ−ねにこしからす−いくつれか−とまるはやしは−このはのみして


02227
未入力 正徹 (xxx)

夕間暮ねにくるからすいくむらかしける林に身をかくすらん

ゆふまくれ−ねにくるからす−いくむらか−しけるはやしに−みをかくすらむ


02228
未入力 正徹 (xxx)

深草や杜の嵐にちる藤のうら葉あらはに茂る夏かな

ふかくさや−もりのあらしに−ちるふちの−うらはあらはに−しけるなつかな


02229
未入力 正徹 (xxx)

深緑ましる若葉の薄もえき夏の色わく山の朝露

ふかみとり−ましるわかはの−うすもえき−なつのいろわく−やまのあさつゆ


02230
未入力 正徹 (xxx)

しけりあふわか葉かたふきふる雨に木のまの山そしはし見え行く

しけりあふ−わかはかたふき−ふるあめに−このまのやまそ−しはしみえゆく


02231
未入力 正徹 (xxx)

夏のくる床に葉風のこゑ涼し竹の庵のすとの明ほの

なつのくる−とこにはかせの−こゑすすし−たけのいほりの−すとのあけほの


02232
未入力 正徹 (xxx)

宿の藤夏にかかるも紫の竹の夜のまは色もかはらす

やとのふち−なつにかかるも−むらさきの−たけのよのまは−いろもかはらす


02233
未入力 正徹 (xxx)

竹の子も世のうきふしをそへかほに窓につのくむ夏はきにけり

たけのこも−よのうきふしを−そへかほに−まとにつのくむ−なつはきにけり


02234
未入力 正徹 (xxx)

宿ふかきそのふに生ふる竹の子の蝉こそなかね夏はきにけり

やとふかき−そのふにおふる−たけのこの−せみこそなかね−なつはきにけり


02235
未入力 正徹 (xxx)

春くれし木の下やみを卯花の光も露もはらふ夏かな

はるくれし−このしたやみを−うのはなの−ひかりもつゆも−はらふなつかな


02236
未入力 正徹 (xxx)

春暮れて雲に入りにし鳥の子のひなの長路に夏も来にけり

はるくれて−くもにいりにし−とりのこの−ひなのなかちに−なつもきにけり


02237
未入力 正徹 (xxx)

葵草露も二葉におく程はいく程ならしみかけしら玉

あふひくさ−つゆもふたはに−おくほとは−いくほとならし−みかけしらたま


02238
未入力 正徹 (xxx)

もろ葉草二葉の露のたまたまも神めつる日にめくり逢ひぬる

もろはくさ−ふたはのつゆの−たまたまも−かみめつるひに−めくりあひぬる


02239
未入力 正徹 (xxx)

天地の友神男神の二柱二葉ゆゑあるあふひなるらん

あめつちの−めかみをかみの−ふたはしら−ふたはゆゑある−あふひなるらむ


02240
未入力 正徹 (xxx)

年年になれにしものを葵草けふほ哀にかくる露かな

としとしに−なれにしものを−あふひくさ−けふほあはれに−かくるつゆかな


02241
未入力 正徹 (xxx)

水鳥の青葉の簾葵つけけふかけわたせかもの川波

みつとりの−あをはのすたれ−あふひつけ−けふかけわたせ−かものかはなみ


02242
未入力 正徹 (xxx)

宮ひけり玉をあむより葵草ふりたるみすの青き二葉は

みやひけり−たまをあむより−あふひくさ−ふりたるみすの−あをきふたはは


02243
未入力 正徹 (xxx)

葵草けふより後の宮ひをもみすの枯葉に猶やのこさん

あふひくさ−けふよりのちの−みやひをも−みすのかれはに−なほやのこさむ


02244
未入力 正徹 (xxx)

あふひこそあひ生ならね神山の昔の二葉松はふりつつ

あふひこそ−あひおひならね−かみやまの−むかしのふたは−まつはふりつつ


02245
未入力 正徹 (xxx)

もる月に枝もさはらぬ竹の子のまたみしか夜の窓そ涼しき

もるつきに−えたもさはらぬ−たけのこの−またみしかよの−まとそすすしき


02246
未入力 正徹 (xxx)

天の原さやかに月の明くる夜を雪のいつくと誰かたとらん

あまのはら−さやかにつきの−あくるよを−ゆきのいつくと−たれかたとらむ


02247
未入力 正徹 (xxx)

猶もをし山郭公一こゑに出入る月の夜はならねとも

なほもをし−やまほとときす−ひとこゑに−いているつきの−よはならねとも


02248
未入力 正徹 (xxx)

行く水をむすふ手玉にくたけても底にいつみの月そ涼しき

ゆくみつを−むすふてたまに−くたけても−そこにいつみの−つきそすすしき


02249
未入力 正徹 (xxx)

明けはをしわか老いらくの白髪に夏の霜夜の月そやとれる

あけはをし−わかおいらくの−しろかみに−なつのしもよの−つきそやとれる


02250
未入力 正徹 (xxx)

やとるさへあかてそあかすしろたへの我か衣手のみしか夜の月

やとるさへ−あかてそあかす−しろたへの−わかころもての−みしかよのつき


02251
未入力 正徹 (xxx)

てる月の玉江のかけも夏かりに生ひいつる蘆の短夜の月

てるつきの−たまえのかけも−なつかりに−おひいつるあしの−みしかよのつき


02252
未入力 正徹 (xxx)

いつのまに千町の水をわたるらん植ゑし早苗の短夜の月

いつのまに−ちまちのみつを−わたるらむ−うゑしさなへの−みしかよのつき


02253
未入力 正徹 (xxx)

行く月の天の岩戸の関の戸をよひのまなから明くる比かな

ゆくつきの−あまのいはとの−せきのとを−よひのまなから−あくるころかな


02254
未入力 正徹 (xxx)

水あさき蘆まにすたつ鴫の足のみしかくうかふ夏の月影

みつあさき−あしまにすたつ−しきのあしの−みしかくうかふ−なつのつきかけ


02255
未入力 正徹 (xxx)

みしかくもまたふし見えぬ竹の子のよわたりかぬる園の月影

みしかくも−またふしみえぬ−たけのこの−よわたりかぬる−そののつきかけ


02256
未入力 正徹 (xxx)

山のはの木をうこかせる風涼し扇をあけて出つる月よに

やまのはの−きをうこかせる−かせすすし−あふきをあけて−いつるつきよに


02257
未入力 正徹 (xxx)

しつの屋そ明くるも知らぬ夏はきの麻のをからの白き月よに

しつのやそ−あくるもしらぬ−なつはきの−あさのをからの−しろきつきよに


02258
未入力 正徹 (xxx)

郭公なく一こゑは杉の戸にあけんともせぬ月の影かな

ほとときす−なくひとこゑは−すきのとに−あけむともせぬ−つきのかけかな


02259
未入力 正徹 (xxx)

形見をはならす扇にのこし置きてかさなる山に月そかくるる

かたみをは−ならすあふきに−のこしおきて−かさなるやまに−つきそかくるる


02260
未入力 正徹 (xxx)

夏引のいそく手引のいとなみもよることたえね月のみしかさ

なつひきの−いそくてひきの−いとなみも−よることたえね−つきのみしかさ


02261
未入力 正徹 (xxx)

光もて卯月の月のしらかさねかさねようすし夜はのさ衣

ひかりもて−うつきのつきの−しらかさね−かさねようすし−よはのさころも


02262
未入力 正徹 (xxx)

夏衣うらなく月は身にそそふ雲なへたてそ夜もみしかし

なつころも−うらなくつきは−みにそそふ−くもなへたてそ−よるもみしかし


02263
未入力 正徹 (xxx)

そのままにほすやはつきの短夜は月にもぬれぬ賎かあさてを

そのままに−ほすやはつきの−みしかよは−つきにもぬれぬ−しつかあさてを


02264
未入力 正徹 (xxx)

しつほ猶月影のこせ夏はきの麻のをからのしろき牆ほに

しつほなほ−つきかけのこせ−なつはきの−あさのをからの−しろきかきほに


02265
未入力 正徹 (xxx)

短夜をうなての杜の木の間にも月くらからしま鳥すますは

みしかよを−うなてのもりの−このまにも−つきくらからし−まとりすますは


02266
未入力 正徹 (xxx)

いかにして底もふか井にやとるらんふりわけ髪の短よの月

いかにして−そこもふかゐに−やとるらむ−ふりわけかみの−みしかよのつき


02267
未入力 正徹 (xxx)

しはしなる影もたまらす夏衣すすのしの鷺の月のさよかせ

しはしなる−かけもたまらす−なつころも−すすのしのやの−つきのさよかせ


02268
未入力 正徹 (xxx)

滝川のはや瀬の月も夕波になかれもあへす明くる夏の夜

たきかはの−はやせのつきも−ゆふなみに−なかれもあへす−あくるなつのよ


02269
未入力 正徹 (xxx)

くるるまの玉江の月は夏かりの蘆のみしかき夜のまたになし

くるるまの−たまえのつきは−なつかりの−あしのみしかき−よのまたになし


02270
未入力 正徹 (xxx)

夏のよの暁しらぬ夕月も入会のかねによこ雲の空

なつのよの−あかつきしらぬ−ゆふつきも−いりあひのかねに−よこくものそら


02271
未入力 正徹 (xxx)

天の原雲路を遠み足はやき色やくるしきみしか夜の比

あまのはら−くもちをとほみ−あしはやき−つきやくるしき−みしかよのころ


02272
未入力 正徹 (xxx)

手にまきてくり返すまも夏のよの月そみしかきしつのをたまき

てにまきて−くりかへすまも−なつのよの−つきそみしかき−しつのをたまき


02273
未入力 正徹 (xxx)

短夜をいとになかけそ草そ引くうなかみ山にいそく月かけ

みしかよを−いとになかけそ−くさそひく−うなかみやまに−いそくつきかけ


02274
未入力 正徹 (xxx)

ひるとよるとあへる夏かな冬の日のわたりし道に月や行くらん

ひるとよると−あへるなつかな−ふゆのひの−わたりしみちに−つきやゆくらむ


02275
未入力 正徹 (xxx)

袖の上に契そうすき夏衣なれてわかるる有明の影

そてのうへに−ちきりそうすき−なつころも−なれてわかるる−ありあけのかけ


02276
未入力 正徹 (xxx)

橋柱ふりぬる名のみなから江や蘆のよのまの月そ短かき

はしはしら−ふりぬるなのみ−なからえや−あしのよのまの−つきそみしかき


02277
未入力 正徹 (xxx)

夏のよの月にこほるる声涼し秋風またぬ荻のした露

なつのよの−つきにこほるる−こゑすすし−あきかせまたぬ−をきのしたつゆ


02278
未入力 正徹 (xxx)

秋なれや岩まの水もわく月の玉よる風に蝉の羽衣

あきなれや−いはまのみつも−わくつきの−たまよるかせに−せみのはころも


02279
未入力 正徹 (xxx)

天つ風月のかつらを吹分けてたもとの影をはらふ涼しさ

あまつかせ−つきのかつらを−ふきわけて−たもとのかけを−はらふすすしさ


02280
未入力 正徹 (xxx)

涼しさは空をみかきて吹く風に雲の波ちる月のしら玉

すすしさは−そらをみかきて−ふくかせに−くものなみちる−つきのしらたま


02281
未入力 正徹 (xxx)

吹きかへす荻の上葉を霜と見て風に夏なき庭の月影

ふきかへす−をきのうははを−しもとみて−かせになつなき−にはのつきかけ


02282
未入力 正徹 (xxx)

夏衣すす吹く野へのさ夜風に月も袖うつ露のしらなみ

なつころも−すすふくのへの−さよかせに−つきもそてうつ−つゆのしらなみ


02283
未入力 正徹 (xxx)

涼しさは夕立はるる庭たつみ月をみたしてさ波ふく風

すすしさは−ゆふたちはるる−にはたつみ−つきをみたして−さなみふくかせ


02284
未入力 正徹 (xxx)

むすはぬも衣手涼し夏か秋かいさら小川にやとる月影

むすはぬも−ころもてすすし−なつかあきか−いさらをかはに−やとるつきかけ


02285
未入力 正徹 (xxx)

涼しさは夏そ秋にも真砂山雪にみかける月のさよ風

すすしさは−なつそあきにも−まさこやま−ゆきにみかける−つきのさよかせ


02286
未入力 正徹 (xxx)

よひのまに明けなは明けよ天つ空雪のいつくと月はたとらし

よひのまに−あけなはあけよ−あまつそら−ゆきのいつくと−つきはたとらし


02287
未入力 正徹 (xxx)

いかかみるたたおしひねる玉章の明けやすき月はことのはもなし

いかかみる−たたおしひねる−たまつさの−あけやすきつきは−ことのはもなし


02288
未入力 正徹 (xxx)

うたたねの袖さへうすき夕月よ影もまさらて明くるしののめ

うたたねの−そてさへうすき−ゆふつくよ−かけもまさらて−あくるしののめ


02289
未入力 正徹 (xxx)

見る程もなつの夜わたる竹川の橋つめなから明くる月かけ

みるほとも−なつのよわたる−たけかはの−はしつめなから−あくるつきかけ


02290
未入力 正徹 (xxx)

岩ほこす浦水のあわの一めくり空行く月に明けそあらそふ

いはほこす−しみつのあわの−ひとめくり−そらゆくつきに−あけそあらそふ


02291
未入力 正徹 (xxx)

天の戸をたたく水鶏の二こゑときかぬに明くる夏のよの月

あまのとを−たたくくひなの−ふたこゑと−きかぬにあくる−なつのよのつき


02292
未入力 正徹 (xxx)

夏の池の汀にたてるかもの足のみしかく明くる水の月影

なつのいけの−みきはにたてる−かものあしの−みしかくあくる−みつのつきかけ


02293
未入力 正徹 (xxx)

夜はの月みしかき筆のつかのまに明くる恨はかきもつくさし

よはのつき−みしかきふての−つかのまに−あくるうらみは−かきもつくさし


02294
未入力 正徹 (xxx)

うなゐ子かふり分髪のみしか夜を月なとやみにむすほほるらん

うなゐこか−ふりわけかみの−みしかよを−つきなとやみに−むすほほるらむ


02295
未入力 正徹 (xxx)

波はやみ月影わくる川島をめくりあふまに明くる夏の夜

なみはやみ−つきかけわくる−かはしまを−めくりあふまに−あくるなつのよ


02296
未入力 正徹 (xxx)

川社しのに月影神さひてうたはぬ瀬瀬のささ波のこゑ

かはやしろ−しのにつきかけ−かみさひて−うたはぬせせの−ささなみのこゑ


02297
未入力 正徹 (xxx)

影おちて月も岩こす滝川のなみよりはやく明くる夏のよ

かけおちて−つきもいはこす−たきかはの−なみよりはやく−あくるなつのよ


02298
未入力 正徹 (xxx)

滝川やさかまく水のみなわよりめくるそはやき夏のよの月

たきかはや−さかまくみつの−みなわより−めくるそはやき−なつのよのつき


02299
未入力 正徹 (xxx)

夏のよの水のさ波は月にみえて入江のさとに秋風そふく

なつのよの−みつのさなみは−つきにみえて−いりえのさとに−あきかせそふく


02300
未入力 正徹 (xxx)

涼しさはまし水あさみさされ石もなかるる月の有明のこゑ

すすしさは−ましみつあさみ−さされいしも−なかるるつきの−ありあけのこゑ


02301
未入力 正徹 (xxx)

六月の月すむ天の川社秋や衣をほしあひのそら

みなつきの−つきすむあまの−かはやしろ−あきやころもを−ほしあひのそら


02302
未入力 正徹 (xxx)

音になかぬせみの小川のは衣や夕暮うすき浪の月影

ねになかぬ−せみのをかはの−はころもや−ゆふくれうすき−なみのつきかけ


02303
未入力 正徹 (xxx)

川島のなかれをわくる月の影めくりあふまに明くる夏のよ

かはしまの−なかれをわくる−つきのかけ−めくりあふまに−あくるなつのよ


02304
未入力 正徹 (xxx)

影すすし春はいなさの山のはにかかる細江の波の三か月

かけすすし−はるはいなさの−やまのはに−かかるほそえの−なみのみかつき


02305
未入力 正徹 (xxx)

にほの海や国つ御かみのささ波にうちいててみれは月そ涼しき

にほのうみや−くにつみかみの−ささなみに−うちいててみれは−つきそすすしき


02306
未入力 正徹 (xxx)

興つ舟雲まの月のおもかちもとりあへす明くる夜はの短かさ

おきつふね−くもまのつきの−おもかちも−とりあへすあくる−よはのみしかさ


02307
未入力 正徹 (xxx)

浜つつら月も涼しき夕露に夏やこぬみのうら風そふく

はまつつら−つきもすすしき−ゆふつゆに−なつやこぬみの−うらかせそふく


02308
未入力 正徹 (xxx)

明けぬるかうらわのさとの蚊遣火にかすみもあへぬ浪の上の月

あけぬるか−うらわのさとの−かやりひに−かすみもあへぬ−なみのうへのつき


02309
未入力 正徹 (xxx)

いつれうき入りぬる磯の夏の夜はみらくすくなき月と夢とに

いつれうき−いりぬるいその−なつのよは−みらくすくなき−つきとゆめとに


02310
未入力 正徹 (xxx)

月やとる真砂の霜の花かつらみしかくかけて明くる夏の夜

つきやとる−まさこのしもの−はなかつら−みしかくかけて−あくるなつのよ


02311
未入力 正徹 (xxx)

おくにある滝のしら玉涼しくやみかくいさこの山のはの月

おくにある−たきのしらたま−すすしくや−みかくいさこの−やまのはのつき


02312
未入力 正徹 (xxx)

てる日影ひるは真砂をむし明の月に霜おくせとの浜風

てるひかけ−ひるはまさこを−むしあけの−つきにしもおく−せとのはまかせ


02313
未入力 正徹 (xxx)

さ浪行く洲なかし遠く影見えて浜風涼し夏の夜の月

さなみゆく−すなかしとほく−かけみえて−はまかせすすし−なつのよのつき


02314
未入力 正徹 (xxx)

霜雪や弥かたまれる真砂ちに夏なき月そ冬のままなる

しもゆきや−いやかたまれる−まさこちに−なつなきつきそ−ふゆのままなる


02315
未入力 正徹 (xxx)

涼しさはあかる真砂の霜くもり月に夏なきさ夜の浜風

すすしさは−あかるまさこの−しもくもり−つきになつなき−さよのはまかせ


02316
未入力 正徹 (xxx)

月そ秋真砂の上の霜かれは一葉も見えぬ庭の夏草

つきそあき−まさこのうへの−しもかれは−ひとはもみえぬ−にはのなつくさ


02317
未入力 正徹 (xxx)

夏の夜のまさこの霜の花染をいくしほ月の庭にしくらん

なつのよの−まさこのしもの−はなそめを−いくしほつきの−にはにしくらむ


02318
未入力 正徹 (xxx)

御祓川夏をさそひて行く月の影まてとまる瀬瀬のゆふして

みそきかは−なつをさそひて−ゆくつきの−かけまてとまる−せせのゆふして


02319
未入力 正徹 (xxx)

むら薄みとりもまかふ春雨の山田のくろにとるさなへかな

むらすすき−みとりもまかふ−はるさめの−やまたのくろに−とるさなへかな


02320
未入力 正徹 (xxx)

もるまてもくるしからしとしつのをやわか家の門に早苗とるらん

もるまても−くるしからしと−しつのをや−わかいへのかとに−さなへとるらむ


02321
未入力 正徹 (xxx)

小山田におり立つ比も時過きてさなへも水もみとりにそすむ

をやまたに−おりたつころも−ときすきて−さなへもみつも−みとりにそすむ


02322
未入力 正徹 (xxx)

うつり行く水も緑の杜の陰うき田のさなへとりはつくさし

うつりゆく−みつもみとりの−もりのかけ−うきたのさなへ−とりはつくさし


02323
未入力 正徹 (xxx)

なかき日の千町のさなへうゑつかれ山田のくろにやすむさ乙女

なかきひの−ちまちのさなへ−うゑつかれ−やまたのくろに−やすむさをとめ


02324
未入力 正徹 (xxx)

又やみん緑のさなへ松陰のみとしろ小田にさかへ行くころ

またやみむ−みとりのさなへ−まつかけの−みとしろをたに−さかへゆくころ


02325
未入力 正徹 (xxx)

いそくとも山田の早苗取りのこせあすのゆひめやきつつうらみん

いそくとも−やまたのさなへ−とりのこせ−あすのゆひめや−きつつうらみむ


02326
未入力 正徹 (xxx)

うゑはててかへり見すれは湊田に秋のほなみは早苗にそたつ

うゑはてて−かへりみすれは−みなとたに−あきのほなみは−さなへにそたつ


02327
未入力 正徹 (xxx)

みしめ縄引くはさなへのためなから田中の杜の神もうくらん

みしめなは−ひくはさなへの−ためなから−たなかのもりの−かみもうくらむ


02328
未入力 正徹 (xxx)

山もとの沢田の早苗とらぬまもおり立つ雲のふかき比かな

やまもとの−さはたのさなへ−とらぬまも−おりたつくもの−ふかきころかな


02329
未入力 正徹 (xxx)

汲むひまもなたのしはやき湊田にほす袖ぬれてとる早苗かな

くむひまも−なたのしはやき−みなとたに−ほすそてぬれて−とるさなへかな


02330
未入力 正徹 (xxx)

雨はるる山田の雲にさをとめかかくれあらはれとる早苗かな

あめはるる−やまたのくもに−さをとめか−かくれあらはれ−とるさなへかな


02331
未入力 正徹 (xxx)

けふは先田中の杜の蝉のはのうすくうゑたるさなへとそ見る

けふはまつ−たなかのもりの−せみのはの−うすくうゑたる−さなへとそみる


02332
未入力 正徹 (xxx)

小山田やしつかさおりのあさ衣をみしふに染めてとる早苗かな

をやまたや−しつかさおりの−あさきぬを−みしふにそめて−とるさなへかな


02333
未入力 正徹 (xxx)

一木たつ岡への小田のくろの松さなへうゑての後そ色こき

ひときたつ−をかへのをたの−くろのまつ−さなへうゑての−のちそいろこき


02334
未入力 正徹 (xxx)

ますけよき笠のかりてのかりしほを早苗にいそくしつか小山田

ますけよき−かさのかりての−かりしほを−さなへにいそく−しつかをやまた


02335
未入力 正徹 (xxx)

小乙女かもすそのみしふしはしみて湊の小田にとるさなへかな

さをとめか−もすそのみしふ−しはしみて−みなとのをたに−とるさなへかな


02336
未入力 正徹 (xxx)

かすおほきおくてのうゑめよそにみてひとりさなへの田草とるなり

かすおほき−おくてのうゑめ−よそにみて−ひとりさなへの−たくさとるなり


02337
未入力 正徹 (xxx)

旅ゆけはさおりの田歌国により所につけて声そかはれる

たひゆけは−さおりのたうた−くににより−ところにつけて−こゑそかはれる


02338
未入力 正徹 (xxx)

山もとのみとりのさなへむらむらに色付きそむる麦の秋かせ

やまもとの−みとりのさなへ−むらむらに−いろつきそむる−むきのあきかせ


02339
未入力 正徹 (xxx)

水ひろき田面のさなへむらむらに先おきわたしうゑめまつなり

みつひろき−たのものさなへ−むらむらに−まつおきわたし−うゑめまつなり


02340
未入力 正徹 (xxx)

郭公五月も末の小山田に田長こゑせてとる早苗かな

ほとときす−さつきもすゑの−をやまたに−たをさこゑせて−とるさなへかな


02341
未入力 正徹 (xxx)

たつ民も山田のくろの社とや取りし早苗を手向けては行く

たつたみも−やまたのくろの−やしろとや−とりしさなへを−たむけてはゆく


02342
未入力 正徹 (xxx)

芹つみし沢田の水そ又にこるとるやさなへのねをあらふらん

せりつみし−さはたのみつそ−またにこる−とるやさなへの−ねをあらふらむ


02343
未入力 正徹 (xxx)

うゑのほる田子そ見え行く山たかくあせかさなれる跡のさなへに

うゑのほる−たこそみえゆく−やまたかく−あせかさなれる−あとのさなへに


02344
未入力 正徹 (xxx)

田中なる社の御戸にしつかとる早苗うちつけに手向けてそ行く

たなかなる−やしろのみとに−しつかとる−さなへうちつけに−たむけてそゆく


02345
未入力 正徹 (xxx)

水かるる田中の神の雨こひにとらぬさなへを先手向くなり

みつかるる−たなかのかみの−あまこひに−とらぬさなへを−まつたむくなり


02346
未入力 正徹 (xxx)

今そとるたねまかぬ世に生ひいてて三度かりてし稲のさなへは

いまそとる−たねまかぬよに−おひいてて−みたひかりてし−いねのさなへは


02347
未入力 正徹 (xxx)

しつのをか沢田さし行く板舟をおりたたすしてとる早苗かな

しつのをか−さはたさしゆく−いたふねを−おりたたすして−とるさなへかな


02348
未入力 正徹 (xxx)

ゆひにいてとるや湊の早苗ゆゑめかり塩やく海士そ稀なる

ゆひにいて−とるやみなとの−さなへゆゑ−めかりしほやく−あまそまれなる


02349
未入力 正徹 (xxx)

時きぬとわさ田の露の玉たすきゆひめかけつれ早苗とるなり

とききぬと−わさたのつゆの−たまたすき−ゆひめかけつれ−さなへとるなり


02350
未入力 正徹 (xxx)

立ちならふ田子の小笠も雨風にそかひになひく早苗をそとる

たちならふ−たこのをかさも−あめかせに−そかひになひく−さなへをそとる


02351
未入力 正徹 (xxx)

立ちならふ田子のうゑめか早苗より空にて玉もしけき雨かな

たちならふ−たこのうゑめか−さなへより−そらにてたまも−しけきあめかな


02352
未入力 正徹 (xxx)

早苗もており立つうゑめひまなきに猶取りはこふ小田のますらを

さなへもて−おりたつうゑめ−ひまなきに−なほとりはこふ−をたのますらを


02353
未入力 正徹 (xxx)

こらかてに早苗そのこる空に立つとりこの池田いまやうゑけん

こらかてに−さなへそのこる−そらにたつ−とりこのいけた−いまやうゑけむ


02354
未入力 正徹 (xxx)

さなへとるあとの山田の水そめはもとの緑を峰の松かえ

さなへとる−あとのやまたの−みつそめは−もとのみとりを−みねのまつかえ


02355
未入力 正徹 (xxx)

ぬれてほす露のあさての玉たすき夕日をかけて早苗取るなり

ぬれてほす−つゆのあさての−たまたすき−ゆふひをかけて−さなへとるなり


02356
未入力 正徹 (xxx)

しめのうちもおなし田面の外ならて早苗取りはて又やうゑてん

しめのうちも−おなしたのもの−ほかならて−さなへとりはて−またやうゑてむ


02357
未入力 正徹 (xxx)

秋風にあらぬみしふを身にしめてほきの沢田に取るさなへかな

あきかせに−あらぬみしふを−みにしめて−ほきのさはたに−とるさなへかな


02358
未入力 正徹 (xxx)

まとゐする山田のくろのかれ飯にひるま過きぬととる早苗かな

まとゐする−やまたのくろの−かれいひに−ひるますきぬと−とるさなへかな


02359
未入力 正徹 (xxx)

田中なるしつか垣ほの竹の子もともにふし立つさなへとるなり

たなかなる−しつかかきほの−たけのこも−ともにふしたつ−さなへとるなり


02360
未入力 正徹 (xxx)

水広きふもとの小田の山風にゆふなみたててとる早苗かな

みつひろき−ふもとのをたの−やまかせに−ゆふなみたてて−とるさなへかな


02361
未入力 正徹 (xxx)

とる袖に夕露ちりてみたるるやうゑぬ早苗の手玉なるらん

とるそてに−ゆふつゆちりて−みたるるや−うゑぬさなへの−てたまなるらむ


02362
未入力 正徹 (xxx)

夕暮は雲のはたてにおり立ちてそはの山田にとる早苗かな

ゆふくれは−くものはたてに−おりたちて−そはのやまたに−とるさなへかな


02363
未入力 正徹 (xxx)

里人の手ことに取りし跡見えてなへ田すくなきふるの山本

さとひとの−てことにとりし−あとみえて−なへたすくなき−ふるのやまもと


02364
未入力 正徹 (xxx)

取りのこす早苗のひまを引きすてて五月にうゑぬ小田も有りけり

とりのこす−さなへのひまを−ひきすてて−さつきにうゑぬ−をたもありけり


02365
未入力 正徹 (xxx)

しつか屋にさなへ取りつみ日は暮れぬ小田のうゑめや明日を待つらん

しつかやに−さなへとりつみ−ひはくれぬ−をたのうゑめや−あすをまつらむ


02366
未入力 正徹 (xxx)

あさてぬふこや新針の早苗草かつもる庵のしつのをたまき

あさてぬふ−こやにひはりの−さなへくさ−かつもるいほの−しつのをたまき


02367
未入力 正徹 (xxx)

さし入の小屋のはにふはあれにけり早苗とるまの雨のみかさに

さしいりの−こやのはにふは−あれにけり−さなへとるまの−あめのみかさに


02368
未入力 正徹 (xxx)

御田屋もる民の戸張のすか莚長き日かけてとる早苗かな

みたやもる−たみのとはりの−すかむしろ−なかきひかけて−とるさなへかな


02369
未入力 正徹 (xxx)

田子のすむ庵に早苗を積置きてもえぬ比さへねんかたやなき

たこのすむ−いほにさなへを−つみおきて−もえぬころさへ−ねむかたやなき


02370
未入力 正徹 (xxx)

水の上の影すむ山の松のはにうゑぬ早苗をうつす小田かな

みつのうへの−かけすむやまの−まつのはに−うゑぬさなへを−うつすをたかな


02371
未入力 正徹 (xxx)

うゑのほる山の岨田の水落ちてしつか早苗のねをすすくみゆ

うゑのはる−やまのそはたの−みつおちて−しつかさなへの−ねをすすくみゆ


02372
未入力 正徹 (xxx)

湊田のをくろの上にむれゐるやいきつく海士の早苗取るらん

みなとたの−をくろのうへに−むれゐるや−いきつくあまの−さなへとるらむ


02373
未入力 正徹 (xxx)

事しけきことのはなから夏草の花もましらぬ道そ物うき

ことしけき−ことのはなから−なつくさの−はなもましらぬ−みちそものうき


02374
未入力 正徹 (xxx)

すゑはまてのほるも涼し夏草のまかきを山の庭の夕露

すゑはまて−のはるもすすし−なつくさの−まかきをやまの−にはのゆふつゆ


02375
未入力 正徹 (xxx)

なれなれていつかは花におくとみん秋まち遠の百草の露

なれなれて−いつかははなに−おくとみむ−あきまちとほの−ももくさのつゆ


02376
未入力 正徹 (xxx)

夏ことに草葉を広み宿はあれと朝夕露のかるそ稀なる

なつことに−くさはをひろみ−やとはあれと−あさゆふつゆの−かるそまれなる


02377
未入力 正徹 (xxx)

露おかぬ夏野の草のかたなひきいかなる風の夜はに吹きけん

つゆおかぬ−なつののくさの−かたなひき−いかなるかせの−よはにふきけむ


02378
未入力 正徹 (xxx)

夏草のしけみか上のおも影よ霜かれはつる野への木からし

なつくさの−しけみかうへの−おもかけよ−しもかれはつる−のへのこからし


02379
未入力 正徹 (xxx)

したつえそ緑かくるる松陰の手草もたかく茂りのほりて

したつえそ−みとりかくるる−まつかけの−てくさもたかく−しけりのほりて


02380
未入力 正徹 (xxx)

めくる日も風もこゑせす哀てふ事も夏野の荻の上かな

めくるひも−かせもこゑせす−あはれてふ−こともなつのの−をきのうへかな


02381
未入力 正徹 (xxx)

さゆり花さくやなてしこましるとも茂りかくすな野への夏草

さゆりはな−さくやなてしこ−ましるとも−しけりかくすな−のへのなつくさ


02382
未入力 正徹 (xxx)

しけりあふ葎の庭の草莚ひしき物には露のしら玉

しけりあふ−むくらのにはの−くさむしろ−ひしきものには−つゆのしらたま


02383
未入力 正徹 (xxx)

茂るらし花咲く比のさゆりはにしられぬ山のおくのかけ草

しけるらし−はなさくころの−さゆりはに−しられぬやまの−おくのかけくさ


02384
未入力 正徹 (xxx)

日かすへん草のは山はかさなりて夏は分くへきむさし野もなし

ひかすへむ−くさのはやまは−かさなりて−なつはわくへき−むさしのもなし


02385
未入力 正徹 (xxx)

山ふかく入れははてなて夏草の事しけき世をわたる風かな

やまふかく−いれははてなて−なつくさの−ことしけきよを−わたるかせかな


02386
未入力 正徹 (xxx)

小百合葉のしられぬし水くみたえて野中の草を結ふ山風

さゆりはの−しられぬしみつ−くみたえて−のなかのくさを−むすふやまかせ


02387
未入力 正徹 (xxx)

茂りつつしられぬ草そおほからんさゆりは花の色にしるくて

しけりつつ−しられぬくさそ−おほからむ−さゆりははなの−いろにしるくて


02388
未入力 正徹 (xxx)

庵むすふ茂みかおくのさゆり花たかともす火の光なるらん

いほむすふ−しけみかおくの−さゆりはな−たかともすひの−ひかりなるらむ


02389
未入力 正徹 (xxx)

夏草のしけき葉ことのましはりも猶所せき世のならひかな

なつくさの−しけきはことの−ましはりも−なほところせき−よのならひかな


02390
未入力 正徹 (xxx)

夏草の露のぬきのみいそけとも花の錦はおるたてもなし

なつくさの−つゆのぬきのみ−いそけとも−はなのにしきは−おるたてもなし


02391
未入力 正徹 (xxx)

しほらしな夏野をしけみ置きかねて草葉もたへぬ露の衣手

しほらしな−なつのをしけみ−おきかねて−くさはもたへぬ−つゆのころもて


02392
未入力 正徹 (xxx)

夏草のしけみか底にすむ水を忘れすとても誰かむすはん

なつくさの−しけみかそこに−すむみつを−わすれすとても−たれかむすはむ


02393
未入力 正徹 (xxx)

遊ふとは見えぬ野中に夏草の糸ゆふみたれてる日影かな

あそふとは−みえぬのなかに−なつくさの−いとゆふみたれ−てるひかけかな


02394
未入力 正徹 (xxx)

時しらすいたたく霜を夏草の末はにかけて分くるのへかな

ときしらす−いたたくしもを−なつくさの−すゑはにかけて−わくるのへかな


02395
未入力 正徹 (xxx)

影見えし野守鏡ちりたかくつもるになして茂る草かな

かけみえし−のもりのかかみ−ちりたかく−つもるになして−しけるくさかな


02396
未入力 正徹 (xxx)

夏草のみとりの淵の身をつくしたてる野中の松の一本

なつくさの−みとりのふちの−みをつくし−たてるのなかの−まつのひともと


02397
未入力 正徹 (xxx)

夢路をも人しらめやは蓬生のふかき心の底のまろねに

ゆめちをも−ひとしらめやは−よもきふの−ふかきこころの−そこのまろねに


02398
未入力 正徹 (xxx)

影すみて行くや川瀬のなひきもも茂る生田の杜の下暮

かけすみて−ゆくやかはせの−なひきもも−しけるいくたの−もりのしたくさ


02399
未入力 正徹 (xxx)

柏木の杜の広葉の陰の草いまた春野と茂りかねつつ

かしはきの−もりのひろはの−かけのくさ−いまたはるのと−しけりかねつつ


02400
未入力 正徹 (xxx)

鳰鳥のうきすにかよふ道も見す茂る草葉の広沢の水

にほとりの−うきすにかよふ−みちもみす−しけるくさはの−ひろさはのみつ


02401
未入力 正徹 (xxx)

世にふりし寺も名のみの水たえて夏草しけき広沢の跡

よにふりし−てらもなのみの−みつたえて−なつくさしけき−ひろさはのあと


02402
未入力 正徹 (xxx)

雨にますみつの御牧の草かくれからても駒のやすむ日はなし

あめにます−みつのみまきの−くさかくれ−からてもこまの−やすむひはなし


02403
未入力 正徹 (xxx)

行人に袖もかりあへす初尾花ほに出てぬ夏の野への上風

ゆくひとに−そてもかりあへす−はつをはな−ほにいてぬなつの−のへのうはかせ


02404
未入力 正徹 (xxx)

ぬさまつる神風涼し旅衣日もゆふしての森のした風

ぬさまつる−かみかせすすし−たひころも−ひもゆふしての−もりのしたかせ


02405
未入力 正徹 (xxx)

袖そうき峰の下草分けいつる日影はぬれぬ野への朝露

そてそうき−みねのしたくさ−わけいつる−ひかけはぬれぬ−のへのあさつゆ


02406
未入力 正徹 (xxx)

世にしけき言の葉見はや敷島の道の芝草夏に逢ふまて

よにしけき−ことのはみはや−しきしまの−みちのしはくさ−なつにあふまて


02407
未入力 正徹 (xxx)

おとろきぬ夏はめちなき高萱に俄にあへる野へのたひ人

おとろきぬ−なつはめちなき−たかかやに−にはかにあへる−のへのたひひと


02408
未入力 正徹 (xxx)

うちなひくしけみそ高き東野の草や夕の煙なるらん

うちなひく−しけみそたかき−あつまのの−くさやゆふへの−けふりなるらむ


02409
未入力 正徹 (xxx)

草ふかきふもとの野への山風に緑の波をおくるしら露

くさふかき−ふもとののへの−やまかせに−みとりのなみを−おくるしらつゆ


02410
未入力 正徹 (xxx)

咲く花の露も心もふかみ草たたなほさりの色とやは見る

さくはなの−つゆもこころも−ふかみくさ−たたなほさりの−いろとやはみる


02411
未入力 正徹 (xxx)

ともに見んことわりあれやもろこしの師子を絵かけはほうたんの花

ともにみむ−ことわりあれや−もろこしの−ししをえかけは−ほうたむのはな


02412
未入力 正徹 (xxx)

早くきぬきそひの馬の足なみに猶かち鞭をあけん老かな

はやくきぬ−きそひのうまの−あしなみに−なほかちむちを−あけむおいかな


02413
未入力 正徹 (xxx)

ひかぬより長き根見えて刈こもにあらぬやけふのあやめなるらん

ひかぬより−なかきねみえて−かりこもに−あらぬやけふの−あやめなるらむ


02414
未入力 正徹 (xxx)

なかきねのあやめの車世世かけて誰か九重に引きはしめけん

なかきねの−あやめのくるま−よよかけて−たかここのへに−ひきはしめけむ


02415
未入力 正徹 (xxx)

ねをたえてふきしあやめの其ままに生ふる軒はと茂る草かな

ねをたえて−ふきしあやめの−そのままに−おふるのきはと−しけるくさかな


02416
未入力 正徹 (xxx)

けふこそはしつ屋の軒も菖蒲ゆゑやつるるよりはめにかかりぬれ

けふこそは−しつやののきも−あやめゆゑ−やつるるよりは−めにかかりぬれ


02417
未入力 正徹 (xxx)

ふきすてしあやめの枯葉おとたてて匂ひのこらぬ軒の下風

ふきすてし−あやめのかれは−おとたてて−にほひのこらぬ−のきのしたかせ


02418
未入力 正徹 (xxx)

旅にしてあやめもしかぬ人やあらん都なからの草枕かな

たひにして−あやめもしかぬ−ひとやあらむ−みやこなからの−くさまくらかな


02419
未入力 正徹 (xxx)

哀にも水のあやめをかりの世に身はなかきねをなくなくそふる

あはれにも−みつのあやめを−かりのよに−みはなかきねを−なくなくそふる


02420
未入力 正徹 (xxx)

菖蒲草けふ九重に九のふしある根をや猶尋ぬらん

あやめくさ−けふここのへに−ここのつの−ふしあるねをや−なほたつぬらむ


02421
未入力 正徹 (xxx)

宿ことのあやめのにほひ花やかに今朝ふく風も都なりけり

やとことの−あやめのにほひ−はなやかに−けさふくかせも−みやこなりけり


02422
未入力 正徹 (xxx)

けふとてやたかのりしらぬ雲の上にあやめのこしをかきならふらん

けふとてや−たかのりしらぬ−くものうへに−あやめのこしを−かきならふらむ


02423
未入力 正徹 (xxx)

けふみかけかかる五月の玉たれやすかるあやめの軒の朝露

けふみかけ−かかるさつきの−たまたれや−すかるあやめの−のきのあさつゆ


02424
未入力 正徹 (xxx)

こやの池に今朝はあやめをかりこもやありて夕の露を待つらん

こやのいけに−けさはあやめを−かりこもや−ありてゆふへの−つゆをまつらむ


02425
未入力 正徹 (xxx)

水にすむすかたはいける物ならてあやめの角のねこそ長けれ

みつにすむ−すかたはいける−ものならて−あやめのつのの−ねこそなかけれ


02426
未入力 正徹 (xxx)

引きのこすあやめの草のたもとにも五月の玉をかくるしら露

ひきのこす−あやめのくさの−たもとにも−さつきのたまを−かくるしらつゆ


02427
未入力 正徹 (xxx)

ふかき江にけふはあやめを引まゆの糸まつなかきねに乱れつつ

ふかきえに−けふはあやめを−ひきまゆの−いとまつなかき−ねにみたれつつ


02428
未入力 正徹 (xxx)

根をたゆるよとののあやめ引きわかれさひしくもあるか水のうき草

ねをたゆる−よとののあやめ−ひきわかれ−さひしくもあるか−みつのうきくさ


02429
未入力 正徹 (xxx)

いまは又しつか手引のいとなみを沼のあやめのねにやかふらん

いまはまた−しつかてひきの−いとなみを−ぬまのあやめの−ねにやかふらむ


02430
未入力 正徹 (xxx)

けふならてねそあらはれぬあやめ草かねてもひきしささかにの糸

けふならて−ねそあらはれぬ−あやめくさ−かねてもひきし−ささかにのいと


02431
未入力 正徹 (xxx)

けふとてや沼のあやめも刈こもの軒は契らぬねをのこすらん

けふとてや−ぬまのあやめも−かりこもの−のきはちきらぬ−ねをのこすらむ


02432
未入力 正徹 (xxx)

よと野より川浪かけてかをるなりあやめかりつむ舟の追風

よとのより−かはなみかけて−かをるなり−あやめかりつむ−ふねのおひかせ


02433
未入力 正徹 (xxx)

あやめ引く沼江にかけし鳥の巣の今朝あらはなるねをもそへつつ

あやめひく−ぬまえにかけし−とりのすの−けさあらはなる−ねをもそへつつ


02434
未入力 正徹 (xxx)

五月雨はあやめにすかくささかにの糸さへなかき軒の玉水

さみたれは−あやめにすかく−ささかにの−いとさへなかき−のきのたまみつ


02435
未入力 正徹 (xxx)

花に咲くおなし軒はの橘もけふやあやめのにほひかるらん

はなにさく−おなしのきはの−たちはなも−けふやあやめの−にほひかるらむ


02436
未入力 正徹 (xxx)

ねをかけよ鳴くや軒はの山鳥のしたり尾なかきあやめをそふく

ねをかけよ−なくやのきはの−やまとりの−したりをなかき−あやめをそふく


02437
未入力 正徹 (xxx)

けふさくも軒の忍にふきそふるあやめをよその庭の蓬生

けふさくも−のきのしのふに−ふきそふる−あやめをよその−にはのよもきふ


02438
未入力 正徹 (xxx)

風わたる軒のあやめの落ちぬまを頼むともなきささかにの糸

かせわたる−のきのあやめの−おちぬまを−たのむともなき−ささかにのいと


02439
未入力 正徹 (xxx)

五月雨にわれとねさすや葺きすててうゑぬあやめの軒も緑に

さみたれに−われとねさすや−ふきすてて−うゑぬあやめの−のきもみとりに


02440
未入力 正徹 (xxx)

閨にしくあやめゆゑともえそしらぬなかき夢みし短夜の空

ねやにしく−あやめゆゑとも−えそしらぬ−なかきゆめみし−みしかよのそら


02441
未入力 正徹 (xxx)

けふとてや猶引きのこす水の上の雲のは袖もあやめかくらん

けふとてや−なほひきのこす−みつのうへの−くものはそても−あやめかくらむ


02442
未入力 正徹 (xxx)

夜をかさね水鶏そたたく天の戸もとちたる雲の五月雨の比

よをかさね−くひなそたたく−あまのとも−とちたるくもの−さみたれのころ


02443
未入力 正徹 (xxx)

岩たたくこゑに明行く川浪もわかれてかへる水の庭鳥

いはたたく−こゑにあけゆく−かはなみも−わかれてかへる−みつのにはとり


02444
未入力 正徹 (xxx)

稲荷山杉に水鶏の声すなり神の戸ほそや打ちたたくらん

いなりやま−すきにくひなの−こゑすなり−かみのとほそや−うちたたくらむ


02445
未入力 正徹 (xxx)

をちこちの村の蚊遣火うちけふり水鶏なくなり森の木隠

をちこちの−むらのかやりひ−うちけふり−くひななくなり−もりのこかくれ


02446
未入力 正徹 (xxx)

舟はたを夜はにそたたくにほの海に網おく磯の杜の水鶏は

ふなはたを−よはにそたたく−にほのうみに−あみおくいその−もりのくひなは


02447
未入力 正徹 (xxx)

稲荷山社の戸口うちたたく水鶏そかへる杉のむらたち

いなりやま−やしろのとくち−うちたたく−くひなそかへる−すきのむらたち


02448
未入力 正徹 (xxx)

家家に門もとささぬ世なりせは夜ことにきくや水鶏ならまし

いへいへに−かともとささぬ−よなりせは−よことにきくや−くひなならまし


02449
未入力 正徹 (xxx)

あけぬ戸をたたくかひなきおのれのみ千度水鶏のくらきよになく

あけぬとを−たたくかひなき−おのれのみ−ちたひくひなの−くらきよになく


02450
未入力 正徹 (xxx)

水鶏なく杜の木陰の夕ま暮水の蛙もこゑあはすなり

くひななく−もりのこかけの−ゆふまくれ−みつのかはつも−こゑあはすなり


02451
未入力 正徹 (xxx)

八千度と聞くそ身にしるなれさへも老その杜を水鶏鳴くこゑ

やちたひと−きくそみにしる−なれさへも−おいそのもりを−くひななくこゑ


02452
未入力 正徹 (xxx)

こぬ妻をまつ夜むなしき明ほのに身をや八千度水鶏なくらん

こぬつまを−まつよむなしき−あけほのに−みをややちたひ−くひななくらむ


02453
未入力 正徹 (xxx)

松風も岩かとたたくあふ坂の山陰くれて水鶏なくなり

まつかせも−いはかとたたく−あふさかの−やまかけくれて−くひななくなり


02454
未入力 正徹 (xxx)

夕ま暮入江にかかる舟はたをたたくやいつれ水の庭鳥

ゆふまくれ−いりえにかかる−ふなはたを−たたくやいつれ−みつのにはとり


02455
未入力 正徹 (xxx)

あかつきの八こゑもしらて夕ま暮さす門たたく水の庭鳥

あかつきの−やこゑもしらて−ゆふまくれ−さすかとたたく−みつのにはとり


02456
未入力 正徹 (xxx)

夜寒き氷とけにし山川に又岩たたく水の庭鳥

よるさむき−こほりとけにし−やまかはに−またいはたたく−みつのにはとり


02457
未入力 正徹 (xxx)

水鶏のみなくとそきかん逢坂やたたきならさぬ関の岩かと

くひなのみ−なくとそきかむ−あふさかや−たたきならさぬ−せきのいはかと


02458
未入力 正徹 (xxx)

袖のかのなきをかたみとうゑおかは花たちはなを人やすさめん

そてのかの−なきをかたみと−うゑおかは−はなたちはなを−ひとやすさめむ


02459
未入力 正徹 (xxx)

むかしをははな橘にわすれなんいかなる夢かにほひくるとて

むかしをは−はなたちはなに−わすれなむ−いかなるゆめか−にほひくるとて


02460
未入力 正徹 (xxx)

りうの子のささけし玉も橘の実に光そふ花やなからん

りうのこの−ささけしたまも−たちはなの−みにひかりそふ−はなやなからむ


02461
未入力 正徹 (xxx)

昔をやたれものこさん橘のにほふあたりのもろ人の袖

むかしをや−たれものこさむ−たちはなの−にほふあたりの−もろひとのそて


02462
未入力 正徹 (xxx)

秋まちて雁の羽風に匂はなんおなし常世をいてし橘

あきまちて−かりのはかせに−にほはなむ−おなしとこよを−いてしたちはな


02463
未入力 正徹 (xxx)

哀にもわれそふり行く橘のみさへのこりて花にあふ世を

あはれにも−われそふりゆく−たちはなの−みさへのこりて−はなにあふよを


02464
未入力 正徹 (xxx)

わか方の世世につたへよ橘の氏人のみや袖の香もせん

わかかたの−よよにつたへよ−たちはなの−うちひとのみや−そてのかもせむ


02465
未入力 正徹 (xxx)

香をそへよなれしも桜あさの袖花橘の春のかたみに

かをそへよ−なれしもさくら−あさのそて−はなたちはなの−はるのかたみに


02466
未入力 正徹 (xxx)

夏そ引くしつのをた巻よそにして昔を今ににほふ橘

なつそひく−しつのをたまき−よそにして−むかしをいまに−にほふたちはな


02467
未入力 正徹 (xxx)

風さそふ花橘をそらにしておほふも雲の袖の香やせん

かせさそふ−はなたちはなを−そらにして−おほふもくもの−そてのかやせむ


02468
未入力 正徹 (xxx)

花も香もなれし常世やしたふらん南の風の北のたち花

はなもかも−なれしとこよや−したふらむ−みなみのかせの−きたのたちはな


02469
未入力 正徹 (xxx)

秋ならぬ袖そ色つく橘のにほふむかしをしたふ涙に

あきならぬ−そてそいろつく−たちはなの−にほふむかしを−したふなみたに


02470
未入力 正徹 (xxx)

木の本のかけふむ月は橘のちりしきけりなにほふしら雪

このもとの−かけふむつきは−たちはなの−ちりしきけりな−にほふしらゆき


02471
未入力 正徹 (xxx)

袖のかも花にうつろふ橘の身をしる雨そはるるまもなき

そてのかも−はなにうつろふ−たちはなの−みをしるあめそ−はるるまもなき


02472
未入力 正徹 (xxx)

物そおもふ花橘のむかしとふ雲のはたての袖のゆふ風

ものそおもふ−はなたちはなの−むかしとふ−くものはたての−そてのゆふかせ


02473
未入力 正徹 (xxx)

古郷は庭にをしかもたち花にわけしを花か袖の香そする

ふるさとは−にはにをしかも−たちはなに−わけしをはなか−そてのかそする


02474
未入力 正徹 (xxx)

袖にふけ花たちはなのうつりかは時過きぬとも風はいとはし

そてにふけ−はなたちはなの−うつりかは−ときすきぬとも−かせはいとはし


02475
未入力 正徹 (xxx)

久かたの天つをとめの袖ふれて雲吹く風ににほふたち花

ひさかたの−あまつをとめの−そてふれて−くもふくかせに−にほふたちはな


02476
未入力 正徹 (xxx)

吹く風のめに見ぬ人の袖の香はかくこそありけれ軒の橘

ふくかせの−めにみぬひとの−そてのかは−かくこそありけれ−のきのたちはな


02477
未入力 正徹 (xxx)

人はこぬむかしの風の使たに袖のかしるき宿のたち花

ひとはこぬ−むかしのかせの−つかひたに−そてのかしるき−やとのたちはな


02478
未入力 正徹 (xxx)

をとめ子かそれもむかしのかをとめて袖振山にたち花もかな

をとめこか−それもむかしの−かをとめて−そてふるやまに−たちはなもかな


02479
未入力 正徹 (xxx)

にほへとも老いぬる袖のたち花に末吹きよわる風そすくなき

にほへとも−おいぬるそての−たちはなに−すゑふきよわる−かせそすくなき


02480
未入力 正徹 (xxx)

吹きくるもそれにはあらぬ匂ひかなむかしの風のいまのたち花

ふきくるも−それにはあらぬ−にほひかな−むかしのかせの−いまのたちはな


02481
未入力 正徹 (xxx)

ととめおくたひねのやとの橘にわか袖のかを誰かいとはん

ととめおく−たひねのやとの−たちはなに−わかそてのかを−たれかいとはむ


02482
未入力 正徹 (xxx)

行ふりの八十氏人の袖のかも小島にのこる世世のたち花

ゆきふりの−やそうちひとの−そてのかも−こしまにのこる−よよのたちはな


02483
未入力 正徹 (xxx)

橘にちかくぬる夜の岩枕撫てなむ天つ袖の香そする

たちはなに−ちかくぬるよの−いはまくら−なてなむあまつ−そてのかそする


02484
未入力 正徹 (xxx)

しるといふ枕にとふも橘のたか袖ならぬ風そ匂へる

しるといふ−まくらにとふも−たちはなの−たかそてならぬ−かせそにほへる


02485
未入力 正徹 (xxx)

橘はちかき若木そうゑぬ世の枕やふるきむかしなるらん

たちはなは−ちかきわかきそ−うゑぬよの−まくらやふるき−むかしなるらむ


02486
未入力 正徹 (xxx)

香をとめし花橘にたか袖の涙のこりて露みたるらん

かをとめし−はなたちはなに−たかそての−なみたのこりて−つゆみたるらむ


02487
未入力 正徹 (xxx)

風かをる花たち花のよるの夢身にさへさむる鈴の音かな

かせかをる−はなたちはなの−よるのゆめ−みにさへさむる−すすのおとかな


02488
未入力 正徹 (xxx)

人すます荒れたる宿の橘はにほひも袖や尋ねわふらん

ひとすます−あれたるやとの−たちはなは−にほひもそてや−たつねわふらむ


02489
未入力 正徹 (xxx)

たか香とかとははこたへんわれひとり袖かけさりし軒の橘

たかかとか−とははこたへむ−われひとり−そてかけさりし−のきのたちはな


02490
未入力 正徹 (xxx)

さされ石も巌とならて橘のかけふむ庭に年そかすそふ

さされいしも−いはほとならて−たちはなの−かけふむにはに−としそかすそふ


02491
未入力 正徹 (xxx)

しらぬ世の猶おも影に橘の雪ふる苔の袖の香そする

しらぬよの−なほおもかけに−たちはなの−ゆきふるこけの−そてのかそする


02492
未入力 正徹 (xxx)

袖のかのたそかれ時の花のえに見ぬ世そちかき軒の橘

そてのかの−たそかれときの−はなのえに−みぬよそちかき−のきのたちはな


02493
未入力 正徹 (xxx)

猶見よと花橘や匂ふらんむかしの夢のみしか夜の空

なほみよと−はなたちはなや−にほふらむ−むかしのゆめの−みしかよのそら


02494
未入力 正徹 (xxx)

木のもとにかよひし道は跡もなし花橘の雪の夜の夢

このもとに−かよひしみちは−あともなし−はなたちはなの−ゆきのよのゆめ


02495
未入力 正徹 (xxx)

橘の風のにほひにふきかへせむかしの夢やよるのさ衣

たちはなの−かせのにほひに−ふきかへせ−むかしのゆめや−よるのさころも


02496
未入力 正徹 (xxx)

しろたへに匂ひそまさる橘に月の宮人袖おほふらし

しろたへに−にほひそまさる−たちはなに−つきのみやひと−そておほふらし


02497
未入力 正徹 (xxx)

古郷にうゑし若木の橘にしらぬむかしを心にそとふ

ふるさとに−うゑしわかきの−たちはなに−しらぬむかしを−こころにそとふ


02498
未入力 正徹 (xxx)

えやはいふそこらむかしをしる花の名にこそたてれ軒の橘

えやはいふ−そこらむかしを−しるはなの−なにこそたてれ−のきのたちはな


02499
未入力 正徹 (xxx)

雨そそく花橘にいにしへをとふにつらさの涙おつやと

あめそそく−はなたちはなに−いにしへを−とふにつらさの−なみたおつやと


02500
未入力 正徹 (xxx)

橘のかけふむ庭の苔の上にこれもむかしのあとやのこらん

たちはなの−かけふむにはの−こけのうへに−これもむかしの−あとやのこらむ


02501
未入力 正徹 (xxx)

橘のさける軒はの苔衣ふるき板間に袖の香そする

たちはなの−さけるのきはの−こけころも−ふるきいたまに−そてのかそする


02502
未入力 正徹 (xxx)

庭のおもは結ふはかりにしけりあふ草のふもとに匂ふ橘

にはのおもは−むすふはかりに−しけりあふ−くさのふもとに−にほふたちはな


02503
未入力 正徹 (xxx)

ちり過くる花橘に宿はあれて庭のまさこも草そ見え行く

ちりすくる−はなたちはなに−やとはあれて−にはのまさこも−くさそみえゆく


02504
未入力 正徹 (xxx)

吹く風に花橘もあへぬとや軒のしのふにみたれちるらん

ふくかせに−はなたちはなも−あへぬとや−のきのしのふに−みたれちるらむ


02505
未入力 正徹 (xxx)

匂ふなりむかしの袖の雨やこれ花橘の軒のしつくほ

にほふなり−むかしのそての−あめやこれ−はなたちはなの−のきのしつくほ


02506
未入力 正徹 (xxx)

里はあれねたか袖の香と知らぬをそ花橘にとほまほしけれ

さとはあれぬ−たかそてのかと−しらぬをそ−はなたちはなに−とほまほしけれ


02507
未入力 正徹 (xxx)

古郷の庭にのこりて橘の花にましはる身さへつれなし

ふるさとの−にはにのこりて−たちはなの−はなにましはる−みさへつれなし


02508
未入力 正徹 (xxx)

里は荒れぬ今まて人の袖の香はあらしまことに匂ふ橘

さとはあれぬ−いままてひとの−そてのかは−あらしまことに−にほふたちはな


02509
未入力 正徹 (xxx)

あれしより人もかよはぬ古郷のたきの都の五月雨の比

あれしより−ひともかよはぬ−ふるさとの−たきのみやこの−さみたれのころ


02510
未入力 正徹 (xxx)

日かすふるうらのひかたはさす塩の程をみかさの五月雨の比

ひかすふる−うらのひかたは−さすしほの−ほとをみかさの−さみたれのころ


02511
未入力 正徹 (xxx)

うき雲は猶も高ねをうつむなりはれても晴れぬ五月雨の空

うきくもは−なほもたかねを−うつむなり−はれてもはれぬ−さみたれのそら


02512
未入力 正徹 (xxx)

ちくま川にこれる水の五月雨にきえていく夜の有明のかけ

ちくまかは−にこれるみつの−さみたれに−きえていくよの−ありあけのかけ


02513
未入力 正徹 (xxx)

日をふれとわきてたまれる水もなし浜のま砂の五月雨の比

ひをふれと−わきてたまれる−みつもなし−はまのまさこの−さみたれのころ


02514
未入力 正徹 (xxx)

晴行くか吹く方かはる朝風に雲も五月雨の雨そそきして

はれゆくか−ふくかたかはる−あさかせに−くももさみたれの−あまそそきして


02515
未入力 正徹 (xxx)

水かさこす広せに立つや五月雨のふる川のへの杉の二本

みかさこす−ひろせにたつや−さみたれの−ふるかはのへの−すきのふたもと


02516
未入力 正徹 (xxx)

五月雨はささ波こえて高島や陸野の水に駒もわたらて

さみたれは−ささなみこえて−たかしまや−かちののみつに−こまもわたらて


02517
未入力 正徹 (xxx)

道のへや人もかよはぬ五月雨の空に行きの雲そひまなき

みちのへや−ひともかよはぬ−さみたれの−そらにゆききの−くもそひまなき


02518
未入力 正徹 (xxx)

天の川今そ八十瀬にあまるともいさしら波の落つる五月雨

あまのかは−いまそやそせに−あまるとも−いさしらなみの−おつるさみたれ


02519
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高ねには見さりし滝の五月雨になかれて落つるふしの白雪

たかねには−みさりしたきの−さみたれに−なかれておつる−ふしのしらゆき


02520
未入力 正徹 (xxx)

はるるにもふるにもあらぬ浮雲も身を中空の五月雨の比

はるるにも−ふるにもあらぬ−うきくもも−みをなかそらの−さみたれのころ


02521
未入力 正徹 (xxx)

浮雲のみをさかのほる五月雨にわたらてしるき四方の川波

うきくもの−みをさかのほる−さみたれに−わたらてしるき−よものかはなみ


02522
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夕ま暮雲まのみとりかつ見るは月にそまさる五月雨の空

ゆふまくれ−くもまのみとり−かつみるは−つきにそまさる−さみたれのそら


02523
未入力 正徹 (xxx)

木のもとに見えし川との川すかきもくつにしつむ五月雨の比

このもとに−みえしかはとの−かはすかき−もくつにしつむ−さみたれのころ


02524
未入力 正徹 (xxx)

五月雨のみなきは見ゆる垣ねまてなかれし川そさとのよそなる

さみたれの−みなきはみゆる−かきねまて−なかれしかはそ−さとのよそなる


02525
未入力 正徹 (xxx)

池はらふ風の立葉も下折れぬ蓮のいとのさみたれのころ

いけはらふ−かせのたちはも−したをれぬ−はちすのいとの−さみたれのころ


02526
未入力 正徹 (xxx)

落滝つ岩ほなかるる深山川去年の木つみや五月雨の比

おちたきつ−いはほなかるる−みやまかは−こそのこつみや−さみたれのころ


02527
未入力 正徹 (xxx)

ふる日をは中中いはす晴れやらてくもるをいとふ五月雨の比

ふるひをは−なかなかいはす−はれやらて−くもるをいとふ−さみたれのころ


02528
未入力 正徹 (xxx)

大空もいつくか雲のみをつくし浅き江になき五月雨の比

おほそらも−いつくかくもの−みをつくし−あさきえになき−さみたれのころ


02529
未入力 正徹 (xxx)

五月雨のしかまの川の朝市に水こそいつれ立つ人はなし

さみたれの−しかまのかはの−あさいちに−みつこそいつれ−たつひとはなし


02530
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五月雨はそはの真砂のかたくつれ生ふる草木やねをはなるらん

さみたれは−そはのまさこの−かたくつれ−おふるくさきや−ねをはなるらむ


02531
未入力 正徹 (xxx)

五月雨の袖打ちしめり夏衣ときあらふへき日数をそえぬ

さみたれの−そてうちしめり−なつころも−ときあらふへき−ひかすをそえぬ


02532
未入力 正徹 (xxx)

五月雨は入江の川のみをつくしみしかくなりぬ残る夏の日

さみたれは−いりえのかはの−みをつくし−みしかくなりぬ−のこるなつのひ


02533
未入力 正徹 (xxx)

湊川しほひしほみち波こえぬ海まてまさる五月雨の空

みなとかは−しほひしほみち−なみこえぬ−うみまてまさる−さみたれのそら


02534
未入力 正徹 (xxx)

五月雨は夏のしつ屋にかふまゆを引くよりなかき軒の糸水

さみたれは−なつのしつやに−かふまゆを−ひくよりなかき−のきのいとみつ


02535
未入力 正徹 (xxx)

五月雨は空ことしけりささ雲に又雲みてる峰のした柴

さみたれは−そらことしけり−ささくもに−またくもみてる−みねのしたしは


02536
未入力 正徹 (xxx)

五月雨の水かさ落行く太山川もくつにうつむ岸のささ原

さみたれの−みかさおちゆく−みやまかは−もくつにうつむ−きしのささはら


02537
未入力 正徹 (xxx)

晴まなくふりこめられて友もみなうとき心の五月雨の宿

はれまなく−ふりこめられて−とももみな−うときこころの−さみたれのやと


02538
未入力 正徹 (xxx)

おりのほる雲にかくされあらはれて心にもあらし五月雨の山

おりのほる−くもにかくされ−あらはれて−こころにもあらし−さみたれのやま


02539
未入力 正徹 (xxx)

日数へて晴れぬ五月の雨しめりたわつく髪やみたれわふらん

ひかすへて−はれぬさつきの−あましめり−たわつくかみや−みたれわふらむ


02540
未入力 正徹 (xxx)

川舟の水底見れは陸なりし木すゑそなひく五月雨の比

かはふねの−みなそこみれは−くかなりし−こすゑそなひく−さみたれのころ


02541
未入力 正徹 (xxx)

五月雨は晴れせぬ風に露こほす竹のさ枝にかはつ鳴くなり

さみたれは−はれせぬかせに−つゆこほす−たけのさえたに−かはつなくなり


02542
未入力 正徹 (xxx)

なかき日の雲のみなわにうちはへて空にさかまく五月雨の比

なかきひの−くものみなわに−うちはへて−そらにさかまく−さみたれのころ


02543
未入力 正徹 (xxx)

雲くたる南の海の五月雨におくれてのほる嶺の一むら

くもくたる−みなみのうみの−さみたれに−おくれてのほる−みねのひとむら


02544
未入力 正徹 (xxx)

五月雨は過くるかあらき声の後日比の雲もかはりてそ行く

さみたれは−すくるかあらき−こゑののち−ひころのくもも−かはりてそゆく


02545
未入力 正徹 (xxx)

五月雨はむら雲いててくらき夜の北になかるる星のかけかな

さみたれは−むらくもいてて−くらきよの−きたになかるる−ほしのかけかな


02546
未入力 正徹 (xxx)

五月雨の水すみぬとや洗ひほすしつかあさても里にみつらん

さみたれの−みつすみぬとや−あらひほす−しつかあさても−さとにみつらむ


02547
未入力 正徹 (xxx)

最上川遠き都にいつる日ものほれはくたる五月雨の雲

もかみかは−とほきみやこに−いつるひも−のほれはくたる−さみたれのくも


02548
未入力 正徹 (xxx)

五月雨は水落見えてなかれけんま砂にうつむ山の下柴

さみたれは−みつおちみえて−なかれけむ−まさこにうつむ−やまのしたしは


02549
未入力 正徹 (xxx)

丹生の川みをにそにこる杣つくりうつすみなはの五月雨の比

にふのかは−みをにそにこる−そまつくり−うつすみなはの−さみたれのころ


02550
未入力 正徹 (xxx)

ひまをあらみ雲に埋むもかひそなき嶺の庵の五月雨の比

ひまをあらみ−くもにうつむも−かひそなき−みねのいほりの−さみたれのころ


02551
未入力 正徹 (xxx)

しけりつつくもる日をふる五月雨に朽つる色なき衣手のもり

しけりつつ−くもるひをふる−さみたれに−くつるいろなき−ころもてのもり


02552
未入力 正徹 (xxx)

蝉の羽も涙ほしあへしま鳥すむ杜のすかのねなか雨の比

せみのはも−なみたほしあへし−まとりすむ−もりのすかのね−なかあめのころ


02553
未入力 正徹 (xxx)

宮こ鳥ありやなしやもしら波の堀江の川にあまる五月雨

みやことり−ありやなしやも−しらなみの−ほりえのかはに−あまるさみたれ


02554
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契りてはうきかち人のぬれぬ江も此比ほしき道のさみたれ

ちきりては−うきかちひとの−ぬれぬえも−このころほしき−みちのさみたれ


02555
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五月雨は水の入江の川堤こゆるか浅き舟のさを

さみたれは−みつのいりえの−かはつつみ−こゆるかあさき−ふねのひとさを


02556
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深山川岩ほなかれてとまる瀬のしからみ高き水の五月雨

みやまかは−いはほなかれて−とまるせの−しからみたかき−みつのさみたれ


02557
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五月雨は興中川に行く水の速くにこるや日かすふるらん

さみたれは−おきなかかはに−ゆくみつの−はやくにこるや−ひかすふるらむ


02558
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水すめはたらひにもみつ天の川里の影なきさみたれの雲

みつすめは−たらひにもみつ−あまのかは−さとのかけなき−さみたれのくも


02559
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みな底のくらきやささのくまならんひのくま川の五月雨の比

みなそこの−くらきやささの−くまならむ−ひのくまかはの−さみたれのころ


02560
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五月雨はまさる川戸のふし柳しからみあへすこゆる波かな

さみたれは−まさるかはとの−ふしやなき−しからみあへす−こゆるなみかな


02561
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日かすさへ遠きひかたの五月雨にまさこなひかぬうら風そ吹く

ひかすさへ−とほきひかたの−さみたれに−まさこなひかぬ−うらかせそふく


02562
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真砂ゆく川波たかき浜松のねにあらはれん五月雨の比

まさこゆく−かはなみたかき−はままつの−ねにあらはれむ−さみたれのころ


02563
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老のなみ一夜にこえつさ月やみ雨うつまとのしたの舟人

おいのなみ−ひとよにこえつ−さつきやみ−あめうつまとの−したのふなひと


02564
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亀の上の山を見さりし舟人も五月雨よりや老と成りけん

かめのうへの−やまをみさりし−ふなひとも−さみたれよりや−おいとなりけむ


02565
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山のはも又川波も分けて見すみな雲水の五月雨の比

やまのはも−またかはなみも−わけてみす−みなくもみつの−さみたれのころ


02566
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吉野川岩もと落つる水底の玉藻かくれの五月雨の比

よしのかは−いはもとおつる−みなそこの−たまもかくれの−さみたれのころ


02567
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五月雨の晴行く雲をかつらきの山人のみやよそに見るらん

さみたれの−はれゆくくもを−かつらきの−やまひとのみや−よそにみるらむ


02568
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宿出てて見さりし川の淵も瀬もみちになかるる五月雨の比

やといてて−みさりしかはの−ふちもせも−みちになかるる−さみたれのころ


02569
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雪と見し花にたかひて梅かえの実を紅にそむる雨かな

ゆきとみし−はなにたかひて−うめかえの−みをくれなゐに−そむるあめかな


02570
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五月雨は庭になかるる水かきのひさしの板も朽つる東屋

さみたれは−にはになかるる−みつかきの−ひさしのいたも−くつるあつまや


02571
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五月雨の身のうき雲も世にふれせ思ひはれゆく時をこそみれ

さみたれの−みのうきくもも−よにふれせ−おもひはれゆく−ときをこそみれ


02572
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吹きおくる風にまかせて山のはの雲に先立つゆふたちの雨

ふきおくる−かせにまかせて−やまのはの−くもにさきたつ−ゆふたちのあめ


02573
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吹きとつる空にもあらす風こえて夕立はるる雲のかよひち

ふきとつる−そらにもあらす−かせこえて−ゆふたちはるる−くものかよひち


02574
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また晴れぬ雲そと見せて岩かねのこりしく嶺にすくる夕立

またはれぬ−くもそとみせて−いはかねの−こりしくみねに−すくるゆふたち


02575
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雲はやみ風もしをらぬ夏の日のかけまてなひく夕立の空

くもはやみ−かせもしをらぬ−なつのひの−かけまてなひく−ゆふたちのそら


02576
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あらき風先吹きあけて玉鉾の塵さへくもる夕立のそら

あらきかせ−まつふきあけて−たまほこの−ちりさへくもる−ゆふたちのそら


02577
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尾上より一むら見えてわく雲の千里にくたる夕立の雨

をのへより−ひとむらみえて−わくくもの−ちさとにくたる−ゆふたちのあめ


02578
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こりしける嶺の巌にわく雲の山たちかくす夕立の空

こりしける−みねのいはほに−わくくもの−やまたちかくす−ゆふたちのそら


02579
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風はやみ雲をへたてて夕立のこゆれは峰にかかる日の影

かせはやみ−くもをへたてて−ゆふたちの−こゆれはみねに−かかるひのかけ


02580
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くもるより山風吹きて夕立のやかてこゑする嶺のしひ柴

くもるより−やまかせふきて−ゆふたちの−やかてこゑする−みねのしひしは


02581
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音はしてふりこぬ先にゆふ立の雲鳥さわく木木の山風

おとはして−ふりこぬさきに−ゆふたちの−くもとりさわく−ききのやまかせ


02582
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まきの戸に吹入る風の程もなくこすのまとほに過くる夕立

まきのとに−ふきいるかせの−ほともなく−こすのまとほに−すくるゆふたち


02583
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あつま屋の軒はの雲もかたかけてむね分にふる夕立の雨

あつまやの−のきはのくもも−かたかけて−むねわけにふる−ゆふたちのあめ


02584
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山もとの園の竹原吹きしをり下葉ふりそふ夕立の風

やまもとの−そののたけはら−ふきしをり−したはふりそふ−ゆふたちのかせ


02585
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かよひちは隣のほとのひち笠も取りあへすぬるる夕立の空

かよひちは−となりのほとの−ひちかさも−とりあへすぬるる−ゆふたちのそら


02586
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嶺わたる山のかせきの柴分けてくたると聞くそ夕立のこゑ

みねわたる−やまのかせきの−しはわけて−くたるときくそ−ゆふたちのこゑ


02587
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雲くらきかた空晴れて山きはの日影にしろき夕立の雨

くもくらき−かたそらはれて−やまきはの−ひかけにしろき−ゆふたちのあめ


02588
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空見れは色なる橋の夕立や虹たちわたる天の川波

そらみれは−いろなるはしの−ゆふたちや−にしたちわたる−あまのかはなみ


02589
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うきて行く雲さへとほく天さかるひなのいくかそ夕立の雨

うきてゆく−くもさへとほく−あまさかる−ひなのいくかそ−ゆふたちのあめ


02590
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さやくなりあられましりの夕立に色もかしけぬ道の玉ささ

さやくなり−あられましりの−ゆふたちに−いろもかしけぬ−みちのたまささ


02591
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ふもとなる山そ消行くわきのほる雲に峰なす夕立の空

ふもとなる−やまそきえゆく−わきのほる−くもにみねなす−ゆふたちのそら


02592
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涼しさは夕立過きてのこる日の雲に影すく紙屋川波

すすしさは−ゆふたちすきて−のこるひの−くもにかけすく−かみやかはなみ


02593
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染めてふれ今も木の葉をちらすなり時雨のあらき夕立の風

そめてふれ−いまもこのはを−ちらすなり−しくれのあらき−ゆふたちのかせ


02594
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入日さす夕立なからたつ虹の色もみとりにはるる山かな

いりひさす−ゆふたちなから−たつにしの−いろもみとりに−はるるやまかな


02595
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日影さすま砂をむして煙たつうらの浜路のゆふ立の跡

ひかけさす−まさこをむして−けふりたつ−